腎疾患対策のこれまでとこれから

サイトへ公開: 2024年03月28日 (木)
わが国におけるこれまでの対策と今後の取り組みについて紹介します。

腎疾患対策のさらなる推進を目指してーこれまでの対策1)

ここでは、腎疾患対策検討会報告書(以下、報告書)などから、これまでの腎疾患対策と今後の対策推進を目指した取り組みについて紹介します。

わが国における腎疾患を有する患者さんの数は2022年(令和4年)末時点の日本透析医学会統計調査による施設調査の結果(4,464施設より回答)から、347,474人が透析療法を受けていることがわかっています2)。一方、透析導入への進行を阻止することを含めた腎疾患対策に目を向けてみますと、生活習慣病予防対策や、透析・移植などの腎不全対策と比べて、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease、以下CKD)の重症化予防については2006年(平成18年)まで国の施策の対象として明確化されてきませんでした。そこで2007年(平成19年)10月より、厚生労働省の「腎疾患対策検討会」においてわが国における腎疾患対策のあり方についての検討が行われ、「腎機能異常の重症化を防止し、慢性腎不全による透析導入への進行を阻止すること」、および「CKDに伴う循環器系疾患(脳血管疾患や心筋梗塞など)の発症を抑制すること」を目標として、腎疾患対策の方向性を示した「今後の腎疾患対策のあり方について」が取りまとめられました。
その後の10年間の対策により、年齢調整後の新規透析導入率の減少を達成するなど、着実な成果が現れましたが、今後高齢化が進む中で、生活習慣病に由来する腎疾患を有する患者さんは増加する可能性があります。また、CKDを有する患者さんは、循環器系疾患(脳血管疾患や心筋梗塞など)のリスクも高く、CKDが生命を脅かす重篤な疾病であることを広く認識して、対策を行う必要があります。

このことから、腎疾患対策のさらなる推進のため、2017年(平成29年)12月より、「腎疾患対策検討会(以下、検討会)」が開催され、今後の腎疾患対策の方向性についての検討がなされました(報告書の概要は図を参照ください)。
検討会では全体目標として、「自覚症状に乏しいCKDを早期に発見・診断し、良質で適切な治療を早期から実施・継続することにより、CKD重症化予防を徹底するとともに、CKDを有する患者さん(透析を必要とする患者さん、および腎移植を必要とする患者さんを含む)のQOLの維持向上を図る」ことが掲げられました。この全体目標を達成するために実施すべき取り組みは図に示す5本の柱として整理され、2028年(令和10年)までに年間の新規透析導入する患者さんの数を35,000人以下に減少させるという成果目標(Key Performance Indicator:KPI)が設定されました(参考:2022年の年間の新規透析導入される患者さんの数は39,683人2)。
この報告書は、腎疾患対策の重要性の認識をさらに広めるとともに、医療関係者や行政機関だけでなく、CKDを有する患者さんやその家族も含めた国民全体にCKDについての普及啓発を行い、腎疾患対策の実践を促すものと位置づけられています。

図 腎疾患対策検討会報告書の概要

  1. 腎疾患対策検討会. 腎疾患対策検討会報告書(平成30年7月). https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/001005981.pdf
  2. 花房規男、他. わが国の慢性透析療法の現況(2022年12月31日現在). 透析会誌 56(12):473-536,2023.
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