心不全の自覚症状や体重変化を点数化して共有 医療と介護を橋渡しする2つのツール | インタビュー企画

サイトへ公開: 2020年06月25日 (木)
独自のツールを用いて、心不全による入院期間短縮や急性増悪の早期発見に役立てている北野病院の医療・介護連携を進め、心不全患者を地域全体でサポートする事例をご紹介。

2019年4月

独自のツールを用いて、心不全による入院期間短縮や急性増悪の早期発見に役立てている北野病院。医療・介護連携を進め、心不全患者を地域全体で継続サポートする同院の事例をご紹介します。

公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 循環器内科主任部長 猪子 森明先生(左)
循環器内科副部長 中根 英策先生(中)
慢性心不全看護認定看護師 金川 久美子さん(右)

公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院 循環器内科主任部長 猪子 森明先生(左) 循環器内科副部長 中根 英策先生(中) 慢性心不全看護認定看護師 金川 久美子さん(右)

心不全の患者さんを地域全体で継続的にサポートするための体制整備が、大阪市内で進んでいます。
急性期/回復期病院、開業医、訪問看護ステーション、介護事業所などを巻き込んだ連携のなかで、医療と介護の“共通言語”として一役買っているのが、医療・介護関係者とともに患者さん自身が自宅、病棟、外来などで活用する「ハートノート」と「心不全ポイント自己管理用紙」の2つのツールです。
体重の急激な増加や自覚症状の有無などを点数(心不全ポイント)に置き換え、合計点数が3点以上になったら医療機関への受診を促す仕組みで、これが慢性心不全の急性増悪の早期発見や医療・介護関係者による対応の標準化に効果を上げています。
急速な高齢化に伴う心不全の急増への対応について、2つのツールのベースをつくった北野病院の中根英策先生は、「地域全体で心不全に対応する」という雰囲気をつくれるかどうかがポイントだとみています。

この記事のキーワード

心不全/チーム医療/地域連携パス/医療・介護連携/医療の標準化

目次

1. 心不全による入院期間を短縮させる2つの対応
2. 患者教育を始めるタイミング
3. 心不全の地域連携パスを導入するまでの経緯
4. 「ハートノート」と「心不全ポイント自己管理用紙」の活用方法
5. これまでの取り組みによる再入院予防への効果
6. 取材の裏話…
7. 【解説】脳卒中・循環器病対策基本法が成立、発症予防や早期対応など推進へ

1.心不全による入院期間を短縮させる2つの対応

──大阪府の地域医療構想によると、「大阪市医療圏」での高齢化率は2025年に28.4%まで上昇する見込みです。高齢化に伴い心不全患者さんも今後、増加しそうです。

猪子 森明先生

猪子先生 高度急性期病院としての北野病院の役割は、手術など高度医療への対応が中心です。
その観点から当院では、血管造影室の増築やハイブリッド型の手術室の整備など、診療機能をさらに向上させる計画です。一方、心不全の領域では最近、不整脈の治療をどう取り入れるかというテーマが特に重視されています。頻脈誘発性心筋症では心房細動の治療により心機能が著しく改善することが分かっており、新たな知見をもとに治療法を模索していく必要もあるでしょう。そうした高度な医療体制を整備すると同時に、循環器医として、身体機能が低下して寝たきりにならないよう心不全の患者さんを今後も支えていきたいと思います。

──入院期間が長くなりがちな心不全の患者さんをカバーするに当たって、高度急性期病院だからこその難しさがあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

