ジオトリフのエビデンスのポイント

第3回:肺癌におけるEGFR遺伝子変異② ー Common mutationとCompound mutation

肺癌におけるEGFR活性型遺伝子変異のうち、Common mutationとして報告されているエクソン19欠失変異(Del19)と L858R変異は、それぞれ異なる特徴を有することが知られています1)
今回は、これらのCommon mutationおよびCompound mutationについて、ご紹介します。
 

1) 日本肺癌学会.肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き 第4.3版.2020年3月31日.

 

 

【EGFRがん化変異体の活性化モデル】

EGFRがん化変異体について、L858RとDel19ではキナーゼドメイン活性化の仕方は同じでしょうか。

 

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異なっている

EGFRがん化変異体のキナーゼドメイン活性化について検討した研究報告では、図のようなEGFRがん化変異体の活性化モデルが示されています。

本モデルでは、Del19を有するEGFR変異体はリガンドなしに二量体化し、かつ活性は二量体化に依存しないと考えられています。
一方、L858Rを有するEGFR変異体は、同じくリガンドなしに二量体化しますが、活性は二量体化に依存しており、単量体では活性をもたないと考えられています。(図1)

 

(図1)

(図1)

 

 

【 EGFR遺伝子のCompound mutationの頻度とパターン】

EGFR遺伝子変異のある非小細胞肺癌標本を対象とした解析において、L858Rがみられた標本のうちCompound mutationが認められた割合は何%だったでしょうか。

L858R、del19、G719C/S/A、L861Qのいずれか

 

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19.5%

EGFR遺伝子変異(L858R、del19、G719C/S/A、L861Qのいずれか)がみられた 非小細胞肺癌 390標本について、EGFRターゲットシークエンスを用いてCompound mutationの頻度とパターンが解析されました。
その結果、Compound mutationは全標本の15.9%(62/390標本)に認められました。このうち、del 19では4.7%(8/171標本)にCompound mutationが認められました。一方、L858Rでは19.5%(38/195標本)にCompound mutationが認められました。

また、EGFR遺伝子変異検査では、一部の変異に関して検査法によってレポートされるバリアントの種類に差があることも知られています1)。そのため、L858Rを有する EGFR遺伝子変異陽性例においては、同時にCompound mutationを有している可能性を考慮することも治療戦略の一つとなりうるのではないかと考えられます。(図2)

 

(図2)

(図2)

 

Compound mutationは、EGFR-TKI未治療でEGFR遺伝子変異陽性の肺腺癌患者61例を対象とした解析において、Single mutationに比べて予後不良であると報告されています。
本解析における全生存期間(OS)の中央値は、 Single EGFR mutation群では 83.7ヵ月であったのに対し、 Compound EGFR mutation群では 72.8ヵ月であり、有意に短い結果でした。

なお、日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン 2019年版』では、「Uncommon mutationがある場合は,エクソン19の欠失とL858R変異が同時にあったとしても、Uncommon mutationに分類する」と記述されています2)。したがって、Common mutationを含む場合でも、それ以外の変異が存在する場合はUncommon mutationとして治療を考慮する必要があると考えられます。(図3)
 

1) 日本肺癌学会.肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き 第4.3版.2020年3月31日.
2) 日本肺癌学会.肺癌診療ガイドライン 2019年版.

 

(図3)

(図3)

 

 

【ジオトリフの日本人集団における臨床成績】

ジオトリフの国際共同第Ⅲ相臨床試験であるLUX-Lung 3試験において、ジオトリフ群の無増悪生存期間(PFS)中央値は全体集団で11.1ヵ月でした。日本人集団におけるPFS中央値は何ヵ月だったでしょうか。

 

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13.8ヵ月

ジオトリフは、EGFR-TKIを含む化学療法未治療のEGFR遺伝子変異陽性NSCLC患者345例を対象に、国際共同第Ⅲ相臨床試験LUX‐Lung 3試験が行われました。本試験の対象症例345例には、日本人83例が含まれていました。
本試験では、対象症例をジオトリフ群とPEM+CDDP(ペメトレキセド+シスプラチン)群に2:1でランダム割り付けし、両群の有効性および安全性を比較検討しました。(図4)

 

(図4)

(図4)

 

その結果、主要評価項目であるPFS中央値は、PEM+CDDP群で6.9ヵ月だったのに対し、ジオトリフ群では11.1ヵ月であり、ジオトリフ群におけるPFSの有意な延長が検証されました。(図5)

 

(図5)

(図5)

 

また、日本人サブグループ解析において、日本人集団での PEM+CDDP群のPFS中央値は6.9ヵ月でした。これに対してジオトリフ群のPFS中央値は13.8ヵ月であり、PFSの延長を認めました。(図6)

 

(図6)

(図6)

 

【本試験の安全性情報はこちら】

 

 

【ジオトリフの L858Rを有する症例における臨床成績】

LUX-Lung 3 日本人サブグループ解析において、L858Rを有する症例のPFS中央値は何ヵ月だったでしょうか。

 

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13.7ヵ月

LUX-Lung 3 日本人サブグループ解析では、L858Rを有する症例におけるPEM+CDDP群のPFS中央値は8.3ヵ月でした。これに対して、ジオトリフ群のPFS中央値は13.7ヵ月であり、ハザード比は0.50でした。(図7)

 

(図7)

(図7)

 

【本試験の安全性情報はこちら】

 

国際共同第Ⅲ相臨床試験LUX-Lung 3試験において、ジオトリフ群の副作用発現率は99.6%でした。ジオトリフ群で報告された主な副作用(発現率50%以上)は、下痢95.2%、発疹/ざ瘡89.1%、口内炎72.1%、爪の異常61.1%などでした。また、Grade 3以上で発現率10%以上の副作用は、発疹/ざ瘡16.2%、下痢14.4%、爪の異常11.8%でした。
副作用による死亡例はジオトリフ群で4例[呼吸不全2例、敗血症1例、不明1例]でした。
投与中止に至った副作用は、ジオトリフ群で8%に認められ、主な事象は下痢1.3%および爪囲炎0.9%などでした。(図8)(図9)

 

(図8)

(図8)

 

(図9)

(図9)

 

日本人集団において、ジオトリフ群の副作用発現率は100%でした。ジオトリフ群で報告された主な副作用(発現率50%以上)は、下痢100.0%、発疹/ざ瘡100.0%、爪の異常92.6%などでした。また、Grade 3以上で発現率10%以上の副作用は、爪の異常25.9%、下痢22.2%、発疹/ざ瘡20.4%でした。
減量に至った有害事象はジオトリフ群で75.9%に認められ、主な事象は爪の異常31.5%、発疹/ざ瘡27.8%、下痢22.2%でした。
投与中止に至った有害事象はジオトリフ群で18.5%に認められましたが、ジオトリフ群では治療関連の投与中止はみられませんでした。(図10)(図11)

 

(図10)

(図10)

 

(図11)

(図11)

 

今回ご紹介した内容が、先生の肺癌診療のお役にたてましたら幸いです。

 

 

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