ジャディアンス 全国講演会記録集「進化する糖尿病治療」

サイトへ公開: 2023年07月28日 (金)

ご監修:寺内 康夫先生(横浜市立大学 内分泌・糖尿病内科学 教授)

ご監修:寺内 康夫先生(横浜市立大学 内分泌・糖尿病内科学 教授)

2023年7月2日に実施された「ジャディアンス全国講演会」では、横浜市立大学 内分泌・糖尿病内科学 教授の寺内 康夫 先生ご司会のもと、症例像に対する治療選択についてディスカッションいただいた後、ジャディアンスの代表的なエビデンスをご解説いただきました。本コンテンツでは、ご講演内容をダイジェストでご紹介します。

症例に対する治療選択

高血圧を合併した薬物未治療の2型糖尿病のある方に対する薬剤選択

今回ディスカッションするのは、ご覧の2型糖尿病症例です。このような方に対して、先生方はどのような点に注目して薬剤選択されるでしょうか。

血糖降下薬の選択では、各薬剤の特徴を十分に把握したうえで、2型糖尿病のある方の背景に応じて個々人に適した薬剤を考える必要があります。今回の場合、高血圧を合併し降圧薬を服用しているため、心血管リスクに注目します。本症例では、心血管リスクに着目するとSGLT2阻害薬が選択肢のひとつになると考えられます。ただし、非肥満、かつ、71歳という年齢が気になる先生もいらっしゃると思います。また、腎機能についても着目しておくべきでしょう。

EMPA-REG EXTENDTM MONO

EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO

ジャディアンスの血糖降下作用:EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO

ここからはSGLT2阻害薬であるジャディアンスについて、血糖降下作用、心腎イベントに対する影響、副作用リスクに関する代表的なエビデンスをご紹介します。

はじめに、ジャディアンスの血糖降下作用として、国際共同第Ⅲ相試験であるEMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験の結果をみていきます。

本試験では、食事・運動療法で血糖コントロール不十分な薬物未治療の2型糖尿病患者を対象に、HbA1cのベースラインからの変化量を解析しました。ベースラインにおける患者背景として、ジャディアンス10mg群、25mg群、プラセボ群およびシタグリプチン100mg群の各群で、平均HbA1cは7.85~7.91%、BMIは28.2~28.7kg/m2、eGFRは86.8~87.7mL/min/1.73m2でした。また、それぞれの群で、罹病期間が5年以下の患者が77.2~80.3%を占めていました。

EMPA-REG EXTENDTM MONO

その結果、ジャディアンスは1日1回の経口投与により、ベースラインより有意なHbA1c低下作用を示しました。
また、その低下作用は76週後まで持続することが検証され、投与76週後におけるベースラインからのHbA1c 調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%でした。

本試験では、ジャディアンス10mg群の76.8%、ジャディアンス25mg群の78.0%、シタグリプチン群の72.2%、プラセボ群の76.4%に有害事象が認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ11例、9例、11例、15例、重篤な有害事象は25例、16例、18例、23例に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン群およびプラセボ群で各1例でした。
主な有害事象として、高血糖がそれぞれ20例(8.9%)、11例(4.9%)、28例(12.6%)、63例(27.5%)、鼻咽頭炎がそれぞれ32例(14.3%)、25例(11.2%)、27例(12.1%)、27例(11.8%)にみられました。

EMPA-REG OUTCOME®

EMPA-REG OUTCOME®

心血管イベントへの影響:EMPA-REG OUTCOME® 心不全アウトカム

続いて、心血管イベントおよび腎イベントに対するジャディアンスの影響として、EMPA-REG OUTCOME®をみていきます。

EMPA-REG OUTCOME®は、心血管イベントのリスクを有する2型糖尿病患者を対象に、標準治療に上乗せした場合のジャディアンスの心血管系疾患の罹患および死亡に対する長期の影響を調べた試験です。

対象のベースライン特性をみると、各群で94.7~95.2%とほとんどの患者が降圧療法を受けており、脂質降下薬を服用していた患者は79.9~82.1%と8割程度を占めていたことが分かります。

対象のベースライン特性をみると、各群で94.7~95.2%とほとんどの患者が降圧療法を受けており、脂質降下薬を服用していた患者は79.9~82.1%と8割程度を占めていたことが分かります。

