循環器病対策推進基本計画の施策-8 後遺症と小児・若年層に向けた対策

サイトへ公開: 2023年06月13日 (火)
循環器病対策推進基本計画の施策である、後遺症と小児・若年層に向けた対策についてご紹介いたします。

循環器病の後遺症に向けた対策1)

ここでは、第1期循環器病対策推進基本計画(以下、基本計画)の2つ目の個別施策にあたる「保健、医療及び福祉に係るサービスの提供体制の充実」を達成するための10の項目のうち、8) 循環器病の後遺症を有する者に対する支援、および10) 小児期・若年期から配慮が必要な循環器病への対策について、その現状および課題と取り組むべき施策をご紹介します。

循環器病は、急性期に救命されたとしても様々な後遺症を残す可能性がある疾患です。後遺症により、日常生活の活動度が低下することで、しばしば介護が必要な状態となり得ます。このような場合、必要な福祉サービスを受けることが可能ですが、その福祉サービスの提供や後遺症に対する支援について、患者さんが十分に享受できていないとの課題が指摘されています。また、循環器病の発症後には、うつや不安などが認められることもあり、その場合は心理的なサポートも求められます。特に脳卒中の発症後には、手足の麻痺だけでなく、外見からは障害がわかりにくい摂食嚥下障害、てんかん、失語症、および高次脳機能障害などの後遺症が残ることがあり、社会的な理解や支援も必要になります。

今後、国が取り組むべき施策として、基本計画ではてんかんや失語症などの脳卒中の後遺症および循環器病の後遺症を有する患者さんが、症状やその程度に応じて、適切な診断および治療を受けることができ、かつ社会生活を円滑に営むことができるよう、就労支援や経済的支援を含め、必要な支援体制の整備を行うことを挙げています。また、循環器病の後遺症を有する患者さん全般に必要とされる福祉サービスの提供を引き続き推進すると同時に、失語症を有する患者さんに対する意思疎通支援、高次脳機能障害のある方のニーズに応じた相談支援、およびてんかんを有する患者さんが地域において適切な支援を受けられるよう、てんかん拠点医療機関間のネットワーク強化などに取り組み、さらに後遺症についても啓発していくこととしています。

循環器病の小児・若年層に向けた対策1)

循環器病の中には、100人に1人の割合で出生する先天性心疾患や小児不整脈、小児脳卒中、家族性高コレステロール血症などの小児期・若年期から配慮が必要な疾患があり、時には学校健診などで小児の循環器病が見つかることもあります。近年の治療法の開発や治療体制の整備により、小児期に慢性疾病に罹患した患者さん全体の死亡率は大きく減少しており、多くの子ども達の命が救われるようになりました。一方、小児患者さんの治療にあたっては保護者の役割が大きいこと、また、原疾患の治療や合併症への対応が長期化し、それらを抱えたまま思春期、さらには成人期を迎える患者さんが増えている現状があり、そのような患者さんの自立などに課題があることも事実です。胎児期の段階を含め、小児から成人までの生涯を通じて切れ目のない医療が受けられるよう、他科との連携や、移行期医療を含めた総合的な医療体制の充実が求められています(図1、2)。

図1 急性期診療提供のための施設間ネットワークのイメージ

図1 急性期診療提供のための施設間ネットワークのイメージ

図2 脳卒中・心臓病等総合支援センターのイメージ

図2 脳卒中・心臓病等総合支援センターのイメージ

今後、国が取り組むべき施策として基本計画では、「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」に基づき、子どもたちの健やかな成育を確保するため、成育過程を通じた切れ目ない支援などを基本理念として、医療、保健、教育、および福祉などの関係施策を総合的に推進することを挙げています。

  1. 厚生労働省. 第1期循環器病対策推進基本計画(令和2年10月).
     https://www.mhlw.go.jp/content/000688359.pdf
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