入退院調整を円滑にする組織づくり関連部署を集約「すぐ隣に相談相手」

サイトへ公開: 2020年10月14日 (水)
院内部署の垣根を越えた「顔の見える関係づくり」を推進し、医療連携の鍵となる円滑な入退院調整に成功した大阪府堺市のベルピアノ病院に組織づりのポイントについて伺いました。

社会医療法人生長会 ベルピアノ病院

院長 戸田爲久先生

社会医療法人生長会 ベルピアノ病院

地域連携・在宅療養支援センター部長 村上佳代さん

入退院調整を円滑にする組織づくり 関連部署を集約「すぐ隣に相談相手」01

入退院調整を円滑にする組織づくり 関連部署を集約「すぐ隣に相談相手」02

超急性期病院が林立する大阪府堺市――。

この地域で回復期と慢性期の両機能をカバーするベルピアノ病院(西区)では、2012年に新築移転して以来、地域の医療・介護関係者との連携づくりを進めてきました。

急性期病院との連携の成否は「実績が全て」と話すのは、院長の戸田爲久(とだ・いく)先生。

ベルピアノ病院では、連携の成功に不可欠となる、円滑な入退院調整が実現しつつあります。

成功のポイントは、グループ内でばらばらに運営されていた関連部署を新築移転に併せて集約し、顔の見える関係づくりを進めたこと。

地域連携・在宅療養支援センター部長の村上佳代さんは、この成功がもたらす更なる効果として、部署をまたぐ信頼関係やスタッフのモチベーションの向上につながっているとみています。

お2人に、入退院調整を成功させる組織づくりのポイントについて伺いました。

1. 新築移転後の戦略

1. 新築移転後の戦略01──ベルピアノ病院(堺市西区)が旧愛風病院(堺市中区)から新築移転したのは、地域医療構想をめぐる国の議論が始まった時期と前後します。新築移転はそれを見越した戦略だったのでしょうか。

戸田先生 必ずしもそうではありません。前身の愛風病院は医療療養病床のみの病院でしたが、2012年の新築移転が決まると、引き続き医療療養病床単独でいくべきか、コンセプトの検証が課題になりました。ただ、それは地域医療構想を見据えた戦略というよりも、主に他院との差別化の観点からでした。

堺市には、1,000床クラスの大規模な慢性期病院が複数あり、ただでさえ療養病床が過剰な地域です。そうした病院と同じことをしても埋没するだけだという危機感が強かったのです。それもあって現在は、回復期リハビリ病棟と地域包括ケア病棟を1病棟(いずれも48床)ずつ、医療療養病棟を2病棟(96床)整備し、入院患者さんの在宅復帰を目指すスタンスも前面に打ち出しました。

──病棟構成はどのタイミングで判断されたのですか。

戸田先生 もともとは回復期リハビリ病棟1病棟、医療療養病棟3病棟でスタートしました。法人内には、高度急性期・急性期を担うベルランド総合病院と亜急性期・回復期・長期療養を担う当院がありますが、急性期病院と連携していると、医療療養病棟では比較的元気な患者さんがどうしても増えます。それによって医療区分2・3の割合が80%を割り込むと、療養病棟入院基本料1から、点数の低い入院基本料2に切り替えなくてはなりません。そうした状況への対応策を検討しているタイミングで2014年度の診療報酬改定があり、地域包括ケア病棟入院料が新設されたので、医療療養病棟の1病棟をそちらに移行させました。もしも医療療養病棟のみだったら、かなり苦しかったでしょう。

──法人内の紹介患者さんだけでなく、法人外の医療機関や介護施設との連携は新築移転以来、どのように築き上げてきたのでしょうか。

戸田先生 当院は法人外の医療機関とは2キロメートル以上隔たっており、移転によって行政区も変わるだけに、新築移転は非常に難しい決断でした。決断の大きなきっかけの一つになったのは、オープン初年度に厚生労働省の在宅医療連携拠点事業を受託したことです。それを通じて地域の医師会や職能団体との連携が進みました。そのおかげもあり、現在では法人外との連携も順調に進んでいます。