 本試験の結果、ジャディアンス群のプラセボ群に対する3P-MACEのハザード比は0.86であり(p=0.04、Cox比例ハザード回帰モデル、検証的結果)、心血管死、心不全による入院、全死亡のハザード比は、それぞれ0.62、0.65、0.68でした(心血管死および全死亡 p<0.001、心不全による入院 p=0.002、Cox比例ハザード回帰モデル)。

本試験の結果、ジャディアンス群のプラセボ群に対する3P-MACEのハザード比は0.86であり(p=0.04、Cox比例ハザード回帰モデル、検証的結果)、心血管死、心不全による入院、全死亡のハザード比は、それぞれ0.62、0.65、0.68でした(心血管死および全死亡 p<0.001、心不全による入院 p=0.002、Cox比例ハザード回帰モデル)。

EMPA-REG OUTCOME®の安全性はご覧のとおりです。
ジャディアンス10mg群の90.1%、ジャディアンス25mg群の90.4%、プラセボ群の91.7%に有害事象が認められました。
重篤な有害事象はそれぞれ876例、913例、988例、投与中止に至った有害事象は416例、397例、453例、死亡に至った有害事象は97例、79例、119例に認められました。
主な有害事象として、低血糖がそれぞれ656例(28.0%)、647例(27.6%)、650例(27.9%)、尿路感染がそれぞれ426例(18.2%)、416例(17.8%)、423例(18.1%)にみられました。

EMPA-REG OUTCOME®の安全性はご覧のとおりです。

腎イベントへの影響:EMPA-REG OUTCOME® 腎アウトカム

EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカムは、EMPA-REG OUTCOME®におけるジャディアンスのアルブミン尿に対する短期および長期的な影響を検討した試験です。

ベースライン時腎機能のカテゴリーと各患者数はご覧のとおりです。
eGFR<60mL/min/1.73m2かつ尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)≦300mg/gのeGFR低下例で顕性アルブミン尿を呈さない糖尿病性腎疾患(DKD)が1,290例、UACR>300mg/gのeGFRに関わらず顕性アルブミン尿を呈するDKDが769例含まれていました。

EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカムは、EMPA-REG OUTCOME®におけるジャディアンスのアルブミン尿に対する短期および長期的な影響を検討した試験です。

【参考情報】腎複合イベントとその内訳・安全性

本試験の結果、ジャディアンス群のプラセボ群に対する腎複合イベントのハザード比は0.61でした。また、顕性アルブミン尿への進展、血清クレアチニンの倍化、腎代替療法の開始のハザード比は、それぞれ0.62、0.56、0.45でした。

【参考情報】腎複合イベントとその内訳・安全性

EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカムの安全性はご覧のとおりです。
ベースライン時のeGFR<60mL/min/1.73m2の患者において、プラセボ群の95.1%、ジャディアンス群の91.3%、ベースライン時のeGFR≧60mL/min/1.73m2の患者において、プラセボ群の90.5%、ジャディアンス群の89.9%に有害事象が認められました。投与中止に至った有害事象はそれぞれ167例、278例、286例、535例、重篤な有害事象は321例、552例、667例、1,237例に認められました。死亡例はそれぞれ40例、68例、79例、108例でした。
主な有害事象として、低血糖がそれぞれ233例(38.4%)、391例(32.3%)、417例(24.2%)、912例(26.3%)、尿路感染症がそれぞれ132例(21.7%)、278例(22.9%)、291例(16.9%)、564例(16.2%)にみられました。

また、ベースライン時のアルブミン尿区分別の有害事象の発生状況はご覧のとおりでした。

EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカムの安全性はご覧のとおりです。

EMPEROR-Preserved試験

HFpEFに対するジャディアンスの臨床成績:EMPEROR-Preserved試験

ジャディアンスの心不全患者における予後への影響を考えるうえでは、2021年に「慢性心不全※」の適応追加が承認されたことも重要なトピックスといえます。その承認根拠となったエビデンスのひとつとして、左室駆出率が保たれた慢性心不全(HFpEF)に対するジャディアンスの有効性を検討したEMPEROR-Preserved試験についてもみていきたいと思います。

※ジャディアンス錠10mgの効能又は効果(一部抜粋)「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」

