CKD※治療におけるSGLT2阻害薬の位置づけとジャディアンスの臨床効果

サイトへ公開: 2024年03月21日 (木)

ガイドラインが示すCKD治療のSGLT2阻害薬の位置づけとEMPA-KIDNEY試験について紹介します。

※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

国内ガイドラインが示すCKD治療におけるSGLT2阻害薬の位置づけ

近年、糖尿病非合併慢性腎臓病(CKD)に対するSGLT2阻害薬の腎保護効果が⽰され12、糖尿病合併CKDのみならず糖尿病非合併CKDに対し、⼀部のSGLT2阻害薬が使⽤可能となりました。これを受け、日本腎臓学会より2022年に『CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使⽤に関するrecommendation』、2023年に『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』において、CKD治療におけるSGLT2阻害薬の位置づけが明記されました。   
『CKD治療におけるSGLT2阻害薬の適正使⽤に関するrecommendation』では、「SGLT2阻害薬は、糖尿病合併・非合併にかかわらず、CKD患者において腎保護効果を示すため、リスクとベネフィットを⼗分に勘案して積極的に使⽤を検討すること」とし、糖尿病合併・非合併CKDの患者に対して、それぞれ以下のRecommendationとフローチャートで方針が示されています。

糖尿病合併CKD患者アルブミン尿(蛋⽩尿)、腎機能に関係なく腎保護効果が期待されるため、クリニカルエビデンスを有するSGLT2阻害薬の積極的な使⽤を考慮する(eGFR15mL/min/1.73m2未満では新規に開始しない。継続投与して15mL/min/1.73m2未満となった場合には、副作⽤に注意しながら継続する)。

糖尿病“非”合併CKD患者蛋⽩尿陽性のCKD(IgA腎症や巣状分節性⽷球体硬化症など)には、原疾患の治療に加えてクリニカルエビデンスを有するSGLT2阻害薬の積極的な使用を考慮する(eGFR15 mL/min/1.73m2未満では新規に開始しない。継続投与して15mL/min/1.73m2未満となった場合には、副作⽤に注意しながら継続する)。

なお、糖尿病“非”合併CKD患者で、蛋白尿陰性のCKDには、eGFR60mL/min/1.73m2未満でSGLT2阻害薬のベネフィットを勘案し使用を慎重に検討することとなっています。

『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』では、糖尿病関連腎臓病(DKD)患者に対するSGLT2阻害薬の投与については、「DKD患者に対して、腎予後の改善とCVD発症抑制が期待されるため、SGLT2阻害薬の投与を推奨する」とし、推奨レベル1(強く推奨する)、エビデンスグレードはA(強:効果の推定値に強く確信がある)で、推奨されています。

糖尿病非合併のCKD患者に対するSGLT2阻害薬の投与については、「糖尿病非合併CKD患者において、蛋白尿を有する場合、SGLT2阻害薬は腎機能低下の進展抑制およびCVDイベントと死亡の発生抑制が期待できるため、投与を推奨する」とし、推奨レベル1(強く推奨する)、エビデンスグレードはB(中:効果の推定値に中程度の確信がある)で、推奨されています。また、「蛋白尿を有さない場合や、eGFR20mL/min/1.73m2未満でのSGLT2阻害薬の開始についてはエビデンスがない」とし、推奨レベルなし(明確な推奨ができない)、エビデンスグレードはD(非常に弱い:効果の推定値がほとんど確信できない)で示されています。

EMPA-KIDNEY試験はアルブミン尿、糖尿病合併の有無にかかわらず、幅広いeGFR値のCKD患者を対象に、ジャディアンスの有効性と安全性を評価した臨床試験です

前述したガイドライン等でのCKD治療におけるSGLT2阻害薬使用方針は、いくつかのエビデンスをもとに示されました。その一つがジャディアンスのEMPA-KIDNEY試験です。   
EMPA-KIDNEY試験は、腎疾患進行のリスクのあるCKD患者を対象とした国際共同第Ⅲ相・検証試験です。本試験はアルブミン尿や糖尿病合併の有無を問わず、幅広いeGFR値のCKD患者6,581例を対象に行われました。

