心腎代謝連関の最新知見̶日本人データに焦点を当てた疫学と病態生理のエビデンス
本論文は日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 / 日本イーライリリー株式会社の支援により作成されました。
![心腎代謝連関の最新知見 -日本人データに焦点を当てた疫学と病態生理のエビデンスより](/jp/sites/default/files/inline-images/JAD_150_thumbnail.jpg)
2型糖尿病治療は、心腎代謝連関を考慮した包括的なアプローチが転帰を改善する
2型糖尿病等の代謝性疾患、心不全等の心血管疾患(CVD)、腎疾患は密接に連関し、互いに影響しあい、悪循環を形成することが知られている。近年では疫学、臨床、基礎研究等のエビデンスから、心腎代謝疾患の相互作用、つまり心腎代謝連関の疫学の特徴やメカニズムが明らかになりつつある。代謝性疾患、特に2型糖尿病では、心腎代謝疾患の病態生理の相互作用を適切に理解し、血糖管理だけでなく心腎イベントを見据えた包括的な治療を行うことが望ましいと考えられる。
また、日本人と欧米人とでは、心腎代謝連関の疫学の特徴やメカニズム、心腎代謝連関に関係する遺伝子変異が異なり、その違いが合併症や予後の違いとして現れる可能性がある。そこで日本のデータにも焦点をあて、国内外の心腎代謝疾患の疫学と、心腎代謝連関を適切に把握するための分子間相互作用と病態生理の相互作用に関する現在の知見を解説し、心腎代謝連関を考慮した糖尿病治療の重要性を考察する。
心腎代謝疾患の疫学のエビデンス
■日本人では心腎代謝疾患の合併率が高い
![日本人では心腎代謝疾患の合併率が高い](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_01.jpg)
国内外の疫学データにおける合併率の高さから、心腎代謝疾患の相互作用が示唆されている。
米国を拠点とするプライマリーケア、循環器内科、内分泌内科の271施設の外来患者登録簿に登録された2型糖尿病の成人530,747例を対象として行った2型糖尿病以外の心腎代謝疾患[高血圧、脂質異常症、冠動脈疾患(CAD)、CKD、脳血管疾患、末梢動脈疾患、心房細動、心不全、痛風または高尿酸血症]の有無の調査では、他の心腎代謝疾患のない2型糖尿病は6.4%であったと報告された1)。同じ米国で行われたMedicare請求データの検討では、うっ血性心不全、急性心筋梗塞、腎代替療法、死亡の発症率は、糖尿病またはCKDのある患者においてそのどちらもない患者よりも高く、さらに、糖尿病とCKDの両方を合併する患者で最も高いことが報告された2)。
![日本人では心腎代謝疾患の合併率が高い02](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_02.jpg)
大規模国際共同コホート研究では、全体集団と日本人集団の心血管疾患または腎疾患(CVRD)の初発イベントの内訳がそれぞれ心不全23.7%、30.6%、CKD36.2%、39.3%と日本人集団で高いことが報告された3)。
■心腎代謝疾患を合併すると予後は悪化する
![心腎代謝疾患を合併すると予後は悪化する](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_03.jpg)
心腎代謝疾患を合併した場合の予後についても、疫学データによるエビデンスが報告されている。
大規模国際共同コホート研究では、CVRDを合併した2型糖尿病の場合、全死亡、CVDによる死亡のいずれもリスクが増加することが示された3)。
■2型糖尿病では心不全発症リスクが58%増加した[日本人若年成人(20〜49歳)]
![2型糖尿病では心不全発症リスクが58%増加した[日本人若年成人(20〜49歳)]](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_04.jpg)
2型糖尿病では慢性心不全の発症率が高い。
海外では、前向き人口ベース研究による65歳以上の糖尿病の慢性心不全発現のリスク比が1.78であるという報告4)や、多施設共同研究による糖尿病の心不全リスクが2.17倍[ハザード比(HR):2.17、95%CI:1.37-3.44]であるという報告がある5)。
2型糖尿病と心不全が合併すると、死亡率が上昇する。米国のMedicare 請求データを活用した65歳以上の糖尿病を対象としたコホート研究では、60ヵ月以上の期間における死亡率は、心不全発症例で32.7人/100人・年、心不全非発症例で3.7人/100人・年と報告された6)。
![2型糖尿病では心不全発症リスクが58%増加した[日本人若年成人(20〜49歳)]02](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_05.jpg)
