ジオトリフの副作用「爪囲炎」のマネジメント

ジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)の使用により発現しやすい副作用「爪囲炎」のマネジメント方法をご紹介いたします。ジオトリフで治療を受ける肺がん患者さんのQOL向上にお役立てください。

1. 爪囲炎の発現頻度

化学療法未治療のEGFR遺伝子変異を有する非小細胞肺癌患者を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験において、安全性評価対象229例(日本人54例を含む)中228例(99.6%)に副作用が認められ、爪囲炎は130例(56.8%)でした。(承認時)
化学療法既治療の非小細胞肺癌患者を対象とした国内第 Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の第Ⅱ相部分において、安全性評価対象 62例中全例(100.0%)に副作用が認められ、爪囲炎は42例 (67.7%)でした。(承認時)

Jones H. et al.:社内資料国際共同第Ⅲ相試験(LUX-Lung 3)[承認時評価資料] Seki Y. et al.:社内資料 国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(LUX-Lung 4) 有効性・安全性の検討(第Ⅱ相)[承認時評価資料] Katakami N. et al.:J Clin Oncol 31(27), 3335, 2013                     
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施されました

2. 爪囲炎の発生機序・発現時期

(1)爪囲炎の発生機序

がん細胞の増殖に関わっているEGFRは、皮膚や毛包、爪などの正常細胞の増殖・分化にも深く関与しています。
爪囲炎の発症メカニズムの詳細は明らかではありませんが、増殖・分化が活発な爪母細胞にEGFR-TKIが作用して活性化EGFRが著しく減少すると角化異常が起こり、爪甲の菲薄化・易刺激性がみられ、爪周囲の皮膚の炎症を持続的に来し、爪囲炎や陥入爪が起こるとされています。

■EGFR-TKIによる爪囲炎

図1 EGFR-TKIによる爪囲炎発生機序の報告

図1 EGFR-TKIによる爪囲炎発生機序の報告

(2)爪囲炎の発現時期

投与開始3週間後くらいから徐々に発現します

 

3.爪囲炎の評価と予防および対症療法

爪囲炎の評価には、主に有害事象共通用語規準CTCAEが用いられています。現在使用されているのは、改訂第4版、v4.0です。CTCAE v4.0において、爪囲炎は症状や求められる治療法などによりGrade1~3の3段階に判定されます。

表1 爪囲炎の評価法

表1 爪囲炎の評価法

重度の爪囲炎を防ぐためには、早期から適切な対処が求められます。ジオトリフ適正使用ガイドでは、Grade1~2では外用ステロイドやテーピングなどの対症療法を行った上でジオトリフの投与を継続すると解説されています。一方、Grade3以上またはGrade2でも7日間を超える持続的なものや忍容できない場合には、ジオトリフを休薬したうえで対症療法を実施し、Grade1以下に回復した後に減量して投与再開するとされています。

図2 異常が認められた場合の対応

図2 異常が認められた場合の対応

 

4.患者さんへ指導する際のポイント

爪囲炎の重症化を防ぎ、 EGFR-TKI治療の中断を防ぐためには、患者さんへの指導も大切です。

EGFR-TKI投与中は、手足の保清、適度な保湿などの日常的なケアを患者さんに行っていただくことがポイントです。また、EGFR-TKIによる爪囲炎は投与直後から発現しうることや爪囲炎の症状、好発部位を患者さんに説明していただき、判断に困った時や違和感/痛みがつらい時は医療機関へ連絡してもらうように指導することも重要です。

症状がみられた場合は、爪囲炎の手入れや爪の切り方、テーピング方法などを定期的にサポートすることも大切です。処方された外用薬や経口薬の中止・継続は、自己判断せず、医療従事者に相談してもらうようにお話ししてください。

図3 患者さんへ指導する際のポイント

患者さんへ指導する際のポイント

■副作用マネジメント

図4は、副作用の発現と増加に伴う医療従事者の負担増を表しています。爪囲炎等の副作用は、一般的に重症化するにつれて医療従事者の負担も増加してしまいますので、予防を含めた早期の対応により重症化を防ぐことが求められます。ジオトリフの場合、第Ⅲ相試験の統合解析の結果、早期の用量マネジメントを行うことで、治療継続期間に影響を与えることなく、副作用の発現・重症化の低減により、副作用マネジメントの負担軽減が期待できることが示されています。

