止められない、止まらない――?負の連鎖を断ち切るヒントは“脳”にあった。

サイトへ公開: 2020年11月20日 (金)
【コラム】糖尿病の食事支援では食欲・食行動の管理が基本になりますが、実践は困難です。今回は、6ヵ月の減量プログラムが肥満の男女にもたらした食の嗜好の変化を紹介します。

監修:横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生

ガマンしていてもついつい手が伸びるフライドポテトやハンバーガー,そして陥る自己嫌悪……。それは意志の弱さではなく、そのような食べ物に対する脳内報酬系回路が確立され、一種の依存状態に陥っていることが原因だといわれています。“依存”と聞くと、止めることはかなり難しいのでは? と思ってしまいがちですが、その依存状態から脱却するヒントがアメリカの研究から報告されています。13人の過体重・肥満の成人男女を対象に高カロリーの食品を選んでしまうようになった脳内報酬系回路を減量プログラムによる介入で改善できるか調査した結果、6ヵ月の減量プログラムによって低カロリーで健康的な食べ物に対する感受性が高まっていることがわかったのです。それに伴って、介入群では健康的な食べ物を求めるように嗜好性が変化しました1)。脳内報酬系をミカタにすれば、食欲・食行動のコントロールが期待できるのです。肥満・糖尿病に悪影響を及ぼすことはもちろん、脳の海馬の萎縮2)をももたらすジャンクフード。どうしても止められないという患者さんには、ジャンクフードの中毒性をお伝えするとともに、「6ヵ月間、一緒に頑張ってみませんか?」と提案してみるのはいかがでしょうか。

監修:横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授 寺内 康夫 先生
対象: 過体重・肥満の13人の成人男女
方法: 減量プログラム(0.5~1.0kg/週の減量、500~1,000/日のカロリー減を目標とし、栄養士によるサポートなどを実施)を実施する介入群と対照群の2群に無作為に割り付け、6ヵ月の期間を経て脳の報酬中枢領域である線条体の反応を核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて計測した。MRIのスキャニング中に高カロリー・低カロリー食品の写真をみせて、その食べ物を欲するか1~4の度合いにわけて介入群と対照群の渇望度を比較した(1はまったく食べたくない、4は非常に食べたい渇望度を表す指標)。

*:p<0.01

(文献1より引用)

1)Deckersbach T, et al. Nutr Diabetes. 2014; 4: e129.
2)Jacka FN, et al. BMC Med. 2015; 13: 215.

ページトップ