日本人の2型糖尿病でもCVDの合併によるリスクが報告されている。約120万人を対象とした全国疫学データベースでは、糖尿病の場合、CVDの既往のない若年(20〜49歳)において心不全リスクが58% 増加(HR:1.58、95%CI:1.41-1.78)、心房細動リスクが69% 増加(HR:1.69、95%CI:1.35-2.13)したことが示された7)。
国内の8つのコホート研究のプール解析では、糖尿病は、冠動脈疾患による死亡リスクが2.13倍(HR:2.13、95%CI:1.47-3.09)となり、脳卒中リスクが40%増加していた8)。
■2型糖尿病でのCKD有病率は54.0%(日本人データ、2020年報告)
![2型糖尿病でのCKD有病率は54.0%(日本人データ、2020年報告)](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_06.jpg)
世界的には、2型糖尿病のある方の最大50%がCKDを有していると推定されている9)。
日本においても複数の報告で2型糖尿病のCKD有病率が高いことが示された。国内の独立した2つのコホート研究の比較では、2004年から2014年の間にCKD有病率が32.6%から22.3%に減少したことが示唆されたが10)、糖尿病でのCKD有病率は2010年報告の単一施設コホート研究で46.0%11)、2020年報告の多施設共同コホート研究では54.0%であった12)。
![2型糖尿病でのCKD有病率は54.0%(日本人データ、2020年報告)02](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_07.jpg)
また、2型糖尿病でアルブミン尿またはeGFRの低下が認められる場合、全死亡リスクが上昇することが示唆されている13)。
■心不全でのCKD有病率は38.9%(日本人データ、2021年報告)
2型糖尿病における心不全の病態生理において腎機能障害が重要な役割を持つため、CKDは2型糖尿病の重要な併存疾患であると考えられる。
CKDとCVDの疫学については、国内の大規模前向きコホート研究であるCKD-JACにて、CKDを有する場合の心不全発症率が8.6人/1,000人・年であることが示された14)。
また、心不全におけるCKD有病率は、2018年に報告された多施設共同前向きコホート研究で45%15)、2021年に報告された多施設共同後向きコホート研究で38.9%であった16)。
心腎代謝連関は、複数のメカニズムで負の相互作用を示す
![心腎代謝連関は、複数のメカニズムで負の相互作用を示す](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_08.jpg)
心腎代謝疾患は、複数のメカニズムによって相互に影響を及ぼしあう。この心腎代謝連関について、分子間相互作用と病態生理の相互作用のエビデンスを総括する。
■2型糖尿病における心血管・腎に対する影響
1)高血糖状態とAGEs
2型糖尿病は、高血糖状態下で産生される終末糖化産物(AGEs)を介して心機能障害や腎機能障害の病態生理の一部に関与している。
AGEsは、脂質とタンパク質の非酵素的糖化反応の亢進によって産生され、細胞外基質でコラーゲン等のタンパク質の架橋を誘導することで血管の硬化を引き起こす17)。
また、AGEsがAGESの細胞表面受容体(RAGE)に結合するとシグナル伝達経路が活性化し、NADPHオキシダーゼやミトコンドリアによる活性酸素(ROS)が発生、脂肪酸酸化能が低下して、線維化や細胞外基質の過剰蓄積につながる18)。
2)インスリン抵抗性
![インスリン抵抗性](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_09.jpg)
インスリンシグナルの障害(インスリン抵抗性)は、前糖尿病段階から存在し、血管内皮機能の低下や動脈硬化の誘因となる19)。また、心筋の線維化や硬化、拡張機能不全と関連しており20)、糖尿病に伴う心機能障害の主な病態生理の異常であると考えられている。
インスリン抵抗性によってインスリンシグナルが低下すると、糸球体基底膜を覆う糸球体足細胞(ポドサイト)では、正常血糖であっても腎機能障害に類似した病態を引き起こす17)。
3)脂質毒性(Lipotoxicity)
インスリン抵抗性が生じると、インスリン依存的に糖を取り込む細胞では、糖の取り込みが低下し、グルコース代謝によるATP 産生が低下、その代償として、代謝効率の悪い遊離脂肪酸酸化が亢進する(エネルギー代謝の異常)。