──法人外の急性期病院からの紹介患者さんはどのようにして増えたのでしょうか。

戸田先生 リハビリテーションが必要な退院患者さんをお引き受けし、日常生活動作(ADL)を回復させて地域にお返しする。法人外の急性期病院との連携では、そうした実績を積み上げて信頼を勝ち取れるかどうかが全てです。

──法人外からの転院患者さんは現在、どの程度いらっしゃるのでしょうか。

戸田先生 詳しい推移は把握していませんが、当初は法人内からの紹介がほとんどでした。ただ、超急性期をカバーする同じ法人のベルランド総合病院の新規入院は1カ月当たり1,000件強で、転院するのはそのうち1割前後。一方、当院の医療療養病棟の平均在院日数は70~80日で、全国水準に比べて回転がはるかに速い。病床利用率を維持するには新規入院が月80~100件は必要で、ベルランド総合病院からの転院だけでは埋まりません。法人外との連携を働きかけた最大の理由は地域の多様なニーズに応えることで、そうした判断があったのも確かです。現在、回復期リハビリテーション病棟では法人外からの転院患者さんがやや多く5割強、地域包括ケア病棟では3割強で、医療療養病棟では診療所や、介護施設などからの紹介もかなりあります(図1)。

図1 入院元の割合(2019年2~4月 n=274)

1. 新築移転後の戦略02

(資料:ベルピアノ病院 戸田 爲久 先生ご提供)

──大阪府の地域医療構想によると、「堺市構想区域」では高度急性期、急性期、回復期、慢性期機能を合わせた病床がこのままでは2025年に不足する見通しですが、生長会の戦略としてどのようにお考えでしょうか。

戸田先生 ベルランド総合病院が高度急性期と急性期機能に対応するのに対し、当院では回復期から慢性期機能を引き続きカバーします。地域医療構想での機能別にみた状況としては、急性期機能の病床は現時点で2025年の必要病床数と同程度です(表1)。一方、慢性期病床は過剰、回復期病床が大幅な不足となっています。したがって、これから慢性期機能から回復期機能へのシフトが進むでしょう。いずれは新規参入組との差別化が再び課題になると思います。ただ、2025年頃、近畿大学医学部附属病院が狭山市より堺市に移転する計画があり、その後は医療提供状況が一変するはずです。当院はその受け皿としての機能を担うことができ、それまでを乗り切れば経営の安定化を見込めると思います。

表1 堺市構想区域の2017年の病床機能報告と2025年の必要病床数の比較

1. 新築移転後の戦略03

病床機能報告は、2018年6月15日集計の段階(休棟・無回答223床を含み、未報告・記載不備は含まず)

(出典:大阪府地域医療構想などを基に作成)

2. 入院患者さんを円滑に受け入れるための工夫

──3種類の病棟はどのように使い分けているのでしょうか。

戸田先生 入院の受け入れは、「入院患者さんのトリアージ」という形で、看護師、社会福祉士、事務職員1人ずつが配置された「入退院支援室」で一元管理しています。

村上さん 入院の受け入れについては、大きく2つのポイントがあります。一つは、当院での受け入れの可否判断です。患者さんの受け入れ要請があると、入退院支援室やリハビリスタッフが依頼元の病院や施設へ出向き、どの病棟で受け入れるべき方か、身体や認知機能はどの程度かなどを確認し、受け入れの可否を含め判断します。もう一つは、権限の委譲です。受け入れの可否判断の全てを医師に委ねてしまうと業務がパンクしてしまうので、最終確認のみ、院長が行っています。このほかの業務でも、戸田先生は院長、あるいは医師という立場にこだわらず、現場を信頼してくださって、我々スタッフに可能な限り権限を委譲しながらも最終確認を適切にしてくださいます。それがあるから現場は安心できますし、責任感も芽生えます。院長や部長にもできないことはあります。そういうとき、「分からないから教えて」と部下の専門職に素直に甘える姿勢もリーダーには必要だと思います。

戸田先生 急性期病院で長年勤務してきて突然、慢性期病院の院長になったので、「さて何から手を付けるべきか」という段階からのスタートでした。院内の全ての業務をカバーするために自分一人でできることは限られるので、誰かに頼らざるを得ません。

