SSc-ILDの臨床/検査
ここでは、SSc-ILDの重症度や進行度を評価する際に行う検査についてご紹介し、特に全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドライン1)において推奨されている胸部高分解能CT(HRCT)について解説します。また、SScの主症状である皮膚病変(皮膚硬化)の検査についてもご紹介します。
注: ニンテダニブの効能効果は、特発性肺線維症ならびに全身性強皮症に伴う間質性肺疾患です。皮膚病変等の全身性強皮症に伴う間質性肺疾患以外の臓器病変に対する本剤の有効性は示されておりません。
SSc-ILDの検査および評価
SSc-ILDの検査項目
ILDはSScの死亡原因として最多であり、その有無に関する情報はSScの臨床経過を予測するうえで重要です。SSc-ILDの検出は、問診や聴診、画像検査(X線検査およびHRCT)、呼吸機能検査、血清マーカーの評価などにより総合的に進められます2)。
SSc-ILDの検査とポイント
項目 | ポイント |
問診(自覚症状) | 疾患早期には無症状であることが多く、進行に伴って乾性咳嗽や労作時呼吸困難がみられる。 |
聴診 | 両側下肺野の捻髪音※(fine crackles)の有無。 |
胸部X線検査 | 両側下肺野優位の網状影、進行例では肺容積の減少、ただし軽度の病変は検出できないため早期診断には適さない。 |
胸部高分解能CT (HRCT) | 他の検査と比べてSSc-ILDの検出力が高く、SSc診断時にすべての症例に対して高分解能CT(HRCT)によるスクリーニングを実施することが推奨されている1)。すりガラス影・網状影が主体で、進行例では牽引性気管支拡張を伴い蜂巣肺に至ることもある。陰影の分布は肺底部優位で胸膜直下からみられる。 |
呼吸機能検査 | 臨床的な重症度の評価に有用。VC・FVC・DLcoを評価する。%VCが80%以下の場合に拘束性換気障害と診断され、半年間に5%以上低下する場合に進行していると判断する。 |
血清マーカー | 血清中のKL-6やSP-Dの上昇が疾患活動性の指標になる。 |
気管支肺胞洗浄 (BAL) | 進行性病変や治療反応性の予測に有用とする報告はなく、侵襲性の高さから日常診療では行われない。感染症との鑑別が必要な時に行われる。 |
肺生検 | 進行性病変や治療反応性の予測に有用とする報告はなく、侵襲性の高さから日常診療では行われない。 |
6分間歩行試験 | 活動性の指標として有用。 |
※ 捻髪音:胸郭内に由来する持続時間の短い不連続な異常呼吸音(「バチバチ、バリバリ」という硬い音)
湯川尚一郎.: リウマチ科 2016; 55(4): 377-383.より作表
HRCTの重要性および画像所見
ILD検出のための検査のうち、HRCTは他の検査と比べてSSc-ILDの検出力が高く、全身性強皮症診断基準・重症度分類・診療ガイドラインでは「すべての例で高解像度CTによるILDのスクリーニングを行うことを推奨する」(SSc-ILDに関するCQ1: 推奨度1C)とされています1)。[➡SSc-ILD診療ガイドライン]
SSc-ILDでは、患者の多くが非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンであり、肺底部優位のすりガラス影と網状影が主体で、蜂巣肺は認められません(下図左)。一部の患者は通常型間質性肺炎(UIP)パターンであり、肺底部・末梢優位の網状影と蜂巣肺を主体とし、すりガラス影は認められないか軽度です(下図右)3)。
SSc-ILDのHRCT所見
![SSc-ILDのHRCT所見](/jp/sites/default/files/inline-images/M008_1_0.png)
重症度分類においては、5スライス(①大動脈弓上部、②気管分岐部、③肺静脈合流点、④スライス③と⑤の中間、⑤右横隔膜直上)のHRCT所見において、それぞれILDと関連する全ての陰影(すりガラス影、網状影、嚢胞影)の占めるおおよその面積比を5%単位で求め、それらの平均を算出します[➡ SScの重症度分類]1)。
皮膚硬化の検査および評価
SSc患者の皮膚硬化は、身体17ヵ所のmodified Rodnan total skin thickness score (mRSS)を用いて半定量的に評価します4,5)。
mRSSの判定を行う身体の17ヵ所
![mRSSの判定を行う身体の17ヵ所](/jp/sites/default/files/inline-images/M008_2_0.png)
各判定箇所について、指先で小さくつまんだ感じ(small pinch)と大きくつまみ上げた感じ(large pinch)によって0~3の4段階でスコア化します4,5)。各患者の合計スコア(0~51)を算出します6)。
mRSSにおけるスコア化の基準
スコア | 皮膚硬化 | 小さくつまむ | 大きくつまむ |
皮膚の厚み
|
0 | なし | できる | できる | 厚くない |
1 | 軽度 | できる | できる | 厚い |
2 | 中等度 | できない | できる | さらに厚い |
3 | 高度 | できない | できない | - |
Clements PJ. et al.: J Rheumatol 1993; 20(11): 1892-1896.より改変
各スコアにおける皮膚硬化の例
![各スコアにおける皮膚硬化の例](/jp/sites/default/files/inline-images/M008_3.png)
【文献】
1) 全身性強皮症 診断基準・重症度分類・診療ガイドライン. 日皮会誌 2016; 126(10): 1831-1896.
2) 湯川尚一郎.: リウマチ科 2016; 55(4): 377-383.
3) Solomon JJ. et al.: Eur Respir Rev 2013; 22(127): 6-19.
4) Clements PJ. et al.: J Rheumatol 1993; 20(11): 1892-1896.
5) Khanna D. et al.: J Scleroderma Relat Disord 2017; 2(1): 11-18.
6) 松下貴史. Ⅳ-1 皮膚. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016: 118-126.