糖尿病に伴う心機能障害では、有害な脂質代謝産物がミトコンドリア呼吸の限界を超えて蓄積されるため、ミトコンドリア機能不全を呈する恐れがある17,21,22)。また、一部の脂質代謝産物(ジグリセロール、セラミド等)がインスリンシグナルを阻害し、さらなる心機能障害の増悪を引き起こす18)。
このエネルギー代謝の異常は、大血管障害、細小血管障害の両方で認められる17)。
4)RAASの活性化
高血糖状態は、全身性レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の亢進、動脈圧と血管抵抗の上昇を誘発する18)。
特にRAASの活性化は、NADPHオキシダーゼ活性の上昇を介して酸化ストレスを促進し、全身および心臓でのインスリン抵抗性を誘導する18)。
また、心筋でのRAASシグナルは炎症を増加させる18)。
5)その他
その他のメカニズムには、前述のRAAS活性化やAGEs受容体刺激等による小胞体ストレス増加17)、心筋のカルシウムの過剰取り込みによるエネルギー不足と酸化ストレスがある23)。
小胞体ストレス、酸化ストレスは、オートファジー、アポトーシスおよびネクローシスを増大させ、心筋細胞死および腎機能障害につながる18)。
これらの様々なメカニズムは内皮を活性化し、NF-κB活性化、サイトカインや細胞接着因子の発現増加から、白血球の動員や炎症性免疫細胞の活性化を促進する。
■糖尿病の、心機能障害に対する影響
![糖尿病の、心機能障害に対する影響](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_10.jpg)
糖尿病に伴う心機能障害では、インスリン抵抗性、インスリンシグナル障害、心筋における遊離脂肪酸取り込み増加、ミトコンドリア機能不全等の代謝障害を介して、心筋の線維化および拡張機能不全を促進する18,21,24)。
症状が進行すると、心筋のリモデリングがさらに進行し、インスリンシグナル障害、一酸化窒素レベル低下、RAAS活性化、酸化ストレス等と関連して、拡張期および収縮期の機能がさらに損なわれる18)。
高血糖状態では、ROSの産生増加による内皮機能不全が誘導され、血管内皮細胞の傷害により、複雑な動脈硬化性プラークの形成やプラークの破綻による心筋梗塞、不安定狭心症につながる17)。
■糖尿病の、腎機能障害に対する影響
糖尿病の初期には、全身および腎臓の血圧の変化に伴う糸球体過剰濾過が特徴的である。さらに、近位尿細管を中心とした過形成と肥大が生じることによって原尿の再吸収が増加し、eGFRが上昇する25)。
糖尿病に伴う腎機能障害で起こる糸球体の構造変化には、糸球体基底膜の厚さの増加、足突起の融合、ポドサイトの喪失、メサンギウム基質の過剰膨張等がある25)。
罹病期間が長くなると、細胞外基質が過剰に蓄積する結果、糸球体が硬化、線維化するため、初期の糸球体過剰濾過に続いてeGFRの低下やアルブミン尿を呈し、最終的に腎不全に至る25)。
■心不全の、腎・代謝に対する影響
心不全では、血行力学的および非血行力学的経路の間の様々な相互作用が、RAASの活性化、交感神経系の刺激、酸化ストレス、炎症、線維化、ナトリウム利尿ペプチド等の因子を介して腎機能障害を引き起こす26-29)。
心不全による腎静脈圧の上昇や腎血流量の減少により、RAASが活性化されることで、腎機能が悪化し、交感神経系が刺激される。交感神経系の刺激により、さらにRAASが活性化するという悪循環も知られている。RAASの活性化による酸化ストレスの増加とアルドステロンの上昇、炎症と酸化ストレスによる内皮機能不全が心筋と腎臓の線維化につながっていると考えられている30-35)。
心不全の代謝に対する影響では、遅筋線維の萎縮、筋グリコーゲン量の減少、筋出力の低下が認められることから、運動耐容能の低下による代謝機能障害を引き起こす可能性が示唆されている36,37)。
■CKDの、代謝・心血管系に対する影響
eGFR低下によって誘発されるRAASおよび交感神経系の活性化、副甲状腺機能亢進(カルシウムとリン酸のホメオスタシス異常)等の代償メカニズムや、腎性貧血、慢性炎症、酸化ストレス、細胞外液の増加、電解質異常等によって心腎代謝連関に悪影響を及ぼすと考えられる38)。
心血管疾患に対しては、特に、カルシウム-リン酸の不均衡による動脈硬化性プラークおよび動脈中膜の石灰化が特徴的であることが知られている39)。
糖尿病に対しては、その機序は明らかでないものの、腎機能障害の初期にインスリン抵抗性を生じさせる40)。また、その他の代謝性疾患への影響として、トリグリセリドに富むアポリポタンパクBの増加を伴う脂質異常症にも関連する41)。
人種差で検討した日本人の心腎代謝連関の特徴
