肺癌におけるEGFR遺伝子変異① ー Uncommon mutationとCompound mutation
第2回:肺癌におけるEGFR遺伝子変異① ー Uncommon mutationとCompound mutation
EGFR遺伝子変異陽性肺癌は、変異のサブタイプによってEGFR-TKI の感受性が異なることが知られています1)。
そこで今回は、EGFR遺伝子変異のうちUncommon mutationとCompound mutationについて、ご紹介します。
1) 日本肺癌学会.肺癌患者におけるEGFR遺伝子変異検査の手引き 第4.3版.2020年3月31日
【Uncommon/Compound mutationの発現頻度】
海外で実施された次世代シーケンシングによる遺伝子解析の報告において、EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌患者のうち、Uncommon mutation単独、もしくはCompound mutationのいずれかを有していた割合は何%だったでしょうか。
33%
海外で実施された次世代シーケンシングによる遺伝子解析の報告では、EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌患者の33%が、Uncommon mutation単独、もしくはCompound mutationのいずれかを有していました。このようなCommon mutation単独以外の変異を有する患者群のうち、75%がCompound mutationを有する例でした。(図1)
(図1)
![(図1)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_1.jpg)
【Compound mutationの分類】
日本肺癌学会『肺癌診療ガイドライン 2021年版』において、
Uncommon mutationとエクソン19の欠失やL858R変異が同時にあった場合、 Uncommon mutation、Common mutationどちらに分類するとされているでしょうか。
Uncommon mutation
『肺癌診療ガイドライン 2021年版』のUncommon mutationに対する治療指針をお示しします。
本ステートメントの注記では、「Uncommon mutationがある場合は,エクソン19の欠失とL858R変異が同時にあったとしても、Uncommon mutationに分類する」と記載されています。(図2)
(図2)
![(図2)](/jp/sites/default/files/inline-images/2021%E5%B9%B4%E7%89%88%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%80%80%EF%BC%91_v2.jpg)
【ジオトリフのEGFR遺伝子変異発現細胞に対する親和性】
EGFR遺伝子変異発現細胞におけるin vitroの検討で、ジオトリフが高い親和性を示したUncommon mutationにはどのようなものがあるでしょうか。
L861QやG719X(表参照)
ご覧の表は、各種EGFR遺伝子変異発現細胞に対するEGFR-TKIのin vitroでの50%阻害濃度(IC50)を示しています。
ジオトリフでは、Del 19やL858RといったCommon mutationに加え、L861QやG719Xといった既知のエクソン18~21変異に対しても高い親和性を示しました。
一方、Ins 20(エクソン20の挿入変異)やT790Mにおける IC50は64 nM~268 nMでした。(図3)
(図3)
![(図3)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_3.jpg)
【Uncommon mutationに対するジオトリフの有効性】
EGFR遺伝子変異陽性肺癌患者を対象としたジオトリフの臨床試験であるLUX-Lung 2、3、6試験の統合解析において、EGFR遺伝子のG719X変異に対するジオトリフの奏効率は何%だったでしょうか。
77.8%(14/18例)
ジオトリフでは、EGFR遺伝子変異のうちUncommon mutationにおける有効性を検討するため、ジオトリフの臨床試験であるLUX-Lung 2、3、6試験の統合解析が行われました。(図4)
(図4)
![(図4)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_4.jpg)
本統合解析では、 LUX-Lung 2、3、6試験でランダム化または治療を受けた838例のうちジオトリフが投与され、かつUncommon mutationを有する75例を3グループに層別化し、同じくUncommon mutationを有する化学療法群25例とともに解析を行いました。
グループ1はエクソン18~21の点突然変異あるいはCompound mutationを有する38例、グループ2はT790M変異単独あるいは他の変異とのCompound mutationを有する14例、グループ3はエクソン20の挿入変異(Ins 20)を有する23例とされました。(図5)
(図5)
![(図5)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_5.jpg)
3グループのEGFR遺伝子変異タイプの内訳はご覧の通りです。グループ1には L861Q単独12例、G719X単独8例などが含まれました。(図6)
(図6)
![(図6)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_6.jpg)
本統合解析の結果、Uncommon mutationのうちG719X、L861Q、S768Iの変異に対するジオトリフの奏効率は、それぞれ77.8%、56.3%、100%でした。(図7)
(図7)
![(図7)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_7.jpg)
【Compound mutation に対するジオトリフの有効性】
LUX-Lung 2、3、6統合解析において、エクソン18~21の点突然変異あるいはCompound mutationを有するグループ1におけるジオトリフの無増悪生存期間(PFS)中央値は何ヵ月だったでしょうか。
10.7ヵ月
LUX-Lung 2、3、6統合解析におけるPFSのカプランマイヤー曲線をお示しします。PFS中央値は、L861QやG719Xを含むグループ1で10.7ヵ月、化学療法群で8.2ヵ月でした。
一方で、 T790Mを含むグループ2およびエクソン20の挿入変異を有するグループ3のPFS中央値はそれぞれ2.9ヵ月、2.7ヵ月でした。(図8)
(図8)
![(図8)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_8.jpg)
LUX-Lung2,3,6統合解析では、安全性情報を収集しておりません。安全性情報に関しては、製品電子添文をご参照ください。
LUX-Lung 2試験では、ジオトリフ40mg群の副作用発現率は100.0%でした。発現率50%以上の副作用としては、下痢(96.7%)、発疹/ざ瘡(90.0%)、爪の異常(80.0%)、口内炎(50.0%)が認められました。
LUX-Lung 3試験では、ジオトリフ群の副作用発現率は99.6%でした。発現率50%以上の副作用としては、下痢(95.2%)、発疹/ざ瘡(89.1%)、口内炎(72.1%)、爪の異常(61.1%)が認められました。また、Grade 3以上で発現率10%以上の副作用としては、発疹/ざ瘡(16.2%)、下痢(14.4%)、爪の異常(11.8%)が認められました。
LUX-Lung 3試験におけるPEM+CDDP(ペメトレキセド+シスプラチン)群の副作用発現率は95.5%でした。発現率50%以上の副作用としては、悪心(65.8%)、食欲減退(53.2%)が認められました。また、Grade 3以上で発現率10%以上の副作用としては、好中球減少症(18.0%)、疲労(12.6%)が認められました。
LUX-Lung 6試験では、ジオトリフ群の副作用発現率は98.7%でした。発現率50%以上の副作用としては、下痢(88.3%)、発疹/ざ瘡(80.8%)、口内炎/粘膜炎(51.9%)が認められました。
LUX-Lung 6試験におけるGEM+CDDP(ゲムシタビン+シスプラチン)群の副作用発現率は99.1%でした。発現率50%以上の副作用として嘔吐(80.5%)、悪心(75.2%)が認められました。(図9)
(図9)
![(図9)](/jp/sites/default/files/inline-images/PG_024_9.jpg)
今回ご紹介した内容が、先生の肺癌診療のお役にたてましたら幸いです。