循環器病対策に係るこれまでの取り組みと課題

サイトへ公開: 2023年01月30日 (月)
循環器病対策に係る国のこれまでの取り組みと課題についてご紹介いたします。

循環器病対策に係る国のこれまでの取り組みと課題1)

循環器病は、患者さんごとの特徴に応じて多様な対策を講じる必要性が高い疾患です。これまでも国は、循環器病に係る予防、医療および福祉に係るサービスにおいて、幅広い対策を進めてきました。
これまでの国の取り組みとしては下記のようなものがあげられます。

  • 重症や重篤な救急患者さんを24時間受け入れられる体制の確保、円滑な受入れの推進などの整備
  • 高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを最後まで続けられるよう、医療、介護、予防、住まいおよび生活支援が提供される体制(地域包括ケアシステム)の構築
  • 循環器病の患者さんが地域で安心して暮らせるよう、就労を支援
  • 厚生労働省、文部科学省および経済産業省が連携し、循環器病の病態解明や個人の発症リスクの評価、新たな予防法、診断技術、治療法の開発などを研究

このような取り組みを進める中で健康寿命は着実に延伸し、平成28(2016)年においては、男性72.14年、女性74.79年と、平成22(2010)年と比較して、男性1.72年、女性1.17年増加しました。これは、同期間の平均寿命の延び分を上回る健康寿命の延伸であり、健康寿命の地域間格差も縮小しています。しかし、2016年の平均寿命と健康寿命の差は、男性8.84年、女性12.35年と依然乖離があり、この差の縮小に向けたさらなる取り組みが望まれています。この詳細は、「循環器病対策推進基本計画とは」を参照ください。

健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(以下、基本法)の成立に先立って立ち上げられたワーキンググループでも、国民の健康寿命の延伸等を図るために必要な、脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方について、それぞれ専門的な議論が行われました。ここでは検討会であげられた、脳卒中、および心血管疾患の急性期および回復期~維持期の診療提供体制の在り方についての現状と課題についてまとめましたので、を参照ください。2)

こうした国の取り組みやワーキンググループでの議論などを背景に、基本法は成立しました。先述しました健康寿命を3年延伸するという目標、そして脳血管疾患および心血管疾患の死亡率を減少させるという2つの目標を達成すべく、基本法の基本理念には以下の3つの項目が設定され、国の循環器病対策の方向性が示されています3)
①    循環器病の予防および発症した疑いがある場合の迅速かつ適切な対応について、国民の理解と関心を深めるようにする
②    循環器病患者の搬送および医療機関による受入れの迅速かつ適切な実施から、リハビリテーション、後遺症を有する方への福祉サービスまで、保健、医療および福祉に係るサービスの提供を居住する地域にかかわらず等しく、継続的かつ総合的に行われるようにする
③    循環器病の予防、診断、治療、リハビリテーション等に係る技術の向上その他の研究等の成果を普及し、その成果に関する情報を提供する

また、基本理念達成のために策定された、循環器病対策推進基本計画の中で、国は循環器病対策の今後の課題として下記をあげています1)

  • 救急現場から医療機関へ迅速かつ適切に搬送できる体制の構築
  • 再発予防や重症化予防を繰り返し行う対策
  • 国民一人ひとりの、循環器病の発症を促進する危険因子の理解、生活習慣の改善と基礎疾患の重症化予防
  • 健康寿命を延伸し平均寿命との差の短縮
  • 疾病の原因に基づく治療法、また、より低侵襲で有効な診断法・治療法の開発および活用
  • 循環器病の現状の可視化、循環器病対策の評価および検証、新たな課題の抽出

表 検討会であげられた、脳卒中および心血管疾患の診療提供体制の在り方と課題

 表 検討会であげられた、脳卒中および心血管疾患の診療提供体制の在り方と課題

  1. 厚生労働省. 循環器病対策推進基本計画(令和2年10月). https://www.mhlw.go.jp/content/000688359.pdf
  2. 脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会. 脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方について(平成29年7月). https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000173149.pdf
  3. 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法. https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80ab6708&dataType=0&pageNo=1
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