CKD 合併リスクを考慮した2 型糖尿病治療とジャディアンスのエビデンス
![CKD合併リスクを考慮した2型糖尿病治療の話題と ジャディアンスのエビデンス](/jp/sites/default/files/inline-images/0420_jad_ckd_gappei_con_w1152h648_sam_1_0.jpg)
『CKDにおける糖尿病管理に関する2022年KDIGOガイドライン』
![『CKDにおける糖尿病管理に関する2022年KDIGOガイドライン』](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-01_0.jpg)
国際的腎臓病ガイドライン機構であるKDIGO(Kidney Disease Improving Global Outcomes)による『CKDにおける糖尿病管理に関する2022年KDIGOガイドライン』が2022年11月に改訂されました。
本ガイドラインでは、CKDを合併する患者さんの糖尿病治療の第一選択治療として、SGLT2阻害薬があげられ、eGFR 20mL/min/1.73m2以上で開始、透析または腎移植まで継続すると記載されています。
日常診療において、糖尿病治療では、どのようなことを重視されますか
![日常診療において、糖尿病治療では、どのようなことを重視されますか](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-02_0.jpg)
HbA1c 7.6%、eGFR 62mL/min/1.73m2。このような、CKD等の合併症がなく薬物治療を行っていない患者さんに対して、薬物治療を開始する場合、先生はどのようなことを重視されますか。
ジャディアンスのエビデンス
①2型糖尿病に対する効果
![2型糖尿病に対する効果](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-05_0.jpg)
冒頭に紹介したSGLT2阻害薬の一つであるジャディアンスは、早期から心腎代謝連関を見据えた糖尿病治療における有用な選択肢の一つとしてのエビデンスが複数報告されています。
まずは、ジャディアンスの長期にわたる血糖管理に関するエビデンスです。
食事・運動療法で血糖管理が不十分(HbA1cが7.0%以上10.0%以下)で薬物療法を行っていない2型糖尿病899例を対象としたEMPA-REG EXTENDTM MONO試験では、投与76週後においてジャディアンス群およびシタグリプチン群でHbA1cがベースラインよりも低下し、その調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%であったと報告されました。
なお、本試験で報告された有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン100mg群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ4.9%(11/224例)、4.0%(9/223例)、4.9%(11/223例)、6.6%(15/229例)、重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25/224例)、7.2%(16/223例)、8.1%(18/223例)、10.0%(23/229例)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン100mg群0.4%(1/223例)、プラセボ群0.4%(1/229例)に認められました。投与中止に至った有害事象および死亡を含む重篤な有害事象の内訳については、論文に記載がありませんでした。
いずれかの群で5%以上となった主な有害事象は表の通りでした。
ジャディアンスのエビデンス
②2型糖尿病における腎機能への影響
EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)腎アウトカム
サブグループ解析 UACR
試験デザイン
![②2型糖尿病における腎機能への影響](/jp/sites/default/files/inline-images/%281%2923%E5%B9%B45%E6%9C%88eDTL_ERO%E8%85%8E%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%A0_%E8%A9%A6%E9%A8%93%E6%A6%82%E8%A6%81.png)
国内で承認された用法及び用量(一部抜粋)
<2型糖尿病>
通常、成人にはエンパグリフロジンとして10mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら25mg1日1回に増量することができる。
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Wanner C, et al.: N Engl J Med. 2016; 375(4): 323-34. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
Cherney DZI et al.: Lancet Diabetes Endocrinol. 2017; 5(8): 610-21. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
続いて紹介するEMPA-REG OUTCOME®試験では、2型糖尿病のある方に対するジャディアンスの腎機能への影響を検討しました。
本試験での治療期間中央値は2.6年(136週)、観察期間中央値は3.1年(164週)でした。
EMPA-REG OUTCOME®試験におけるベースライン時腎機能のカテゴリー
![(2)23年5月eDTL_ERO腎アウトカム_ベースライン時腎機能](/jp/sites/default/files/inline-images/%282%2923%E5%B9%B45%E6%9C%88eDTL_ERO%E8%85%8E%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%A0_%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%99%82%E8%85%8E%E6%A9%9F%E8%83%BD.png)
