ジオトリフの副作用「口内炎」のマネジメント

サイトへ公開: 2020年05月08日 (金)

ジオトリフ(一般名:アファチニブマレイン酸塩)の使用により発現しやすい副作用「口内炎」のマネジメント方法をご紹介いたします。ジオトリフで治療を受ける肺がん患者さんのQOL向上にお役立てください。

1.口内炎の発現頻度

化学療法既治療の非小細胞肺癌患者を対象とした国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の第Ⅱ相部分において、安全性評価対象 62例中全例(100.0%)に副作用が認められ、口内炎は40例(64.5%)でした。(承認時)

2.口内炎の発生機序・発現時期・症状

(1)口内炎の発生機序

図1 細胞障害性抗がん剤による口内炎発生機序の報告

図1 細胞障害性抗がん剤による口内炎発生機序の報告

(2)口内炎の発現時期
投与開始から約2週間ほど発現します

(3)口内炎の症状

図2 口内炎の発現頻度と症状

口内炎の発現頻度と症状

3.口内炎の評価と予防および対症療法

口内炎の評価には主に有害事象共通用語規準であるCTCAEが用いられ、症状、疼痛、経口摂取への影響、治療の必要性などにより、Grade1~5の5段階で評価を行います。

表1 口内炎の評価法

表1 口内炎の評価法

重度の口内炎発現を防ぐためには、早期から適切な対処が求められます。ジオトリフ適正使用ガイドでは、Grade1~2では対症療法を行ったうえでジオトリフ投与を継続することが推奨されています。一方、Grade3以上またはGrade2の口内炎でも忍容できない場合には、ジオトリフを休薬したうえで対症療法を実施し、Grade1以下に回復した後に減量して投与再開することが推奨されています。

図3 異常が認められた場合の対応

図3 異常が認められた場合の対応

また、口内炎には確立した治療法がないため、予防することが重要です。
予防にはEGFR-TKI服薬中、こまめに口腔ケアとうがいを行います。また、うがい薬の使用も推奨されています。
口内炎ができた場合は、痛みの強度に応じた対症療法が必要になります。口腔内に違和感を覚えるような軽度~中等度の痛みの場合は消炎鎮痛薬などによる治療を行い、経口摂取に支障のある中等度以上の激しい痛みの場合はオピオイド系鎮痛薬の使用を考慮することが求められます1)。 その他、口内炎には、粘膜保護薬や低出力レーザーなども用いられています1)。
1)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 抗がん剤による口内炎.2009

図4 口内炎の予防と治療

図4 口内炎の予防と治療

4.患者さんへ指導する際のポイント

口内炎を予防するためには、患者さんへの指導が大切です。
EGFR-TKI治療中は、こまめなうがいなど日常的に可能な範囲で口腔ケアを行っていただき、口の中の痛みや食べ物がしみるなどの初期症状が出た時点で、すぐに医療機関へ連絡してもらうことが口内炎の重篤化を防ぐために重要です。
口内炎ができた場合は、やわらかい歯ブラシで歯磨きを行うことや、歯磨きが苦痛なときは水道水などで口をすすぐだけでも効果があることもご説明ください。また、うがい薬は刺激になる可能性もあるため事前に医療機関に相談するようお話ししてください。普通の食事が困難な場合には無理なく栄養をとれる食事の工夫をすることも重要です。

図5 患者さんへ指導する際のポイント

図5 患者さんへ指導する際のポイント

■副作用マネジメント

図6は、副作用の発現と増加に伴う医療従事者の負担増を表しています。口内炎等の副作用は、一般的に重症化するにつれて医療従事者の負担も増加してしまいますので、予防を含めた早期の対応により重症化を防ぐことが求められます。ジオトリフの場合、第Ⅲ相試験の統合解析の結果、早期の用量マネジメントを行うことで、副作用の発現・重症化の低減、副作用マネジメントの負担軽減、治療継続期間の延長等が期待できることがわかっています。

図6 副作用の発現と増加に伴う医療従事者の負担増

図6 副作用の発現と増加に伴う医療従事者の負担増

図7 ジオトリフの用量マネジメント(イメージ図)

図7 ジオトリフの用量マネジメント(イメージ図)

5.ジオトリフ減量による副作用マネジメント

■LUX-Lung3における薬物動態
1次治療としてジオトリフの有効性および安全性を検討したLUX-Lung3における薬物動態の結果をご紹介します。幾何平均値は一定の推移であるものの、血漿中アファチニブ濃度は、個体差が大きいことが示されています。しかし、時間の経過とともに、その差は縮小傾向を認めます。その背景には、プロトコールに従い、副作用の発現状況に合わせた用量調整が行われたことが影響していると考えられます。

図8 薬物動態

図8 薬物動態

■用量調整による副作用発現率の変化
用量調整により、副作用発現率はどのように変わるのでしょうか。
ジオトリフ40mg投与開始後6ヵ月以内の減量の有無と減量前後の副作用発現率および重篤度などについて解析したLUX-Lung3, 6の統合解析の結果をご紹介します。
ジオトリフによる主な副作用は、下痢・発疹/ざ瘡・口内炎などでした。
LUX-Lung3, 6ともに、忍容性に合わせた適切な用量調整を行うことで、減量後にはGrade3以上の各副作用発現頻度は5%以下となっています。

表2 減量前後の副作用発現率:LUX-Lung3(国際共同第Ⅲ相試験)

表2 減量前後の副作用発現率:LUX-Lung3(海外データ)

表3 減量前後の副作用発現率:LUX-Lung6(海外データ)

表3 減量前後の副作用発現率:LUX-Lung6(海外データ)

■減量を必要とした患者背景
減量を必要とした患者背景を解析した結果、LUX-Lung3, 6ともに女性および50kg未満で減量傾向がみられ、LUX-Lung3では65歳以上、日本人でも減量傾向が認められました。
また、最終投与量をベースラインの体表面積(BSA)およびBMI別に検討した結果、BSA1.8m²未満で減量傾向がみられました。 なお、減量を行ってもジオトリフの有効性に影響は見られないことが報告されています*。
*The Oncologist 2014;19:1100-1109

表4 減量を必要とした患者背景(海外データ)

表4 減量を必要とした患者背景(海外データ)

以上の結果から、ジオトリフは用量マネジメントにより、種々の副作用を軽減できる可能性があり、効果が減弱することなく治療の継続を期待できると考えられます。

■安全性
LUX-Lung 3:ジオトリフ群での副作用は99.6%(228/229例)、主なものは下痢95.2%(218例)、発疹/ざ瘡89.1%(204例)、口内炎/粘膜炎72.1%(165例)など、重篤な副作用は22.3%(51例)、主なものは下痢15例、嘔吐8例等、投与中止に至った副作用は3.5%(8例)、下痢3例、間質性肺疾患、爪の以上が各2例など、死亡に至った副作用は4例(呼吸不全2例、敗血症、不明が各1例)に認められた。

LUX-Lung 6:ジオトリフ群での副作用は98.7%(236/239例)、主なものは下痢88.3%(211例)、発疹/ざ瘡80.8%(193例)、口内炎/粘膜炎51.9%(124例)など、重篤な副作用は6.3%(15例)、主なものは発疹/ざ瘡3例、下痢2例など、投与中止に至った副作用は、5.9%(14例)、主なものは発疹/ざ瘡5例など、死亡に至った副作用は1例(突然死)に認められた。

Sequist LV et al.: J Clin Oncol 2013; 31: 3327-3334 
Wu YL et al.: Lancet Oncol 2014; 15: 213-222
いずれの研究もベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施された

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