コロナ禍のリーダーシップ-9　Key Finding 3

本シリーズでは、米国の非営利組織であるCenter for Creative Leadership (CCL)が、様々なマネージャーレベルに属するリーダー約300人を対象に、COVID-19パンデミックとそれに関連する深刻な混乱やストレス要因がリーダーと組織にどのような影響を与えたかを調査した結果をまとめた、リサーチペーパーを翻訳してご紹介します。 https://doi.org/10.35613/ccl.2021.2044
調査の方法の詳細は同シリーズ「コロナ禍のリーダーシップ-4 研究方法」をご参照ください。

目的：COVID-19パンデミックに端を発する混乱やストレスが、ビジネスリーダーとその組織のバーンアウト、働きがい、および総合的なウェルビーイングにどのような影響を与えたか、またレジリエンス、感謝の気持ち、そして曖昧さへの不寛容との関係性を調査する。

対象：CCLのオンライン調査パネル「Leading Insights」に登録するリーダー2,000名強

方法：質問票（詳細は「コロナ禍下のリーダーシップ-5　Appendix A」を参照のこと）を配布し、2020/6/29から2020/7/14の間に291名から回答を得た。得られた回答を記述統計、t検定、ANOVAS、ピアソンの相関、および構造方程式モデルにより解析した。

COVID-19パンデミックは女性に偏った影響を与えた

男性と比較すると、女性はより高いCOVID関連ストレスを訴えており、バーンアウト率も高い一方、レジリエンスやウェルビーイングのレベルは低いという結果でした。感謝の気持ちや曖昧さへの不寛容、仕事の満足度については男女差はありませんでした。

図4 性別の影響度

パンデミック下においてジェンダーが果たす役割を十分に理解するためには、さらなる研究が必要ですが、これらの結果は、COVID-19パンデミック下において多くの女性が困難を抱えていることを示唆しています。今回見られたような性差は、仕事以外の、家事や育児の大部分を女性が担う傾向が依然として強いことに起因しているのではないかと私たちは考えています（Bianchi et al., 2012）。結果として、パンデミックは女性にさらなるストレスと仕事をもたらしたのかもしれません（例えば、家族が家で過ごす時間が長くなれば、今までよりもっと料理や掃除をしなければならないとか、普段の責務に加えてホームスクーリングとして子どもの勉強を家庭で見なければならないなど）。これは、COVID-19パンデミック下で、家事や介護の大部分を担う可能性が、母親では父親の3倍以上高いというMcKinsey & Company（2020）の最近の調査結果とも一致しています。しかし、われわれのサンプルには白人が多かったので、ジェンダーと人種／民族の間の相関を検証するのに必要な検定力が不足していました。

この調査結果がリーダーや組織にもたらす意味
リーダーや組織は、このパンデミックの影響には性差があり、特に女性が影響を受けていることを認識し、パンデミック下でも女性の人材を維持するための対策を講じる必要があります。直属の部下に女性がいる場合は、どんなサポートが必要なのかを話し合ってみてください。例えば、組織は女性（およびすべての従業員）に働き方の柔軟性や休暇の取得、追加のサポートの提供を検討できるかもしれません。この困難な期間において、子を持つ親には家族休暇や病気療養制度を利用して、家庭で子どもを教育することを認めている組織もあります。また、カウンセリングや保育、セルフケアのためのリソースを無料で提供している企業もあります。

さらに、女性リーダーや従業員は、自分たちがひとりぼっちではないということを知っておく必要があります。この間、男女の役割やジェンダー規範が一貫して、女性にストレスやバーンアウトを引き起こしてきました。私たちは、女性が自分自身の健康と幸福を意識し、可能な限りそれを優先させることを奨励します。そのためには、職場や家庭でいつもとは異なるサポートを求めたり、自分の健康が損なわれないように線引きを設けたりすることもできるでしょう。職場での女性支援についてさらに詳しく知りたい方は、当社の調査レポート『What Women Want―and Why You Want Women―in the Workplace』（Clerkin, 2017）を参照ください。