さて、入退院支援室を設置したのは、退院を目指す上での課題を入院前から把握して円滑に支援を進めるためです。 患者さんの医学的な状態を確認するだけでなく、社会的な背景も含めてどれだけの情報を収集できるかがポイントです。この方法だと受け入れまでに時間はかかりますが、その後の経過が全く違います。患者さんを受け入れたものの、「こんなはずではなかった」となってしまうと患者さんにとっても病院にとっても望まない結果になってしまいますが、そうしたケースはまずありません。

──こうした受け入れ体制は2012年の新築移転当初から同様なのでしょうか。

戸田先生 当初は各病棟の担当者がそれぞれ受け入れの可否を判断していました。例えば回復期リハビリ病棟が受け入れを決めたものの条件に合わず結局転棟するということになってしまうと、いったん全てが振り出しに戻ってしまい無駄が多いのです。そうしたことから2015年頃、現在の形に切り替えました。

2. 入院患者さんを円滑に受け入れるための工夫01村上さん また、これは当院の特徴の一つでもありますが、MSWを病棟に配置しています。MSWはもともと院内の一室で業務を行っていましたが、現在は、回転の速い回復期リハビリ病棟と地域包括ケア病棟には2人ずつ、医療療養病棟2病棟では1人ずつの計6人が病棟に常駐し、退院支援看護師と協力して退院後のサービスを調整しています。

──そうした組織変更はすぐに受け入れられましたか。

戸田先生 スムーズに動き出すまで1年近くかかりました。退院支援の一室内で仕事をすることに慣れていたMSWが突然、「全員病棟に出ろ」などと言われたら当然でしょう。さぞ心細かっただろうと思います。しかし実際に動き始めてみると、この形の方がむしろ効率的なようです。ご家族への説明や相談が必要な場面でも、お見舞いに来られたときにすぐ声をかけられます。退院時の家族説明のためにあらためて足を運んでいただくのと比較すると、スピード感も高まり、双方の満足度も変わってきます。

村上さん 今では各病棟の看護師たちも、それぞれ「うちのMSW」という感覚でいるようですし、MSWからも「自分の病棟の患者さんを困らせない」という責任感が伝わってきます。

──スムーズに動き出すまで1年近くかかったということは、抵抗もあったのですね。

戸田先生 「無理だ」と言われたこともありましたが、MSWが病棟で勤務してくれるようになったらどれほどのメリットを見込めるか、懇々と伝えました。そうした働きかけで大きな意識改革に協力してもらうことができました。

3.地域連携・在宅療養支援センターの取り組み

──入退院支援室からつながる、退院後を支援する「地域連携・在宅療養支援センター」はどのような体制ですか。

村上さん 訪問看護師17人、ケアマネージャー10人、ホームヘルパー8人、訪問リハビリ4人、事務部門2人など計40人超の体制です。ケアマネージャーは、患者さんの入院後すぐにケアプランを立て始め、退院後の生活環境の整備を進めます。訪問看護が必要であれば、入院中と退院後にそれぞれどこまで指導をするのか、病棟看護師と訪問看護師が調整します。

戸田先生 入院期間はどの程度でどこへの退院を目指すのかなど、退院後を見越した患者さんごとのプランを、病棟と在宅部門がカンファレンスを繰り返しながら明確にしていきます。在宅復帰のために綿密な調整が不可欠な患者さんが多い上、地域包括ケア病棟の入院期間は最長でも60日です。病棟と在宅部門が入院早期からこうして密に連携して調整しなければ到底間に合わないのです。

──例えば、在宅復帰した患者さんの服薬コンプライアンス維持のためにどのような支援をされているのでしょうか。

戸田先生 大部分の患者さんの場合はかかりつけ医に委ねていますが、服薬や食事をご自分で管理するのが難しい患者さんには、訪問薬剤師が在宅訪問薬剤管理指導を行うなどの体制を整えています。在宅訪問薬剤管理指導を行う病院は全国的に見ても多くありません。当院では専従に近い形で対応していますが、各薬剤師は在宅支援という分野にやりがいを見いだしているようで非常に熱心に取り組んでくれています。また、先輩薬剤師のそうした姿を見て手を挙げる若手もいて、次世代も育ちつつあります。「在宅復帰した患者さんを支えるには薬剤師の訪問指導が必要」という認識が、そのうち当たり前になるだろうと思います。

