ジオトリフWEBセミナー 『Meet The Expert記録集』

サイトへ公開: 2023年07月28日 (金)

【司会】 

解良 恭一 先生(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科 教授)
秦 明登 先生(神戸低侵襲がん医療センター 呼吸器腫瘍内科 主任部長)

【演者】

高阪 真路 先生(国立がん研究センター研究所 細胞情報学分野 分野長)
田宮 基裕 先生(大阪国際がんセンター 呼吸器内科 副部長)
角 俊行 先生(函館五稜郭病院 呼吸器内科 医長)

【演者】

本コンテンツでは、2023年3月4日に開催されたLung Cancer Meet The Expertのご講演およびパネルディスカッションの内容から、EGFR遺伝子の変異別治療とジオトリフ(アファチニブ)の位置づけについてご紹介します。

ジオトリフについて

「LUX-Lung 3 検証試験における有効性・安全性」

はじめに、ジオトリフの承認の根拠となったLUX-Lung 3 検証試験についてご紹介します。
本試験は、Uncommon mutationを含むEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌(NSCLC)を対象に、1次治療におけるジオトリフ単独療法とPEM+CDDP併用化学療法の有効性と安全性を検討した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

ジオトリフについて

主要評価項目であるPFS中央値は、ジオトリフ群11.1ヵ月、PEM+CDDP群6.9ヵ月であり、ジオトリフ投与によるPFSの有意な延長が検証されました。

主要評価項目であるPFS中央値は、ジオトリフ群11.1ヵ月、PEM+CDDP群6.9ヵ月であり、ジオトリフ投与によるPFSの有意な延長が検証されました。

副作用は、ジオトリフ群229例中228例、99.6%、PEM+CDDP群111例中106例、95.5%に認められました。

副作用は、ジオトリフ群229例中228例、99.6%、PEM+CDDP群111例中106例、95.5%に認められました。

主な副作用は、ジオトリフ群で下痢、発疹/ざ瘡、口内炎、爪の異常など、PEM+CDDP群で悪心、食欲減退などでした。

主な副作用は、ジオトリフ群で下痢、発疹/ざ瘡、口内炎、爪の異常など、PEM+CDDP群で悪心、食欲減退などでした。

基調講演Ⅰ

「不均一性腫瘍モデルを用いたEGFRチロシンキナーゼ阻害剤併用療法の評価」

演者:国立がん研究センター研究所 細胞情報学分野 分野長 高阪 真路 先生

バリアント機能解析の研究に取り組む背景
私は2012年から2015年に米国Memorial Sloan Ketteringがんセンターに留学していましたが、当時、米国でがん遺伝子パネル検査が開始され、大きな衝撃を受けたことを覚えています。そして日本でも2019年からがん遺伝子パネル検査が保険適用となり、現在個別化医療の実現が大きく進んでいます。

当時私は、がんゲノム医療が進むと、がん化との関連や有効な薬剤が不明な変異 variant of unknown significance(VUS)が多く発見されるようになることを知りました。そのため、がんゲノム医療が日本で始まる頃に多くの変異が発見されることで臨床の先生が困らないよう、様々なバリアントの機能解析を行って有用な情報を発表できたらと考えていました。

MANO法によるEGFR変異体の薬剤感受性評価
そうして留学先から日本に戻ってきて構築したのが、Mixed All Nominated mutants in One(MANO)法というアッセイ系です(図1)。簡単に言えば、これは様々な遺伝子変異を一度にそれぞれ別の細胞に導入し、その後細胞を混ぜてアッセイを行う方法です。これによって、一度に多くの遺伝子変異のがん化能や薬剤感受性を評価できます。

MANO法によるEGFR変異体の薬剤感受性評価

図1

実際にMANO法を用いて約100のEGFRバリアントの薬剤感受性を評価した結果が図2です。Exon19欠失やL858RはEGFR-TKIに感受性が高い(図2水色枠部分)一方で、多くのマイナー変異は感受性が低い(図2ピンク枠部分)ことが分かりました。

