オフェブの適正な用法及び用量(静止画)

サイトへ公開: 2023年02月28日 (火)

ご監修 : 吾妻 安良太 先生(日本医科大学 呼吸器内科学分野 教授)

吾妻 安良太 先生

抗線維化剤オフェブは「特発性肺線維症」、「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」そして「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」患者さんの呼吸機能低下の抑制効果が示された薬剤です。

オフェブの用法及び用量は、「通常、成人にはニンテダニブとして1回150mgを1日2回、朝・夕食後に経口投与する。なお、患者の状態によりニンテダニブとして1回100mgの1日2回投与へ減量する。」とされています。この用法・用量は、第Ⅱ相用量反応試験の成績をもとに設定されています。

今回は、特発性肺線維症(IPF)患者さんを対象にオフェブの用法・用量を検討した第Ⅱ相試験(TOMORROW試験)、オフェブの有効性・安全性を検討した第Ⅲ相試験(INPULSIS試験、INPULSIS-ON試験)及び市販直後調査の結果を紹介します。

日本医科大学 呼吸器内科学分野 教授

図1

オフェブの第Ⅱ相用量反応試験(TOMORROW試験)

最初に、TOMORROW試験を紹介します。

試験概要

本試験は、IPF患者さん432例を対象に行われました。本試験では、対象をオフェブの異なる4つの用法・用量群(50mg 1日1回群、50mg 1日2回群、100mg 1日2回群、150mg 1日2回群)、又はプラセボ群にランダムに割り付け、試験薬を52週間投与し、有効性ならびに安全性を検討しました。なお、本試験に日本人は参加していません。

オフェブの第Ⅱ相用量反応試験(TOMORROW試験)

図2

有効性

主要評価項目であるFVCの年間減少率は、オフェブ150mg 1日2回群 -0.06L/年、プラセボ群 -0.19L/年であり、有意差が認められました。
しかしながら他の用法・用量群においてプラセボ群との有意差は認められませんでした。

有効性

図3

また、副次評価項目である急性増悪の発現率は、オフェブ150mg 1日2回群2.44/100人・年、プラセボ群15.67/100人・年であり、オフェブ150mg 1日2回群とプラセボ群との間に有意差が認められました。
こちらも他の用法・用量群においてプラセボ群との有意差は認められませんでした。

有効性02

図4

安全性

本試験の安全性の結果をお示しします。
有害事象は、オフェブ50mg 1日1回群、50mg 1日2回群で78例(90.7%)、100mg 1日2回群で82例(95.3%)、150mg 1日2回群で80例(94.1%)、プラセボ群で77例(90.6%)に認められました。
重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象はご覧のとおりです。死亡に至った有害事象のうち、呼吸不全がオフェブ50mg 1日1回群で4例認められましたが、試験薬との因果関係は否定されました。

安全性

図5

主な有害事象は、発現頻度が高い順に、オフェブ50mg 1日1回群で気管支炎、咳嗽、特発性肺線維症、鼻咽頭炎各11例(12.8%)など、50mg 1日2回群で咳嗽、下痢各17例(19.8%)、気管支炎16例(18.6%)など、100mg 1日2回群で下痢32例(37.2%)、咳嗽20例(23.3%)、悪心17例(19.8%)など、150mg 1日2回群で下痢47例(55.3%)、悪心20例(23.5%)、食欲減退13例(15.3%)などでした。
プラセボ群では咳嗽17例(20.0%)、下痢、上気道感染各13例(15.3%)などでした。/p>

安全性02

図6

IPFにおけるオフェブの有効性と安全性(INPULSIS試験、INPULSIS-ON試験)

続いて、IPF患者さんを対象にオフェブの有効性と安全性を検討した国際共同第Ⅲ相試験であるINPULSIS試験と、INPULSIS試験のオープンラベル延長試験であるINPULSIS-ON試験を紹介します。

