糖尿病対策1- 次期施策の検討状況

ここでは、わが国における糖尿病の発症と重症化予防を目標に実施された、「第７次医療計画」や「健康日本21（第二次）」などの評価を踏まえた中間取りまとめの議論のポイントを、それに密接に関連する他の対策の見直しのスケジュールと交えてご紹介します。
2023年（令和5年）2月に厚生労働省の「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会（以下、検討会）」から糖尿病対策に係る中間とりまとめが公表されました¹⁾。この背景として、2007年（平成19年）に取りまとめた「糖尿病等の生活習慣病対策の推進について（中間取りまとめ）」から一定期間が経過していること、ならびに「第8次医療計画」の策定に向けて、「第７次医療計画」および「21世紀における国民健康づくり運動［以下、健康日本21（第二次）］」の振り返りが今まさに行われていることがあります（図1）。
この検討会の趣旨は、糖尿病の発症・重症化予防を目標としたこれまでの対策を評価・見直し、対策の推進に必要な医療体制の構築について議論することにあります。検討会の取りまとめで必要とされた取り組みは、第8次医療計画や次期国民健康づくり運動プランに適宜反映されていく予定であることから、糖尿病にかかわる次期施策の策定プロセスの一環と位置づけられています²⁾。特に、厚生労働省は第8次医療計画の策定において、「他の法律の規定による計画であって医療の確保に関する事項を定めるものとの調和が保たれ、関連する施策との連携を図ることが重要である³⁾」と連携の重要性を示していることからも、この検討会の取りまとめの影響が大きいであろうことがうかがえます。

図1 今後の医療計画および次期健康づくり運動のスケジュール（概要）

検討会の取りまとめのポイント¹⁾

図2に検討会の取りまとめのポイント３つと、それぞれの見直しの方向性をお示しします。中間とりまとめの概要は図3を参照ください。

図2 検討会の取りまとめのポイント

1. 糖尿病対策に係る他計画との連携を含めた診療提供体制
これまでの取り組みにくわえ、糖尿病を有する高齢者の患者さんについて、コントロール目標などが日本糖尿病学会によって設定されたことにも留意し、

• 低血糖予防、フレイル対策、また併存症としての心不全に関する実態の把握
• 在宅医療・在宅訪問看護、介護・地域包括ケアとの連携を含めた糖尿病の治療や合併症の発症予防・重症化予防につながる取り組みを推進する。

また、地域の保健師・管理栄養士や保険者など地域のさまざまな医療資源を活用した連携の推進や、周術期や感染症の入院中の血糖コントロールなど、糖尿病を併存している他疾患を主たる病名として治療中の患者さんの血糖管理体制についても取り組みを推進する。

2. 新型コロナウイル感染症拡大時の経験を踏まえた今後の糖尿病医療体制
感染症流行や災害時などの非常時であっても、糖尿病を有する患者さんが適切な医療を受けられるような体制を整備する。
オンライン診療などのICT（情報通信技術）の利活用を踏まえた診療体制についても検討を進める。

3. 糖尿病対策に係る指標の見直し

• 「第8次医療計画」で糖尿病医療体制の現状把握に用いる指標例について、
  ① 糖尿病の予防
  ② 糖尿病の治療・重症化予防
  ③ 糖尿病合併症の発症予防・治療・重症化予防
  の3項目を軸に全体を整理する。
• 「専門家数」と「専門医療機関数」のいずれも用いうる指標は、医療提供体制の整備という観点から「専門医療機関数」を採用する。
• 「比率」と「実数*」のいずれも用いうる指標は、都道府県間での比較を可能とする観点から、原則として「人口10万人当たりの比率」を採用する。

*ただし、「１型糖尿病に対する専門的治療を行う医療機関数」や「妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠に対する専門的な治療を行う医療機関数」などの、「人口10万人当たり」を母数とすることが必ずしも適当でなく、かつ適切な母数（母集団）の設定が難しい指標については「実数」を用いる。
また、「HbA1cもしくはグルコアルブミン（GA）検査の実施」や「重症低血糖の発生率」などの糖尿病を有する患者さんを対象とした検査の実施、ならびに糖尿病を有する患者さんの合併症の発生については、母数として「糖尿病患者数」を用いる。

以上から、糖尿病に関する連携が新たなステージに入っていることにくわえて、ICTの利活用を踏まえた診療体制を本格的に考える時期にきていることが感じ取れます。
上記取りまとめのポイントを踏まえて、第8次医療計画および次期健康づくり運動の糖尿病の項でも同様の見直しが行われる予定です。

図3糖尿病に係る中間とりまとめ（抜粋）