糖尿病性腎臓病(DKD)の病態を考慮した糖尿病診療

サイトへ公開: 2021年09月28日 (火)

阿部先生は、長崎大学病院や臨床病院でのご勤務ならびにロンドン大学で研究員をお勤めの後、2007年以降仁医会病院ならびに内科阿部医院にて理事長や院長の立場を勤められております。
腎機能が悪化する病態の早期発見、早期治療を通じて多くの透析患者さんならびに糖尿病のある方のご診療にあたられております。

■糖尿病診療で心がけていること/重視していることについて

 

私自身は長く腎臓を専門として診療してまいりましたが、透析に至る患者さんの原疾患の多くは糖尿病患者さんでした。
実際に 1998 年以降、現在に至るまで透析導入患者の原疾患として最も高い割合を占めています。近年、その伸びは止まったものの、慢性糸球体腎炎、腎硬化症を抑えて原疾患の1位であることは変わりなく、糖尿病患者さんの腎機能をいかに守るかが重要であると考えて診療にあたっています。

図1

糖尿病診療で心がけていること/重視していることについて

■糖尿病患者の腎機能悪化の要因と慢性腎臓病(DKD)について

 

腎機能悪化の指標として、アルブミン尿と eGFR が重要となります。
最近、糖尿病性腎臓病(DKD)という言葉をよく耳にしますが、DKD は典型的な糖尿病性腎症に加え、顕性アルブミン尿を伴わないままeGFR が低下する非典型的な糖尿病関連腎疾患を含む概念です。
このDKDの臨床経過には主に2つのパターンが認められます。
1つ目はアルブミン尿がどんどん増え(A1からA3へ)、その後 eGFRが低下してくる(G1からG5へ)パターンです。こちらは高血糖状態から糸球体内圧の上昇を招き、その後糸球体硬化像をきたす、いわゆる典型的な糖尿病性腎症と考えられます。
2つ目のパターンは最近の糖尿病患者さんで見られる事が多くなっていますが、アルブミン尿はほとんど呈さない(A1~A2)の状態でありながら、eGFR がどんどん低下していく(G1からG5)というイメージで経過をたどります。こちらは加齢や糖尿病が影響した動脈硬化から腎臓病に至っていると思われます。
しかし、実際には 2つパターンを明確に分ける事は難しく、2パターンが混在した患者さんが多いと考えられます。実臨床の場では、DKDを呈した糖尿病患者において腎機能が悪化しやすい患者像はどういったものか、を理解しておくことが重要です。糸球体過剰ろ過が起こっている、アルブミン尿を呈しているまたは治療抵抗性である、高血圧を併発している、高齢であるといった患者像は腎機能が低下しやすいと考えられています。

図2

■糖尿病患者の腎機能悪化の要因と慢性腎臓病(DKD)について 

■どのように糖尿病患者さんを治療していくか

 

DKD治療では、「尿中アルブミン量」と「eGFRの低下する速さ」が重要なポイントと考えられます。
ADVANCE試験において、アルブミン尿増加とGFRの低下は腎イベントを増加させることが示されておりますし、実は心血管イベントの増加にもつながっている事が示されております。
つまり腎機能を意識してアルブミン尿やeGFRの低下を防ぐことは、心機能にも影響があると考えます。

図3

■どのように糖尿病患者さんを治療していくか

また最近の報告では日本人2型糖尿病患者における初発イベントの内訳は、CKDと心不全が合計で70%にも及んでおり、糖尿病患者さんの将来の腎機能・心機能の両方を意識して治療を行う事が重要とされています。

図4

■どのように糖尿病患者さんを治療していくか

■糖尿病治療薬の選択

糖尿病治療ガイドの治療目標には、健康な人と変わらない人生を送って頂くため、合併症の発症・進展を阻止する事が記載されています。
これらの治療目標を達成するためにも、アジア人で様々なエビデンスが集積され、1日1回1錠で治療変更できるジャディアンス・トラディアンスという薬剤は有用な選択肢の1つと考えます。

図5

■糖尿病治療薬の選択
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