進行性線維化を伴う分類不能型特発性間質性肺炎患者さんの診断と治療(静止画)

サイトへ公開: 2022年06月28日 (火)

ご監修・ご出演:近藤 康博先生(公立陶生病院 副院長 兼 呼吸器・アレルギー疾患内科部長)

近藤 康博先生

先生が次のような症例をご診療される場合、どのような管理が考えられるでしょうか。

近藤 康博先生01近藤 康博先生03

分類不能型IIPsの診断

分類不能型特発性間質性肺炎(分類不能型IIPs)を含む間質性肺疾患(ILD)の診断の第一歩は、胸部X線写真で間質性陰影を認めた場合が大部分で、次いで胸部聴診所見にて捻髪音が認められた場合が想定されます。ILDが疑われたら、次にILDの原因となりうる要因についての検討を行います。その後、HRCTの画像パターンによりさらに診断プロセスを進めます。検査法の選択や診断に際して、呼吸器科医、放射線科医を中心に病理医、可能であれば膠原病科医を含めた多分野による集学的検討(MDD)を行うことが診断精度を高めることに有用とされています。

分類不能型IIPsの診断

これらの診断の結果、ガイドラインの基準に合致、または90%以上の確診度の主診断がある場合、確定診断となります。
50%を超える確診度の主診断がある場合、70-89%の信頼度であれば高い確診度で、51-69%の信頼度であれば低い確診度で「暫定」診断となります。
いずれにも該当しない場合は、「分類不能型ILD※1」となります。

※1 「分類不能型特発性間質性肺炎(unclassifiable IIPs)」と「分類不能型間質性肺疾患(unclassifiable ILD)」は報告によりしばしば混同して使用されているが、“MDDを行っても特異的診断にいたらない間質性肺炎”という点で同一の疾患群を表した用語であると考えられる1)

分類不能型IIPsの診断02

2013年のIIPs改訂国際集学的分類では、時間をかけたMDDを行っても最終診断が得られないIIPsの場合、「分類不能型IIPs」のカテゴリーを用いるとされています。
より具体的には、臨床、画像、あるいは病理データが不十分である場合や、臨床、画像、病理の間で大きな不一致がある場合が「分類不能型IIPs」に該当します。臨床、画像、病理の間で大きな不一致がある場合として、治療の影響や、現在のATS※2/ERS※3の分類では特徴づけられない新たな疾患分類あるいは通常は認められない特殊な場合、HRCT所見及び/あるいは病理所見で複数のパターンがみられる場合が挙げられます。

※2 ATS:アメリカ胸部学会
※3 ERS:ヨーロッパ呼吸器学会

分類不能型IIPsの診断03

分類不能型IIPsの予後

日本国内で行われた外科的肺生検を実施したIIPs症例の解析において、分類不能型IIPsは、進行性線維化を伴うILD(PF-ILD)を代表する疾患である特発性肺線維症(IPF)と比較して有意に予後良好である一方、非特異性間質性肺炎(NSIP)より予後不良であったことが報告されています。

分類不能型IIPsの予後

また、進行性線維化を伴う分類不能型IIPsの場合は予後不良になると考えられます。
実際、進行性線維化を伴う分類不能型ILDを含むPF-ILD患者さんの生存率は、非PF-ILD患者さんよりも有意に低く、また、IPF患者さんの生存率との間に有意差が認められませんでした。

分類不能型IIPsの予後02

この結果から、呼吸器症状の悪化や呼吸機能の低下、画像上の進行性の肺の線維化といったPF-ILDの特徴がみられる分類不能型IIPsの場合は、早期の治療介入を検討する必要があると考えられます。

分類不能型IIPsの予後03

進行性線維化を伴う分類不能型IIPs

それではどのような治療を検討すれば良いのでしょうか。
IPF以外のILDでは背景疾患診断後、ステロイドや免疫抑制薬などの標準的治療や、抗原粉塵回避や禁煙などの標準的管理を行います。
そして、呼吸器症状、FVCやDLcoといった呼吸機能検査、胸部HRCTによる線維性病変の拡がりの変化(疾患挙動)から進行性線維化性の判断を行います。
標準的治療や適切な管理を行っても進行性の線維化が認められる場合は抗線維化薬の使用を考慮します。抗線維化剤オフェブは、特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022 改訂第4版において、PF-ILDの治療選択肢として記載されています。

進行性線維化を伴う分類不能型IIPs

まとめ

分類不能型IIPsは、臨床、HRCT画像、病理データが不十分である場合やこれらのデータに大きな不一致がある場合など、MDDを行っても最終診断が得られないIIPsの場合に診断されます。
分類不能型IIPsは進行性線維化を伴う場合、予後不良になると考えられ、早期診断と早期の治療介入を検討する必要があります。
呼吸器症状や呼吸機能検査、胸部HRCTの定期チェックによって疾患挙動を観察し、進行性の線維化が認められる場合はオフェブが治療選択肢として考慮されます。
今回ご紹介した内容を、進行性線維化を伴う分類不能型IIPs患者さんのご診療にお役立ていただけますと幸いです。

【引用】

  1. 日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編. 特発性間質性肺炎 診断と治療の手引き2022 改訂第4版. p.134. 2022
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