猪子先生 それはあります。しかし、複数の疾患を抱える高齢の心不全の患者さんが増えている状況下で急性期病院は、そういった地域の医療ニーズにまず応えなくてはなりません。
心不全に長期入院が多い理由としては、「長期の安静による筋力低下」「嚥下機能低下による誤嚥性肺炎」「認知症の進行」などが挙げられます。実際、手厚い治療を受けて心不全の症状が改善しても、全身状態がむしろ悪化して退院が困難になるケースをたくさん経験してきました。
そのため現在では、入院期間を短縮させるための手立てを講じています。一つは、入院早期から集中的に処置を行うこと。その一環で、早期の離床を目指す「離床リハビリテーション」を、原則として入院当日に始めます。もう一つは、患者さんの退院後にご家族を含めてサポートするための体制づくりで、これも入院早期に検討を始めます。毎週月曜日には心不全チームのカンファレンスを開き、患者さんが普段、どのように暮らしているのかなどの情報を多職種で共有して有効な対策を検討しています。
当院では2014年ごろは、「患者さんが増えて病棟が回らない」と頭を悩ませていましたが、現在、心不全による入院の平均在院日数は15日前後まで短縮しています。それによって入院中の身体機能の低下も最小限に抑えられるようになりました。将来的には、退院患者さんを引き受けていただく病院とも早期退院のノウハウを共有したいと考えています。

──毎週のカンファレンスにはどのような職種が参加しているのでしょうか。

猪子先生 循環器内科や心臓外科の医師、看護師、薬剤師、管理栄養士ら院内の心不全チームのメンバーのほか、社会福祉士などです。カンファレンスでは、入院中の治療方針だけでなく、退院後に必要な介護保険サービスの内容や、退院後のフォロー先の医療機関なども話し合います。

2.患者教育を始めるタイミング

──貴院では現在、心不全の入院患者さんは何名くらいいらっしゃるのでしょうか。

中根 英策先生

中根先生 年に大体200名余ですが、最近、特に増えているのが高齢者の新規入院です。以前は70歳代がメインという印象でしたが、今では80歳代後半から90歳代が中心で、100歳を超える患者さんも数名いらっしゃいます。
金川さん 80歳代後半から90歳代ぐらいまでの患者さんが増えると、再入院を防ぐための生活習慣の改善を、この年代から始めることの難しさを感じます。
中根先生 しかもここ大阪府では、2016年から25年までの10年間で75歳以上の人口が1.4倍以上に増えるといわれています。高齢の心不全患者さんも急増することが予想されるため、医療現場では、それに対応するための体制整備を今から進めなくてはなりません。

──入院中の患者教育ではどのようなことを指導するのでしょうか。

金川さん 心不全の患者さん全員を対象に「ハートノート」と「心不全ポイント自己管理用紙」を使った介入を入院当日から始めます。「ハートノート」は、心不全という疾患に関する基本的な事柄から自己管理の方法、退院後の生活の留意点まで、患者さんやご家族、医療・介護関係者向けにまとめたものです(図1)。そして「心不全ポイント自己管理用紙」には、体重の変化や自覚症状の有無などを患者さんに原則として毎日記録していただきます(図2)。患者さんが入院すると、家族構成や普段の生活の様子なども確認し、退院後に記録を付けられるかどうかを翌日には判断します。ご本人による対応が難しいケースでは、ご家族など協力いただける方に指導を行います。

図1 「ハートノート」(抜粋)

図1 「ハートノート」(抜粋)

(資料:北野病院 中根 英策 先生 ご提供)

図2 「心不全ポイント自己管理用紙」(抜粋)

図2 「心不全ポイント自己管理用紙」(抜粋)図2 「心不全ポイント自己管理用紙」(抜粋)

(資料:北野病院 中根 英策 先生 ご提供)

──入院翌日には退院後を想定して動き出すわけですね。

金川 久美子さん

金川さん はい。心不全での入院期間は長くても15日前後なので、十分に時間があるとはいえません。ですから、できる限り早めの対応を心がけています。一方で、80歳代の患者さんに毎日記録を付けてもらうよう指導するのは難しく、そこが課題だと思います。

中根先生 心不全では、患者さんご自身による体調の管理が非常に大切です。そのため診療所の先生にご紹介した後も患者さんには半年ごとに当院を受診していただき、しっかり記録できているかを確認します。大阪市内で運用している心不全の地域連携パスにもそのプロセスを組み込んで、診療所の先生方にも定期受診を呼びかけていただいています。