日本人約19万人のゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタ解析では、膵臓腺房細胞とインスリン分泌等に関連する新しい座位が特定された42)。また、民族特異的変異の解析では、東アジア人で膵β細胞の発生に関与する遺伝子の発現低下が認められ、糖尿病の発症原因であることが示唆された43)。
日本人を含む東アジア人は、遺伝的な膵β細胞機能低下に加えてBMIが低くとも内臓脂肪を蓄積しやすく、インスリン抵抗性を起こしやすいため、2型糖尿病のリスクが高いこと、2型糖尿病を発症すると腎疾患や脳卒中の発症リスクが高いという臨床的特徴を有することが観察研究等で報告されている44,45)。前述の遺伝子解析で報告された民族特異的差異は、民族的な臨床的特徴に関連する可能性もある。
また、いくつかの遺伝子変異は、日本人では糖尿病性腎臓病(DKD)発症に関連するが、ヨーロッパ人ではDKD発症に関連しないことなども報告されている46,47)。アジア人とアジア人以外での2型糖尿病におけるCVDの発症率についても、遺伝子変異が関係している可能性が示唆されている48)。心腎代謝疾患に関する遺伝子変異の寄与については、今後のさらなる研究が望まれる。
![人種差で検討した日本人の心腎代謝連関の特徴](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_11.jpg)
心腎代謝疾患が相互に悪影響を及ぼしあう心腎代謝連関については様々なエビデンスが構築されていることから、2型糖尿病治療では早期から包括的な治療介入を行うことが重要となる。日本循環器学会・日本糖尿病学会のコンセンサスステートメントでは、糖尿病で心不全リスクが高い方に対して、SGLT2阻害薬を早期から使用することを推奨している49)。糖尿病への効果に加え、CVDおよびCKDへの影響についてのエビデンスを持つSGLT2阻害薬は、合併症のリスク低減を見据えた糖尿病治療の良い選択肢である。
ジャディアンスのエビデンス ①2型糖尿病に対する効果
EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO(国際共同試験)
試験デザイン
目的 | 2型糖尿病患者に対してジャディアンス10mgまたは25mgを1日1回、24週間投与したときの有効性、安全性および忍容性について、プラセボあるいはシタグリプチン100mgと比較検討した国際共同第Ⅲ相臨床試験(EMPA-REG MONOᵀᴹ 検証試験)の52週間延長試験(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験)を行う。 |
対象 | EMPA-REG MONOᵀᴹ 検証試験に参加した、食事・運動療法にて血糖コントロール不十分(HbA1c 7.0〜10.0%、ドイツのみ7.0〜9.0%)で、薬物療法を行っていない2型糖尿病患者899例のうち、延長試験に参加した615例。 |
方法 | 対象をジャディアンス10mg群、25mg 群、プラセボ群、またはシタグリプチン100mg 群※1に無作為割り付けし、1日1回24週間経口投与し、さらに52週間延長投与した。EMPA-REG MONOᵀᴹ 検証試験に参加して24週間の投与期間を完了した患者のうち、除外基準に抵触しない患者についてさらに52週間延長投与し、プラセボおよびシタグリプチン100mg群*と探索的な比較を行った。 *シタグリプチンは海外の用法及び用量に従い、初回から100mgを投与 |
評価項目 | 探索的有効性評価項目: 投与52週および76週後のHbA1c、空腹時血糖値、体重および収縮期血圧等のベースラインからの変化量安全性評価項目:投与52週および76週後ならびに治療期最終時点の有害事象の発現割合 |
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
ジャディアンスの効能又は効果は、10mg錠が2型糖尿病・慢性心不全※、25mg錠が2型糖尿病です。(※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。)
シタグリプチンのドラッグインフォメーションについては、当該製品の電子添文をご確認ください。
Roden M, et al.: Cardiovasc Diabetol. 2015; 14:154.(承認時評価資料) 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
ジャディアンスは、早期から心腎代謝連関を見据えた糖尿病治療における有用な選択肢の一つとしてのエビデンスが複数報告されています。
まずは、ジャディアンスの長期にわたる血糖マネジメントに関するエビデンスです。
![ジャディアンスのエビデンス ①2型糖尿病に対する効果](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_12_1.jpg)
