アナタのなかの頼れるミカタ。腸内細菌との賢いお付き合い。

サイトへ公開: 2020年11月20日 (金)
【コラム】本コンテンツでは、分岐鎖アミノ酸産生などに関与する腸内細菌と賢く付き合うために、食物繊維を摂取することの重要性を紹介します。

監修:産業医科大学病院 臨床研究推進センター センター長 岡田 洋右 先生

巷をにぎわす「腸活ブーム」。腸内環境を整えて健康を目指そう! というものですが、糖尿病とも深い関係があるようです。これまで、2型糖尿病リスクと分岐鎖アミノ酸(BCAA)濃度が相関することは報告されていたものの1)、このBCAAが何に由来するものかは解明されていませんでした。ですが、北欧を中心とした研究家たちの検討によって、インスリン抵抗性を示す症例では血清BCAA濃度の上昇が認められ、これを説明しうる要因に2種の腸内細菌がBCAA産生菌種として関係していることが明らかになったのです2)。実際にそのうちの1つの菌種をマウスに投与すると、血清BCAA濃度の上昇、インスリン抵抗性・耐糖能の悪化を認めました2)。一方で、腸内細菌は頼もしい存在になりうることも報告されています。鍵を握るのは「食物繊維」。2型糖尿病のある方を対象とした研究において、高食物繊維食によって、炎症の軽減などを担う短鎖脂肪酸を産生する菌種が増加し、HbA1cが有意に低下することが報告されたのです3)。宿主の代謝に影響を及ぼす腸内細菌――。糖尿病との戦いは生涯を通じて続くからこそ、ミカタは多い方が心強いもの。食事療法のポイントとして、体内の腸内細菌をミカタにつけるべく、食物繊維が豊富な食材を取り入れるよう患者さんにお伝えしてみるのも、一法かもしれません。

監修:産業医科大学 第1内科学講座 准教授 岡田 洋右 先生
対象と
方法:
277人の糖尿病でないデンマーク人のデータを用いて、血清メタボローム、インスリン抵抗性の指標としてのHOMA-IR、および腸内細菌叢のデータを解析した。インスリン抵抗性を示す症例の血清メタボロームにおいては、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の増加が認められ、その腸内細菌叢によるBCAA産生能の上昇と相関していた。BCAAによるインスリン抵抗性の増悪を説明しうる菌種として、Prevotella copr(i P. copri)とBacteroides vulgatusが同定された。続いて、P. copriがインスリン抵抗性悪化の原因である可能性を検証すべく、マウスを用いた検証を実施した。高脂肪食負荷マウスを用いて12匹の雄のマウスにP. copriを強制経口投与、プラセボ対照として shamを12匹の雄のマウスに同様に強制経口投与し、(A)血清BCAA、(B)耐糖能、(C)インスリン抵抗性に与える影響について検討した。

A:*p<0.05; **p<:0.01(likelihood ratio test)
B:*p<0.05; **p<:0.01(repeated measures two-way ANOVA)
C:Spearmanの順位相関係数(SCC)=0.46,p=0.040(2-sided t distribution)

(文献2より引用)

1)Wang TJ, et al. Nat Med. 2011; 17: 448-53.
2)Pedersen HK, et al. Nature. 2016; 535: 376-812.
3)Zhao L, et al. Science. 2018; 359: 1151-6.

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