3.心不全の地域連携パスを導入するまでの経緯

──心不全の地域連携パスはいつごろ運用が始まったのでしょうか。

中根先生 2016年に導入しました。2019年3月現在、当院や大阪市立総合医療センターなど急性期の7病院を中心に運用しており、今後は回復期病院や慢性期病院、介護施設などにまで、連携の裾野を広げたいと思っています。そこで2017年には「大阪心不全地域医療連携の会」を立ち上げ、半年ごとに勉強会を開いています。東京や愛知など遠方から参加される方もいて、2019年2月の勉強会には230名ほどが参加しました。

──連携の会を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか。

中根先生 地域連携パスの導入を含め、心不全への対応を地域全体で標準化すべきだという実地医家からの呼びかけがきっかけでした。大阪市には、北区だけでも基幹病院が複数あり、患者教育や退院後のフォローの仕方、それらに用いる書類の様式など全てがばらばらでした。心不全以外の疾患にもそれぞれ地域連携パスなど統一のフォーマットがあるので、退院後の患者さんをフォローする診療所の先生方からすると、施設別、疾患別のパスにそれぞれ対応しなくてはならず、非常に煩雑です。
そこで、市立総合医療センターと共通のツール(「ハートノート」「心不全ポイント自己管理用紙」「地域連携パス」)を使って運用することにしました。心不全悪化を早期に発見して再入院を防ぐことがこれらツールの最大の目的ですが、患者さんだけでなく、これらを地域の医療・介護関係者で共有すれば心不全への対応が標準化できます。

──「ハートノート」や「心不全ポイント自己管理用紙」の特徴はどのような点でしょうか。

中根先生 点数化による急性増悪リスクの見える化です。われわれも点数を心不全ポイントと呼んでいます。例えば「むくみがある」「食欲がない」などの自覚症状があるならいくつあっても心不全ポイント1点、退院時から体重が一定以上増減したら3点、1分間の脈拍が120回を超えたら4点、横になれないほどの息苦しさがあるなら5点と評価します。自己評価の合計点数が5点以上ならすぐに医療機関を受診してもらい、4点なら当日か翌日の受診を、3点なら1週間以内の受診を呼びかけます(図3)。

図3 心不全ポイントの設定

図3 心不全ポイントの設定

(資料:北野病院 中根 英策 先生 ご提供)

医療連携や、医療と介護の連携を進めるうえでも心不全ポイントによる運用は有効です。心不全は数日で悪化するにもかかわらず、退院した患者さんが医師の外来診療を受けるのは通常1~2カ月に一回程度です。そのため医師が心不全の増悪を早期に見つけることが難しい状況にあります。しかし、患者さんと接する機会が多い訪問看護師や、ホームヘルパーなどの介護関係者が心不全ポイントを使って対応してくれれば早期発見を期待できます。

4.「ハートノート」と「心不全ポイント自己管理用紙」の活用方法

中根先生 ただ、ホームヘルパーの方々は、患者さんの異常に気付いても病院に直接連絡してくださることはまれで、訪問看護ステーションやケアマネージャーを経由するケースが大半です。その場合に怖いのは、例えば「息苦しい」という症状を言葉でやり取りするうちに伝言ゲームのように途中で意味が変わり、わたしたちに正確に伝わらない可能性があることです。しかし、実際に目にした症状を客観的な点数(心不全ポイント)に置き換え共通言語化すれば、施設をまたいで多職種がやりとりしても情報が変化することを防げるでしょう。もちろん、こうした仕組みをうまく運用するには関係者への教育が不可欠です。心不全ポイント5点以上ならすぐに医療機関を受診してもらいますから、伝言ゲームにかかる時間の短縮にもつながるわけです。

──連携の会では、具体的にどのようなことを話し合うのでしょうか。

金川さん 薬剤師や理学療法士、管理栄養士、介護関係者などにも「ハートノート」や「心不全ポイント自己管理用紙」を患者教育に活用してもらえるように、わたしたちが実際にこれらをどう使っているのかを紹介しています。