試験概要
INPULSIS試験

INPULSIS試験では、日本人126例を含む、IPF患者さん1,066例をオフェブ群あるいはプラセボ群に3:2の比率で割り付け、52週間試験薬を投与しました。

試験概要 INPULSIS試験

図7

INPULSIS-ON試験

INPULSIS-ON試験は、INPULSIS試験完遂後、4週間の追跡期間を完了した患者さんを対象に行われました。

INPULSIS-ON試験

図8

両試験ともに、用法・用量は、150mg 1日2回投与と設定されました。なお、有害事象への対応として、試験参加医師の判断で中断及び/又は100mg 1日2回への減量が一時的・永続的に許容されていました。

有効性
INPULSIS試験

INPULSIS試験の有効性の結果をお示しします。
主要評価項目である52週におけるFVCの年間減少率は、オフェブ群 -113.6mL/年、プラセボ群 -223.5mL/年であり、オフェブ群は、プラセボ群に対して呼吸機能の低下を有意に抑制することが検証されました。
また、ベースラインから52週までのFVCの変化は、経過とともに右側の図のように推移しました。

有効性 INPULSIS試験

図9

INPULSIS-ON試験

さらに、INPULSIS-ON試験では、探索的評価項目として192週における用量調節の有無別、用量強度※1別のFVCの年間減少率が検討されており、その結果は右のグラフのとおりでした。
※1 用量強度:試験中に実際に投与された薬剤量を、試験期間を通して150mg 1日2回投与した場合に想定される薬剤量で除したものとして定義した

INPULSIS-ON試験

図10

安全性

INPULSIS試験及びINPULSIS-ON試験の安全性の結果をお示しします。
有害事象は、INPULSIS試験においては、オフェブ群638例のうち609例(95%)、プラセボ群423例のうち379例(90%)に認められ、INPULSIS-ON試験においては、オフェブ継続投与群430例のうち422例(98%)、新規投与群304例のうち301例(99%)に認められました。
投与中止に至った有害事象はご覧のとおりです。
なお、重篤な有害事象の内訳、死亡に至った有害事象は、文献に記載がありませんでした。

安全性

図11

INPULSIS試験でみられた主な有害事象は、100人・年あたりの発現率が高い順に、オフェブ群で下痢112.6/100人・年、悪心34.9/100人・年、鼻咽頭炎19.6/100人・年など、プラセボ群で下痢25.6/100人・年、鼻咽頭炎22.0/100人・年、IPFの進行17.7/100人・年などでした。
また、INPULSIS-ON試験でみられた主な有害事象は、オフェブ継続投与群で下痢60.1/100人・年、気管支炎15.0/100人・年、IPFの進行13.7/100人・年など、新規投与群で下痢71.2/100人・年、鼻咽頭炎17.5/100人・年、悪心15.8/100人・年などでした。

安全性02

図12

両試験において有害事象として認められた下痢、悪心、嘔吐の重症度をお示しします。
INPULSIS試験のオフェブ群、INPULSIS-ON試験のオフェブ継続投与群、新規投与群のそれぞれにおいて、下痢については、軽度が56.8%、49.5%、48.1%、中等度が37.7%、44.6%、43.0%、高度が5.3%、5.9%、8.9%でした。
悪心については、軽度が74.4%、67.1%、57.7%、中等度が24.4%、30.3%、38.0%、高度が1.3%、2.6%、4.2%でした。
嘔吐については、軽度が66.2%、63.0%、56.8%、中等度が28.4%、35.2%、37.8%、高度が5.4%、1.9%、5.4%でした。

安全性03

図13

肝酵素上昇における各肝酵素の最大値別の内訳は左の図のとおりでした。

安全性04

図14

TOMORROW試験及びINPULSIS試験の併合解析

次に、TOMORROW試験及びINPULSIS試験の併合解析を紹介します。

試験概要

この併合解析は、オフェブ150mg 1日2回の治療効果の包括的な推定を目的としており1)、両試験において承認用量であるオフェブ150mg 1日2回が投与された患者さん(オフェブ群:723例)とプラセボを1日2回投与された患者さん(プラセボ群:508例)を対象に行われました。

