糖尿病性腎臓病のリスク因子を考慮した糖尿病治療と、ジャディアンスのエビデンス

サイトへ公開: 2022年11月25日 (金)
糖尿病性腎臓病(DKD)のリスク因子を考慮した糖尿病治療と、 ジャディアンスのエビデンス

1. 新規透析導入の原疾患は、約4割が糖尿病性腎症

図1

規透析導入の原疾患は、約4割が糖尿病性腎症

糖尿病治療の目標の一つに、合併症の発症・進展を阻止することが掲げられています1
近年では新規透析導入の原疾患の第1位が糖尿病性腎症という状況が続いており、2020年には40.7%を占めたことから、糖尿病性腎症の進展予防は喫緊の課題として挙げられています2)

2. 進行期DKDに対する集学的治療の腎アウトカムは、標準治療と統計的有意差なし

図2

進行期DKDに対する集学的治療の腎アウトカムは、標準治療と統計的有意差なし

しかし、糖尿病性腎症の寛解を目指したチーム医療による集学的治療に関する大規模臨床研究(DNETT-Japan)では、糖尿病性腎症である進行期糖尿病性腎臓病(DKD)に対して、チーム医療による血糖管理、血圧管理、脂質管理および食事制限のマネジメントを含めた集学的治療を行っても、複合腎イベント[末期腎不全(慢性透析または腎移植)、血清クレアチニン値の倍化、死亡]の発現リスクは、従来治療と比較して有意差が得られなかった(ハザード比=0.69、95%信頼区間0.43~1.11、p=0.13、Cox比例ハザード回帰モデル)と報告されました。

3. eGFR正常(eGFR≧60)の方のeGFR急低下のリスク因子は、高齢、ベースラインの収縮期血圧・eGFR・UACRの高値

図3

eGFR正常(eGFR≧60)の方のeGFR急低下のリスク因子は、高齢、ベースラインの収縮期血圧・eGFR・UACRの高値

DKDおよび糖尿病に合併するeGFR低下について検討した国内のコホート研究では、糖尿病患者におけるDKDの有病率は51.6%(1,230/2,385例)でした。
また、eGFR正常(eGFR≧60)の方のeGFR急低下のリスク因子は高齢、ベースラインの収縮期血圧・eGFR・UACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)の高値であることが示され、ハイリスク患者の早期発見と治療介入に役立つ可能性が報告されました。

4. JDCP studyにおいては、9.0%が正常アルブミン尿かつeGFR<60

図4

JDCP studyにおいては、9.0%が正常アルブミン尿かつeGFR<60

国内の大規模前向き観察研究JDCP studyにおいては、9.0%(467/5,194例)が正常アルブミン尿かつeGFR<60であったと報告されました。
糖尿病では、顕性アルブミン尿を伴わないままeGFRが低下する患者が看過できない数を占めることが知られていることからも3)、糖尿病早期からeGFRの測定を行ってDKDのスクリーニングを行うとともに、UACR高値等のリスク因子の有無を考慮した適切な治療を選択することが望まれます4)

ジャディアンスのエビデンス ①血糖値への作用

図5

ジャディアンスのエビデンス ①血糖値への作用

ジャディアンスは、心・腎・代謝系の連関を見据えた早期からの糖尿病治療における有用な選択肢の一つとしてのエビデンスが複数報告されています。
食事・運動療法で血糖コントロールが不十分(HbA1cが7.0%以上かつ10.0%以下)で薬物療法を行っていない2型糖尿病899例を対象としたEMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験では、投与76週後においてジャディアンス群およびシタグリプチン群でHbA1cがベースラインよりも低下し、その調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%であったと報告されました。
なお、本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群76.8%(172/224例)、25mg群78.0%(174/223例)、シタグリプチン100mg群72.2%(161/223例)、プラセボ群76.4%(175/229例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ4.9%(11/224例)、4.0%(9/223例)、4.9%(11/223例)、6.6%(15/229例)、重篤な有害事象はそれぞれ11.2%(25/224例)、7.2%(16/223例)、8.1%(18/223例)、10.0%(23/229例)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン100mg群0.4%(1/223例)、プラセボ群0.4%(1/229例)でした。投与中止に至った有害事象、および重篤な有害事象の内訳については、論文に記載がありませんでした。
主な有害事象は、高血糖などで、発現率は表の通りでした。