食事・運動療法で血糖マネジメントが不十分(HbA1cが7.0%以上かつ10.0%以下)で薬物療法を行っていない2型糖尿病899例を対象としたEMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験では、投与76週後においてジャディアンス群およびシタグリプチン群でHbA1cがベースラインよりも低下し、その調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%であったと報告されました。
安全性
すべての有害事象の発現率はジャディアンス10mg群で
172例(76.8%)、25mg群で174例(78.0%)でした
n(%) | プラセボ (n=229) |
ジャディアンス10mg (n=224) |
ジャディアンス25mg (n=223) |
シタグリプチン100mg (n=223) |
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すべての有害事象 | 175 (76.4) | 172 (76.8) | 174 (78.0) | 161 (72.2) |
試験薬に関連した有害事象ᵃ | 36 (15.7) | 49 (21.9) | 52 (23.3) | 31 (13.9) |
投与中止に至った有害事象 | 15 (6.6) | 11 (4.9) | 9 (4.0) | 11 (4.9) |
重度な有害事象 | 14 (6.1) | 17 (7.6) | 15 (6.7) | 17 (7.6) |
重篤な有害事象 | 23 (10.0) | 25 (11.2) | 16 (7.2) | 18 (8.1) |
死亡 | 1 (0.4) | 0 (0.0) | 0 (0.0) | 1 (0.4) |
主な有害事象(いずれかの群で5%以上) | ||||
高血糖 | 63 (27.5) | 20 (8.9) | 11 (4.9) | 28 (12.6) |
鼻咽頭炎 | 27 (11.8) | 32 (14.3) | 25 (11.2) | 27 (12.1) |
尿路感染 | 21 (9.2) | 20 (8.9) | 14 (6.3) | 18 (8.1) |
上気道感染 | 12 (5.2) | 17 (7.6) | 16 (7.2) | 19 (8.5) |
脂質異常症 | 15 (6.6) | 16 (7.1) | 14 (6.3) | 14 (6.3) |
背部痛 | 12 (5.2) | 7 (3.1) | 7 (3.1) | 19 (8.5) |
高血圧 | 13 (5.7) | 11 (4.9) | 5 (2.2) | 14 (6.3) |
気管支炎 | 10 (4.4) | 11 (4.9) | 6 (2.7) | 12 (5.4) |
下痢 | 9 (3.9) | 12 (5.4) | 6 (2.7) | 8 (3.6) |
特に注目するカテゴリー | ||||
確認された低血糖ᵇ | 2 (0.9) | 2 (0.9) | 2 (0.9) | 2 (0.9) |
介助を必要とする事象 | 0 (0.0) | 1 (0.4) | 0 (0.0) | 0 (0.0) |
尿路感染関連有害事象ᶜ | 25 (10.9) | 21 (9.4) | 20 (9.0) | 20 (9.0) |
男性 | 4 (3.2) | 4 (2.8) | 4 (2.8) | 6 (4.3) |
女性 | 21 (20.0) | 17 (20.7) | 16 (20.3) | 14 (17.1) |
性器感染関連有害事象ᵈ | 4 (1.7) | 13 (5.8) | 14 (6.3) | 2 (0.9) |
男性 | 2 (1.6) | 4 (2.8) | 4 (2.8) | 1 (0.7) |
女性 | 2 (1.9) | 9 (11.0) | 10 (12.7) | 1 (1.2) |
体液量減少関連有害事象ᵉ | 1 (0.4) | 6 (2.7) | 2 (0.9) | 3 (1.3) |
a 試験担当医師の報告による
b 血糖値3.9mmol/L以下および/または介助を必要とする事象
c 77の基本語に基づく
d 89の基本語に基づく
e 8の基本語に基づく
重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象の内訳については論文に記載がなかった。
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
ジャディアンスの効能又は効果は、10mg錠が2型糖尿病・慢性心不全※、25mg錠が2型糖尿病です。(※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。)
