今こそ考えたい アジア人の 2型糖尿病治療 第2回

サイトへ公開: 2021年03月30日 (火)

更新日 2020年12月

2 型糖尿病治療 腎イベント抑制の重要性とジャディアンスのエビデンス01

糖尿病患者における心不全リスク

心不全は2型糖尿病患者が発症する主要な心血管疾患のひとつであり、近年、2型糖尿病と心不全の関連に注目が集まっています(図1)。

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図1

糖尿病は心不全の独立したリスク因子であることが知られています。2型糖尿病と診断された患者と年齢・性別が一致した非糖尿病患者を対象とした解析では、同年齢・性別と比較して、糖尿病患者で心不全のリスクが高いことが示されました(図2)。

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図2

また、糖尿病患者では非糖尿病患者に比べ、心不全の発症とともに心不全による入院リスクも高いことがわかっています(図3)。このように、2型糖尿病治療において心不全を防ぐことは重要な課題のひとつです。

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図3

日本の糖尿病と心不全

高齢化が進む日本では、心不全と糖尿病の関連を考慮した治療の重要性が高まると考えられます。
厚生労働省の平成30年国民健康・栄養調査によると、高齢者では「糖尿病が強く疑われる者」の割合が高いことが報告されています1)。JDDMの基礎集計資料でも、平均年齢の年次推移は増加傾向にあります(図4)。同様に心不全でも、平成29年患者調査で、高齢者で受療率が高くなっています。

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図4

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)における糖尿病の位置づけ

糖尿病を持つ患者はステージAと分類され、発症リスクのステージの段階から危険因子をコントロールし、心不全の原因となる器質的心疾患の発症を予防することが治療目標とされています。
また、糖尿病についての解説では、心不全との密接な関連を指摘しつつ、「糖尿病は心不全の独立した危険因子であることから、心不全の発症予防や進展抑制を目的とした糖尿病への治療介入が必要である」としています(図5)。

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図5

心不全予防を考慮した糖尿病治療

2020年3月に発刊された日本循環器学会と日本糖尿病学会の「糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント」では、心不全について診断、予防・治療で取り上げ、解説しています。
「心不全の予防・治療」においては、心不全予防を考慮した糖尿病治療として、生活習慣改善と危険因子に対する包括的介入に加えて、心不全あるいは高リスク群ではSGLT2阻害薬の使用が推奨されています(図6)。

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図6

EMPA-REG EXTENDTM MONO試験

そこでSGLT2阻害薬であるジャディアンスのHbA1c低下作用をご紹介します。
国際共同第Ⅲ相試験であるEMPA-REG EXTENDTM MONO試験では、食事・運動療法で血糖コントロールが不十分(HbA1cが7.0以上かつ10.0%以下)な薬物未治療の2型糖尿病患者さん899例を対象に、ジャディアンス10mg群、ジャディアンス25mg群、プラセボ群またはシタグリプチン100mg群に無作為に割り付け、1日1回24週間経口投与しました(図7)。

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図7

その結果、ジャディアンス群およびシタグリプチン群では投与12週までにHbA1cが低下し、その低下作用は76週後まで持続することが検証されました。
投与76 週後におけるベースラインからのHbA1c 調整平均変化量は、ジャディアンス10mg 群で-0.65%、25mg 群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%でした(図8)。

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図8

本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、ジャディアンス25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ4.9%(11/224例)、4.0%(9/223例)、4.9%(11/223例)、6.6%(15/229例)に認められました。
重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25/224例)、7.2%(16/223例)、8.1%(18/223例)、10.0%(23/229例)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン群0.4%(1/229例)、プラセボ群0.4%(1/223例)でした。
主な有害事象は、高血糖がそれぞれ8.9%(20/224例)、4.9%(11/223例)、12.6%(28/223例)、27.5%(63/229例)、鼻咽頭炎がそれぞれ14.3%(32/224例)、11.2%(25/223例)、12.1%(27/223例)11.8%(27/229例)などでした(図9)。

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図9

EMPA-REG OUTCOME®(アジア人サブグループ解析)

