チームメンバーの離職を防ぐ3つの“Not to do”

サイトへ公開: 2021年02月01日 (月)
チーム医療に重要なメンバーの離職を防ぐ上司・リーダーの心得と3つの”Not To Do”について、ハイズ株式会社 代表、慶應義塾大学大学院 特任教授の裵英洙先生にお伺いしています。
監修:裵 英洙 先生

監修:裵 英洙 先生 (MD, Ph.D, MBA)ハイズ株式会社 代表/慶應義塾大学大学院 特任教授

糖尿病の治療はチーム医療が基本となります。医師、薬剤師、管理栄養士、看護師、理学療法士といった医療のプロたちが、それぞれの専門性を持ち寄って糖尿病のある方に対してトータルケアを行います。多くの職種が関わり、いずれの職種もとても貴重な人材です。もし、その貴重なチームメンバーが離職となるとチーム医療は進まず、患者さんも困ってしまいます。
そもそも、人はなぜ離職するのでしょうか?家庭の事情、他にしたいことがある、などの仕方ない理由での離職ならある程度の納得は出来るかもしれません。しかし、上司やリーダーとの関係性、チーム間の人間関係、仕事内容の不満等の原因でモチベーションの低下による離職となると看過できません。医療関係者への様々な離職に関する調査では離職理由の上位に「人間関係の不満」が上がってきます。特に、上司やマネジメント層、リーダークラスへの不満は多く聞かれます。チーム医療を引っ張っていくリーダークラスはチームメンバーから良い意味でも悪い意味でもいつも注目されており、リーダーの力量次第で避けられる離職はきっとあるはずです。

今回は、離職を防ぐための上司・リーダーの心得をまとめてみます。まず、ここでのポイントは、「リーダーはこうあるべきだ」「こうするべきだ」といういわゆる“To Do”思考で考えるのではなく、「これだけはしちゃいけない」といった“Not To Do”思考で考えて頂きたいと思います。チーム医療を完ぺきに引っ張ることができるスーパースターや全能的リーダーは存在しません。リーダー自身も忙しく、ストレスフルな業務を担っていることも多く、完璧に部下やチームメンバーをマネジメントすることはそもそも難しいものです。だからこそ、チームメンバーのモチベーションを下げるような“禁忌”さえ踏まなければ良し、といった感じで肩の力を抜いて考えることがコツなのです。そこで、離職を防ぐ3つの「Not to do(=してはいけない)」を紹介しましょう。

チームメンバーの離職を防ぐ3つの “Not to do” 01

① 見本とならない

リーダーが率先垂範せずに仕事に対して中途半端な姿勢や怠惰な態度でいると、志が高いメンバーは急激にモチベーションを下げかねません。例えば、リーダーが遅刻することが多かったり、仕事の締め切りを守らないことが常態化していると、チーム内にその怠惰な空気が蔓延します。モチベーションが高いメンバーは自分の理想と現実のギャップに苦しみ、「このチームは合わない」と離職を考え始めるものです。

② 押し付けない

リーダー自らが「オレ流」「わたし流」を無理やり押し付け、それ以外の業務スタイルを認めないような場合は要注意です。特に若いチームメンバーは吸収力が高い時期ですので、たくさんのロールモデルから自分に合った仕事スタイルを見出すことにモチベーションを感じています。もちろん、若手から教えを請われた場合は喜んで「オレ流」「わたし流」を惜しみなく伝えることはリーダーとしての魅力です。モチベーション高いメンバーは、押し付けられることなく自主性を尊重されることでさらに伸びていくものです。

③ えこひいきしない

リーダーがある特定のメンバーを極端に可愛がりすぎたり、逆に極端に叱責したりすると、チームメンバーは鋭敏にその差別感を感じ取ります。自分が他人と比べて公正に評価されていないと感じると、チーム間でギスギスした雰囲気が急速に増していくものです。えこひいきされすぎたメンバーは居心地が悪くなる気持ちを持ち、のけ者にされた側は寂しさや諦めを感じてチームへの愛着を減らし始めます。きちんとした評価基準のもとでの人事考課で差がつくのは仕方ありませんが、リーダーの普段の接し方で明確なえこひいきをしてしまうことは避けましょう。

チームを引っ張っていくべきリーダーの多くは人材問題で悩んでいます。ついつい、コミュニケーションスキルや傾聴スキル、ファシリテーションスキル、コーチングスキルなどの能力や技術をきちんと身に着けなければならないと“足し算”で考えることが多いものです。しかし、学ぶべきことが多くて忙しい身としてはなかなか思うようにいきません。だからこそ、これだけはしてはいけないと、“Not to do”を守る方がシンプルで分かりやすいと考えます。多くの医療機関のマネジメントのお手伝いをしていると、“リーダー力”が高い人は、たくさんのスキルを身に着けているよりも、先ほど挙げた3つのポイントをはじめ、社会人としてのマナーや作法の大原則を徹底して守っている人が多いと気付きます。
今日からできる3つの「Not to do」を意識して、チーム医療のさらなる発展を目指していきましょう。

【引用】

裴 英洙.医療職が部下を持ったら読む本. 日経BP社. 2014より抜粋・一部改変

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