組織的なレジリエンスの取り組み

サイトへ公開: 2024年02月28日 (水)
これまでの「COREフレームワーク」の内容は個人での実践が基本でしたが、ここでは組織としてできるレジリエンスの取り組みについて紹介します。

By: Katya Fernandez, Ph.D., Cathleen Clerkin, Ph.D., and
Marian N. Ruderman, Ph.D.

Center for Creative Leadership(以下、CCL)は、リーダーシップに関する理解と実践、発展を促進するために1970年に設立された、米国に拠点を置く非営利組織です。CCLはリーダーシップ開発に必要なサポートをさまざまな業界に提供しており、リーダーシップ研究の世界的なパイオニアとして知られています。このシリーズでは、CCLの研究活動を通じて得られたインサイトから、不確実さや複雑さを増している中でリーダーがレジリエンスを構築すべき重要性と、レジリエンスを構築するうえで有用な「COREフレームワーク」のコンテンツを翻訳してご紹介します。

組織的なレジリエンスの取り組み

われわれCCLが作成したCOREフレームワークの大部分は、個人のレジリエンスを高めるための実践方法に焦点を当てていますが、組織レベルでレジリエンスを強化する方法もあります。具体的には、組織がリーダーに与える潜在的な影響力をレジリエンス強化に活用するもので、個人レベルでも組織レベルでもとても有用なものです。

企業生産性研究所(Institute for Corporate Productivity:i4cp)は、企業によるレジリエンス強化プログラムへの投資が、組織のパフォーマンスにもたらすメリットについて調査を行っています(i4cp, 2020)。その結果、パフォーマンスの高い組織はパフォーマンスの低い組織とさまざまな点で差別化されており、その一つが従業員のウェルビーイングに対して総合的にアプローチしていることでした。具体的には、パフォーマンスの高い組織では、パフォーマンスの低い組織の4倍、ウェルビーイングに対して総合的にアプローチしていました。

また、レジリエンスの高い人と低い人を比較した別の研究では、レジリエンスの高い人のほうが「変化への対処に長けている」と他者から見られていることがわかっています(Tracom, 2018)。例えば、レジリエンスの高い人は変化の際に、他者にポジティブな影響を与える、変化を起こすことに前向きである、良い企業文化を構築する、適切な行動を起こす、ストレスの多い状況にも左右されない、ストレスの多い時期にも仕事に集中し続けられる可能性が高いことが示されています。

多くの組織でウェルネスプログラム(身体活動を高めるためのプログラムなど)の導入が始まっていますが、ほとんどの組織ではそのプログラムがレジリエンス強化を目的としたプログラムではなかったり、プログラムやアプローチに多様性が考慮されていないため、従業員のストレスやバーンアウト(燃え尽き症候群)に対して効果的に対処するための支援は最小限にとどまっているのが実情です。

組織が従業員のレジリエンス強化をサポートする方法:

  • リーダーがレジリエンス強化に取り組むための教育的な介入を行う(例:レジリエンスの心理教育を従業員の能力開発プログラムやマインドフルネス研修プログラムに組み込む)
  • 組織内のプロセスや、ポリシー、規範を再検討する(例:従業員が勤務時間をより自由にコントロールできるようにする)
  • 組織内コミュニティをつくる(例:ハイキングなどの身体活動を中心としたコミュニティグループをつくる)

また、リーダーは他の従業員のロールモデルとなることで、レジリエンス強化の実行とサポートをすることもできます。例えば、各ミーティングの冒頭で参加者全員の貢献に感謝する時間をもったり、電子メールの返信は時間外や夜間に送信するのではなく、次の出勤日まで待つよう促したりすることなどです。

まとめとして、組織においてレジリエンスの強化を推進することは、より人中心の企業風土を醸成し、結果、従業員のエンゲージメントを高め、心理的安全性を向上させ、職場のエネルギーレベルを改善し、欠勤率を低下させるなど、大きなプラスをもたらす可能性があります。

Originally published by the Center for Creative Leadership in “Building Leadership Resilience: The CORE Framework” 
http://cclinnovation.org/wp-content/uploads/2020/12/researchinsights_1220_rev1.pdf

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