循環器病対策推進基本計画の施策-3 循環器病に係る医療提供体制の構築

サイトへ公開: 2023年03月30日 (木)
循環器病対策推進基本計画の施策の1つである、医療提供体制の構築についてご紹介いたします。

循環器病に係る医療提供体制の構築1)

ここでは、循環器病対策推進基本計画(以下、基本計画)の2つ目の個別施策にあたる「保健、医療及び福祉に係るサービスの提供体制の充実」を達成するための10の項目のうち、3) 救急医療の確保をはじめとした循環器病に係る医療提供体制の構築について、現状および課題と取り組むべき施策、そして脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業についてご紹介します。

医療および介護に係るサービスの需要の増大と、その多様化に対応し続けるためには、患者さんそれぞれの状態にふさわしい医療を効果的かつ効率的に提供する体制の構築が必要です。現在、国は、地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律(平成26年法律第83号)に基づき、病床機能の分化や連携を進め、地域医療として、一体的な地域包括ケアシステムを構成するための在宅医療と介護に係るサービスの充実を図るとしています。
一方、循環器病の急性期診療では、疾患に応じて地域の複数の医療機関が連携し24時間体制で対応できることが求められています。こうした施設間ネットワークを構築するためには、急性期の専門的医療を行う施設が担うべき医療機能を、ネットワークを構築している地域の医療機関で分担することも検討される必要があります(図12)。また、高齢化に伴い増大する医療需要や医療現場の働き方改革に対応しつつ、ICTなどの情報通信技術を用いて患者さんがより受診しやすく、将来にわたり質の高い診療体制が持続できるように地域での情報共有と活用ができる体制を構築することなどが求められています。
さて、循環器病に対する治療の中でも、外科治療や血管内治療などの先端的で高度な医療には、医療資源や、熟練した医療技術が必要です。循環器病の医療従事者の育成を目的として、医学教育モデル・コア・カリキュラムの学修目標には、脳血管障害や心不全、虚血性心疾患、不整脈、弁膜症等の病態、診断、治療などを説明できることなどが定められています。さらに学会などの関係団体においても、循環器病に係る各専門医や看護師においても特定行為研修修了者、専門・認定看護などを含めた医療従事者が育成されています。また、かかりつけ医も循環器病患者さんを診察する可能性があるため、循環器病に関する共通認識を持つ必要があります。
以上を踏まえて、今後、国が取り組むべき施策として、基本計画では下記をあげています。

  • 高度急性期、急性期から回復期、そして慢性期までの病床の機能分化
  • 訪問診療・看護・薬剤管理指導・リハビリテーションを含めた在宅医療の推進
  • 学会などで育成される各専門医や看護師における特定行為研修修了者、専門・認定看護等を含めた医療従事者の確保
  • 体制の整備について、国および地方公共団体が、医療機関、学術団体などと共働し、データに基づいた人材の育成、適正配置の推進
  • 循環器病に対する医療の質の向上、疾患の特性に応じた医療の均てん化、集約化、効率的かつ持続可能な循環器病医療の実現、循環器病の急性期診療を提供する体制の実態の把握、有効性および安全性の評価の検証
  • かかりつけ医などの日常診療における循環器病診療に関するツールの活用、かかりつけ医と専門的医療を行う施設の医療従事者との連携の推進
  • 国立循環器病研究センターなどは、地域の実情を鑑み、全国で同様の医療水準が提供できるよう、関係機関と知見を共有

脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業3)

基本計画では、包括的な支援体制を構築するため、多職種が連携して総合的な取り組みを進めることとしています(詳細は「循環器病対策推進基本計画の施策-2 包括的な支援体制の構築:病院受診まで」を参照ください)。これは、これまでに都道府県が医療計画などで実施している対策よりも幅広い内容であるため、各医療施設で個々の取り組みはされているものの、全ての支援について十分なレベルでサービスを提供できるまでには至っていませんでした。
令和4年度脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業では、こうした施策をさらに効果的に推進するため、専門的な知識を有し、地域の情報提供の中心的な役割を担う医療機関の中から、事業に参画する医療機関を募集し、12病院(10自治体)が選定されました。モデルに選定された医療機関は脳卒中・心臓病等総合支援センターを配置し、自治体や関連する学会等とも連携を取りながら、地域の医療機関と勉強会を開催したり、支援方法などの情報提供を行うなど協力体制を強化します。こうしたモデルとなる取組みを先行的に実施し、検証することで、将来的に包括的な支援体制を構築し、地域全体の患者支援体制の充実につなげていくことを目的とした事業です(図24)

図1 急性期診療提供のための施設間ネットワークのイメージ

図1 急性期診療提供のための施設間ネットワークのイメージ

図2 脳卒中・心臓病等総合支援センターのイメージ

図2 脳卒中・心臓病等総合支援センターのイメージ

  1. 厚生労働省. 循環器病対策推進基本計画(令和2年10月).
    https://www.mhlw.go.jp/content/000688359.pdf
  2. 厚生労働省 第5回循環器病対策推進協議会(ペーパーレス)参考資料2 参考資料集.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000649147.pdf
  3. 厚生労働省 令和4年度 脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業公募要綱.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000903052.pdf
  4. 厚生労働省 基本計画を実行するための脳卒中・心臓病等総合支援センターのモデル事業.
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000909823.pdf
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