心腎代謝連関を考慮した2型糖尿病治療のためのジャティアンスのエビデンス

サイトへ公開: 2023年03月30日 (木)
心腎代謝連関を考慮した2型糖尿病治療のための疫学データとジャディアンスのエビデンス心腎代謝連関を考慮した2型糖尿病治療のための疫学データとジャディアンスのエビデンス 02

日常診療において、糖尿病治療では、どのようなことを重視されますか

図1

日常診療において、糖尿病治療では、どのようなことを重視されますか 

HbA1c 7.6%、収縮期血圧134mmHg、拡張期血圧82mmHg、eGFR 73.8mL/min/1.73m²。高血圧治療のためにARBを服用している患者さんに対して、先生方はどのような点を重視して、糖尿病治療を行っていらっしゃいますか。

心腎代謝疾患は、様々なメカニズムを介して相互作用を示す

心腎代謝疾患は、様々なメカニズムを介して相互作用を示す

2型糖尿病等の代謝疾患と心血管疾患、慢性腎臓病(CKD)は、様々なメカニズムで相互作用を示します。
2型糖尿病は、主に高血糖状態とインスリン抵抗性を介して、心血管や腎臓に悪影響を及ぼします。
高血糖状態は、終末糖化産物を産生し、細胞のシグナル伝達経路を介して血管を硬化させることで、心機能障害や腎機能障害を誘発、悪化させます。この糖尿病に伴う腎機能障害では、糸球体過剰濾過が特徴的であり、加えて糸球体基底膜の肥厚等による糸球体の硬化が生じます。
インスリン抵抗性は、一酸化窒素の産生抑制等を介して心臓の拡張機能不全を引き起こしたり、心筋でのグルコース代謝を抑制して心機能障害の増悪を引き起こしたりします。
これ以外にも、心腎代謝疾患は様々な経路を介して相互作用を示します。そこで、糖尿病と腎疾患、心血管疾患の関連を示す疫学データを紹介します。

糖尿病はCKDの独立したリスク因子であるが、厳格な血糖管理による腎機能低下への影響は示されていない

図3

糖尿病はCKDの独立したリスク因子であるが、厳格な血糖管理による腎機能低下への影響は示されていない

糖尿病と腎機能低下の関連を示すデータとして、国内の地域ベースの疫学研究で、糖尿病はCKDの独立したリスク因子であることが示されました。

図4

糖尿病はCKDの独立したリスク因子であるが、厳格な血糖管理による腎機能低下への影響は示されていない 02

しかし、2型糖尿病を対象とした臨床研究のメタアナリシスでは、厳格な血糖管理を行っても、腎機能低下や末期腎不全への進展に対する一貫した影響があるとはいえないと報告されました。
前述のとおり、糖尿病がCKDのリスク因子であることから、糖尿病治療では、血糖管理に加え、腎機能低下に対する影響を考慮した薬剤が選択肢の一つとなります。

糖尿病は、心血管死の独立したリスク因子であるが、特定の糖尿病治療薬または厳格な血糖管理の心不全に対する影響は十分に解明されていない

図5

糖尿病は、心血管死の独立したリスク因子であるが、特定の糖尿病治療薬または厳格な血糖管理の心不全に対する影響は十分に解明されていない 

糖尿病と心血管疾患の関連を示すデータとして、糖尿病のある方では、高血圧・脂質異常症・喫煙等のリスク因子がない場合でも、糖尿病のない方よりも心血管死のリスクが高いことが示され、糖尿病は心血管死の独立したリスク因子であると考えられました。

図6

糖尿病は、心血管死の独立したリスク因子であるが、特定の糖尿病治療薬または厳格な血糖管理の心不全に対する影響は十分に解明されていない 02

しかし、2型糖尿病のある方または2型糖尿病のリスクのある方を対象として、糖尿病治療による心血管疾患への影響を検討した臨床試験で得られたデータからは、特定の糖尿病治療薬または厳格な血糖管理が心血管疾患に対して影響するとはいえませんでした。
糖尿病治療薬では、血糖管理とともに心血管疾患に対する影響を考慮した薬剤が選択肢の一つとなります。

ジャディアンスのエビデンス ①2型糖尿病における血糖値への効果

ジャディアンスのエビデンス ①2型糖尿病における血糖値への効果

ジャディアンスには複数のエビデンスが報告されており、早期からの心腎代謝連関を見据えた糖尿病治療の選択肢の一つとなっています。
まずは、ジャディアンスの長期にわたる血糖マネジメントに関するエビデンスです。
食事・運動療法で血糖マネジメントが不十分(HbA1cが7.0%以上かつ10.0%以下)で薬物療法を行っていない2型糖尿病899例を対象としたEMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験では、投与76週後においてジャディアンス群およびシタグリプチン群でHbA1cがベースラインよりも低下し、その調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%であったと報告されました。
なお、本試験で報告された有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン100mg群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ4.9%(11/224例)、4.0%(9/223例)、4.9%(11/223例)、6.6%(15/229例)、重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25/224例)、7.2%(16/223例)、8.1%(18/223例)、10.0%(23/229例)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン100mg群0.4%(1/223例)、プラセボ群0.4%(1/229例)に認められました。投与中止に至った有害事象、および重篤な有害事象の内訳については、論文に記載がありませんでした。
いずれかの群で5%以上となった主な有害事象は表のとおりでした。

