様々な感染症リスクの高まる冬の時期に今一度シックデイ対策を

サイトへ公開: 2023年06月13日 (火)
新型コロナウイルスやインフルエンザといった感染症などの体調変化によって引き起こされる、糖尿病のある人の「シックデイ」についてご紹介します。

新型コロナウイルス感染症に加えて、冬季はインフルエンザをはじめとするウイルス感染症や脳血管疾患など、様々な健康問題を発症しやすい時期でもあります。糖尿病治療中に患者さんが感染症などに罹患し、発熱、嘔吐、下痢、食欲不振などのために血糖値が乱れやすくなった状態を「シックデイ」と呼びます。日本糖尿病学会や米国糖尿病学会など、糖尿病治療にかかわる様々な関連団体が、シックデイに対する対策の強化の必要性を訴えています1)2)

シックデイ状態になると、インスリン非依存状態の患者さんで通常は血糖管理が良好な場合でも、著しい高血糖やケトアシドーシスに陥ることがあります。インスリン依存状態の患者さんでは糖尿病性ケトアシドーシスを発症することもあるため、特別の注意が必要です。高血糖への注意だけでなく、食欲不振のために低血糖になる可能性もあり、糖尿病治療薬を食事摂取量によって調節するなど、平常よりも細やかな血糖値への対応が求められます。シックデイでは個別の対応が必要になるため、日本糖尿病学会では、糖尿病のある人と医療関係者の皆さまの間で、事前に具体的なシックデイルールを確認しておくことが重要性だとしています3)

シックデイ対応の原則は「糖尿病治療ガイド2022-2023」にまとめられています4)。具体的には、以下の情報が患者さんへの指導に含まれます。

  1. 安静と保温につとめること

  2. スープなどの日頃食べなれていて口当たりがよく消化の良い食物を選び、できるだけ摂取するようにすること。

  3. 特に水分と炭水化物の摂取を優先すること。

  4. インスリン製剤を使っている方は、決して自己判断でインスリンを中断しないこと。

  5. 飲み薬を使用している方には、内服薬の中止や減量が必要な場合があること。

  6. 可能ならこまめに血糖自己測定をして、血糖値と病気の状態を確認すること。

  7. 主治医に連絡して指示を受けるようにすること。特に消化器症状が強いときは医療機関を受診すること。

食欲不振が続いたり、高血糖、ケトン体高値が見られ糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる場合には、入院加療が必要になります。糖尿病治療を受けておられる患者さんとの間で定期的にシックデイルールを確認しておくことに加え、緊急時の医療連携体制を構築しておくことも求められます。

  1. 日本糖尿病学会. 医療機関の先生方へ:今一度シックデイ対策を.
    http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=244
  2. American Diabetes Association. Diabetes and COVID-19: Frequently Asked Questions.
    https://diabetes.org/coronavirus-covid-19/covid-19-faq
  3. 日本糖尿病学会. 糖尿病患者の皆様へ:今一度シックデイ対策を.
    http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=242
  4. 日本糖尿病学会 編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023. 東京;文光堂:2022.
ページトップ