DKD:糖尿病性腎臓病、eGFR:推算糸球体濾過量、UACR:尿中アルブミン/クレアチニン比
2型糖尿病の治療を目的として投与する場合、中等度腎機能障害患者ではジャディアンスの投与の必要性を慎重に判断してください。高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者ではジャディアンスの効果が期待できないため、投与しないでください。また、腎機能障害患者においては、経過を十分に観察し、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m2未満に低下した場合はジャディアンスの投与の中止を検討してください。詳細は、製品電子添文をご参照ください。
Wanner C, et al.: Diabetes Obes Metab. 2020; 22(12): 2335-47.より作図
本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
本試験では、アルブミン尿区分が正常から正常高値、または微量アルブミン尿でeGFR≧60mL/min/1.73m2の方を含む、幅広い腎機能ステージを対象としました。
![EMPA-REG OUTCOME®試験におけるベースライン時腎機能のカテゴリー](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-06_0.jpg)
【参考情報】
本図は、アルブミン尿区分がベースライン時から移行した患者さんの割合の推移です。
正常アルブミン尿から微量および顕性アルブミン尿に移行した患者さんの割合の変化は左図の通りで、ジャディアンス群のプラセボ群に対するハザード比は0.84(95%CI:0.74~0.95)でした。
微量アルブミン尿から正常アルブミン尿に移行した患者さんの割合の変化は右図の通りで、ジャディアンス群のプラセボ群に対するハザード比は1.43(95%CI:1.22~1.67)でした。
これらはいずれも4年間の推移です。
![EMPA-REG OUTCOME®試験におけるベースライン時腎機能のカテゴリー02](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-07_0.jpg)
【参考情報】
また、アルブミン尿区分別のeGFRの推移は図の通りでした。こちらも4年間の推移を示しています。
EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)腎アウトカム
安全性
![EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)腎アウトカム](/jp/sites/default/files/inline-images/%283%2923%E5%B9%B45%E6%9C%88eDTL_ERO%E8%85%8E%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%A0_%E5%AE%89%E5%85%A8%E6%80%A7.png)
投与中止に至った有害事象および死亡を含む重篤な有害事象の内訳について論文に記載がなかった。
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Wanner C, et al.: N Engl J Med. 2016; 375(4): 323-34. (Suppl)
本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
本試験の有害事象は、eGFR 60mL/min/1.73m2未満のジャディアンス群の91.3%(1,107/1,212例)、プラセボ群の95.1%(577/607例)、eGFR 60mL/min/1.73m2以上のジャディアンス群の89.9%(3,121/3,473例)、プラセボ群の90.5%(1,562/1,726例)で認められ、主な有害事象は低血糖[eGFR 60mL/min/1.73m2未満のジャディアンス群32.3%(391/1,212例)、プラセボ群38.4%(233/607例)、eGFR 60mL/min/1.73m2以上のジャディアンス群26.3%(912/3,473例)、プラセボ群24.2%(417/1,726例)]等でした。重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象については表の通り報告されました。
![EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)腎アウトカム](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-08_0.jpg)
2型糖尿病に対する効果と腎機能に対する影響のエビデンスがあるジャディアンスは、10mg錠と25mg錠での用量調整が可能です。また、SGLT2阻害薬単剤療法での血糖管理が困難な患者さんに対しては、トラディアンス配合錠を選択していただくことで、1日1回1錠のままでの治療強化が可能です。
![EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)腎アウトカム02](/jp/sites/default/files/inline-images/0425_jad_ckd_gappei_con_sra-09_0.jpg)
糖尿病の合併症の発症・進展の阻止は、糖尿病のない方と変わらない寿命とQOLの実現につながると考えられます1)。
2型糖尿病のある方に対する長期的な影響を見据え、ジャディアンスの処方をご検討ください。
【引用】
- 日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023, p31, 文光堂, 2022.
- 日本医師会 日本糖尿病対策推進会議 厚生労働省 糖尿病性腎症重症化予防プログラム(平成31年4月25日改定)