試験概要

図15

有効性

本併合解析の主要評価項目である52週時におけるFVCの年間減少率は、オフェブ群 -112.4mL/年、プラセボ群 -223.3mL/年であり、オフェブ群は、プラセボ群に対して呼吸機能の低下を有意に抑制することが示されました。

有効性

図16

さらに、本併合解析のデータを用いて、オフェブの血漿曝露量に対するFVCの予測年間減少率が解析されました。曝露-有効性モデルによる解析の結果、1回150mg 1日2回用量(Cpre,ss※2中央値:10ng/mL)が、最大薬理効果の曲線のプラトー(EC80※3:10~13ng/mL)に近付くことが示されました2)

この結果は、オフェブの用法及び用量である「通常、成人にはニンテダニブとして1回150mgを1日2回、朝・夕食後に経口投与する。」の妥当性を裏付けるデータであると考えられます。
※2 Cpre,ss:定常状態におけるニンテダニブ投与前の血漿薬物濃度
※3 EC80:80%有効血中濃度

有効性02

図17

本併合解析では、治療期間中の死亡についても検討されました。治療期間中の死亡率はオフェブ群で3.5%、プラセボ群で6.7%であり、両群の間に有意差が認められました。

有効性03

図18

安全性

本併合解析の安全性の結果をお示しします。
有害事象は、オフェブ群723例のうち689例(95.3%)、プラセボ群508例のうち456例(89.8%)に認められました。
主な有害事象は、発現頻度が高い順に、オフェブ群で下痢445例(61.5%)、悪心176例(24.3%)、鼻咽頭炎、咳嗽各93例(12.9%)などであり、プラセボ群で下痢91例(17.9%)、鼻咽頭炎79例(15.6%)、咳嗽75例(14.8%)などでした。
重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象についてはご覧のとおりです。
なお、重篤な有害事象及び死亡に至った有害事象の事象名及び例数は、文献に記載がありませんでした。

安全性

図19

オフェブ市販直後調査 最終報告(IPF)

最後に、IPFにおけるオフェブの市販直後調査について、最終報告の結果を紹介します。

概要

本調査は、2015年8月31日~2016年2月29日に1,221施設を対象として実施されました。

概要

図20

報告副作用集計

承認日(2015年7月3日)以降、2016年2月29日までに報告された副作用発現状況はご覧のとおりです。
調査期間中に報告された副作用は223例361件であり、重篤な副作用は51例66件、非重篤な副作用は172例295件でした。
重篤な副作用は、報告件数が多い順に、特発性肺線維症12件、肝障害7件、食欲減退5件などでした。
非重篤な副作用は、報告件数が多い順に、下痢58件、肝酵素上昇33件、肝機能異常30件などでした。

報告副作用集計

図21

報告副作用集計02

図22

まとめ

今回は、IPF患者さんを対象にオフェブの適正な用法・用量を検討したTOMORROW試験、オフェブの有効性・安全性を検討したINPULSIS試験とINPULSIS-ON試験の結果を紹介しました。

これらの結果を根拠として、オフェブの用法及び用量である「通常、成人にはニンテダニブとして1回150mgを1日2回、朝・夕食後に経口投与する。なお、患者の状態によりニンテダニブとして1回100mgの1日2回投与へ減量する。」が電子添文に記載されています。
この用法・用量の妥当性については、TOMORROW試験及びINPULSIS試験の併合解析でも裏付けられています。
オフェブの安全性情報については、各試験の安全性の結果や市販直後調査の結果とともに、電子添文もご確認ください。
今回ご紹介した内容を、オフェブによる治療が適切なILD患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。

【引用】

  1. Richeldi L. et al.: Respir Med 2016; 113: 74-79.
  2. Schmid U. et al.: Respir Med 2021; 180:106369.
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