不眠症
本剤は不眠症に対し使用される、睡眠導入剤です。
重要なお知らせ
このページは医療関係者の方向けに使いやすさを配慮した処方に関連する資料です。公式の電子添文が必要な場合には、ページ下部のボタンよりPDF形式でダウンロードしてください。
禁忌(次の患者には投与しないこと)
- 急性閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。]
- 重症筋無力症の患者[重症筋無力症を悪化させるおそれがある。]
製品名 | レンドルミン®錠0.25mg |
区分 | 向精神薬(第三種)、習慣性医薬品注1)、処方箋医薬品注2) |
適応症 | 不眠症 |
有効成分 | ブロチゾラム |
注1)注意-習慣性あり
注2)注意-医師等の処方箋により使用すること
製品の基本情報
組成
販売名 | レンドルミン錠0.25mg |
有効成分 | 1錠中ブロチゾラム 0.25mg |
添加剤 | 乳糖水和物、トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、結晶セルロース、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム |
製剤の性状
販売名 | レンドルミン錠0.25mg |
剤形 | 白色の素錠(割線) |
外形 |
![]() |
直径 | 8.0mm |
厚さ | 2.5mm |
重さ | 0.15g |
識別コード | ![]() |
不眠症、麻酔前投薬
本剤の用量は、年齢、症状、疾患などを考慮して適宜増減するが、一般に成人には次のように投与する。
〈不眠症〉
1回ブロチゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。
〈麻酔前投薬〉
手術前夜:1回ブロチゾラムとして0.25mgを就寝前に経口投与する。
麻酔前:1回ブロチゾラムとして0.5mgを経口投与する。
不眠症には、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときは服用させないこと。
- 本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等の危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。
- 連用により薬物依存を生じることがあるので、漫然とした継続投与による長期使用を避けること。本剤の投与を継続する場合には、治療上の必要性を十分に検討すること。(「重大な副作用」の項参照)
合併症・既往歴等のある患者
- 呼吸機能が高度に低下している患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しない。肺性心、肺気腫、気管支喘息及び脳血管障害の急性期等で呼吸機能が高度に低下している場合、炭酸ガスナルコーシスを起こすおそれがある。(「重大な副作用」の項参照) - 心障害のある患者
症状が悪化するおそれがある。 - 脳に器質的障害のある患者
本剤の作用が増強するおそれがある。 - 衰弱患者
腎機能障害患者
代謝・排泄が遅延するおそれがある。
肝機能障害患者
代謝・排泄が遅延するおそれがある。
妊婦
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。妊娠中の投与に関し、次のような報告がある。
- 妊娠中にベンゾジアゼピン系薬剤の投与を受けた患者の中に奇形を有する児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫学的調査がある。
- ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に哺乳困難、嘔吐、活動低下、筋緊張低下、過緊張、嗜眠、傾眠、呼吸抑制・無呼吸、チアノーゼ、易刺激性、神経過敏、振戦、低体温、頻脈等を起こすことがある。なお、これらの症状は、離脱症状あるいは新生児仮死として報告される場合もある。また、ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に黄疸の増強を起こすことがある。
- ベンゾジアゼピン系薬剤で分娩前に連用した場合、出産後新生児に離脱症状があらわれることがある。
授乳婦
授乳を避けさせること。授乳中の投与に関し、次のような報告があり、また新生児の黄疸を増強する可能性がある。
- 動物実験で乳汁中に移行する。
- ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)でヒト母乳中へ移行し、新生児に嗜眠、体重減少等を起こすことがある。
小児等
小児等を対象とした臨床試験は実施していない。
高齢者
少量から投与を開始するなど慎重に投与すること。運動失調等の副作用が発現しやすい。
