将来の心腎イベント発症予防を見据えた2型糖尿病治療

サイトへ公開: 2023年01月30日 (月)
  • 2型糖尿病の合併症である心腎疾患の中でも、CKDと心不全は最初に発症することが多いイベントです。その背景には、2型糖尿病そのもの、また2型糖尿病に併発することの多い高血圧や脂質異常症が心腎疾患のリスク因子であることが考えられます。
  • 2型糖尿病のある方の将来の心腎イベントを予防するためには、早期から合併症発症を見据えた糖尿病治療が重要だと考えられます。
  • SGLT2阻害薬ジャディアンスは、EMPA-REG EXTEND™ MONO試験や特定使用成績調査により、実臨床も含めた有効性と安全性が検討されました。

2型糖尿病のある方における合併症の発症状況

近年実施された日本および欧州5カ国の2型糖尿病のある方を対象とした大規模国際共同コホート研究では、全体集団、日本人集団ともに、末梢動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中、心腎疾患(心不全またはCKD)の中での初発イベントは、CKDと心不全が上位2位を占めていました(図1)。

2型糖尿病のある方における合併症の発症状況

図1

2型糖尿病は高血圧や脂質異常症とともに、心不全およびCKDの独立したリスク因子であることがわかっています。
そのため、2型糖尿病に対しては早期から将来の合併症の発症リスクを見据えた治療を行うことが重要です(図2、3)。

2型糖尿病のある方における合併症の発症状況 02

図2

2型糖尿病のある方における合併症の発症状況 03

図3

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス:
血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)

糖尿病治療薬としてのSGLT2阻害薬ジャディアンスの有効性・安全性について解説します。
EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO試験は、2型糖尿病のある方に対してジャディアンス10mgまたは25mgを1日1回投与し、その有効性や安全性をプラセボあるいはシタグリプチン100㎎と比較検討した試験です(図4)。

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス:  血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)

図4

その結果、投与76週後においてジャディアンス群およびシタグリプチン群はプラセボ群と比べてHbA1cが有意に低下しました。投与76週後におけるベースラインからのHbA1cの調整平均変化量は、ジャディアンス10mg群で-0.65%、25mg群で-0.76%、シタグリプチン100mg群で-0.53%でした(図5)。

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス:  血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)02

図5

本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群172/224例(76.8%)、ジャディアンス25mg群174/223例(78.0%)、シタグリプチン群161/223例(72.2%)、プラセボ群175/229例(76.4%)に認められました。
投与中止に至った有害事象はジャディアンス10mg群11/224例(4.9%)、ジャディアンス25mg群9/223例(4.0%)、シタグリプチン群11/223例(4.9%)、プラセボ群15/229例(6.6%)に認められました。
重篤な有害事象はジャディアンス10mg群25/224例(11.2%)、ジャディアンス25mg群16/223例(7.2%)、シタグリプチン群18/223例(8.1%)、プラセボ群23/229例(10.0%)に認められ、死亡に至った有害事象はシタグリプチン群1/223例(0.4%)、プラセボ群1/229例(0.4%)のみに認められました。
主な有害事象は、高血糖がジャディアンス10mg群20/224例(8.9%)、ジャディアンス25mg群11/223例(4.9%)、シタグリプチン群28/223例(12.6%)、プラセボ群63/229例(27.5%)、鼻咽頭炎がジャディアンス10mg群32/224例(14.3%)、ジャディアンス25mg群25/223例(11.2%)、シタグリプチン群27/223例(12.1%)、プラセボ群27/229例(11.8%)でした(図6)。

※投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象の内訳について論文に記載はありませんでした。

2型糖尿病に対するジャディアンスのエビデンス:  血糖降下作用(EMPA-REG EXTENDᵀᴹ MONO)03

図6

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査

ジャディアンスでは、初めてジャディアンスを服用する2型糖尿病のある方を対象に、特定使用成績調査が実施されました。
7931例の2型糖尿病のある方を、ジャディアンス投与開始から3年間にわたって前向きに観察し、副作用の発現状況を調査しました(図7)。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査

