心・腎・代謝にアプローチする2型糖尿病治療の意義とエビデンス
- 糖尿病治療の目標である「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」の達成には、患者さんの将来への影響が大きい心腎合併症の発症を予防することが必要であると考えられます。
- 心腎合併症のリスクを抑制するためには、心腎代謝連関の観点から、血糖のみならず心血管および腎臓に対する作用が期待される治療を行い、心臓・腎・代謝のすべてを改善することが重要です。
- SGLT2阻害薬ジャディアンスは、EMPA-REG EXTEND™ MONO試験で示された血糖への有効性以外にも、さまざまなエビデンスを有しています。
- さらにジャディアンスファミリーであるトラディアンス配合錠を活用することで、1日1回1錠のシンプルな投与を継続しながら、治療強化をすることが可能です。
将来の合併症発症リスクを抑制するための治療戦略
日本糖尿病学会による糖尿病治療ガイドには、糖尿病治療の目標は「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」と明記されています。この目標を達成するには、血糖だけでなく血圧および脂質も良好なコントロール状態を保ち、合併症の発症および進展を阻止することが重要です。
糖尿病の合併症の中でも、心臓および腎臓に関するものは患者さんの将来の生活に及ぼす影響が大きくなっています。日本と欧州5カ国で実施された大規模コホート研究では、糖尿病の心腎合併症の中で、初発イベントとして発現する頻度が高いのは心不全とCKDであることが示されました。
したがって、早い段階から心不全とCKDの発症阻止を目指した治療を行うことが、糖尿病治療目標の達成に必要であると考えられます(図1)。
![将来の合併症発症リスクを抑制するための治療戦略](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_01_0.jpg)
図1
CKD、心不全、糖尿病のリスク因子は共通しており、またそれぞれの疾患は相互に関連しているとされています。この相互の関連を心腎代謝連関と呼びます。代謝だけでなく心臓と腎臓の機能改善を考慮した2型糖尿病治療を行うことで、心腎代謝連関によるポジティブな相互作用が働き、心腎合併症の発症リスクを抑制できることが期待されます(図2)。
![将来の合併症発症リスクを抑制するための治療戦略02](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_02_0.jpg)
図2
2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTEND™ MONO)
心腎代謝連関のうち代謝に対するアプローチとして、ジャディアンスの血糖低下作用がEMPA-REG EXTEND™ MONO試験で確認されました。
この試験は、2型糖尿病のある方に対してジャディアンス10mgまたは25mgを1日1回投与し、その有効性や安全性をプラセボあるいはシタグリプチン100㎎と比較検討したものです(図3)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_03_0.jpg)
図3
その結果、ジャディアンス群およびシタグリプチン群では投与76週後においてプラセボ群と比べて有意にHbA1cが低下しました。投与76週後におけるベースラインからのHbA1cの調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%でした(図4)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)02](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_04_0.jpg)
図4
本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群172/224例(76.8%)、ジャディアンス25mg群174/223例(78.0%)、シタグリプチン群161/223例(72.2%)、プラセボ群175/229例(76.4%)に認められました。
投与中止に至った有害事象はジャディアンス10mg群11/224例(4.9%)、ジャディアンス25mg群9/223例(4.0%)、シタグリプチン群11/223例(4.9%)、プラセボ群15/229例(6.6%)に認められました。
重篤な有害事象はジャディアンス10mg群25/224例(11.2%)、ジャディアンス25mg群16/223例(7.2%)、シタグリプチン群18/223例(8.1%)、プラセボ群23/229例(10.0%)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン群1/223例(0.4%)、プラセボ群1/229例(0.4%)のみに認められました。
主な有害事象は、高血糖がジャディアンス10mg群20/224例(8.9%)、ジャディアンス25mg群11/223例(4.9%)、シタグリプチン群28/223例(12.6%)、プラセボ群63/229例(27.5%)、鼻咽頭炎がジャディアンス10mg群32/224例(14.3%)、ジャディアンス25mg群25/223例(11.2%)、シタグリプチン群27/223例(12.1%)、プラセボ群27/229例(11.8%)でした(図5)。
※投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象の内訳について論文に記載はありませんでした。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)03](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_05_0.jpg)
図5
2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)
