ジオトリフ:用量マネジメントのケーススタディ

サイトへ公開: 2020年06月25日 (木)

ジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)の用量マネジメントについて、下痢の副作用が発現した3例のケーススタディをご紹介いたします。肺がん患者さんのQOL向上に、ぜひお役立てください。

1. ジオトリフにおける副作用マネジメントの概要

副作用マネジメントは早期に対処し、EGFR-TKIの休薬・減量も考慮して重症化を予防することが大切です。

ジオトリフのLUX-Lung3,6の統合解析では、ジオトリフの減量前後でGrade3以上を含めて副作用発現の減少傾向が認められました。また減量の有無により、無増悪生存期間(PFS)に差は認められませんでした。

ジオトリフは患者さんに合わせた用量変更により、効果が減弱することなく治療の継続を期待できることが示唆されています。

2. Case1:投与開始後すぐにGrade3の下痢が発現

Case1は、投与開始後すぐにGrade3の下痢、つまりベースラインと比べて7回/日以上の排便回数増加が発現し、ジオトリフの休薬・減量を行った例です.

図1:投与開始直後と休薬・減量時の下痢の発現状態

Case1:投与開始後、すぐにGrade3の下痢が発現している状態

このように早期にGrade3以上の下痢が発現することもありますので、その場合には、速やかにジオトリフの休薬・減量を行ってください。

3. Case2:休薬・減量が遅れると、副作用マネジメントの負担は増加

Case2は、後々の負担が増える可能性が高い、誤った用量マネジメントの例です。
こちらの例では、排便回数がベースラインと比べて4回/日以上増加したGrade2の下痢がみられた後も服用を継続しています。その後、患者さんが苦痛を訴えて初めてジオトリフの休薬・減量を行っています。

図2:休薬・減量のタイミングの遅れによる副作用マネジメントの負担

Case2:誤ったマネジメント。後々苦労が多いケース

このように休薬・減量のタイミングが遅れると、下痢の重症化や皮疹などの他の副作用発現により、副作用マネジメントの負担が増すおそれがあります。ジオトリフの休薬・減量は、Grade2の下痢が48時間以上継続した時点で行うことが推奨されます。

4. Case3:下痢の発現に合わせた適正な用量調整

Case3は、適切なジオトリフの用量マネジメントの例です。
このCaseでは、下痢の発現に合わせたロペラミドの使用により排便回数の増加をGrade1以内にコントロールし、Grade3ではなくても、48時間以上継続する Grade2の下痢がみられた際には、ジオトリフの休薬・減量を行っています。また、下痢が48時間以上継続していなくとも、患者さんが忍容できない場合には、ジオトリフの休薬・減量を行うことが求められます。

図3:下痢の発現状態に合わせた用量マネジメント

Case3:適切な用量マネジメント

参考:下痢が認められた際の用量マネジメントと下痢の評価

図4:異常が認められた場合の対応

異常が認められた場合の対応

図5:下痢の評価法

下痢の評価法

5. ジオトリフ減量による副作用マネジメントと有効性-LUX-Lung3, 6の統合解析より-

ジオトリフは、上記のような早期の用量マネジメントを行うことで、副作用の発現・重症化の低減、治療継続等が期待できることが LUX-Lung 3, 6の統合解析の結果からわかっています。

■試験概要

目的:ジオトリフの忍容性に応じた用量調整(減量および増量)が、副作用の発現率や重症度、薬物動態、無増悪生存期間(PFS)に与える影響を検討する。

対象:LUX-Lung 3または LUX-Lung 6に参加してジオトリフを投与した、化学療法未治療かつEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌患者468例

方法:ジオトリフ40mg投与の原料前後の副作用発現率および重症度を検討した上で、原料・増量前後の血漿中濃度を比較し、投与開始6ヵ月以内の減量の有無とPFSについて解析した。

評価項目:副作用

ジオトリフ40mgの原料前後における副作用の発現率と重症度&

薬物動態 ジオトリフ40mg投与時[day 22]と、変更なし(40mg)、減量(30mg)、

増量(50mg)時[day 43]における血漿中アファチニブ濃度

PFS投与開始6か月以内におけるジオトリフ40mgの減量の有無別にPFSを検討

解析計画:事後解析としてジオトリフ用量調整と副作用、薬物動態、PFSについて解析した。

Yang J.C. et al.: Ann Oncol 2016; 27(11): 2103-2110
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

