間質性肺疾患診療における急性増悪予防および呼吸機能低下抑制の重要性(静止画)

サイトへ公開: 2021年09月28日 (火)

ご監修:山川 英晃 先生(さいたま赤十字病院 呼吸器内科 副部長)

山川 英晃 先生

進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)は、さまざまな間質性肺疾患(ILD)のうち、臨床経過のある時点において進行性の線維化が見られるもので、特発性間質性肺炎(IIPs)や、膠原病に伴うILD(CTD-ILD)などの一部も該当します。

今回は、PF-ILDにおいて、生命予後を改善するために考慮すべきポイントについてご紹介します。

PF-ILDの臨床経過

PF-ILDの臨床経過は、緩徐なものから急速なものまで、さまざまです。中にはBのように、比較的安定した経過であっても急性増悪を生じ、その状況を脱したとしても、その後、疾患進行が早まるケースもあります。

PF-ILDの臨床経過

PF-ILDにおける急性増悪と生存率

実際、急性増悪は、PF-ILDの代表的な疾患である特発性肺線維症(IPF)や、IPF以外の線維化を伴うILDのいずれにおいても生存率を低下させることが示されています。また、その生存率の低下は、IPFとそれ以外の線維化を伴うILDとの間で有意な差が見られていません。

PF-ILDにおける急性増悪と生存率

また、私たちが、関節リウマチ、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎のいずれかと、ILDを合併する患者さんを対象に、CTD-ILDにおける死亡関連因子を検討したところ、急性増悪が有意な死亡関連因子として見出されました。

PF-ILDにおける急性増悪と生存率02

呼吸機能低下と生存率

呼吸機能の低下も、生命予後と関連する因子です。IPF患者さんを対象とした検討では、6ヵ月間FVCが安定していた群と比較して、5%以上のFVC減少が認められた群では、4年生存率が有意に低下したことが報告されています。

呼吸機能低下と生存率

これらのことから、PF-ILDの予後改善のためには、急性増悪の発現抑制や呼吸機能低下の抑制が重要であると考えられます。

INBUILD試験

試験概要
オフェブは、INBUILD試験において、呼吸機能低下抑制に対する有効性が検証され、さらに急性増悪または死亡のイベント発現における影響も検討されています。

本試験では、組み入れ基準を満たすPF-ILD患者さん663例をオフェブ群とプラセボ群に1:1で無作為に割り付けました。主要評価項目は投与52週までのFVCの年間減少率(mL/年)でした。

試験概要


本試験の結果、オフェブ群とプラセボ群のFVCの年間減少率には有意な差が認められ、オフェブによる呼吸機能低下の抑制が検証されました。また、52週までのFVCのベースラインからの変化量は、スライド右側のグラフのように推移しました。

試験概要01

ILDの初回急性増悪または死亡までの期間について、オフェブ群ではプラセボ群と比較して33%の相対リスク減少が認められました。

試験概要02

【参考情報】L-PFスコアにおける影響

本試験では、肺線維症患者さんにおける症状に関する評価指標であるL-PFスコアに対する影響も検討されています。
L-PF質問票は、呼吸困難、咳嗽、疲労の3つのドメインから成るsymptomsモジュールとimpactsモジュールの2つで構成されています。総スコアおよびドメインスコアの範囲は0~100で数値が高いほど症状が重いことを表しています。

【参考情報】L-PFスコアにおける影響

本試験におけるL-PF総スコアのベースラインからの変化量は、オフェブ群-0.2、プラセボ群3.9であり、群間差は-4.1でした。ドメイン別では、symptoms呼吸困難ドメインスコアおよび咳嗽ドメインスコアにおいてプラセボ群との有意差が認められました。

【参考情報】L-PFスコアにおける影響02

安全性

本試験の全期間における有害事象は、オフェブ群で326例(98.2%)、プラセボ群で308例(93.1%)に見られました。オフェブ群における重篤な有害事象として主なものは肺炎24例、間質性肺疾患19例、急性呼吸不全16例などでした。オフェブ群において投与中止に至った有害事象は、下痢21例、ALT増加6例、薬物性肝障害5例などであり、死亡に至った有害事象は、急性呼吸不全4例、呼吸不全3例などでした。

安全性

主な有害事象は、オフェブ群で下痢240例(72.3%)、悪心100例(30.1%)、嘔吐64例(19.3%)など、プラセボ群で下痢85例(25.7%)、気管支炎64例(19.3%)、呼吸困難57例(17.2%)などでした。

安全性02

続いて、投与52週までの下痢、悪心、嘔吐、肝酵素上昇の有害事象の重症度をお示しします。オフェブ群において、下痢は、有害事象共通用語規準を用いた評価ではGrade 1が66.5%、Grade 2が23.1%、Grade 3が10.4%でした。悪心は、軽度が80.2%、中等度が19.8%、嘔吐は軽度が78.7%、中等度が21.3%でした。肝酵素上昇は軽度が69.7%、中等度が27.6%、高度が2.6%でした。

安全性03

まとめ

PF-ILDにおける急性増悪や呼吸機能の低下は、生命予後と関連することが示されています。
PF-ILDに対する呼吸機能低下抑制と急性増悪抑制が認められたオフェブは、患者さんの生命予後を考慮した
治療の選択肢になりえるのではないでしょうか。

本日ご紹介した内容を、先生方のご診療にお役立ていただければ幸いです。

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