ご存じでしたか? 脳・心臓疾患の労災認定基準改正
2021年9月に脳・心臓疾患の労災認定基準が改正されましたので、概要をご紹介します1)。
これまで業務による過重負荷を原因とした脳血管疾患や虚血性心疾患等については、2001(平成13)年12月に改正された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準」に基づいて労災認定が行われてきました。しかし基準改正から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証等が実施されました。2021(令和3)年7月に報告書が取りまとめられたことを受けて、認定基準の改正が行われています。基本的な考え方の中では、脳血管疾患や虚血性心疾患等はその発症の引き金となる基礎的病態が長期にわたって形成、進行、増悪するという自然経過をたどることを踏まえつつ、業務による明らかな過重負荷が加わることによって、これらの疾患がその自然経過を超えて著しく増悪する場合があることに言及しています。そして、そのような経過をたどり発症した脳・心臓疾患については、発症に当たって業務が相対的に有力な原因であると判断し、業務に起因する疾病として取り扱うとしています。発症に影響を及ぼす業務による明らかな過重負荷として、発症に近接した時期における負荷及び長期間にわたる疲労の蓄積が考慮されます。
またこれらの業務による過重負荷の判断に当たっては、労働時間の長さ等で表される業務量や、業務内容、作業環境等を具体的かつ客観的に把握し、総合的に判断する必要があるとしています。
本認定基準の対象疾患は、次に掲げる9つの脳・心臓疾患です。
1. 脳血管疾患
(1) 脳内出血(脳出血)
(2) くも膜下出血
(3) 脳梗塞
(4) 高血圧性脳症
2. 虚血性心疾患等
(1) 心筋梗塞
(2) 狭心症
(3) 心停止(心臓性突然死を含む。)
(4) 重篤な心不全
(5) 大動脈解離
改正のポイントは以下の2点です。
1. 認定基準に新たに追加された項目
1) 長期間の過重業務
2) 短期間の過重業務・異常な出来事
2. 認定基準の対象疾病に「重篤な心不全」が追加
- 厚生労働省. 脳・心臓疾患の労災認定基準の改正概要.
https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000832041.pdf.