シタグリプチンのドラッグインフォメーションについては、当該製品の電子添文をご確認ください。
Roden M, et al.: Cardiovasc Diabetol. 2015; 14: 154.(承認時評価資料)より改変
本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
なお、本試験で報告された有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン100mg群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ4.9%(11/224例)、4.0%(9/223例)、4.9%(11/223例)、6.6%(15/229例)、重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25/224例)、7.2%(16/223例)、8.1%(18/223例)、10.0%(23/229例)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン100mg群0.4%(1/223例)、プラセボ群0.4%(1/229例)に認められました。投与中止に至った有害事象、および重篤な有害事象の内訳については、論文に記載がありませんでした。
いずれかの群で5%以上となった主な有害事象は表の通りでした
ジャディアンスのエビデンス ②2型糖尿病における腎複合イベントへの影響
EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)腎アウトカム(国際共同試験)
試験デザイン
目的 | EMPA-REG OUTCOME®試験のさらなる解析として、腎アウトカムについて解析を行う |
対象 | 心血管イベントリスクが高く血糖コントロール不良の2型糖尿病患者7,020例 |
方法 | 二重盲検、無作為化割り付け、イベント主導型(691件の主要複合心血管イベントが判定されるまで治験を継続) |
評価項目 | [EMPA-REG OUTCOME®試験の主要評価項目] 主要複合心血管イベントと判定された下記に示す事象のいずれかで、最も早い初回発現までの期間 ●3P-MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中 [事前に規定された副次評価項目:腎アウトカム] ●下記に示す腎複合イベントと判定されたいずれかの腎症の初回発現もしくは悪化までの期間 ・顕性アルブミン尿への進展 (UACR>300mg/g) ・血清クレアチニン値の倍化[eGFR(MDRD)≦45mL/min/1.73m²を伴う] ・腎代替療法(透析など)の開始 ・腎疾患による死亡 ●eGFR変化量 ●腎複合イベントのサブグループ解析 ●腎症の初回発現もしくは悪化または心血管死 |
EMPA-REG OUTCOME®の主要評価項目の結果 | 参考情報につき省略 |
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Wanner C, et al.: N Engl J Med. 2016; 375(4): 323-34. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
EMPA-REG OUTCOME®試験では、2型糖尿病のある方に対するジャディアンスの腎複合イベントへの影響を検討しました。
EMPA-REG OUTCOME®試験におけるベースライン時腎機能のカテゴリー
アルブミン尿区分(mg/g) | ||||
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eGFR区分 (mL/min/1.73m²) |
正常~正常高値 <30 |
微量アルブミン尿 30-300 |
顕性アルブミン尿 >300 |
|
正常または高値 | ≧90 | その他すべて(n=4,893) | eGFRに関わらず顕性アルブミン尿を呈するDKD(n=769) UACR>300mg/g |
|
軽度低下 | 60-89 | |||
軽度~中等度低下 | 45-59 | eGFR低下例で顕性アルブミン尿を呈さないDKD(n=1,290) eGFR<60mL/min/1.73m²かつ UACR≦300mg/g |
||
中等度~高度低下 | 30-44 | |||
高度低下 | 15-29 | |||
末期腎不全 | <15 |
DKD:糖尿病性腎臓病、eGFR:推算糸球体濾過量、UACR:尿中アルブミン/クレアチニン比