MANO法によるEGFR重複変異の薬剤感受性評価

図2

MANO法によるEGFR重複変異の薬剤感受性評価
さらに詳細な解析を行うために注目したのが、重複変異です。EGFR遺伝子変異陽性肺腺癌390例の解析では、L858Rの19.5%、G719C/S/Aの93.3%が重複変異を有していました1

様々なEGFR重複変異のがん化能をMANO法で解析した結果、単独で変異が存在する場合よりも、2つを重複することによってがん化能の上昇が見られました1。さらに、薬剤感受性を解析した結果が図3です。L858Rが単独で存在する場合、どのEGFR-TKIに対しても感受性が高いですが、E709A/Kのようなマイナー変異が単独で存在する場合は、L858Rよりも感受性が低い様子が見られました。また、それらの重複変異では、その中間程度の感受性を示す傾向が見られました。

EGFR遺伝子変異別レジメン比較(マウス)

図3

EGFR遺伝子変異別レジメン比較(マウス)
続いてご紹介するのは、in vivoへの応用です。MANO法で解析した様々なEGFR変異のうちホットスポットのものを中心に32バリアントを抽出し、それらのheterogeneousな腫瘍を持つマウスを作製しました。そして、図4(A)に示す各種EGFR-TKIレジメンを投与しました。

その結果が図4(B)です。アファチニブ投与後にオシメルチニブを投与した場合(AO)と、オシメルチニブ投与後にアファチニブを投与した場合(OA)の腫瘍量の推移を示しています。

また、腫瘍増加の経過として、3日ごとに腫瘍内のバリアントの変化を追跡した検討の結果が図4(C)です。まずAOの場合、はじめにL858R_T790Mが増加しますが切り替えによって縮小し、今度はG719S_S768Iが増加しました。一方でOAの場合、はじめにG719S_S768Iが増加しますが切り替えによって縮小し、今度はL858R_T790Mが増加しました。

今後の期待

図4

今後の期待
現在、日本でもゲノム医療に関するデータが知識データベースとして活用されようとしています。私共の研究室では、知識データベースに、細胞実験や動物実験から得られる前臨床のデータを付与して、その臨床的意義付けを行っています。こうしたデータによって臨床試験が加速され、新薬開発を通じて患者さんの元に新たな治療が届くことを期待しています。

基調講演Ⅱ

「遺伝子タイプ別による治療を再考する(Uncommon mutation)」

演者:大阪国際がんセンター 呼吸器内科 副部長 田宮 基裕 先生

Structure baseで薬剤感受性を捉える
マイナーな変異では、Compound mutationの割合が高いことが知られており1,2、Uncommon mutationに対する治療を検討する際には、個々の変異に合わせてそれぞれの薬剤の有効性を調べて判断する必要があると考えます。

個々の変異に対する薬剤の有効性は高阪先生の論文1が参考になりますが、ここでは他の参考論文として、Natureに掲載された米国の論文をご紹介します。

本解析では24,934のEGFR遺伝子変異のうちClassical type(Common mutationに相当)が67.1%、Atypical type(Uncommon mutationに相当)が30.8%を占めました(図1)。

この論文では、変異を従来のように変異のあるExonごとに分類するのではなく、変異によって生じる構造機能ごとにストラクチャーベースで4つ(Classical-like、Ex20ins-L、T790M-like、PACC)に分類することで薬剤感受性の予測に役立てることが試みられています。

図1

この論文では、変異を従来のように変異のあるExonごとに分類するのではなく、変異によって生じる構造機能ごとにストラクチャーベースで4つ(Classical-like、Ex20ins-L、T790M-like、PACC)に分類することで薬剤感受性の予測に役立てることが試みられています。