ジャディアンスのエビデンス ②【参考情報】腎機能への影響

図6

ジャディアンスのエビデンス ②【参考情報】腎機能への影響

EMPA-REG OUTCOME®試験の腎アウトカム解析では、eGFR≧60(正常または高値、軽度低下)で顕性アルブミン尿を呈さない患者4,893例、eGFR低下例で顕性アルブミン尿を呈さないDKD 1,290例、eGFRに関わらず顕性アルブミン尿を呈するDKD 769例を対象として、ジャディアンスの腎機能に対する影響を検討しました。

図7

ジャディアンスのエビデンス ②【参考情報】腎機能への影響02

【参考情報】

192週までのベースライン時のアルブミン尿別のeGFRの推移は図Aの通りでした。
図Bは、アルブミン尿の区分がベースラインから移行した患者の割合の推移です。
ベースライン時の正常アルブミン尿から微量または顕性アルブミン尿に移行した患者におけるジャディアンス群のハザード比は0.84(対プラセボ群、95%信頼区間0.74~0.95)でした。逆に、ベースライン時の顕性アルブミン尿から正常アルブミン尿または微量アルブミン尿に移行した患者におけるジャディアンス群のハザード比は1.82(対プラセボ群、95%信頼区間1.40~2.37)でした。
なお、本解析における有害事象は、ベースライン時に正常アルブミン尿の患者において、プラセボ群90.8%(1,255/1,382例)、ジャディアンス10mg群88.6%(1,245/1,405例)、ジャディアンス25mg群89.4%(1,237/1,384例)、ベースライン時に微量アルブミン尿の患者において、プラセボ群92.9%(627/675例)、ジャディアンス10mg群91.6%(591/645例)、ジャディアンス25mg群91.1%(631/693例)、ベースライン時に顕性アルブミン尿の患者において、プラセボ群94.2%(245/260例)、ジャディアンス10mg群92.7%(242/261例)、ジャディアンス25mg群94.0%(233/248例)に認められました。
投与中止に至った有害事象はそれぞれ17.1%(236/1,382例)、15.7%(221/1,405例)、15.1%(209/1,384例)、21.2%(143/675例)、18.0%(116/645例)、17.6%(122/693例)、27.7%(72/260例)、28.0%(73/261例)、25.4%(63/248例)、重篤な有害事象はそれぞれ39.2%(542/1,382例)、33.9%(476/1,405例)、35.5%(492/1,384例)、44.3%(299/675例)、40.3%(260/645例)、41.1%(285/693例)、55.4%(144/260例)、47.5%(124/261例)、51.6%(128/248例)、死亡はそれぞれ3.8%(52/1,382例)、3.7%(52/1,405例)、2.8%(39/1,384例)、7.0%(47/675例)、3.7%(24/645例)、3.5%(24/693例)、7.7%(20/260例)、7.7%(20/261例)、6.5%(16/248例)に認められました。
主な有害事象は、低血糖、尿路感染症などであり、発現率はの通りでした。

図8

ジャディアンスのエビデンス ②【参考情報】腎機能への影響03

心・腎・代謝系は相互に悪影響を及ぼすことが知られています。
SGLT2阻害薬のベネフィットとリスクを考慮していただいた上で、心・腎・代謝系の関連を見据えた早期からの糖尿病治療の選択肢として、ジャディアンスをご検討ください。

【引用】

  1. 日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2022-2023, p31, 文光堂, 2022.
  2. 日本医師会 日本糖尿病対策推進会議 厚生労働省 糖尿病性腎症重症化予防プログラム(平成31年4月25日改定)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/program.pdf (2022年9月5日閲覧)
  3. 日本腎臓学会編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018, p104, 東京医学社, 2018.
  4. Yoshida Y, et al.: BMJ Open Diabetes Res Care. 2020; 8(1): e000902.
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