2型糖尿病治療薬および慢性心不全※治療薬としてのジャディアンス

サイトへ公開: 2022年12月22日 (木)

※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る

  • 2型糖尿病は心不全の重大なリスク因子の一つであり、初発の心腎関連イベントとして心不全を発症する患者は約3割に上ります。このことから、2型糖尿病治療においては、血糖管理とともに将来の心不全リスク抑制を考慮することが重要であると考えられます。
  • 2型糖尿病のある方を対象としたEMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験において、ジャディアンス10mgまたは25mgは、1日1回の経口投与によってベースラインより有意なHbA1c低下作用を示すことが確認されました。
  • 左室駆出率が保たれた心不全および低下した心不全を対象としたEMPEROR-Preserved試験、EMPEROR-Reduced試験において、ジャディアンス10mgの1日1回の経口投与によって心血管死または心不全による入院のリスクが低下することが示されました。またベースラインでの糖尿病合併有無別の評価においても、ベースラインの糖尿病の有無に関わらず、同様のリスク低下が示されました。

2型糖尿病は将来的に心不全を合併することが多い

心臓・腎臓・代謝は相互に関連しているため、糖尿病をはじめとする代謝性疾患は、心臓および腎臓の疾患のリスク因子となります。
実際に2型糖尿病患者の約40%がCKDを併発、心不全患者の約30%が2型糖尿病を併発、心不全患者の約60%がCKDを併発している、という報告があります(図1)。

2型糖尿病は将来的に心不全を合併することが多い

図1

日本および欧州5カ国の2型糖尿病のある方を対象とした大規模国際共同コホート研究では、ベースラインで心腎疾患のない患者が初発の心腎関連イベントとして心不全を発症する割合は、全体集団で23.7%、日本人集団で30.6%でした。
このことから、2型糖尿病では血糖管理に加え、将来の心不全発症のリスクを抑制することを考慮した治療が必要であると考えられます(図2)。

2型糖尿病は将来的に心不全を合併することが多い02

図2

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス:血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹMONO)

糖尿病治療薬としてのSGLT2阻害薬ジャディアンスの有効性・安全性について解説します。
EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験は、2型糖尿病患者に対してジャディアンス10mgまたは25mgを1日1回投与し、その有効性や安全性をプラセボあるいはシタグリプチン100㎎と比較検討した試験です(図3)。

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)

図3

その結果、ジャディアンス群およびシタグリプチン群では投与76週後においてプラセボ群と比べて有意にHbA1cが低下しました。投与76週後におけるベースラインからのHbA1cの調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%でした(図4)。

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)02

図4

本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、ジャディアンス25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はジャディアンス10mg群4.9%(11/224例)、ジャディアンス25mg群4.0%(9/223例)、シタグリプチン群4.9%(11/223例)、プラセボ群6.6%(15/229例)に認められました。
重篤な有害事象はジャディアンス10mg群11.2%(25/224例)、ジャディアンス25mg群7.2%(16/223例)、シタグリプチン群8.1%(18/223例)、プラセボ群10.0%(23/229例)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン群0.4%(1/229例)、プラセボ群0.4%(1/223例)のみに認められました。
主な有害事象は、高血糖がジャディアンス10mg群8.9%(20/224例)、ジャディアンス25mg群4.9%(11/223例)、シタグリプチン群12.6%(28/223例)、プラセボ群27.5%(63/229例)、鼻咽頭炎がジャディアンス10mg群14.3%(32/224例)、ジャディアンス25mg群11.2%(25/223例)、シタグリプチン群12.1%(27/223例)、プラセボ群11.8%(27/229例)でした(図5)。
※投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象の内訳について論文に記載はありませんでした。

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)03

図5

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:
心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced)
(※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)