図2は、in vitroで評価した各変異のEGFR-TKIに対する薬剤感受性を示すヒートマップで、青色が効きやすく、赤色が効きにくい状態を表しています。ストラクチャーベースの分類によって、薬剤感受性が分かれている様子が見て取れます。特にUncommon mutationに最も近いPACCでは、第2世代EGFR-TKIが効きやすい傾向が示されています。
その上で、どの薬剤が効きやすいのか考慮することが大事になってきます。

実際に第2世代であるアファチニブに対する治療成功期間(TTF)の遡及的分析では、PACCは他のストラクチャーベースの分類よりも有意に長いTTFを示しました(図3)。

図2

実際に第2世代であるアファチニブに対する治療成功期間(TTF)の遡及的分析では、PACCは他のストラクチャーベースの分類よりも有意に長いTTFを示しました(図3)。

臨床におけるアファチニブのUncommon mutationに対する有効性

図3

臨床におけるアファチニブのUncommon mutationに対する有効性
実際に第2世代EGFR-TKIであるアファチニブは、臨床研究であるLUX-Lung 2、3、6 統合解析においてUncommon mutationに対する有効性が検討されています(図4)。

本解析ではExon18-21の点突然変異または重複であるグループ1において、アファチニブはPFS中央値10.7ヵ月を示しました(図5)。

図4

本解析ではExon18-21の点突然変異または重複であるグループ1において、アファチニブはPFS中央値10.7ヵ月を示しました(図5)。

このようなデータがUncommon mutationに関して報告されており、臨床ではEGFR遺伝子変異を細部まで検討し、その結果とデータに基づいて薬剤選択をしていくことが望まれます。

図5

このようなデータがUncommon mutationに関して報告されており、臨床ではEGFR遺伝子変異を細部まで検討し、その結果とデータに基づいて薬剤選択をしていくことが望まれます。

Lux-Lung 2、3、6統合解析では、安全性情報を収集しておりません。安全性情報に関しましては、製品電子添文をご参照ください(図6)。

Lux-Lung 2、3、6統合解析では、安全性情報を収集しておりません。安全性情報に関しましては、製品電子添文をご参照ください(図6)。

図6

基調講演Ⅲ

「遺伝子タイプ別による治療を再考する~L858R~」

演者:函館五稜郭病院 呼吸器内科 医長 角 俊行 先生

基礎的見地から見たL858R
Del19とL858RはいずれもCommon mutationですが、活性化の様式が異なるために、薬剤の有効性や予後に違いが生じる可能性が考えられています1

また、L858Rは、高阪先生のご講演でも紹介があったように、Compound mutationの割合が高いことが知られています2。そして、L858RはVEGFの発現が高いことや3、tumor mutation burden(TMB)が高く、またTMBと予後が関連していることも報告されています4

CJLSG1903におけるアファチニブのL858Rに対する有効性
ここで、L858Rに対する治療選択肢の一つとして、アファチニブの日本人における臨床研究データをご紹介します。
CJLSG1903は、アファチニブとオシメルチニブによる1次治療を比較した後ろ向き観察研究です(図1)。

CJLSG1903におけるアファチニブのL858Rに対する有効性

図1

主要評価項目であるEGFR-TKI投与中止までの期間(TD-TKI)はジオトリフ群で18.6ヵ月、オシメルチニブ群で20.5ヵ月、ハザード比は1.15(95%CI:0.93-1.41)でした(p=0.204、ログランク検定)(図2)。OS中央値はそれぞれ36.2ヵ月および25.1ヵ月、PFS中央値はそれぞれ16.5ヵ月および20.5ヵ月であり、いずれも有意差はありませんでした。

図1  主要評価項目であるEGFR-TKI投与中止までの期間(TD-TKI)はジオトリフ群で18.6ヵ月、オシメルチニブ群で20.5ヵ月、ハザード比は1.15(95%CI:0.93-1.41)でした(p=0.204、ログランク検定)(図2)。OS中央値はそれぞれ36.2ヵ月および25.1ヵ月、PFS中央値はそれぞれ16.5ヵ月および20.5ヵ月であり、いずれも有意差はありませんでした。