図7

こちらは年齢別の患者背景です。
平均HbA1cは65歳未満の症例で8.14%、65歳から75歳未満の症例で7.83%、75歳以上の症例で7.74%でした。
また平均eGFRは65歳未満で88.31 mL/分/1.73m²、65歳から75歳未満で74.57 mL/分/1.73m²、75歳以上で66.84 mL/分/1.73m²でした。
合併症は、いずれの年齢群においても高血圧および脂質異常症が多く、その例数と割合は65歳未満でそれぞれ2,665/5,024例(53.05%)および2,897/5,024例(57.66%)、65歳から75歳未満で1,389/2,077例(66.88%)および1,228/2,077例(59.12%)、75歳以上で560/830例(67.47%)および436/830例(52.53%)でした。
ベースライン時に使用されていた血糖降下薬の内訳は、いずれの年齢群においてもDPP-4阻害薬が最も多く、65歳未満で2,532/5,024例(50.40%)、65歳から75歳未満で1,206/2,077例(58.06%)、75歳以上で461/830例(55.54%)でした。
その他の併用薬では、スタチンの使用が65歳未満で1,633/5,024例(32.50%)、65歳から75歳未満で862/2,077例(41.50%)、75歳以上で301/830例(36.27%)、ACE阻害薬/ARBの使用が65歳未満で1,251/5,024例(24.90%)、65歳から75歳未満で651/2,077例(31.34%)、75歳以上で210/830例(25.30%)でした(図8)。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査02

図8

副作用は1,024/7,931例(12.91%)に発現し、年齢別では65歳未満で594/5,024例(11.82%)、65歳から75歳未満で310/2,077例(14.93%)、75歳以上で120/830例(14.46%)に認められました。
安全性検討事項の発現割合は、図にお示しした通りです(図9)。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査03

図9

事前に規定されたサブグループ解析として実施されたBMI別の解析結果についてご紹介します。
ベースラインでの平均HbA1cは、BMI<20群で8.31%、20から25未満群で7.98%、25から30未満群で7.99%、30%以上群で8.11%でした。
また平均eGFRはBMI20未満で81.49 mL/分/1.73m²、20から25未満で80.38 mL/分/1.73m²、25から30未満で81.17 mL/分/1.73m²、30以上で85.61 mL/分/1.73m²でした。
合併症は、いずれのBMI群においても高血圧および脂質異常症が多く、その例数と割合はBMI<20でそれぞれ63/163例(38.65%)および62/163例(38.04%)、20から25未満で893/1,688例(52.90%)および924/1,688例(54.74%)、25から30未満で1,747/2,962例(58.98%)および1,837/2,962例(62.02%)、30以上で1,349/1,980例(68.13%)および1,231/1,980例(62.17%)でした。
ベースライン時に使用されていた血糖降下薬の内訳は、BMI≧30群を除いてDPP-4阻害薬が最も多く、BMI<20で99/163例(60.74%)、20から25未満で982/1,688例(58.18%)、25から30未満で1,586/2,962例(53.54%)、30以上で966/1,980例(48.79%)でした。
その他の併用薬では、スタチンの使用がBMI<20で38/163例(23.31%)、20から25未満で605/1,688例(35.84%)、25から30未満で1,145/2,962例(38.66%)、30以上で693/1,980例(35.00%)、ACE阻害薬/ARBの使用が20未満で24/163例(14.72%)、20から25未満で392/1,688例(23.22%)、25から30未満で827/2,962例(27.92%)、30以上で630/1,980例(31.82%)でした(図10)。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査04

図10

BMI別の副作用発現割合は、20未満で19/163例(11.66%)、20から25未満で203/1688例(12.03%)、25から30未満で411/2962例(13.88%)、30以上で295/1980例(14.90%)に認められました。
安全性検討事項の発現割合は、図にお示しした通りです(図11)。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査05

図11

本調査における安全性の結果概要は、ご覧のとおりです(図12)。

日本におけるジャディアンス特定使用成績調査06

図12

ジャディアンスの心血管イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®検証試験)