ジャディアンスのエビデンス ②2型糖尿病における腎機能への影響

図8

ジャディアンスのエビデンス ②2型糖尿病における腎機能への影響

EMPA-REG OUTCOME®試験の腎アウトカム解析では、心血管疾患を有する2型糖尿病を対象に、ベースライン時の正常アルブミン尿、微量アルブミン尿、顕性アルブミン尿に層別化してジャディアンスの腎機能に対する影響を検討しました。
なお、本試験には、eGFR 60以上(正常または高値、軽度低下)で顕性アルブミン尿を呈さない患者4,893例、eGFR低下例で顕性アルブミン尿を呈さない糖尿病性腎症(DKD)1,290例、eGFRに関わらず顕性アルブミン尿を呈するDKD 769例が含まれました。

図9

ジャディアンスのエビデンス ②2型糖尿病における腎機能への影響02

【参考情報】
全体集団の解析における腎イベントの1,000例・年あたりの発現割合は、顕性アルブミン尿への進展でジャディアンス群41.8例、プラセボ群64.9例(ハザード比0.62、95%CI:0.54~0.72)、腎代替療法(透析等)の開始でジャディアンス群1.0例、プラセボ群2.1例(ハザード比0.45、95%CI:0.21~0.97)でした。

なお、本試験で報告された有害事象は、ベースライン時に正常アルブミン尿の患者において、プラセボ群90.8%(1,255/1,382例)、ジャディアンス10mg群88.6%(1,245/1,405例)、ジャディアンス25mg群89.4%(1,237/1,384例)、ベースライン時に微量アルブミン尿の患者において、プラセボ群92.9%(627/675例)、ジャディアンス10mg群91.6%(591/645例)、ジャディアンス25mg群91.1%(631/693例)、ベースライン時に顕性アルブミン尿の患者において、プラセボ群94.2%(245/260例)、ジャディアンス10mg群92.7%(242/261例)、ジャディアンス25mg群94.0%(233/248例)に認められました。

投与中止に至った有害事象はそれぞれ17.1%(236/1,382例)、15.7%(221/1,405例)、15.1%(209/1,384例)、21.2%(143/675例)、18.0%(116/645例)、17.6%(122/693例)、27.7%(72/260例)、28.0%(73/261例)、25.4%(63/248例)、重篤な有害事象はそれぞれ39.2%(542/1,382例)、33.9%(476/1,405例)、35.5%(492/1,384例)、44.3%(299/675例)、40.3%(260/645例)、41.1%(285/693例)、55.4%(144/260例)、47.5%(124/261例)、51.6%(128/248例)、死亡はそれぞれ3.8%(52/1,382例)、3.7%(52/1,405例)、2.8%(39/1,384例)、7.0%(47/675例)、3.7%(24/645例)、3.5%(24/693例)、7.7%(20/260例)、7.7%(20/261例)、6.5%(16/248例)に認められました。
また、その他にも、表のとおりの有害事象が報告されました。

ジャディアンスのエビデンス ③2型糖尿病における心不全への影響

図10

ジャディアンスのエビデンス ③2型糖尿病における心不全への影響

【参考情報】
EMPA-REG OUTCOME®試験は、リスク因子(高血圧、脂質異常症等)に対してガイドライン等で推奨される標準治療(スタチン、ACE阻害薬、ARB、アスピリン、β遮断薬、カルシウム拮抗薬の投与等)を受けている2型糖尿病を対象に実施しました。事前に規定されたその他の評価項目として、心不全による入院(HHF)への影響を検討し、ベースラインでの心不全の有無別の事前に規定されたサブグループ解析を行いました。

図11

【参考情報】 

【参考情報】
ジャディアンス群ではプラセボ群と比較して、HHFの発現リスクが35%低下しました(HR=0.65、95%CI:0.50~0.85、p=0.002、Cox比例ハザードモデル)。さらに、心不全の有無別のサブグループ解析の結果において、ベースライン時に心不全がない場合でもジャディアンス群のHHFの発現リスクがプラセボ群と比べて低下しました(HR=0.59、95%CI:0.43~0.82)。
本試験での有害事象の発現率は、ベースライン時の心不全がある場合でプラセボ群94.3%(230/244例)、ジャディアンス群89.4%(413/462例)、ベースライン時の心不全がない場合でプラセボ群91.4%(1,909/2,089例)、ジャディアンス群90.3%(3,817/4,225例)でした。投与中止に至った有害事象、重篤な有害事象および死亡の発現率は、こちらの表のとおりで、それぞれの内訳について論文に記載がありませんでした。
主な有害事象は低血糖で、心不全がある場合でプラセボ群27.9%(68/244例)、ジャディアンス群24.9%(115/462例)、心不全がない場合でプラセボ群27.9%(582/2,089例)、ジャディアンス群28.1%(1,188/4,225例)に認められました。

図12

【参考情報】 02

糖尿病治療の目標の一つは、糖尿病の合併症の発症、進展を阻止して、糖尿病のない方と変わらない寿命とQOLの実現を目指すことです1
今回ご紹介したように、ジャディアンスには、心血管疾患や腎機能に対する影響に関するエビデンスがあります。

図13

【参考情報】 03

ジャディアンスは、2型糖尿病治療薬として、初期投与量の10mg錠から25mg錠への増量が可能です。
また、DPP-4阻害薬であるトラゼンタとの配合錠、トラディアンスを選択していただくことで、剤型や錠数を変えずに糖尿病の治療強化を行うことができます。

2型糖尿病がある方に対する合併症リスク低減を考慮した糖尿病治療の選択肢として、ジャディアンスをご検討ください。

【引用】

  1. 日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023, p31-33, 文光堂, 2022.
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