インタビュー:PF-ILDの新しい地域連携モデルを目指す

取材施設:和歌山県立医科大学附属病院(和歌山県和歌山市)  

呼吸器内科・腫瘍内科 助教 藤本大智 先生 

呼吸器内科・腫瘍内科 古田勝之 先生 

薬剤師(病棟薬剤師) 辻 栞 氏 

看護部(病棟看護師) 東 慎也 氏 

患者支援センター(医療ソーシャルワーカー) 西 陽佑 氏 

 

日時:2020年10月13日(火)18:00 

会場:和歌山 ホテルグランビア和歌山 メゾングラン 

 

和歌山県立医科大学附属病院呼吸器内科・腫瘍内科は2020年4月、間質性肺疾患(PF-ILD)の患者さんを多職種で支える医療チームを組織しました。率いるのは、肺がんやPF-ILDのチーム医療で実績のある藤本大智先生です。県内初の取り組みは、クリニカルパスの作成・運用、多部門との連携、調剤薬局との連携など着実に進んでいます。

POINT!

✔ 患者さんのことを考え、お互いに補完し合うチーム医療の実現

✔ 誰も疲弊しないチーム医療を構築し、地域全体に広げる

適切なPF-ILD医療を提供するためにチームを結成

抗線維化薬の導入・継続にチーム医療が有効であることを、藤本大智先生は前任の神戸市立医療センター中央市民病院で実感したと言います。そして、「抗線維化薬は有益な薬剤ですが、副作用や経済的負担に対する多角的な支援が必要です。医師が全てを担うことは困難であり、それが抗線維化薬導入の障壁の1つであることは否定できません。チーム医療はその障壁を取り除き、適切なPF-ILD医療の提供を可能にします」と強調します。

和歌山県立医科大学附属病院に赴任してすぐ、藤本先生はPF-ILDチームの結成を教授に提案。呼吸器内科の古田勝之先生、病棟薬剤師の辻 栞氏、東 慎也氏ら病棟看護師3人、西 陽佑氏ら医療ソーシャルワーカー(MSW)2人と共にチームを発足させました。

クリニカルパス、副作用チェックシートで院内連携

PF-ILDチーム発足を機に、同院では抗線維化薬導入を外来から入院に切り替えました。そのためにまず着手したのはクリニカルパスの作成です。古田勝之先生は、「抗線維化薬導入の流れを標準化、視覚化することで導入がスムーズになります」と説明します。本格運用はこれからですが、東 慎也氏は「入院で十分な時間を確保した上で、医師、薬剤師、看護師が役割分担して集中的に関わり、情報を共有できるため、患者さんの理解度を高めて安全かつ継続的な服用を促すと考えています」と期待します。

東氏ら病棟看護師は、患者さんが退院後に自身で記入する副作用チェックシートも作成。外来受診時に外来看護師が確認し、病棟看護師も電子カルテで共有するダブルチェック体制を構築しました。

薬薬連携で患者さんだけでなく地域の調剤薬局も支える

薬薬連携の第一歩として実施したのは、PF-ILDと抗線維化薬の勉強会です。古田先生が講師を務め、調剤薬局の薬剤師、院内の薬剤師、看護師、MSWが約50人参加しました。抗線維化薬は副作用の管理も大切ですが、調剤薬局にとって経営的なリスクが大きい薬剤です。辻氏は、「高額な上に、保存は25℃以下で返品ができません。患者さんが安定的に購入できる環境を整えるためには調剤薬局との連携が不可欠なのです」と説明します。勉強会で調剤薬局の関心が高いことがわかり、PF-ILDチームは手応えを感じました。

辻氏は薬剤管理サマリーを活用して抗線維化薬導入患者さんの情報をかかりつけ薬局と共有し、外来受診の予定日までに抗線維化薬を確保してもらう働きかけにも力を入れています。

MSWと医師が補完し合う関係ができていることも強み

医療費の負担を心配する患者さんは多いですが、西氏は「高額療養費制度のことを説明すると、患者さんも家族も治療に前向きになります」と言います。MSWの説明があることは医師が前もって伝えているため、面談ではすぐに本題に入ることができます。また、指定難病の軽症高額該当の支給を確実に受けられるよう、医師も支給認定申請を外来で患者さんに確認してカルテに記入。古田先生は「任せきりにするのではなく、補完し合うのがチーム医療」と語ります。

藤本先生は、「現在の活動はPF-ILD地域連携の1ステップ目。2ステップ目は地域連携パスの作成・運用、3ステップ目で地域連携のハブとなる医療機関を県内に複数つくり、必要な患者さんに漏れなく治療を提供できるようにしたいですね」と展望を話しました。

藤本大智 先生呼吸器内科・腫瘍内科 助教 藤本大智 先生

患者さんを第一に考えた活動にはマンパワーが必要です。チーム医療は多角的な支援を提供できますが、役割分担と情報共有を効率的に行えないと皆が疲弊してしまうので、常にブラッシュアップし、プレーヤーを増やすための啓発、教育にも力を入れ、病院全体、地域全体で患者さんを支える仕組みをつくり上げていきたいと思っています。

 

 

古田 先生呼吸器内科・腫瘍内科 古田勝之 先生 

PF-ILDの最大の問題点は、必要な治療を受けられていない患者さんが存在することです。県内には抗線維化薬の適応となる人が少なくとも100人はおり、年間10〜20人が新規発症すると言われていますが、適切な治療を受けているのは一部です。まず身近な地域で地域連携体制を確立してその輪を広げ、1つのモデルになることを目指しています。

 

 

辻 先生

薬剤師(病棟薬剤師) 辻 栞 氏 

抗線維化薬の服薬指導は薬の重要性や用法の他に保管法や副作用対策など多岐に渡ります。少しでもわかりやすくするために、製薬会社の資材に工夫を加え、重要な箇所の字を大きくするなどしたものを渡しています。外来時にもう1冊欲しいという方もおり、その際に服薬の確認ができ、信頼関係の深化にもつながってやりがいを感じます。

 

 

 

東先生看護部(病棟看護師) 東 慎也 氏 

PF-ILDの生命予後は決して良好ではありませんが、患者さんの日常生活に目を向け、小さなサインも見逃すことなく、安心して自宅へ戻れるような支援をしたいと思っています。PF-ILDチーム以外のスタッフも巻き込み、患者さんのために力を合わせることができたなら、スタッフの満足度も向上してよりよい医療が提供できると信じています。

 

 

 

西先生患者支援センター(医療ソーシャルワーカー) 西 陽佑 氏  
PF-ILDは高齢の患者さんが多いこともあり、在宅医療・介護との連携が不可欠です。現在も患者支援センターでは在宅支援には力を入れていますが、PF-ILDチームとしても地域の在宅医、訪問看護師、ケアマジャーなどと関係を深め、人生の最終段階までを見据えた連携体制の構築、人生に寄り添っていけるような支援を実現したいと思っています。

 

臨床研究助成プログラム

ベーリンガーインゲルハイムは、医療関係者の皆さまからヘルスケアに関連する研究等の提案を受け付けています。

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