吸入薬を嫌がる患者さんへの説明

サイトへ公開: 2021年08月31日 (火)
吸入薬を嫌がる患者さんに説明するときのコツを村尾 孝子 先生にお伺いしました。

COPDの治療に吸入薬は欠かせませんが、患者さんの中には吸入薬を嫌がる方がいます。そのような場合、使い方の説明の前に吸入薬を嫌がったり不安に思ったりする理由を探ることから始めましょう。今回は、吸入薬を嫌がる患者さんに説明するときのコツをお伝えします()。

村尾 孝子 先生

Pharmacist
村尾 孝子 先生

株式会社スマイル・ガーデン 代表取締役
薬剤師
医療接遇コミュニケーションコンサルタント

嫌がる患者さんの気持ちや考えを理解せずに効果や使い方について説明しても、患者さんは聞く耳を持ちません。あらかじめいくつかのパターンを想定し、答えを用意しておくと、落ち着いて説明できます。

例えば「過去に吸入薬で副作用を経験した」「吸入の手順が覚えられない」というようなネガティブな記憶がある患者さんの場合、患者さんの話をじっくり聞いて「それは大変でしたね」と共感を示しながら、「今回の吸入薬は以前のものとは違う吸入薬です」などと、実物を見せながら説明しましょう。

「吸入薬は使うのが難しそう」「何となく吸入薬を使いたくない」などの漠然とした理由で嫌がっている患者さんも少なくありません。そのような場合には「吸入薬はCOPDの治療にとても効果があります」「コツを覚えれば難しくありません」など、納得してもらえるまで根気強く説明します。それでも「内服薬のほうが効くような気がする」のように納得してもらえない場合、効果などを一方的に説明しても「無理やり押し付けられている」と感じ、ますます反発してしまう可能性もあります。そこで「そうですよね、飲み慣れた薬のほうが安心ですよね」「不安なお気持ち、よくわかります」と共感しながら、クッション言葉を入れて「もしよろしければ、まずは一度試してみませんか」と勧めてみましょう。

「吸入しても効果を感じられない」という場合もあります。この場合は続けていくうちに自己流になってしまっていることも少なくありませんので、吸入方法が正しいかどうかを一緒に考えてみましょう。「お忙しいと思いますが、もう少し詳しく説明させていただきたいのですが、お時間よろしいですか」と患者さんの都合を気遣う言葉をはさむと、聞いてみようと思ってもらいやすくなります。

吸入薬を嫌がる患者さんへの説明

村尾 孝子 先生 監修

Report 
【解説】 今後求められる「薬剤師に“しか”できないこと」
~薬剤師の需給推計から見る薬剤師の将来像~

厚生労働省は2021年4月26日、「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」を開き、今後の薬剤師の需要について見通し(需給推計)を示しました。それによると、2045年の薬剤師の需要は、業務量が現状と変わらないと仮定すると、現行の32万人から32万2,000人程度の増加にとどまるものの、対人業務や在宅業務の充実、常勤・非常勤といった働き方の変化の影響があると仮定した場合は、40万8,000人となります。

一方、供給については今後も毎年同程度増加していくと仮定すると、2045年には現在の32万5,000人から45万8,000人に増加。薬学部入学者の減少などを考慮して少なく見積もったとしても2045年には43万2,000人に上り、長期的には2万4,000人の供給が需要を上回ると予測しています。今後、薬剤師を取り巻く環境が大きく変化すると考えられる中、需要に的確に対応していく必要性が指摘されています。

近年、薬剤師の業務においては、対人業務や在宅医療への積極的な取り組みが求められるようになりました。背景には、厚生労働省が2015年に策定した「患者のための薬局ビジョン」があります。このような中、検討会は需給推計の論点として、薬局薬剤師と病院薬剤師に今後求められることを挙げています。

それによると、薬局薬剤師には、処方箋に関連する業務だけでなく、OTCの販売や健康相談などの健康サポート業務への取り組みを求めています。また、新型コロナウイルス感染症を踏まえ、公衆衛生への対応の必要性も指摘しています。一方、病院薬剤師に対しては、チーム医療の推進に伴う病棟の薬剤業務の充実、調剤後の継続的な服薬指導、さらに患者の入退院時の関係機関との連携にも積極的に関与することを求めています()。

さらに、今後の需要に対応するためのポイントとして、対人業務の充実に加え、対物業務などの既存業務の効率化を指摘。調剤業務に関しては、調剤機器の導入や薬剤師以外の職員による対応が検討されています。欧米では調剤業務の多くを、調剤技師(ファーマシーテクニシャン)が担当し、薬剤師はその分、患者へのカウンセリングや豊富な薬学知識に基づく積極的な処方提案などに注力していますが、日本では、錠剤のピックアップなどの機械的な調製作業は非薬剤師が扱えるようになったものの、薬剤師の業務の主たる部分は対物業務のままなのが実情です。

一方、薬局には1日平均40枚の院外処方箋に対して1人以上の薬剤師を配置するという員数規定があるため、慢性的な薬剤師不足に陥っています。また、都道府県別の人口10万人対薬剤師数の差に見られる薬剤師の偏在問題、電子処方箋やオンライン服薬指導などを踏まえたICTの活用など、複数の課題が複雑に絡み合っていることから、検討会では薬剤師の需要を判断するには課題を一体的に議論する必要があると指摘しています。

今回発表された需給推計によると、薬剤師に対する需要は今後10年間微増するとされています。しかし、それ以降、これまでのように調剤業務に特化し続ける状況であれば、人口減少と対物業務の効率化の影響により薬剤師の需要は減少すると予想されています。検討会ではさらに議論を重ね、2021年度末までに今後の薬剤師の在り方、主な業務や求められる役割などが示される予定です。

Report  【解説】 今後求められる「薬剤師に“しか”できないこと」 ~薬剤師の需給推計から見る薬剤師の将来像~

出典:厚生労働省「第8回薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」(2021年4月26日)資料を基に作成

ページトップ