さらにジャディアンスについては、EMPA-REG OUTCOME試験により、心血管イベント高リスクの2型糖尿病のある方における心血管イベントに対する長期の影響が検討されました(図6)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_06_0.jpg)
図6
さらに同試験では、心血管イベント高リスクを有する2型糖尿病のある方における腎アウトカムとして、アルブミン尿の変化に対するジャディアンスの影響も検討されました(図7)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)02](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_08_0.jpg)
図7
ベースライン特性によれば、対象患者の約95%は降圧療法を実施しており、約80%は脂質降下薬による治療を実施していました。このことより、降圧療法、脂質低下療法に関しては、各国のガイドラインに順じて既に十分な治療が行われていたと考えられます。(図8)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)03](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_09_0.jpg)
図8
また腎機能については、顕性アルブミン尿だけでなく、正常や微量アルブミン尿を含む、さまざまな患者が含まれていました(図9)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)04](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_010_0.jpg)
図9
【参考情報】
主要評価項目である3P-MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中) の発現率は、プラセボ群に対してジャディアンス群で14%有意に低いことが示されました(ハザード比:0.86、95.02%信頼区間:0.74~0.99、p値=0.04)(図10)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)05](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_07_0.jpg)
【参考情報】
顕性アルブミン尿への進展、血清クレアチニン値の倍化、透析などの腎代替療法の開始、腎疾患による死亡を含む腎複合イベントの1,000人・年あたりの発現率は、ジャディアンス群で47.8、プラセボ群で76.0(ハザード比:0.61、95%信頼区間:0.53~0.70)でした(図11)。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)06](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_011_0.jpg)
図11
本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群2,112/2,345例(90.1%)、ジャディアンス25mg群2,118/2,342例(90.4%)、プラセボ群2,139/2,333例(91.7%)に認められました。重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群876/2,345例(37.4%)、ジャディアンス25mg群913/2,342例(39.0%)、プラセボ群988/2,333例(42.3%)に認められました。 主な有害事象は、低血糖がジャディアンス10mg群656/2,345例(28.0%)、ジャディアンス25mg群647/2,342例(27.6%)、プラセボ群650/2,333例(27.9%)、尿路感染がそれぞれ 426/2,345例(18.2%)、416/2,342例(17.8%)、423/2,333例(18.1%)に認められました(図12)。
※投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象の内訳について、論文に記載はありませんでした。
![2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス: 心血管および腎アウトカム(EMPA-REG OUTCOME)07](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_012_0.jpg)
図12
ジャディアンスファミリーによるシンプルな治療ステップアップ
ジャディアンスをはじめとするジャディアンスファミリーでは、簡便な処方のままシンプルに治療強化をすることが可能です。
ジャディアンスファミリーのトラディアンス配合錠は、ジャディアンスとDPP-4阻害薬トラゼンタの配合錠で、ジャディアンスと同じく1日1回1錠で簡便に用いることができます。
ジャディアンスによる治療を行うことで、心腎代謝連関を考慮しながら、ジャディアンスと同じシンプルな処方で治療強化を行うことができます。
2023年4月からの各剤の新薬価については、スライドをご参照ください(図13)。
![ジャディアンスファミリーによるシンプルな治療ステップアップ](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_013_0.jpg)
図13
心血管および腎アウトカムについてのエビデンスを有するジャディアンス、またジャディアンスと同じシンプル処方で治療強化が可能なトラディアンスを、高血圧や脂質異常症を合併し、糖尿病治療の目標を達成したい患者さんにぜひお役立てください(図14)。
![ジャディアンスファミリーによるシンプルな治療ステップアップ02](/jp/sites/default/files/inline-images/23May_B%2B_014_0.jpg)
図14