そこが気になる、ジャディアンス処方のための要点チェック

サイトへ公開: 2024年04月25日 (木)

2024年2月、SGLT2阻害薬 ジャディアンス10mgは、2型糖尿病、慢性心不全※1に加え、新たに慢性腎臓病※2(CKD)の効能又は効果が追加承認されました。本コンテンツでは、先生方が、CKD患者さんにジャディアンス10mgを処方する際に必要となる基本情報と、本剤のCKD患者への有効性および安全性を評価した国際共同第Ⅲ相試験(EMPA-KIDNEY試験)についてご紹介します。
※1 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
※2 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

ジャディアンスのCKDに対する用法及び用量は?

CKD※2に対するジャディアンスの投与は10mg1用量のみです。朝食前または朝食後のどちらにおいても服用可能です。
ジャディアンスでは、2型糖尿病および慢性心不全※1においても、通常、10mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与するとされています※3
※3 なお、2型糖尿病において効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら25mg1日1回に増量することができます。

CKD患者さんにおける、ジャディアンス10mgが投与可能なeGFR の範囲は?

CKDの適応では、eGFR 20mL/min/1.73m2以上の患者さんへの投与が可能です。20mL/min/1.73m2未満の患者さんへの投与については、「本剤投与中にeGFRが低下することがあり、腎機能障害が悪化するおそれがあるため、投与の必要性を慎重に判断すること」とされています。また、末期腎不全又は透析施行中の患者さんに対しては投与不可となっています。
2型糖尿病および慢性心不全※1における、ジャディアンス10mgが投与可能なeGFRの範囲はご覧のとおりです。

ジャディアンスの重大な副作用は?

ジャディアンスの重大な副作用は、低血糖(1.4%)、脱水(0.3%)、ケトアシドーシス(0.1%未満)、腎盂腎炎(0.1%未満)、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)(0.1%未満)、敗血症(0.1%未満)が電子添文上に記載されています。
その他の副作用はご覧のとおりです。

ジャディアンス10mgの薬価は?

ジャディアンス10mgの薬価は、1錠188.90円です。

ジャディアンスに配合剤はありますか?

ジャディアンスとDPP-4阻害薬 トラゼンタの配合剤である、トラディアンス配合錠APとトラディアンス配合錠BPがあります。ただし、トラディアンス配合錠の適応は2型糖尿病※4のみであることに留意してください。
※4 ただし、エンパグリフロジン及びリナグリプチンの併用による治療が適切と判断される場合に限る。

CKD患者を対象としたジャディアンスの臨床試験:EMPA-KIDNEY試験
試験概要は?

ジャディアンスの国際共同第Ⅲ相・検証試験 EMPA-KIDNEY試験では、腎疾患進行のリスクのあるCKD患者6,581例を対象に、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与したときの腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間に対する有効性および安全性をプラセボと比較検討しました。
主要評価項目は、腎疾患進行※5または心血管死の初回発現までの期間でした。その他の評価項目として、eGFRcr(CKD-EPI)の年間変化率(eGFRスロープ)についても評価しました。解析計画はご覧のとおりです。
※5 腎疾患進行:ESKD†1、eGFRcr(CKD-EPI)が10mL/min/1.73m2未満に持続的に低下†2、腎疾患による死亡、または無作為割付後にeGFRcr(CKD-EPI)が40%以上持続的に低下†2のいずれか。
†1 ESKDは、維持透析の開始または腎移植の実施と定義した。
†2 eGFRcr(CKD-EPI)の低下における「持続的」の定義は、以下のいずれかとした。
・    予定されたフォローアップ来院時に2回連続して(30日以上の間隔で)認められた場合。
・    予定された最終フォローアップ来院時、または死亡、同意撤回もしくは追跡不能となる前の最終予定来院時に認められた場合

また、本試験の患者背景はご覧のとおりであり、アルブミン尿、糖尿病合併の有無にかかわらず、幅広いeGFR値のCKD患者が組み入れられました。

主要評価項目(腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間)に関する結果は?

本試験では、CKD患者にジャディアンス10mgを投与した結果、主要評価項目である腎疾患進行または心血管死のリスクは、ジャディアンス10mg群で27%低下し、プラセボ群に対するジャディアンス10mgの優越性が検証されました。

さらに、主要評価項目についてサブグループ解析を行った結果、ベースラインにおける糖尿病合併の有無にかかわらずジャディアンス10mg群とプラセボ群の間に有意な差が認められました(糖尿病合併:ハザード比0.64、p<0.0001、糖尿病非合併:ハザード比0.83、p=0.0443、いずれも名目上のp値、Cox回帰モデル)。

その他の評価項目(eGFRの年間変化率(eGFRスロープ))に関する結果は?

本試験では、その他の評価項目としてeGFRの年間変化率(eGFRスロープ)について評価しました。
その結果、ベースラインから最終フォローアップ来院までの全期間で、ジャディアンス10mg群-2.16mL/min/1.73m2/年、プラセボ群-2.90であり、2ヵ月目の来院から最終フォローアップ来院までの慢性期では、ジャディアンス10mg群-1.37、プラセボ群-2.74でした。

なお、eGFRスロープとはeGFRの年間変化率で、負の値が小さいほど腎機能低下が緩やかであることを示します。
また、eGFRスロープの低下速度が0.5~1.0mL/min/1.73m2/年 より大きいことが、腎疾患進行のサロゲートエンドポイントのひとつであるとの報告もあります。

安全性に関する結果は?

治験薬投与期間中央値21.82ヵ月での有害事象発現率は、ジャディアンス10mg群43.9%(1,444/3,292例)、プラセボ群46.1%(1,516/3,289例)でした。
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)など、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)などでした。
重篤な有害事象の発現率は、ジャディアンス10mg群33.0%(1,086/3,292例)、プラセボ群35.4%(1,164/3,289例)でした。
投与中止に至った有害事象は、ジャディアンス10mg群7.0%(232/3,292例)、プラセボ群7.3%(240/3,289例)に認められました。
死亡に至った有害事象は、ジャディアンス10mg群3.8%(126/3,292例)、プラセボ群4.1%(135/3,289例)でした。
それぞれの有害事象における内訳はご覧のとおりです。

今回は、2024年2月にCKD※2に対する効能又は効果が新たに追加承認されたジャディアンス10mgの基本情報と、本剤の有効性および安全性を評価した国際共同第Ⅲ相試験(EMPA-KIDNEY試験)についてご紹介しました。
CKD※2治療における新たな選択肢のひとつであるジャディアンス10mgを、先生の診療にぜひお役立てください。
※2 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

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