中等度腎機能障害患者では本剤の投与の必要性を慎重に判断してください。高度腎機能障害患者又は透析中の末期腎不全患者では本剤の効果が期待できないため、投与しないでください。また、腎機能障害患者においては、経過を十分に観察し、継続的にeGFRが45mL/min/1.73m²未満に低下した場合は本剤の投与の中止を検討してください。詳細は、製品電子添文をご参照ください。
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Wanner C, et al.: Diabetes Obes Metab. 2020; 22(12): 2335-47.より作図
本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
eGFR 30以上を対象とした本試験には、顕性アルブミン尿の方に加え、正常から正常高値の方、微量アルブミン尿の方と、幅広い腎機能ステージの方が含まれました。
![EMPA-REG OUTCOME®試験におけるベースライン時腎機能のカテゴリー](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_13.jpg)
【参考情報】
本試験でのジャディアンス群のプラセボ群に対する腎複合イベントのハザード比は、0.61(95%CI:0.53~0.70)でした。
安全性
n(%) | ベースライン時のeGFR ≧60mL/min/1.73m² |
ベースライン時のeGFR <60mL/min/1.73m² |
||
---|---|---|---|---|
プラセボ (n=1,726) |
ジャディアンス (n=3,473) |
プラセボ (n=607) |
ジャディアンス (n=1,212) |
|
有害事象 | 1,562(90.5) | 3,121(89.9) | 577(95.1) | 1,107(91.3) |
重篤な有害事象 | 667(38.6) | 1,237(35.6) | 321(52.9) | 552(45.5) |
投与中止に至った有害事象 | 286(16.6) | 535(15.4) | 167(27.5) | 278(22.9) |
死亡に至った有害事象 | 79(4.6) | 108(3.1) | 40(6.6) | 68(5.6) |
主な有害事象 | ||||
低血糖 | 417(24.2) | 912(26.3) | 233(38.4) | 391(32.3) |
尿路感染症 | 291(16.9) | 564(16.2) | 132(21.7) | 278(22.9) |
投与中止に至った有害事象および死亡を含む重篤な有害事象の内訳について論文に記載がなかった。
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Wanner C, et al.: N Engl J Med. 2016; 375(4): 323-34. (Suppl)
本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
本試験の有害事象は、eGFR 60未満のジャディアンス群の91.3%(1,107/1,212例)、プラセボ群の95.1%(577/607例)、eGFR 60以上のジャディアンス群の89.9%(3,121/3,473例)、プラセボ群の90.5%(1,562/1,726例)で認められ、主な有害事象は低血糖[eGFR 60未満のジャディアンス群32.3%(391/1,212例)、プラセボ群38.4(233/607例)、eGFR 60以上ジャディアンス群の26.3%(912/3,473例)、プラセボ群24.2%(417/1,726例)]等でした。重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象についてはこちらの通り報告されました。
ジャディアンスのエビデンス ③2型糖尿病における心不全および心血管死への影響
EMPA-REG OUTCOME®(検証試験)心不全アウトカム(国際共同試験)
試験デザイン
目的 | EMPA-REG OUTCOME®試験における、ジャディアンス群とプラセボ群との長期の影響を調べる。 |
対象 | 心血管イベントリスクが高く血糖コントロール不良の2型糖尿病患者7,020例 |
方法 | 二重盲検、ダブルダミー、イベント主導型(691件の主要複合心血管イベントが判定されるまで治験を継続)。対象をプラセボ群、ジャディアンス10mg群、ジャディアンス25mg群に1:1:1で割り付けし、それぞれを1日1回投与した。全体集団の解析とともに、事前規定されたサブグループ解析として心不全の有無による解析を行った。 |