本剤は、主として薬物代謝酵素CYP3A4で代謝される。(「代謝」の項参照)
併用注意(併用に注意すること)
薬剤名等 | 臨床症状・措置方法 | 機序・危険因子 |
アルコール(飲酒) | 鎮静作用、倦怠感等が増強されるおそれがあるので、アルコールとの服用は避けさせることが望ましい。 | 本剤とアルコールを併用するとクリアランスの低下及び排泄半減期の延長がみられている。 |
中枢神経抑制剤 フェノチアジン誘導体 バルビツール酸誘導体 |
鎮静作用が増強されるおそれがある。 | 本剤との併用により鎮静作用が増強するおそれがある。 |
CYP3A4阻害剤 イトラコナゾール ミコナゾール シメチジン |
本剤の血中濃度が上昇し、作用の増強及び作用時間の延長が起こるおそれがある。 | 本剤の代謝酵素であるCYP3A4が、これらの薬剤で阻害される。 |
モノアミン酸化酵素阻害剤 | 鎮静作用が増強されるおそれがある。 | 本剤との併用により鎮静作用が増強するおそれがある。 |
CYP3A4誘導剤 リファンピシン等 |
本剤の血中濃度が低下し、本剤の作用が減弱されるおそれがある。 | 本剤の代謝酵素であるCYP3A4が誘導され、本剤の代謝が促進される。 |
次の副作用があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと注)。
重大な副作用
- 肝機能障害(0.1%)、黄疸(頻度不明)
AST、ALT、γ-GTP上昇等があらわれることがある。 - 一過性前向性健忘、もうろう状態(頻度不明)
本剤を投与する場合には少量から開始するなど、慎重に行うこと。なお、十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していないとの報告がある。 - 依存性(頻度不明)
連用により薬物依存を生じることがあるので、観察を十分に行い、用量及び使用期間に注意し慎重に投与すること。また、連用中における投与量の急激な減少ないし投与中止により、不眠、不安等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。(「重要な基本的注意」の項参照) - 呼吸抑制(頻度不明)
呼吸抑制があらわれることが報告されているので、このような場合には気道を確保し、換気をはかるなど適切な処置を行うこと。(「合併症・既往歴等のある患者」の項参照)
その他の副作用
0.1~5%未満 | 0.1%未満 | 頻度不明 | |
精神神経系 | 残眠感・眠気、ふらつき、頭重感、めまい、頭痛 | 不穏、興奮、気分不快、立ちくらみ、いらいら感 | せん妄、振戦、幻覚、悪夢 |
肝臓 | AST、ALT、γ-GTP、Al-P、LDHの上昇 | ||
循環器 | 軽度の脈拍数増加 | ||
消化器 | 嘔気、悪心、口渇、食欲不振 | 下痢 | |
過敏症 | 発疹 | 紅斑 | |
骨格筋 | だるさ、倦怠感 | 下肢痙攣 | |
その他 | 発熱、貧血 | 尿失禁、味覚異常 |
注)再審査終了時の調査症例を含む
処置
本剤の過量投与が明白又は疑われた場合の処置としてフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与する場合には、使用前にフルマゼニルの使用上の注意を必ず読むこと。
薬剤交付時の注意
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、更には穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発することがある。
臨床使用に基づく情報
投与した薬剤が特定されないままにフルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤)を投与された患者で、新たに本剤を投与する場合、本剤の鎮静・抗痙攣作用が変化、遅延するおそれがある。
非臨床試験に基づく情報
ラットの雄で臨床用量の約40,000倍(200mg/kg/日)を2年間投与した試験において、甲状腺での腫瘍発生頻度が対照群に比べ高いとの報告がある1)。
血中濃度
健康成人に経口投与した場合、速やかに吸収され約1.5時間で最高血漿中濃度に達する。血漿中濃度消失半減期は約7時間である2)。
分布
経口投与した場合、速やかに全身に分布し、その濃度は消化管、肝臓、副腎、腎臓及び甲状腺で高い(ラット)3)。血液-脳関門及び胎盤を通過する。乳汁中濃度は血中濃度にほぼ平行して推移する(ラット)4)。
代謝
ブロチゾラムは主として薬物代謝酵素CYP3A4で代謝される5)。健康成人に経口投与した場合、主代謝産物はメチル基の水酸化体及びジアゼピン環の水酸化体である6)(外国人データ)。(「相互作用」の項参照)
排泄