村上さん 患者さんの在宅復帰率は回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟ではおおむね8割超で推移し、医療療養病棟でも上昇傾向にあります(図2)。患者さんの受け入れを入退院支援室が一括管理し、入院中には病棟のMSWらが早期退院の環境を整え、地域連携・在宅療養支援センターが退院後をフォローする形だからこそ退院調整をスムーズに進められ、この数字を維持できているのだと思います。

図2 各病棟の在宅復帰率の推移

3.地域連携・在宅療養支援センターの取り組み01

(資料:ベルピアノ病院 戸田 爲久 先生ご提供)

戸田先生 法人内の複合施設「ベルアンサンブル」では、特別養護老人ホームやサービス付き高齢者住宅、地域連携・在宅療養支援センターなどが有機的に連携し、ベルピアノ病院はそれらの基幹施設という位置付けです。これらは当初、別々に整備されましたが、ベルピアノ病院の新築移転を機にこの場所へ集約しました。勤務場所が異なると動きはばらばらで、同じ法人内でも顔の見える関係をつくるのは難しい。事業所を一カ所に集めたのは、そうした非効率を解消し、資源を有効活用するためでした。グループ内の社会福祉法人とばらばらで運営していた各事業所を社会医療法人生長会の運営に一本化するなど手続きが大変でしたが、相談相手がすぐそばにいると非常に効率的です。

4. 地域全体に連携を広げるための工夫

4. 地域全体に連携を広げるための工夫01──村上部長は、「大阪連携たこやきの会」の運営委員でもあると伺っています。

村上さん この会は、大阪市の北野病院による働きかけで2008年に立ち上がりました。現在は年に3回勉強会を開き、医療・介護・福祉現場の担当者たちが連携のノウハウを共有しています。製薬会社や行政の担当者が参加することもあり毎回200人ほどが参加します。正式名称は「大阪地域医療連携合同協議会」ですが、いろいろな立場の人たちがきれいな丸のように連携できるようにと、「大阪連携たこやきの会」の通称を使っています。

こうした取り組みでは、医師をいかに巻き込むかが全国共通の課題です。そこで、大阪府医師会に相談すると、東成区医師会長の先生(当時)が、「大阪連携たこやきの会」の会長も快く引き受けてくださり、医師会を通じて医師との距離が一気に縮まりました。勉強会は、年3回のうち1回は医師にも身近なテーマを扱い大阪府医師会館で開いています。それもあって最近では、特に開業医の先生方の参加が増えています。

──そうして病院と地域の関係が広がっていくわけですね。

村上さん そうです。十分なサービスを受けられずにお困りの患者さんを地域全体でフォローするには、他施設の連携実務担当者と一人でも多く知り合うことがカギです。もちろん、そこにとどまるのではなく、横のつながりを強くすることが重要です。幸い、同じ役割同士が共通言語で実務の苦労を共有したりすることで自然に関係性は強くなっています。「顔の見える連携」のみならず「気心の知れた仲間づくり」による関係づくりができていれば、ほかの医療機関に患者さんを紹介する場面で、ただ「(紹介先の)連携室をお訪ねください」と言うだけでなく、「連携室の〇〇さんを」といったように担当者の名前まで伝えられます。そうすると情報の連携が途切れませんし、患者さんや紹介先との信頼も深まると感じています。

──急性期病院との連携では実績が全てだというお話がありましたが、連携のきっかけをつくるこうした取り組みも大切ですね。

戸田先生 わたしたちの場合は、職種ごとの横のつながりをきっかけに連携が始まり、診療実績を積み上げるうちに地域からの信頼を得ていると実感しています。患者さんの受け入れ先がたまたま当院、ではなく、「ベルピアノ病院に」といった直接の依頼や「難しい患者さんはベルピアノ病院に」という依頼までもが増えていると感じます。地域との関係づくりはもちろん、治療実績や円滑な退院調整を含めて全てが必要でしょう。

