心腎代謝連関の病態生理学的相互作用と糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解

サイトへ公開: 2023年02月02日 (木)
心腎代謝連関の病態生理学的相互作用と 糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解

日常診療における糖尿病治療では、どのようなことを重視されますか

図1

日常診療において、糖尿病治療では、どのようなことを重視されますか 

HbA1c 7.6%、収縮期血圧129mmHg、LDL-C 127mg/dL。このような高血圧や脂質異常症等の合併症・併存症がなく、薬物療法を行っていない患者さんに対して、先生方はどのような点を重視して、糖尿病治療を行っていらっしゃいますか。

糖尿病では、病態生理学的相互作用により心血管疾患・CKDに悪影響を及ぼす

図2

糖尿病では、病態生理学的相互作用により、心血管疾患・CKDに悪影響を及ぼす

糖尿病のある方の場合、高血圧・脂質異常症・喫煙などのリスク因子が多いほど心血管死のリスクが高くなりました。さらに、このようなリスク因子がない場合でも、糖尿病のある方は糖尿病のない方よりも心血管死のリスクが高いことが示され、糖尿病は心血管死の独立したリスク因子であると考えられました。

図3

糖尿病では、病態生理学的相互作用により、心血管疾患・CKDに悪影響を及ぼす02

糖尿病では、心腎代謝連関による病態生理学的相互作用が心臓、腎臓に悪影響を及ぼします。
また、高血糖状態が続くことで血管の硬化やインスリン抵抗性が誘導されます。インスリン抵抗性の上昇は、心筋の線維化や拡張機能障害、eGFRの低下や腎症を誘発するため、糖尿病であること自体が心不全や腎疾患のリスクとなります1,2)

糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解

図4

糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解

日本糖尿病学会は、コンセンサスステートメントで糖尿病の併存疾患の一つに心不全を挙げ、「糖尿病の方は症状がなくても将来の心不全リスクが高い『前心不全状態』と考えられる」としています。

図5

糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解02

米国心臓病学会(ACC)および米国心臓協会(AHA)による心不全ステージ分類でも、糖尿病は、心不全の症状または徴候がなくとも、ステージA、心不全リスクを有する状態であるとしています。

図6

糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解03

AHA/ACC/HFSAによる心不全管理ガイドライン2022年版では、このステージAの心不全リスクを考慮し、2型糖尿病のある方に対してSGLT2阻害薬の使用を推奨しています(推奨クラス1、エビデンスレベルA)。

図7

糖尿病と心不全を取り巻く国内外の見解04

SGLT2阻害薬であるジャディアンスは、2型糖尿病や心不全等に関するエビデンスが多数報告されました。
2型糖尿病に対しては、初期投与量の10mg錠から25mg錠への増量が可能であり、また、DPP-4阻害薬トラゼンタとの配合錠トラディアンスを選択していただくことで剤型、錠数を変えずに糖尿病治療を強化することができます。
これからご紹介するジャディアンスのエビデンスをご確認いただき、合併症のリスク低減を考慮した糖尿病治療の選択肢として、ジャディアンスをご検討ください。

ジャディアンスのエビデンス

① 2型糖尿病に対する効果

図8

①    2型糖尿病に対する効果

ジャディアンスは、早期から心腎代謝連関を見据えた糖尿病治療における有用な選択肢であることを示すエビデンスが複数報告されています。
まずは、ジャディアンスの長期にわたる血糖マネジメントに関するエビデンスです。
食事・運動療法で血糖マネジメントが不十分(HbA1cが7.0%以上かつ10.0%以下)で、薬物療法を行っていない2型糖尿病899例を対象としたEMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験では、投与76週後においてジャディアンス群およびシタグリプチン群でHbA1cがベースラインよりも低下し、その調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%であったと報告されました。
なお、有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン100mg群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ4.9%(11/224例)、4.0%(9/223例)、4.9%(11/223例)、6.6%(15/229例)、重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25/224例)、7.2%(16/223例)、8.1%(18/223例)、10.0%(23/229例)、死亡に至った有害事象はシタグリプチン100mg群0.4%(1/223例)、プラセボ群0.4%(1/229例)に認められました。投与中止に至った有害事象、および重篤な有害事象の内訳については、論文に記載がありませんでした。
いずれかの群で5%以上となった主な有害事象は表の通りでした。

ジャディアンスのエビデンス

② 2型糖尿病における心不全への影響 /p>

図9

②    2型糖尿病における心不全への影響  

EMPA-REG OUTCOME®試験では、心血管イベントのリスク因子(高血圧、脂質異常症等)を有し、ガイドライン等で推奨されている標準治療(スタチン、ACE阻害薬、ARB、アスピリン、β遮断薬、カルシウム拮抗薬等)を受けている2型糖尿病を対象に、ジャディアンスを標準治療に上乗せした場合の心不全に対する影響を検討しました。