中根先生 地域連携パスへの参加を促すため、勉強会は急性期や回復期などの病院向けと、地域の実地医家や訪問看護師、介護関係者向けにそれぞれ開いています。前者では、心不全への対応で苦労している点や、逆にうまくいっているポイントを参加者に報告してもらい、もしも改善が必要なら、ほかの病院のノウハウを提供したり具体策をアドバイスしたりします。後者では、「ハートノート」や「心不全ポイント自己管理用紙」を活用した連携の概要を説明し、どのような場合に病院へ連絡する必要があるのかなどをグループに分かれて話し合っていただきます。

──地域連携パスに参加していない医療機関の関係者も連携の会に参加するのですね。

中根先生 そうです。まずは勉強会で地域連携パスのスキームを理解していただきます。地域連携パスへの参加に前向きな医療機関には、こちらから出かけていってさらに詳しい内容を説明し、新規参加を呼びかけます。現在、参加準備中の医療機関も幾つかあります。

──そのなかには、回復期の病院も含まれるのでしょうか。

中根先生 実は、心不全のリハビリを行うための施設基準をクリアした回復期の病院がこの地域には少ないです。そのため、開業医の先生方に退院後のフォローをお願いすることがほとんどです(図4)。

図4 心不全ポイントによる地域・病診連携

図4 心不全ポイントによる地域・病診連携

(資料:北野病院 中根 英策 先生 ご提供)

──だからこそ、心不全増悪の早期発見を促す取り組みが必要になるのですね。

中根先生 そうです。早めに受診していただければ水分の貯留もそれほど進みません。たとえ再入院しても円滑にリハビリを開始し、身体機能をほとんど低下させずに退院できるケースが多く、非常に有効だと感じています。

5.これまでの取り組みによる再入院予防への効果

──連携の会に参加された方の反応はいかがですか。

金川さん 「『ハートノート』を分けてほしい」と、ほかの医療機関の慢性心不全看護認定看護師たちによく頼まれます。全体的に文字が大きく、高齢者でも書き込みがしやすいようにスペースを多く取っているのが良いのかもしれません。また、点数で評価するという方法も好評のようです。心不全の増悪を防いだり早期発見したりするための、基本的な対応をまとめた使いやすいツールへの現場のニーズがかなりあると感じます。

──再入院する患者さんの割合はこれまでの取り組みでどのように変化していますか。

中根先生 最新のデータ解析を詰めている段階ですが、これらのツールを使って自己管理を行っている心不全の患者さんとそれ以外の患者さんの再入院率を比較すると、自己管理を行っている場合は再入院のリスクが40%程度に減少しています。自己管理をきちんと導入できれば再入院の予防につながることを示唆する結果だと思います。

──今後増えることが予想される心不全の患者さんに対応するための連携づくりには何が必要だとお感じでしょうか。

中根先生 診療報酬という経済的なインセンティブが付くのがベストですが、今は難しい。例えば地域連携パスへの実地医家の参加を促すには、まず基幹病院の参加数を増やすことです。また、医師会にも協力を仰ぐ必要があるでしょう。そして在宅を支える医療・介護施設との協力も不可欠です。いろいろな施設を巻き込んで、「地域全体で心不全に対応する」という雰囲気をつくることができれば状況はかなり変わるだろうと思います。

──心不全に対応するための連携体制を整備したくても、何から始めるべきか模索している医療関係者もいらっしゃると思います。最後に、そうした皆さんへのアドバイスをお願いします。

中根先生 やはりまずは教育だと思います。患者さんやご家族だけでなく、地域の医療・介護関係者も含めてです。それがなければ、どんなにいいツールをつくっても役に立たないでしょう。退院後の生活をサポートしてくださる人たちを患者さんごとに決めて、まず教育する。そこからスタートするのが良いと思います。