心血管イベントリスクの高い2型糖尿病のある方7,020例を対象としたEMPA-REG OUTCOME®試験において、ジャディアンスを標準治療に上乗せした際の心血管イベントに対する影響を検討しました(図13)。

ジャディアンスの心血管イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®検証試験)

図13

本試験において、主要評価項目である3P-MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中) の発現率は、プラセボ群に対してジャディアンス群で14%低く、有意差が認められました。また、副次評価項目については、プラセボ群に対してジャディアンス群で心血管死のリスクが38%、心不全による入院のリスクが35%、全死亡のリスクが32%、有意に低下しました(図14)。

ジャディアンスの心血管イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®検証試験)02

図14

本試験における有害事象は、ジャディアンス10mg群2,112/2,345例(90.1%)、ジャディアンス25mg群2,118/2,342例(90.4%)、プラセボ群2,139/2,333例(91.7%)に認められました。重篤な有害事象は、ジャディアンス10mg群876/2,345例(37.4%)、ジャディアンス25mg群913/2,342例(39.0%)、プラセボ群988/2,333例(42.3%)に認められました。 主な有害事象は、低血糖がジャディアンス10mg群656/2,345例(28.0%)、ジャディアンス25mg群647/2,342例(27.6%)、プラセボ群650/2,333例(27.9%)、尿路感染がそれぞれ 426/2,345例(18.2%)、416/2,342例(17.8%)、423/2,333例(18.1%)に認められました(図15)。

※投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象の内訳について、論文に記載はありませんでした。

ジャディアンスの心血管イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®検証試験)03

図15

ジャディアンスの腎イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカム)

また、EMPA-REG OUTCOME®試験では、腎アウトカムへの影響が検証されました(図16)。

ジャディアンスの腎イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカム)

図16

標準治療に上乗せしたジャディアンス群では、プラセボ群と比べて顕性アルブミン尿への進展、血清クレアチニン値の倍化、透析などの腎代替療法の開始、腎疾患による死亡を含む腎複合イベントのリスクが39%低く、有意差が認められました(図17)。

※主要評価項目の結果については参考情報のため省略します。

ジャディアンスの腎イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカム)02

図17

本試験における有害事象は、ベースライン時のeGFR<60mL/min/1.73m²の患者において、プラセボ群577/607例(95.1%)、ジャディアンス群1,107/1,212例(91.3%)、ベースライン時のeGFR≧60mL/min/1.73m²の患者において、プラセボ群1,562/1,726例(90.5%)、ジャディアンス群3,121/3,473例(89.9%)に認められました。
重篤な有害事象はベースライン時のeGFR<60mL/min/1.73m²の患者において、プラセボ群321/607例(52.9%)、ジャディアンス群552/1,212例(45.5%)、ベースライン時のeGFR≧60mL/min/1.73m²の患者において、プラセボ群667/1,726例(38.6%)、ジャディアンス群1,237/3,473例(35.6%)に認められました。 
主な有害事象のうち低血糖は、ベースライン時のeGFR<60mL/min/1.73m²の患者において、プラセボ群233/607例(38.4%)、ジャディアンス群391/1,212例(32.3%)、ベースライン時のeGFR≧60mL/min/1.73m²の患者において、プラセボ群417/1,726例(24.2%)、ジャディアンス群912/3,473例(26.3%)、 尿路感染症はそれぞれ 132/607例(21.7%)、278/1,212例(22.9%)、291/1,726例(16.9%)、564/3,473例(16.2%)でした(図18)。

※投与中止に至った有害事象および重篤な有害事象の内訳について、論文に記載はありませんでした。

ジャディアンスの腎イベントへの影響(EMPA-REG OUTCOME®腎アウトカム)03

図18

将来の合併症予防のために

糖尿病治療薬であるジャディアンスは、血糖降下作用に加え、心血管イベントおよび腎イベントへの影響に関するエビデンスを有する薬剤です。
将来の心腎イベントの発症を見据え、高血圧や脂質異常症を併発している2型糖尿病のある方に、ぜひジャディアンスをご検討ください。

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