健康成人に経口投与した場合、ブロチゾラムは96時間までに尿中に64.9%、糞中に21.6%が排泄される6)(外国人データ)。
有効性及び安全性に関する試験
- 国内臨床試験
不眠症及び麻酔前投薬(手術前夜あるいは麻酔前)を対象とした二重盲検比較試験の結果、本剤の有用性が認められた7)~12)。これらの二重盲検比較試験を含む国内延べ191施設、総計1,723例について実施された臨床試験成績は次のとおりであった。
投与対象 | 有効例数/ 効果判定例数 |
有効率(有効以上) | |
不眠症 | 712/1,103 | 64. 6% | |
麻酔前投薬 | 手術前夜 | 219/345 | 63. 5% |
麻酔前 | 130/222 | 58. 6% | |
計 | 1,061/1,670 | 63. 5% |
二重盲検試験及び一般臨床試験(初期臨床試験、用量検討及び予備臨床試験を含む)における副作用発現頻度は、12.6%(215/1,701例)であり、主な副作用は、残眠感・ねむけ7.8%(133/1,701例)、ふらつき2.9%(50/1,701 例)、頭重感2.8%(47/1,701例)、だるさ2.7%(46/1,701例)であった。
作用機序
中枢神経系の代表的抑制性伝達物質であるGABAを介して情動をつかさどる視床下部や大脳辺縁系を抑制する(ラット)13)。その結果、自律神経系その他の部位からの余剰刺激は遮断され、催眠、鎮静、抗不安等の中枢神経作用を示す。
ジアゼパム、ニトラゼパム等既存のベンゾジアゼピン系薬剤と共通した薬理活性スペクトラムを示すが、催眠、抗不安、抗痙攣作用は強く、筋弛緩作用は比較的弱い(マウス、ラット、ネコ)14)~16)。
催眠作用
低用量から催眠作用を示し、睡眠延長作用が認められる(ネコ、マウス)14),15)。また、レム睡眠には影響を与えない(ネコ)14)。
動物脳波に対する作用
脳波は傾眠パターンとなり、また中脳網様体あるいは視床下部後部刺激による脳波覚醒反応も抑制される(ウサギ)15)。
臨床薬理作用
一般的名称:ブロチゾラム(JAN)(Brotizolam(JAN))
化学名:2-bromo-4-(2-chlorophenyl)-9-methyl-6H-thieno[3,2-f][1,2,4]triazolo[4,3-a][1,4]diazepine
分子式:C15H10BrClN4S
分子量:393.69
性 状: 白色~微黄色の結晶性の粉末。メタノールにやや溶けにくく、アセトニトリル又はエタノール(99.5)に溶けにくく、水にほとんど溶けない。
化学構造式:
![化学構造式](/jp/sites/default/files/2020-11/lent_t0_25_pi_1.png)
融 点:208~212℃
分配係数:1.01×104(pH7.0、クロロホルム/水)
アルミピロー開封後は、湿気を避け、遮光して保存すること。
100錠[10錠(PTP)×10、乾燥剤入り]
1000錠[10錠(PTP)×100、乾燥剤入り]
- Hewett C et al:Arzneimittelforschung. 1986: 36:592-596
- 社内資料: 河野恒文ほか:生物学的利用率比較試験
- 吉田 剛ほか:薬理と治療 1985:13:3333
- Bechtel W.D. et al.:Br J Clin Pharmacol. 1983:16 (Suppl. 2):261s
- Senda C et al:Xenobiotica. 1997: 27(9):913
- Bechtel W D:Br J Clin Pharmacol. 1983: 16(Suppl. 2):279S
- 筒井末春ほか:医学のあゆみ. 1984: 131:412
- 村田忠良ほか:臨床精神医学. 1985: 14:121
- 工藤義雄ほか:医学のあゆみ. 1985: 134:494
- 稲永和豊ほか:薬理と治療. 1984: 12:5111
- 山村秀夫ほか:臨牀と研究. 1985: 62:1924
- 吉武潤一ほか:Therapeutic Research. 1984: 1:829
- Ishiko J.et al:Neuropharmacology. 1983: 22:221
- Kuhn F J et al:Br J Clin Pharmacol. 1983: 16(Suppl. 2):253S
- Kimishima K et al:Jpn J Pharmacol. 1984: 36:461-475
- Ueki S et al:Jpn J Pharmacol. 1984 : 35:287-299
- 花岡一雄ほか:臨床薬理. 1983: 14:365-377
- 大川敏彦ほか:臨床精神医学. 1984: 13:749
- Nicholson A N et al:Br J Clin Pharmacol.1980: 10:75
- 金 英道ほか:臨床精神医学. 1991: 20:55