図4 副作用に伴う、医療従事者への負担

図4 副作用に伴う、医療従事者への負担

図5 ジオトリフの用量マネジメント(イメージ図)

ジオトリフの用量マネジメント(イメージ図)

 

5.ジオトリフ減量による副作用マネジメントについて

■用量変更前後の血漿中アファチニブ濃度変化

1次治療としてジオトリフの有効性および安全性を検討したLUX-Lung3における薬物動態の結果をご紹介します。
血漿中アファチニブ濃度の幾何平均値は、一定の推移であるものの、個体差が大きいことが示されています。しかし、時間の経過とともに、その差は縮小傾向を認めます。その背景には、プロトコールに従い、副作用の発現状況に合わせた用量調整が行われたことが影響していると考えられます。

図6 臨床成績(LUX-Lung3)薬物動態

臨床成績(LUX-Lung3)薬物動態

■アファチニブの血中濃度と副作用発現

ジオトリフによる副作用の発現は、血中濃度との関連傾向が示されています。こちらは、ジオトリフの第Ⅰ・Ⅱ相試験に参加した進行固形癌患者さんを対象とした検討の結果です。アファチニブAUC、Cmaxともに高値の例では、有害事象のGradeが高い傾向が認められました。
したがって、重篤な副作用を経験した患者さんでは、ジオトリフの血中濃度が上昇している可能性が考えられます。

図7 ジオトリフの薬物動態  発疹、下痢のGradeと発現時のAUC、Cmax

ジオトリフの薬物動態  発疹、下痢のGradeと発現時のAUC、Cmax

血中濃度が上昇しやすい患者背景についても検討されています。ジオトリフの第Ⅱ・Ⅲ相試験に参加した進行固形癌患者さんを対象とした検討において、予想される個体差の範囲内ではあるものの、女性、低体重、PS 不良などがAUC上昇と関連することが示されました。こうした背景を有する患者さんでは、適宜減量等の用量調整を行うことを念頭に、特に副作用発現に注意して投与することが重要と考えられます。

図8 ジオトリフの薬物動態  患者背景別に推定したアファチニブのAUC

図8 ジオトリフの薬物動態  患者背景別に推定したアファチニブのAUC

用量変更前後の副作用発現率
LUX-Lung3の事後解析では、ジオトリフ減量により副作用発現率の減少傾向が認められています。特に、Grade3以上の副作用の減少がみられています。
なお、減量を行ってもジオトリフの有効性に影響はみられないことも報告されています*
*The Oncologist 2014;19:1100-1109

図9 減量前後の主な副作用発現率:LUX-Lung3(海外データ)

減量前後の主な副作用発現率:LUX-Lung3(海外データ)

以上の結果から、ジオトリフは用量マネジメントにより、種々の副作用を軽減できる可能性があり、効果が減弱することなく治療の継続を期待できると考えられます。

■安全性
LUX-Lung 3:ジオトリフ群での副作用は99.6%(228/229例)、主なものは下痢95.2%(218例)、発疹/ざ瘡89.1%(204例)、口内炎/粘膜炎72.1%(165例)など、重篤な副作用は22.3%(51例)、主なものは下痢15例、嘔吐8例等、投与中止に至った副作用は3.5%(8例)、下痢3例、間質性肺疾患、爪の異常が各2例など、死亡に至った副作用は4例(呼吸不全2例、敗血症、不明が各1例)に認められた。

LUX-Lung 6:ジオトリフ群での副作用は98.7%(236/239例)、主なものは下痢88.3%(211例)、発疹/ざ瘡80.8%(193例)、口内炎/粘膜炎51.9%(124例)など、重篤な副作用は6.3%(15例)、主なものは発疹/ざ瘡3例、下痢2例など、投与中止に至った副作用は、5.9%(14例)、主なものは発疹/ざ瘡5例など、死亡に至った副作用は1例(突然死)に認められた。

臨床研究助成プログラム

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