図2

しかし、Del19とL858R、また脳転移の有無で分けて解析すると、L858Rで脳転移なし症例のサブグループでは、アファチニブでPFSおよびOSが有意に延長しました(図3)。この結果から、脳転移がなく特にL858Rの場合にはアファチニブが有効である可能性があるといえます。

CJLSG1903において、安全性情報は収集されていません

図3

CJLSG1903において、安全性情報は収集されていません。
安全性情報に関しましては、製品電子添文をご参照ください(図4)。

GioSwinG研究に見るシークエンス治療の有用性

図4

GioSwinG研究に見るシークエンス治療の有用性
EGFR遺伝子変異陽性肺癌の治療では、初回治療だけではなく2次治療以降も含めたシークエンスを考えた治療も非常に重要です。

GioSwinG研究は、日本および海外で行われたGioTag研究とUpSwinG研究を併せ、アファチニブによる1次治療後にT790M変異を獲得しオシメルチニブによる2次治療を行った症例について解析したものです(図5)。本研究でのOS中央値は全体で45.2ヵ月、さらにDel19変異においては63.5ヵ月と非常に長いOS中央値が得られています。

GioSwinG研究においては、安全性情報を収集していません。安全性情報に関しましては、製品電子添文をご参照ください(図6)。

図5

GioSwinG研究においては、安全性情報を収集していません。安全性情報に関しましては、製品電子添文をご参照ください(図6)。

パネルディスカッション

図6

パネルディスカッション

「今だから考える、ジオトリフの位置づけ」

司会:埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科 教授 解良 恭一 先生
パネリスト:神戸低侵襲がん医療センター 呼吸器腫瘍内科 主任部長 秦 明登 先生
国立がん研究センター研究所 細胞情報学分野 分野長 高阪 真路 先生
函館五稜郭病院 呼吸器内科 医長 角 俊行 先生
大阪国際がんセンター 呼吸器内科 副部長 田宮 基裕 先生

基礎データから考える治療について
解良先生:
ここからは、「今だから考える、ジオトリフの位置づけ」をテーマにディスカッションしていきます。まずは、基礎データから考える治療についてです。
高阪先生のご講演では、マウスを用いた検討でアファチニブ投与後にオシメルチニブを投与するレジメンで腫瘍量が一番少なかったというお話がありましたが、基礎的にはそのシークエンスが望まれる可能性が高いのでしょうか。

高阪先生:

高阪先生:
それはすごく難しいところです。まず今回のモデルは人工的に作製したもので、実臨床での腫瘍とは必ずしも同じ条件ではありません。実際の患者さんの腫瘍は恐らく個々に違っていて、例えば同じL858Rを持つ場合でもヘテロジェナイティーが高い場合と低い場合があると考えられます。ですので、私どものモデルとフィットしているかどうかによって異なる結果になる可能性も考えられます。

角先生:
EGFR遺伝子変異陽性肺癌が手術で見つかった場合、基本的には肺胞上皮置換性の腫瘍が多いですけれども、進行すればPapillaryもいればAcinarもいるというように分かれていくので、やはりヘテロな腫瘍だということは臨床的にも理解しています。
その中でアファチニブに対する耐性を持つ腫瘍が残るほうが、現在我々が使える治療の手札としては、うまく治療がいくのかなと思いました。先ほどの高阪先生のデータは人工的な条件下のものというお話ではありましたけれども、一つそこからヒントを得て、アファチニブからオシメルチニブへのシークエンスは選択肢の一つとして考慮できると考えます。

Uncommon mutation、L858Rの治療について
解良先生:
Uncommon mutationに対する1次治療のアファチニブのデータについては、田宮先生から非常に分かりやすくお話をいただきました。T790Mも約30%の頻度で出るので、その後の治療としてオシメルチニブを選択できるという可能性が十分あるというお話でした。先生方はどう考えていらっしゃいますか?

