コロナ禍のリーダーシップ-10　Key Finding 4

本シリーズでは、米国の非営利組織であるCenter for Creative Leadership (CCL)が、様々なマネージャーレベルに属するリーダー約300人を対象に、COVID-19パンデミックとそれに関連する深刻な混乱やストレス要因がリーダーと組織にどのような影響を与えたかを調査した結果をまとめた、リサーチペーパーを翻訳してご紹介します。 https://doi.org/10.35613/ccl.2021.2044
調査の方法の詳細は同シリーズ「コロナ禍のリーダーシップ-4 研究方法」をご参照ください。

目的：COVID-19パンデミックに端を発する混乱やストレスが、ビジネスリーダーとその組織のバーンアウト、働きがい、および総合的なウェルビーイングにどのような影響を与えたか、またレジリエンス、感謝の気持ち、そして曖昧さへの不寛容との関係性を調査する。

対象：CCLのオンライン調査パネル「Leading Insights」に登録するリーダー2,000名強

方法：質問票（詳細は「コロナ禍下のリーダーシップ-5　Appendix A」を参照のこと）を配布し、2020/6/29から2020/7/14の間に291名から回答を得た。得られた回答を記述統計、t検定、ANOVAS、ピアソンの相関、および構造方程式モデルにより解析した。

年配で経験豊富なリーダーほど、パンデミックにうまく対処できている可能性がある

われわれの調査によると、年齢と曖昧さへの不寛容さやバーンアウトとの間には負の相関が、そして年齢とウェルビーイングとの間には正の相関が、それぞれ示されました。言いかえると、私たちの研究に参加した者のうち、より年配の参加者は、バーンアウトのリスクが低く、ウェルビーイングのレベルが高く、曖昧さに対しより寛容であるという結果でした。同様に、リーダー層で比較した分析結果でも、曖昧さに対する不寛容において統計学的に有意な差が見られました。特にエグゼクティブは、一般社員と比較して曖昧さに対して寛容でした。

図5 曖昧さへの寛容度

この調査結果がリーダーや組織にもたらす意味
全体として、私たちは今回得られた知見のパターンを前向きに解釈しています。というのもこの結果は、知恵が確かに経験から生まれるものであり、私たちは時間の経過とともに、その不確実性が何であろうとよりうまく対処できるようになるであろうことを示唆していると考えているからです。しかし、この知見の裏返しとして、若い人や組織内の地位が相対的に低い人にとっては、パンデミックで引き起こされた不確実性に対処するのがより難しいかもしれないということになります。このことは、キャリアが確立されていない人ほど、仕事や経済的な安定が得られていないであろうことを踏まえると、重要な懸念の一つといえるでしょう。私たちは、リーダーや組織が若い才能を育て、リーダーシップのパイプラインを維持するためにも、若い従業員を支援し、保護することを奨励します。情報や戦略を共有する機会を設けることも、その一歩になるかもしれません。