続いて、ジャディアンスの心血管イベントへの影響を検討したEMPA-REG OUTCOME®のアジア人集団のサブグループ解析の結果をご紹介します(図10)。
なお、主要評価項目の結果は、参考情報のため省略します。

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図10

3P-MACE、心血管死、全死亡のハザード比はそれぞれ0.68、0.44、0.64でした(図11)。

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図11

本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群92.7%(468/505例)、ジャディアンス25mg群90.8% (455/501例)、プラセボ群95.5% (488/511例)に認められました。
重篤な有害事象としての死亡は、ジャディアンス10mg群で2.4%(12/505例)、ジャディアンス25mg群で3.4%(17/501例)、プラセボ群で4.5%(23/511例)でした。
主な有害事象として、低血糖[ジャディアンス10mg群で26.5%(134/505例)、25mg群で24.2%(121/501例)、プラセボ群で26.6%(136/511例) ]などが認められました(図12)。

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図12

EMPRISE East Asia

EMPA-REG OUTCOME®で得られた結果を補完する目的で、ジャディアンスの日常診療における有効性および安全性等についてDPP-4 阻害薬と比較したEMPRISE研究がおこなわれています。今回は日本、韓国、台湾の約57,000人を対象とした東アジア人集団解析が発表となりましたのでご紹介します。
本研究の限界として、残存する交絡因子が存在する可能性が否定しきれないこと、特定の国や特定のサブグループにおいて、イベント数が少ないものがあることが挙げられています(図13)。

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図13

ジャディアンスあるいはDPP-4阻害薬の新規使用患者の情報を収集し、1:1の傾向スコアマッチングにより患者のベースライン特性を合わせました。この時、交絡因子による影響を小さくするため、可能な限りの共変量(130以上)を用いています。
傾向スコアマッチングの結果、計1,061,309例より28,712組(日本5,592組、韓国9,072組、台湾14,048組)と、東アジア3ヵ国の非常に多くの患者を対象として研究を実施しました。平均フォローアップ期間は、日本5.7ヵ月、韓国6.8ヵ月、台湾5.9ヵ月でした(図14)。

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図14
各国において、傾向スコアマッチング後のエンパグリフロジン投与群とDPP-4阻害薬投与群のベースライン特性はこちらです(図15)。

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図15
解析の結果、ジャディアンス10mg投与のサブグループにおいて、HHF-broad、HHF-specific(sensitivity analysis)、HHF-specific(strict definition)、全死亡、末期腎不全のハザード比は、それぞれ0.83、0.85、0.99、0.85、0.63でした(図16)。
なお、本研究における安全性は論文中に記載がないため、ジャディアンスの安全性については、DIページの安全性情報を参照してください。

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図16

まとめ
・2型糖尿病は心不全の独立したリスク因子であり、糖尿病患者では非糖尿病患者に比べて心不全の発症や入院リスクが高い
・2型糖尿病と心不全は高齢者に多く、高齢化の進むわが国では心不全との関連を考慮した2型糖尿病治療の重要性が高まると考えられる
・急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)では、糖尿病のある患者は心不全リスクのステージAと位置づけられ、「心不全の発症予防や進展抑制を目的とした糖尿病への治療介入が必要である」とされている
・日本循環器学会・日本糖尿病学会の合同ステートメントで、心不全予防を考慮した糖尿病治療として、生活習慣改善と危険因子に対する包括的介入に加えて、心不全あるいは高リスク群ではSGLT2阻害薬の使用が推奨されている
・SGLT2阻害薬であるジャディアンスは、EMPA-REG EXTENDTM MONO試験において、プラセボと比べHbA1cが優位に低下した
・【参考情報】ジャディアンスの心血管イベントへの影響を検討したEMPA-REG OUTCOME®では、アジア人集団のサブグループ解析が行われた
・【参考情報】日常診療下で行われたEMPRISE研究では東アジア人解析(EMPRISE East Asia)が行われた
エビデンスに基づいた2型糖尿病治療の選択肢として、ジャディアンスをぜひご検討ください。

【引用】

1) 平成30年国民健康・栄養調査
プリント (mhlw.go.jp)

1) Janani R. et al.; Circulation. 2019 Apr 16;139(16):e840-e878.

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