EMPEROR-Preserved試験およびEMPEROR-Reduced試験は、それぞれ左室駆出率が保たれた慢性心不全患者、左室駆出率が低下した慢性心不全患者を対象に、ジャディアンス10mgを1日1回経口投与したときの心不全による入院(HHF)、および心血管死のリスクに対する長期的な有効性および安全性をプラセボと比較検討した、国際共同第Ⅲ相・検証試験です(図6、7)。

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)

図6

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)02

主要評価項目である心血管死またはHHFの初回発現までの期間については、ジャディアンス10mg群はプラセボ群と比べて、Preserved試験では21%、Reduced試験では25%の有意な相対リスク低下が検証されました(図8)。

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)03

図8

EMPEROR-Preserved/Reduced試験の事前規定されたサブグループ解析として実施されたベースラインでの糖尿病合併有無別の評価において、ベースラインの糖尿病の有無に関わらず、ジャディアンス10mg群はプラセボ群に対し、心血管死またはHHFの初回発現のリスクが低下しました。
Preserved試験のベースラインでの糖尿病合併例におけるジャディアンス10mg群のプラセボ群に対するハザード比(95%信頼区間)は0.79(0.67~0.94)、糖尿病非合併例では0.78(0.64~0.95)でした(図9)。
Reduced試験のベースラインでの糖尿病合併例におけるジャディアンス10mg群のプラセボ群に対するハザード比(95%信頼区間)は0.72(0.60~0.87)、糖尿病非合併例では0.78(0.64~0.97)でした(図10)。

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)04

図9

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)05

図10 

【参考情報】
また、その他の副次評価項目である腎複合アウトカムについて、ジャディアンス10mgのプラセボに対するハザード比(95%信頼区間)は、EMPEROR-Preserved試験では0.95(0.73~1.24)、EMPEROR-Reduced試験では0.50(0.32~0.77)でした(図11)

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)06

図11

EMPEROR-Preserved試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群85.9%(2,574/2,996例)、プラセボ群86.5%(2,585/2,989例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はジャディアンス10mg群19.1%(571/2,996例)、プラセボ群18.4%(551/2,989例)に認められました。
重篤な有害事象はジャディアンス10mg群47.9%(1,436/2,996例)、プラセボ群51.6%(1,543/2,989例)に認められ、死亡に至った有害事象はそれぞれ9.6%(287/2,996例)、9.9%(297/2,989例)に認められました。
主な有害事象として、ジャディアンス10mg群では心不全15.0%(449/2,996例)、尿路感染7.9%(236/2,996例)、低血圧7.7%(232/2,996例)など、プラセボ群では心不全19.9%(594/2,989例)、高血圧8.6%(256/2,989例)、心房細動7.5%(223/2,989例)などが認められました(図12)。

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)07

図12

EMPEROR-Reduced試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群76.2%(1,420/1,863例)、プラセボ群78.5%(1,463/1,863例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はジャディアンス10mg群17.3%(322/1,863例)、プラセボ群17.6%(328/1,863例)に認められました。
重篤な有害事象はジャディアンス10mg群41.4%(772/1,863例)、プラセボ群48.1%(896/1,863例)に認められ、死亡に至った有害事象はそれぞれ9.7%(181/1,863例)、9.7%(181/1,863例)に認められました。
主な有害事象として、ジャディアンス10mg群では心不全17.8%(332/1,863例)、低血圧7.0%(130/1,863例)、腎機能障害5.6%(105/1,863例)など、プラセボ群では心不全23.8%(444/1,863例)、低血圧6.4%(119/1,863例)、高カリウム血症、高尿酸血症各6.2%(115/1,863例)などが認められました(図13)。

慢性心不全※に対するジャディアンスのエビデンス:  心不全による入院および心血管死のリスクに対する有効性・安全性(EMPEROR-Preserved、EMPEROR-Reduced) (※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)08

図13

ジャディアンスは2型糖尿病の治療薬であると同時に、慢性心不全治療薬※でもあり、慢性心不全に対しては左室駆出率に関わらず標準用量10mgで投与が可能です。(※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)

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