図10

②    2型糖尿病における心不全への影響  02

【参考情報】

ジャディアンス群ではプラセボ群と比較して、心不全による入院(HHF)の発現リスクが35%低下しました(HR=0.65、95%CI:0.50~0.85、p=0.002、Cox比例ハザードモデル)。さらに、心不全の有無別によるサブグループ解析の結果、ベースライン時に心不全がない場合でもジャディアンス群のHHFの発現リスクがプラセボ群と比べて低下しました(HR=0.59、95%CI:0.43~0.82)。
本試験での有害事象の発現率は、ベースライン時に心不全がある集団ではプラセボ群94.3%(230/244例)、ジャディアンス群89.4%(413/462例)、ベースライン時に心不全がない集団ではプラセボ群91.4%(1,909/2,089例)、ジャディアンス群90.3%(3,817/4,225例)でした。投与中止に至った有害事象、重篤な有害事象および死亡の発現率はこちらの表の通りで、それぞれの内訳について論文に記載がありませんでした。
主な有害事象は低血糖で、ベースライン時に心不全がある集団ではプラセボ群27.9%(68/244例)、ジャディアンス群24.9%(115/462例)、ベースライン時に心不全がない集団ではプラセボ群27.9%(582/2,089例)、ジャディアンス群28.1%(1,188/4,225例)に認められました。

ジャディアンスのエビデンス

③左室駆出率が保たれた(>40%)慢性心不全に対する効果

※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

図11

③左室駆出率が保たれた(>40%)慢性心不全※に対する効果

また、EMPEROR-Preserved試験では、慢性心不全の適応を持つジャディアンス10mgについて、左室駆出率が保たれた(>40%)慢性心不全患者を対象に、ACE阻害薬、ARB、ARNI、β遮断薬、MRA等にジャディアンスを追加した際の有効性と安全性を評価し、糖尿病の有無別に解析を行いました。

※ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。

図12

③左室駆出率が保たれた(>40%)慢性心不全※に対する効果02

ジャディアンス10mg群のプラセボ群に対する心血管死またはHHFのハザード比は、糖尿病のある群で0.79(95%信頼区間:0.67~0.94)、糖尿病のない群で0.78(95%信頼区間:0.64~0.95)と、ベースラインの糖尿病の有無にかかわらず、ジャディアンス10mg群で心血管死またはHHFのリスクが低下しました。
なお、本試験で報告された有害事象は、糖尿病ありのジャディアンス10mg群で86.8%(1,272/1,465例)、プラセボ群で87.2%(1,283/1,471例)、糖尿病なしのジャディアンス10mg群で85.0%(1,302/1,531例)、プラセボ群で85.8%(1,302/1,518例)、投与中止に至った有害事象はそれぞれ19.8%(290/1,465例)、19.6%(288/1,471例)、18.4%(281/1,531例)、17.3%(263/1,518例)、重篤な有害事象はそれぞれ50.0%(732/1,465例)、54.2%(798/1,471例)、46.0%(704/1,531例)、49.1%(745/1,518例)でした。糖尿病の有無別の死亡に至った有害事象および、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象の内訳は、論文に記載がありませんでした。
また、低血圧はそれぞれ9.4%(137/1,465例)、8.3%(122/1,471例)、11.4%(174/1,531例)、8.9%(135/1,518例)、体液量減少はそれぞれ11.0%(161/1,465例)、9.3%(137/1,471例)、12.7%(195/1,531例)、9.8%(149/1,518例)でした。急性腎不全、下肢切断、性器感染、尿路感染の発現率は、の通りでした。

図13

③左室駆出率が保たれた(>40%)慢性心不全※に対する効果03

2型糖尿病は、その他にリスク因子がなくとも心機能と腎機能に悪影響を及ぼし、心血管疾患やCKDのリスクを増加させます。心不全の症状がなくとも、日本糖尿病学会のコンセンサスステートメントでは「前心不全状態」であるとしており3)、ACC/AHA心不全ステージ分類でも心不全ステージAとしています4)
糖尿病治療の目標の一つである合併症の発症・進展を阻止するため5、早期から心腎代謝連関を考慮した糖尿病治療の選択肢として、ジャディアンスをご検討ください。

【引用】

  1. Kim JA, et al.: Am J Physiol Endocrinol Metab. 2012; 302(2): E201-8.
  2. Alicic RZ, et al.: Clin J Am Soc Nephrol. 2017; 12(12): 2032-45.
  3. 日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会. 糖尿病.2022; 65(8): 419-34.
  4. Heidenreich PA, et al.: Circulation. 2022; 145(18): e895-1032
  5. 日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023, p31, 文光堂, 2022.
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