4. 地域全体に連携を広げるための工夫02

取材の裏話・・・

取材の裏話・・・01

インタビュアー:大阪府の地域医療構想によると、堺市内の75歳以上の人口は、2010年から2025年にかけて倍増します。現場では、高齢化が進んでいることを実感していますか。

取材の裏話・・・02

戸田先生:慢性期病院はもちろん、急性期病院の入院患者さんも70、80歳代が中心というのが現実です。

取材の裏話・・・03

村上さん:堺市内には、1960年代に開発が始まった泉北ニュータウンがあります。 かつてこの地域の経済を支えた世代のベッドタウンでしたが、今では子どもたちが独立し、お年寄りの独居世帯や老老世帯がどんどん増えています。泉北ニュータウンのお膝元にあるベルランド総合病院では、そのあおりもあって入院患者さんの高齢化が進んでいます。マンションの階段を上ることすらままならず、治療を終えても住み慣れたマンションに帰れない患者さんをどう支援するかが課題です。

取材の裏話・・・04

インタビュアー:階段を上れなくなるというのは、若いときには想像しづらいことですが、現実にはそういうことが在宅復帰のハードルになるのですね。

取材の裏話・・・05

村上さん:飛び石の向こう側にある扉へ行き着けなかったり、ちょっとした段差があるから帰れなかったり、車いすが廊下を通らなかったり。家屋の問題は、患者さんの在宅復帰を阻む非常に大きな要素だと思います。

取材の裏話・・・06

戸田先生:治療が終わっても、いろいろな問題があってそう簡単には在宅復帰できません。そのため、退院後の在宅サービスの調整や、ADLを回復させる良質なリハビリの提供が一層重要になります。急性期病院ではそうしたことにまで対応する時間はないので、わたしたちがそれをお引き受けしている側面もあると思います。
  (2019年6月18日のインタビューより)

【解説】入院時支援加算、課題は人材確保

―厚生労働省 中医協の議論などをもとに㈱医薬情報ネットが作成―

病気になって入院しても、住み慣れた地域で引き続き生活できるように医療機関が入院早期から支援を進めるため、国が診療報酬改定で後押ししています。2018年度診療報酬改定では、それまでの「退院支援加算」の名称を「入退院支援加算」に変更し、入院生活のオリエンテーションなどを入院前に外来で行うことで算定できる「入院時支援加算」をつくるなど評価を充実させました。

2018年度診療報酬改定の影響を調べるため、中央社会保険医療協議会(中医協)の「入院医療等の調査・評価分科会」が同年度に行った調査では、入院時支援加算は急性期一般入院料1の病棟が特に積極的に届け出ていて、それによって、入院生活の説明などに伴う病棟業務の負担減につながっていることが分かりました。ただ、この加算の届け出に必要な専従看護師などの配置が困難な病院が多いことも分かっており、人材の確保が課題です。2020年度診療報酬改定での対応を中医協で引き続き話し合います。

厚生労働省では、入院生活のオリエンテーション、入院前に利用している介護サービスや服薬状況などの確認を入院前に外来で行い、退院に向けた調整を入院後すぐに始められるようにしたい考えです(図)。そこで、入退院支援加算と入院時支援加算で医療機関の対応を後押しします。

入退院支援加算のうち加算1は、一般病棟入院基本料なら600点、療養病棟入院基本料なら1,200点(いずれも退院時)と手厚い設定です。ただ、算定要件として、家族や同居者から虐待を受けている(疑いを含む)、生活困窮者に該当するなど「退院困難な要因」がある患者さんを原則として入院後3日以内に見つけ出したり、医療機関や介護保険の居宅サービス事業者など20カ所以上と連携したりしなければならないなど、高いハードルが設定されています。

一方、入院時支援加算は、自宅などからの予定入院の患者さんを対象に、身体的・社会的・精神的な背景を含む「患者情報」の把握や入院生活の説明などを行うことで200点(退院時)を算定できます。

図 入院前からの支援の機能強化(イメージ)

【解説】入院時支援加算、課題は人材確保

(出典:厚生労働省 2018年度診療報酬改定説明会(2018年3月5日開催)資料)

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