CKD患者における腎疾患進行または心血管死の初回発現までの期間に対するジャディアンス10mg群の優越性が検証されました

主要評価項目である腎疾患進行または心血管死のジャディアンス10mg群のプラセボ群に対するハザード比は0.73で、イベントリスクが27%低下し、ジャディアンス10mg群の優越性が検証されました(99.83%CI:0.59~0.89、p<0.0001、Cox回帰モデル)。ベースラインのUACR別では、顕性アルブミン尿(300mg/gCr超)の患者において、ジャディアンス10mg群とプラセボ群の間に有意差が認められました(ハザード比0.68、p<0.0001、名目上のp値、Cox回帰モデル)。

腎疾患進行または心血管死の初回発現におけるサブグループ解析では、ベースラインのeGFR、糖尿病合併の有無および尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が、特に重要なサブグループとして事前規定されました。   
その結果、ベースラインのeGFR別の解析では、全ての部分集団でハザード比の95%CIの上限は1.00を下回りました。   
また、ベースラインの糖尿病合併の有無別では、糖尿病合併の有無にかかわらずジャディアンス10mg群とプラセボ群の間に有意差が認められました(糖尿病合併:ハザード比0.64、p<0.0001、糖尿病非合併:ハザード比0.83、p=0.0443、いずれも名目上のp値、Cox回帰モデル)。   
ベースラインのUACR別では、顕性アルブミン尿(300mg/gCr超)の患者において、ジャディアンス10mg群とプラセボ群の間に有意差が認められました(ハザード比0.68、p<0.0001、名目上のp値、Cox回帰モデル)。全ての原因による入院(初回および再発)の発現までの期間の、プラセボ群に対するジャディアンス10mg群のハザード比は0.86(99.03%CI:0.76~0.98)であり、 14%のイベント減少が検証されました(p=0.0025、Joint Frailtyモデル)。なお、全ての原因による入院イベントの総数は、ジャディアンス10mg群で1,608件、プラセボ群で1,887件でした。

有害事象の発現割合は、ジャディアンス10mg群で43.9%、プラセボ群で46.1%でした

安全性については、重篤な有害事象および事前に規定した非重篤な有害事象に限定して収集され、全ての有害事象の発現割合はジャディアンス10mg群で43.9%(1,444/3,292例)、プラセボ群で46.1%(1,516/3,289例)でした。   
主な有害事象は、ジャディアンス10mg群で痛風231例(7.0%)、コロナウイルス感染98例(3.0%)、急性腎障害93例(2.8%)等、プラセボ群で痛風266例(8.1%)、急性腎障害117例(3.6%)、コロナウイルス感染107例(3.3%)等でした。また重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群でコロナウイルス感染98例、急性腎障害93例、血中カリウム増加76例等、プラセボ群で急性腎障害117例、コロナウイルス感染107例、血中カリウム増加87例等でした。投与中止、死亡に至った有害事象は表のとおりでした。

ジャディアンス10mgは、2型糖尿病、慢性心不全※1に加え、「慢性腎臓病※2」に対して投与可能となりました

2024年2月、2型糖尿病の有無を問わない慢性腎臓病(CKD)患者の腎疾患進行または心血管死のリスク低下が評価され、「慢性腎臓病※2」に対する効能又は効果が新たに追加承認されました。

※1 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。   
※2 ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

ジャディアンスの「慢性腎臓病」に対する用法及び用量は10mg 1用量のみです

「慢性腎臓病」治療に対するジャディアンスの投与用量は10mg 1用量のみです。朝食前または朝食後のどちらにおいても服用可能です。

※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

ジャディアンス10mgを、CKD患者さんにお役立てください

2型糖尿病のあるCKD患者さん、ならびに2型糖尿病のないCKD患者さんへの治療薬の選択肢として、ジャディアンス10mgをぜひご検討ください。

※ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。

引用文献

  1. Heerspink HJL, et al. N Engl J Med 2020;383(15):1436-46. 
  2. Herrington WG, et al. N Engl J Med 2023;388(2):117-27.
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