評価項目 | [EMPA-REG OUTCOME®の主要評価項目] 主要複合心血管イベントと判定された事象のいずれかで、最も早い初回発現までの期間(3P-MACE):心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中 [その他の評価項目] 心不全による入院および心血管死の複合エンドポイント等 |
EMPA-REG OUTCOME®の主要評価項目の結果 | 参考情報につき省略 |
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Zinman B, et al.: N Engl J Med. 2015; 373(22): 2117-28. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
Fitchett D, et al.: Eur Heart J. 2016; 37(19): 1526-34. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
EMPA-REG OUTCOME®試験では、リスク因子(高血圧、脂質異常症等)に対してガイドライン等で推奨される標準治療(スタチン、ACE阻害薬、ARB、アスピリン、β遮断薬、カルシウム拮抗薬の投与等)を受けている2型糖尿病を対象に、ジャディアンスを標準治療に上乗せした場合の心不全に対する影響を検討しました。
![ジャディアンスのエビデンス ③2型糖尿病における心不全および心血管死への影響](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_14.jpg)
【参考情報】
ジャディアンス群はプラセボ群と比較して、心不全による入院および心血管死の複合エンドポイントの発現リスクが低下しました(HR=0.66、95%CI:0.55~0.79)。さらに、心不全の有無別のサブグループ解析の結果において、ベースライン時に心不全がない場合でもジャディアンス群の心不全による入院および心血管死の複合エンドポイントの発現リスクがプラセボ群と比べて低下しました(HR=0.63、95%CI:0.51~0.78)。
安全性
n(%) | ベースライン時の心不全なし | ベースライン時の心不全あり | ||
---|---|---|---|---|
プラセボ (n=2,089) |
ジャディアンス (n=4,225) |
プラセボ (n=244) |
ジャディアンス (n=462) |
|
有害事象 | 1,909(91.4) | 3,817(90.3) | 230(94.3) | 413(89.4) |
重篤な有害事象 | 862(41.3) | 1,587(37.6) | 126(51.6) | 202(43.7) |
投与中止に至った有害事象 | 391(18.7) | 714(16.9) | 62(25.4) | 99(21.4) |
死亡に至った有害事象 | 94(4.5) | 141(3.3) | 25(10.2) | 35(7.6) |
主な有害事象 | ||||
低血糖 | 582(27.9) | 1,188(28.1) | 68(27.9) | 115(24.9) |
投与中止に至った有害事象および死亡を含む重篤な有害事象の内訳について論文に記載がなかった。
効能又は効果、用法及び用量、禁忌を含む注意事項等情報等については電子添文をご確認ください。
Fitchett D, et al.: Eur Heart J. 2016; 37(19): 1526-34. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社/イーライリリー社の支援により行われました。
本試験での有害事象の発現率は、ベースライン時に心不全がある場合でプラセボ群94.3%(230/244例)、ジャディアンス群89.4%(413/462例)、ベースライン時に心不全がない場合でプラセボ群91.4%(1,909/2,089例)、ジャディアンス群90.3%(3,817/4,225例)でした。投与中止に至った有害事象、重篤な有害事象および死亡の発現率は、こちらの表の通りで、それぞれの内訳について論文に記載がありませんでした。
主な有害事象は低血糖で、心不全がある場合でプラセボ群27.9%(68/244例)、ジャディアンス群24.9%(115/462例)、心不全がない場合でプラセボ群27.9%(582/2,089例)、ジャディアンス群28.1%(1,188/4,225例)に認められました。
![安全性](/jp/sites/default/files/inline-images/edtl_15.jpg)
2型糖尿病治療の目標達成を見据え、ジャディアンスの処方をご検討ください。
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