■減量率および増量率

LUX-Lung 3における減量率は53.3%(122/229例)、増量率は7.0%(16/229例)でした。

LUX-Lung6における減量率は28.0%(67/239例)、増量率は15.9%(28/239例)でした。

適正使用ガイド~LUX-Lung3&6事後解析の結果から

図6:ジオトリフの減量率および増量率

図6:ジオトリフの減量率および増量率

Yang J.C. et al.: Ann Oncol 2016; 27(11): 2103-2110
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

■用量変更前後の血漿中アファチニブ濃度

こちらは、ジオトリフの用量変更前後での血漿中アファチニブ濃度変化の解析結果です。
本解析では、対象を投与開始後43日目までに、
(1)40mg投与を継続した群
(2)30mgへ減量した群
(3)50mgに増量した群
の3群に分けて解析を行っています。
用量変更前(22日目)における血漿中アファチニブ濃度は、30mgへの減量群で45.6 ng/mL、40mgの非変更群で24.3ng/mLと、30mgへの減量群で高い傾向がみられましたが、用量変更後[day 43]ではそれぞれ23.3ng/mL、 22.8ng/mLとなりました。

適正使用ガイド~LUX-Lung3&6事後解析の結果から

図7:用量変更前後の血漿中アファチニブ濃度(海外データ)

適正使用ガイド~用量調整編~(海外データ)用量変更前後の血漿中アファチニブ濃度

Yang J.C. et al.: Ann Oncol 2016; 27(11): 2103-2110
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

■減量前後の副作用発現率

LUX-Lung 3におけるジオトリフ減量群では、減量前の全副作用発現率は100%(122/122例)、Grade 3以上は73.0%(89/122例)であり、主な副作用として下痢99.2%、発疹/ざ瘡88.5%、口内炎77.0%、爪の異常44.3%などが認められました。

ジオトリフ減量後の全副作用発現率は86.1%(105/122例)、 Grade 3以上は20.5%(25/122例)でした。全副作用の発症率をみると、減量前はGrade1-2 27.0%、Grade3以上73.0%だったのに対し、減量後は Grade1-2 65.6%、Grade3以上20.5%でした。

適正使用ガイド~LUX-Lung3&6事後解析の結果から

図8:減量前後の主な副作用発現率:LUX-Lung 3(国際共同第Ⅲ相試験

適正使用ガイド~用量調整編~(海外データ)減量前後の主な副作用発現率:LUX-Lung3

Yang J.C. et al.: Ann Oncol 2016; 27(11): 2103-2110
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

■減量有無別の無増悪生存期間

薬剤の減量では効果減弱が最も心配されますが、LUX-Lung 3のPFS中央値は、減量した患者さんで11.3ヵ月、減量していない患者さんで11.0ヵ月であり、両群間で差は認められませんでした(ハザード比 1.25、95%CI:0.91-1.72)。

適正使用ガイド~LUX-Lung3&6事後解析の結果から

図9:減量有無別の無憎悪生存期間:LUX-Lung 3 (国際共同第Ⅲ相試験)

適正使用ガイド~用量調整編~(海外データ)減量有無別の無憎悪生存期間:LUX-Lung3

Yang J.C. et al.: Ann Oncol 2016; 27(11): 2103-2110
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

以上の結果から、ジオトリフは用量マネジメントにより、種々の副作用を軽減できる可能性があり、効果が減弱することなく治療の継続を期待できると考えられます。

■安全性
LUX-Lung 3:ジオトリフ群での副作用は99.6% (228/229 例)、主なものは下痢 95.2% (218 例)、発疹/ざ瘡89.1% (204 例)、口内炎/粘膜炎72.1% (165例)など、重篤な副作用は22.3% (51 例)、主なものは下痢15 例、嘔吐8 例など、投与中止に至った副作用は3.5% (8 例)、下痢3 例、間質性肺疾患、爪の異常が各2 例など、 死亡に至った副作用は4 例(呼吸不全2例、敗血症、不明が各1 例)に認められた。

LUX-Lung 6:ジオトリフ群での副作用は98.7% (236/239例)、主なものは下痢 88.3% (211例)、発疹/ざ瘡80.8% (193例)、口内炎/粘膜炎51.9% (124例) など、 重篤な副作用は6.3% (15例)、主なものは発疹/ざ瘡3;例、下痢2例など、投与中止に至った副作用は5.9% (14 例)、主なものは発疹/ざ瘡5例など、死亡に至った副作用は1例(突然死) に認められた。

Yang J.C. et al.: Ann Oncol 2016; 27(11): 2103-2110
Sequist LV et al.: J Clin Oncol 2013; 31: 3327-3334
Wu YL et al.: Lancet Oncol 2014; 15: 213-222
いずれの研究もベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

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