角先生:
田宮先生のご講演にもありましたが、PFS延長のデータからアファチニブを使用することが多いです。そして、耐性時にT790Mが陰性の場合、可能な限り2次治療にABCPも考慮した治療シークエンスにしています。

解良先生:
L858Rについては、先生方はどのように治療戦略を考えていらっしゃいますか?

田宮先生:
基本的に、当院としてはオシメルチニブが使われることが多いと思います。患者さんにはオシメルチニブ単剤、アファチニブ単剤、RELAYレジメン(ラムシルマブ+エルロチニブ併用)の3パターンの治療を説明していますが、RELAY試験は脳転移症例を含まないデータである点には留意しています。CJLSG1903を参考に、脳転移なしのL858Rに関してはジオトリフをRELAY同様にしっかりと土台に並べていっていいのではないかと考えて、診療で説明しています。脳転移がある方に関しては、オシメルチニブを優先して使っています。

角先生:
田宮先生からもありましたように脳転移がポイントになると考えています。初回治療の時に症候性か無症候性か、その数がどれくらいかということを考慮します。無症候性で少ない数であれば、局所療法を加えつつアファチニブ治療をひとつの選択肢と考えています。

2次治療以降の治療戦略について

2次治療以降の治療戦略について
解良先生:
2次治療以降のEGFR-TKIについてはなかなかガイドラインに反映されにくいですが、恐らく先生方はいろいろと工夫されていると思います。EGFR-TKIリチャレンジに対する先生方の考え方はいかがでしょうか。

泰先生:
私の患者さんはリチャレンジを100%近く受けていますね。

角先生:
私も必ずTKIのリチャレンジは行うようにしています。1次治療のEGFR-TKIの後、化学療法やIOによる治療が繰り返されると腫瘍はヘテロな状態になると思いますが、その中にはEGFRの変異が入っていると考えられますので、そこで広くまた増えてきたクローンに対して治療として効果を期待しています。

解良先生:
高阪先生、TKIに感受性がある人は耐性化してもまたすぐ感受性が戻ってきたりするのでしょうか。

高阪先生:
私らがDishの中でやっているような実験において、一度耐性化したがん細胞が感受性を獲得することは基本的にありません。腫瘍自体が何か新たなゲノムの変異やエピゲノムの変異を獲得して、それが腫瘍の感受性の再獲得につながるということはあまり考えにくいです。
一方で、耐性化のメカニズムが周りの環境に起因している場合、例えば薬剤が腫瘍に到達できなくなるとか、あるいは何か微小環境の影響があるという場合であれば、それはすぐに変化するものなので、また薬剤に対する感受性が回復する可能性があるかと思います。

高齢者の治療について

高齢者の治療について
解良先生:
今回のガイドラインでは、TKI治療の高齢者の項目が削除されたわけですが、実際に先生方は、75歳以上の高齢者にEGFR-TKIを選択される際、どのようなことに注意していますか?

田宮先生:
私は高齢者にも若齢者にもアファチニブを投与しますが、その場合特に高齢者では減量を考慮します。

角先生:
高齢者ではどうしてもEGFR-TKIの副作用が出やすくなってしまいます。特に間質性肺疾患(ILD)が出てしまうと高齢者は肺に余力がない場合が多いですので、肺の状況も考えた上で、治療選択を考慮します。アファチニブについては、高齢患者さんで40mgから開始しても、30mg、20mgとその方に合う用量にアジャストしていくようにしています。

実際に80歳以上の人に対して治療した場合、例えば4次治療、5次治療、6次治療までは現実的に厳しいと思いますが、先生方はどのようにお考えになりますか?

解良先生:
実際に80歳以上の人に対して治療した場合、例えば4次治療、5次治療、6次治療までは現実的に厳しいと思いますが、先生方はどのようにお考えになりますか?

