日本人高齢者2型糖尿病を対象としたジャディアンスの有効性と安全性

サイトへ公開: 2023年10月31日 (火)

日本人高齢者2型糖尿病を対象とした国内第Ⅳ相試験における
ジャディアンスの有効性と安全性(EMPA-ELDERLY試験)

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高齢者糖尿病の特徴

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日本を含む6ヵ国で行われた大規模国際共同コホート研究において、日本人集団では、心不全と慢性腎臓病が2型糖尿病の心血管疾患または腎疾患の初発イベントとなる割合が全体集団よりも高いことが示唆されました。

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厚生労働省による患者調査では、糖尿病のある方の77.2%が65歳以上であると報告され、さらに、年齢が上がるほど、虚血性心疾患や慢性腎臓病を合併する患者さんの数が増えることが示されました。

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65歳以上の高齢者糖尿病は、合併症を有する割合が若年者よりも高いだけでなく、サルコペニア、フレイル等の老年症候群を併発する可能性が高い、薬物療法におけるリスクが高いなどの特徴を有することが知られています。
そのため、高齢者糖尿病の治療においては、病態の特徴を踏まえた治療介入が重要です。

日本人高齢者2型糖尿病を対象としたEMPA-ELDERLY試験

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高齢者糖尿病に対するSGLT2阻害薬の影響を検討するため、国内の18施設において、65歳以上の2型糖尿病129例を対象としたプラセボ対象無作為化二重盲検比較試験、EMPA-ELDERLY試験が行われました。
EMPA-ELDERLY試験では、糖尿病基礎治療に加えてジャディアンス10mgまたはプラセボを52週投与し、主要評価項目としてHbA1cのベースラインからの変化量を検証するとともに、副次評価項目として体組成、握力、5回椅子立ち上がりテストの所要時間のベースラインからの変化量について、統計解析書での事前規定項目として体重について、調査しました。

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患者背景は、平均年齢がジャディアンス群74.2歳、プラセボ群74.0歳、平均BMIがそれぞれ25.7kg/m2、25.4kg/m2、平均HbA1cは両群とも7.6%でした。

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日本人高齢者2型糖尿病に対するジャディアンス10mgの1日1回経口投与による、プラセボ群と比較したジャディアンス10mg群の52週時のHbA1cのベースラインからの変化量は-0.57%であり、ジャディアンス10mg群で有意なHbA1c低下作用を示したことから(p<0.0001、MMRM)、日本人高齢者2型糖尿病においてもジャディアンス10mg 1日1回投与による血糖改善効果が確認されました。

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主要評価項目のサブグループ解析では、ベースラインの年齢、性別、2型糖尿病診断からの年数、eGFR、BMIにかかわらず、ジャディアンス10mg群は全てのカテゴリーでプラセボ群よりもHbA1cが低下したことが示されました。

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【参考情報】
52週時のベースラインからの変化量の、ジャディアンス10mg群とプラセボ群の差は、体重が-2.37kg(p<0.0001)、筋肉量が-0.61kg(p=0.2310)、除脂肪体重が-0.53(p=0.1632)、体脂肪量が-1.84kg(p<0.0001)、体水分量が-0.63kg(p=0.0384)、骨格筋指数が-0.08kg/m2(p=0.3725)、骨塩量が-0.03kg(p=0.1975)、握力が-0.3kg(p=0.4208)、5回椅子立ち上がりテストが0.0秒(p=0.9276、いずれもANCOVA)でした。

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EMPA-ELDERLY試験における有害事象の発現率は、ジャディアンス10mg群で73.8%(48/65例)、プラセボ群で71.9%(46/64例)でした。
投与中止に至った有害事象は、それぞれ4.6%(3/65例)、4.7%(3/64例)、重篤な有害事象はそれぞれ12.3%(8/65例)、12.5%(8/64例)、死亡に至った有害事象はプラセボ群1.6%(1/64例)であり、ジャディアンス10mg群では報告されませんでした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で便秘10.8%(7/65例)、発熱6.2%(4/65例)等、プラセボ群で鼻咽頭炎6.3%(4/64例)、下痢6.3%(4/64例)等でした。
投与中止に至った有害事象、重篤な有害事象、死亡に至った有害事象の内訳は表のとおりです。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査

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また、日本におけるジャディアンスの安全性を評価するため、特定使用成績調査が実施されました。

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副作用は全患者の12.91%で報告されました。事前規定された年齢別のサブグループ解析では、65歳未満の11.82%、65歳以上75歳未満の14.93%、75歳以上の14.46%で副作用の発現が報告されました。
低血糖は、全患者の0.44%、65歳未満の0.36%、65歳以上75歳未満の0.43%、75歳以上の0.96%で報告されました。DKAは報告されませんでした。
また、筋力低下に関連する副作用は、全患者で1例でした。
その他の安全性検討事項の発現率は、表の通りでした。

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また、PMSでは事前規定されたBMI別のサブグループ解析が行われました。
副作用は、BMI 20kg/m2未満群の11.66%、20kg/m2以上25kg/m2未満群の12.03%、25kg/m2以上30kg/m2未満群の13.88%、30kg/m2以上群の14.90%で報告されました。
安全性検討事項である低血糖は、BMI 20kg/m2未満群の0.61%、20kg/m2以上25kg/m2未満群の0.59%、25kg/m2以上30kg/m2未満群の0.57%、30kg/m2以上群の0.25%で報告されました。DKAは報告されませんでした。
その他の安全性検討事項の発現率は、表の通りでした。

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【参考情報】
ベースラインからの体重の平均変化量は、全患者で-2.96kg、BMI 20kg/m2未満群で0.08kg、20kg/m2以上25kg/m2未満群で-1.51kg、25kg/m2以上30kg/m2未満群で-2.96kg、30kg/m2以上群で-4.28kgと報告されました。

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ジャディアンスの適正使用にあたって、適度な水分補給の指導を行ってください。
SGLT2阻害薬の投与初期の方には尿量増加がみられることから、適度な水分補給が重要となるため、喉が渇く前に水分を摂るよう、お伝えください。
高齢の方の場合は投与継続期においても、また、SGLT2阻害薬の投与にかかわらず、普段からこまめに水分を摂るよう勧めてください。

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2型糖尿病のある方に対する長期的な影響を見据え、ジャディアンスの処方をご検討ください。

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