本試験では、HFpEF患者を対象に、ジャディアンス10mgを標準治療に追加したときの有効性を検討した結果、主要評価項目である心血管死または心不全による入院の初回発現のリスクは、プラセボ群と比較してジャディアンス群で21%有意に低下しました(HR=0.79、95.03%CI: 0.69~0.90、p<0.001、Cox比例ハザード回帰モデル、検証的結果)。

EMPEROR-Preserved試験

本試験では患者背景別のサブグループ解析が行われ、主要評価項目のハザード比は、ベースライン時糖尿病ありで0.79、糖尿病なしで0.78と、糖尿病の有無によらずHFpEFに対するジャディアンスの有効性が示されました。

本試験の全体集団における有害事象の発現割合は、治験薬投与期間中央値1.91年においてジャディアンス群で85.9%、プラセボ群で86.5%でした。
ジャディアンス群で発現割合が5%以上だった有害事象は、心不全449例(15.0%)、尿路感染236例(7.9%)などでした。重篤な有害事象の発現割合はジャディアンス群とプラセボ群でそれぞれ47.9%、51.6%、投与中止に至った有害事象は19.1%、18.4%、死亡に至った有害事象は9.6%、9.9%で、その内訳はご覧のとおりでした。

 本試験では患者背景別のサブグループ解析が行われ、主要評価項目のハザード比は、ベースライン時糖尿病ありで0.79、糖尿病なしで0.78と、糖尿病の有無によらずHFpEFに対するジャディアンスの有効性が示されました。   本試験の全体集団における有害事象の発現割合は、治験薬投与期間中央値1.91年においてジャディアンス群で85.9%、プラセボ群で86.5%でした。  ジャディアンス群で発現割合が5%以上だった有害事象は、心不全449例(15.0%)、尿路感染236例(7.9%)などでした。重篤な有害事象の発現割合はジャディアンス群とプラセボ群でそれぞれ47.9%、51.6%、投与中止に至った有害事象は19.1%、18.4%、死亡に至った有害事象は9.6%、9.9%で、その内訳はご覧のとおりでした。

特定使用成績調査

使用実態下におけるジャディアンスの安全性:特定使用成績調査

最後に、日本人患者におけるジャディアンスの安全性として、特定使用成績調査(PMS)の結果をみていきたいと思います。
SGLT2阻害薬は発売当初に市販直後調査などで多様な副作用が報告され、適正使用に関するRecommendationも公表されましたが、現在では徐々にその使用経験が蓄積されてきました。ジャディアンスでは、2022年に日本における特定使用成績調査の最終結果が報告されました。

本調査では、ジャディアンスを初めて服用する7,931例を対象に、投与開始から3年間を観察期間として安全性および有効性が評価されました。
その結果、全患者での副作用発現率は12.91%で、安全性検討事項の発現率は、低血糖0.44%、尿路感染1.07%、性器感染0.66%などでした。また、年齢別の副作用発現状況としてご覧の結果が示されました。

特定使用成績調査

本調査では、BMI別の体重の変化量が解析され、ベースラインからの体重の平均変化量は全患者で-2.96kgでした。BMI別の結果はご覧のとおりです。

 本調査では、BMI別の体重の変化量が解析され、ベースラインからの体重の平均変化量は全患者で-2.96kgでした。BMI別の結果はご覧のとおりです。

まとめ

本日は、症例における治療選択についてディスカッションした後に、ジャディアンスの有用性を考えるうえで重要な
・血糖降下作用
・心腎イベントに対する影響
・副作用リスク
に関するジャディアンスの代表的なエビデンスをご紹介しました。これらのエビデンスをもつジャディアンスは、高血圧を併発する未治療の2型糖尿病のある方において、選択肢のひとつとなりえるのではないでしょうか。

まとめ 本日は、症例における治療選択についてディスカッションした後に、ジャディアンスの有用性を考えるうえで重要な ・血糖降下作用 ・心腎イベントに対する影響 ・副作用リスク に関するジャディアンスの代表的なエビデンスをご紹介しました。これらのエビデンスをもつジャディアンスは、高血圧を併発する未治療の2型糖尿病のある方において、選択肢のひとつとなりえるのではないでしょうか。

【引用】

  1. 日本糖尿病学会 編・著:糖尿病診療ガイドライン2019, 南江堂, 2019
  2. ElSayed NA, et al. Diabetes Care 2023; 46(Suppl 1): S140–S157.
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