角先生:
80歳以上の患者さんは化学療法にアンフィットの方も多いですので、TKI-TKIシークエンスがもしかしたら適しているのかなと思います。気管支鏡検査や再生検に対しては高齢だからといって躊躇する必要はないですし、検査の技術や検出感度は上がっていますので、アファチニブとオシメルチニブで最大値を目指すのも選択肢の一つと考えます。

泰先生:
確かに80歳以上の方はEGFR-TKIが終わった後はもう治療はしなくてよいとおっしゃる方が多い印象です。患者さんがEGFR-TKIでのみ治療を希望していて、しかしそれでもなるべく治療を継続したいと考えているのであれば、TKI-TKIシークエンスを想定して治療を開始することで長く治療を継続できる可能性があると思います。

副作用マネジメントについて
解良先生:
アファチニブと下痢についてエキスパートの先生方からメッセージを頂けますでしょうか?

泰先生:
私は患者さんにアファチニブを処方する際、下痢が5回以上出たら1回止めて電話するように伝えています。そして患者さんから状況を伺って、忍容性が厳しいと思う場合には減量します。グレード3になってから減量するのはなかなか難しいので、早めの減量を心がけていて、患者さんにも治療開始前にそう説明しています。

解良先生: 実際、患者さんに我慢させてしまうと、患者さんは非常につらい期間があってネガティブな印象を持つので、おっしゃるとおり早め早めに減量して患者さんに適切な量に速やかに移行することが非常に重要ですね。

解良先生:
実際、患者さんに我慢させてしまうと、患者さんは非常につらい期間があってネガティブな印象を持つので、おっしゃるとおり早め早めに減量して患者さんに適切な量に速やかに移行することが非常に重要ですね。
一方でアファチニブを減量することで効果が減るのではないかと患者さんから言われることについて、先生方はどのようにお考えになりますか?

角先生:
Lux-Lung 3検証試験において、忍容性に応じて、アファチニブを減量してもPFSに差がないという報告があります。
用量を無理に維持して治療を続けてしまうことで、副作用による治療中断が長くなる恐れがありますので、できる限り薬剤を長く長期に継続してPFSを延ばすためには適切な減量が必要になってくるかと思います。

結語
解良先生:
先生方ありがとうございました。パネルディスカッションでは、非常に様々なテーマについて議論してきました。皆様には本日の内容を明日からの臨床にぜひお役立ていただければと思います。
治療は長期にわたることから、1次治療、2次治療、3次治療以降も、全て合わせて患者さんごとに適した治療タイミングやEGFR-TKIを考えながら治療をすることが重要です。
患者さんが少しでも長く生きられるよう、今後のEGFR-TKI治療について考えていただければと思います。

基調講演Ⅰ 「不均一性腫瘍モデルを用いたEGFRチロシンキナーゼ阻害剤併用療法の評価」

  1. Kohsaka S, et al. Sci Transl Med. 2017;9(416):eaan6566.

基調講演Ⅱ 「遺伝子タイプ別による治療を再考する(Uncommon mutation)」

  1. Kohsaka S, et al. Sci Transl Med. 2017;9(416):eaan6566.
  2. Sharma SV, Bell DW, Settleman J, Haber DA. Epidermal growth factor receptor mutations in lung cancer. Nat Rev Cancer. 2007 Mar;7(3):169-81. doi: 10.1038/nrc2088. PMID: 17318210.

基調講演Ⅲ 「遺伝子タイプ別による治療を再考する~L858R~」

  1. Cho J. et al. Cancer Res. 2013;73(22):6770.
  2. Kohsaka S, et al. Sci Transl Med. 2017;9(416):eaan6566.
  3. Yuan XH, et al. Oncol Lett. 2018;16(2):2105-2112.
  4. Offin M. et al. Clin Cancer Res. 2019;25(3):1063-1069.
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