取材の裏話・・・

インタビュアーインタビュアー:「心不全ポイント自己管理用紙」に記録を続けるのは、患者さんにとってハードルが高そうです。
金川 久美子さん金川さん:確かにそうです。お年寄りだと、記録を付けること自体が重労働かもしれません。また、働き盛りの若い方では、仕事の合間に毎日記録を付けるのは難しいでしょう。そうしたケースでは、「何がなんでも毎日」ではなく、「隔日や隔週でもいいから」と記録の継続を呼びかけます。患者さんのライフスタイルに合ったやり方を退院までに一緒に考えるのがポイントだと思います。
中根 英策先生中根先生:日々の診療で強く感じるのは、体重の変化や自覚症状をきちんと記録し続けていただくには、心不全がどのような病気で、なぜ記録する必要があるのかを理解していただくのが不可欠だということです。患者さんは、「治療が終わったから完治した」と思われがちですが、心不全が完治することは実際にはなく、増悪して入院するたびに少しずつ悪化し、やがて終末期を迎えます。入院患者さんやご家族には、だからこそ自己管理をしっかり行って心不全の増悪を防ぎ、変化を早期発見する必要があると伝えます。
インタビュアーインタビュアー:「ハートノート」では、医療者だけではなく患者さん側が行うべきことも強調されていますね。
中根 英策先生中根先生:実は、心不全の再入院の半分程度は自己管理不足によるものだといわれています。われわれは必要な指導を患者さんに行いますが、再入院を防げるかどうかは結局、患者さんがそれをきちん守ってくれるかどうかだということです。これは、心不全という疾患の大きな特徴でしょう。
インタビュアーインタビュアー:心不全は治らない病気だということも患者さんには伝えているのでしょうか。
金川 久美子さん金川さん:基本的に伝えるようにしています。
中根 英策先生中根先生:わたしが、患者さんに伝えることを連携の会に提案した際、「それは言い過ぎだろう」という意見が挙がりました。患者さんにとって確かにショックなことだと思いますが、そのことを自覚して心不全に向き合っていただかなければ、やはりうまくいきません。

(2019年3月6日のインタビューより)

【解説】脳卒中・循環器病対策基本法が成立、発症予防や早期対応など推進へ

―厚生労働省「第1回非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」の議論などをもとに㈱医薬情報ネットが作成―

急速な高齢化に伴って心不全の急増が見込まれるなか、脳卒中・循環器病対策基本法が2018年12月に成立しました。循環器疾患の予防や発症後早期の受け入れ体制の整備を推進し、健康寿命の延伸や医療・介護の負担減につなげるのが狙いで、国と各都道府県が今後、そのための基本計画をつくります。
この法律の正式名称は「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」で、▽脳卒中や心臓病など循環器病の予防等の推進▽循環器病の発症が疑われる患者の搬送・受け入れ体制の整備▽専門的な医療機関やそれ以外の医療機関による連携・協力体制の整備▽保健・医療・福祉関係者らによる連携・協力体制の整備――などが基本施策です。

保健・医療・福祉関係者の責務として、国や自治体が進める循環器病対策への協力や良質なサービスの提供などを規定する一方、国民に対しては、喫煙や食生活といった生活習慣などが循環器病の発症にどのような影響を及ぼすかを正しく理解し、積極的に予防に取り組むことを求めました。
2019年12月までにこの法律が施行された以降は、国は患者や家族、救急・医療関係者らの「循環器病対策推進協議会」を設置し、循環器病対策基本計画の策定に着手します。国の計画を踏まえて各都道府県も計画をつくり、それらに沿って循環器病対策を進めます。また国の計画は、少なくとも6年ごとに変更を行うこととされました。

循環器病をめぐっては、厚生労働省の「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」が2017年7月、慢性心不全の患者に対する多職種の継続的な疾病管理の必要性などを指摘する報告書を取りまとめています。
2017年の人口動態統計によると、同年の死亡原因のうち「心疾患」は15.3%を占め、がん(27.9%)に次ぐ第2位、「脳血管疾患」(8.2%)は第3位でした。また、厚生労働省の調べでは、歯科や調剤などを除く2016年度の医科診療医療費30兆1,853億円のうち、心不全など循環器系疾患の医療費は5兆9,333億円(19.7%)で最多でした(図)。

図 傷病分類別医科診療医療費

図 傷病分類別医科診療医療費

(出典:第1回非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会(2019年1月9日開催)資料)

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