SLE-ILD診療とPF-ILDにおけるオフェブの有効性・安全性(静止画)

サイトへ公開: 2021年06月22日 (火)
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ご監修:
北海道大学大学院医学院・医学研究院 免疫・代謝内科学教室 教授 渥美 達也 先生

全身性エリテマトーデス(SLE:systemic lupus erythematosus)は、多彩な臨床像を呈する全身性自己免疫疾患です。SLEの病態は自己免疫異常による炎症や組織障害であり、侵される臓器は全身に及びます。ここではSLE及びSLEに伴う間質性肺疾患(SLE-ILD)の概要や治療戦略、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)における抗線維化薬オフェブの有効性・安全性について解説します。

SLE及びSLE-ILDの概要、検査・診断                                         

■全身性エリテマトーデス(SLE)の概要
SLEは代表的な全身性自己免疫疾患であり、自己免疫異常による炎症や組織障害により全身の臓器に障害が生じます(表1)1)。厚生労働省の指定難病の1つで、日本では約6~10万人の患者さんがいると考えられています2)。性差は女性90%、発症年齢は20~40歳であることが多く、若年女性に好発することが知られています1)
SLEの原因は明らかになっていませんが、抗核抗体などの多様な自己抗体が関与しており、全身に多彩な症状を呈します。一般に、ほとんどの患者さんで全身症状や皮膚・関節症状がみられ、とりわけループス腎炎と神経精神ループスが最も重要な臓器病変です。症状などの組み合わせは患者さんごとに異なり、全く臓器障害のない軽症の患者さんもいます2)

表1 全身性エリテマトーデス(SLE)の概要

表1

難病情報センター ホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/)
田中良哉企画. 最新醫學 別冊 診断と治療のABC 139 リウマチ・膠原病. p.119-128. 2018 より作表

■全身性エリテマトーデスに伴う間質性肺疾患(SLE-ILD)の概要
SLEの胸郭内病変は多彩であり、漿膜病変(胸水、心嚢水など)や横隔膜の機能障害、びまん性肺胞出血、急性ループス肺炎、急性/亜急性あるいは慢性の間質性肺疾患(ILD)、肺胞蛋白症などがみられます。また、気道病変、肺高血圧症を合併することもあります3)
SLEの胸郭内病変の一つであるSLE-ILDは、急性ループス肺炎と慢性ILDに分類されます3)。前者では発熱や乾性咳嗽、呼吸困難、頻呼吸、胸痛などがみられ、後者では乾性咳嗽や労作時呼吸困難が慢性的に進行します4)。また、急性ループス肺炎の急性期離脱後に慢性化するケースも存在します4,5)。SLEにおける慢性ILDの合併頻度は、診断や研究方法によっても異なりますが、3~13%とされています(図1)3,4,6,7)

図1 全身性エリテマトーデスに伴う間質性肺疾患(SLE-ILD)の概要

図1 全身性エリテマトーデスに伴う間質性肺疾患(SLE-ILD)の概要

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班) 日本リウマチ学会.
全身性エリテマトーデス診療ガイドライン 2019. 2019 より作図
6)Haupt HM. et al.: Am J Med 1981; 71(5): 791-798.
7)Weinrib L. et al.: Semin Arthritis Rheum 1990; 20(1): 48-56.

■SLE-ILDに関する検査・診断
SLEの初期には、症状の出にくい心・肺病変などを定期的にスクリーニングします4)。SLE-ILDの診断は、胸部X線検査、HRCT、気管支肺胞洗浄(BAL)、血液検査などによって進められます(表2)3)。まず胸部X線検査によって、肺野のすりガラス陰影や浸潤影の有無のスクリーニングを行いますが、診断率は高くないため、他の症状や所見からILDが疑われる場合は、HRCTによる精査を行います。HRCTにおいて、肺野のすりガラス陰影や浸潤影に加え、牽引性気管支拡張あるいは蜂巣肺所見が認められる場合はILDが強く疑われます。ILDの有無の判定にはBALが有用であり、びまん性肺胞出血における赤色BAL液、肺胞蛋白症における白色BAL液(米のとぎ汁様)は診断に直結します。血清KL-6やSP-Dの測定、経気管支肺生検(TBLB)もILDの有無の判定に有用とされています。

表2 SLE-ILDに関する検査・診断

表2  SLE-ILDに関する検査・診断

表3 SLEの治療薬

表3 SLEの治療薬

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班) 日本リウマチ学会.
全身性エリテマトーデス診療ガイドライン 2019. 2019 より作表

■SLE-ILDの治療開始のタイミング及び治療戦略
SLE-ILDの治療開始のタイミングはILDの重症度や進行の程度によって異なります(表4)3)。胸部HRCTにおいて、狭い範囲に限局した軽度のSLE-ILD、かつ呼吸器症状も軽度で短期間における肺病変の進行がない場合は、無治療による経過観察も選択肢となります。一方、肺病変が広範囲に存在する場合、あるいは呼吸器不全を伴う場合や急速進行性の場合には、予後を改善するための早期の治療開始が肝要であり、複数の抗菌薬を併用したステロイド投与を考慮します。慢性ILDなど進行が緩徐な場合は、治療開始3~6ヵ月後に呼吸状態、胸部画像所見、血清LDH・KL-6・SP-D、呼吸機能検査などによる効果判定を行い、治療方針を再検討します。

表4 SLE-ILDの治療開始のタイミング・効果判定

表4 SLE-ILDの治療開始のタイミング・効果判定

日本呼吸器学会 日本リウマチ学会. 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020. p.129-134. 2020 より作表

■SLEの治療
全身に多彩な症状を呈するSLE患者さんの管理では、臨床的多様性への対応が重要であり、臓器に限定しない総合的な判断が求められます1)。SLEの治療には、免疫調整薬であるヒドロキシクロロキン、グルココルチコイド(GC)、免疫抑制薬、生物学的製剤などが用いられます(表3)4)

表3 SLEの治療薬

表3 SLEの治療薬

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班) 日本リウマチ学会.
全身性エリテマトーデス診療ガイドライン 2019. 2019 より作表

■SLE-ILDの治療開始のタイミング及び治療戦略
SLE-ILDの治療開始のタイミングはILDの重症度や進行の程度によって異なります(表4)3)。胸部HRCTにおいて、狭い範囲に限局した軽度のSLE-ILD、かつ呼吸器症状も軽度で短期間における肺病変の進行がない場合は、無治療による経過観察も選択肢となります。一方、肺病変が広範囲に存在する場合、あるいは呼吸器不全を伴う場合や急速進行性の場合には、予後を改善するための早期の治療開始が肝要であり、複数の抗菌薬を併用したステロイド投与を考慮します。慢性ILDなど進行が緩徐な場合は、治療開始3~6ヵ月後に呼吸状態、胸部画像所見、血清LDH・KL-6・SP-D、呼吸機能検査などによる効果判定を行い、治療方針を再検討します

表4 SLE-ILDの治療開始のタイミング・効果判定

表4 SLE-ILDの治療開始のタイミング・効果判定

日本呼吸器学会日本リウマチ学会. 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020. p.129-134. 2020 より作表

■SLE-ILDの治療(全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019)
SLE-ILD についてのエビデンスレベルの高い確立した治療は存在しません。全身性エリテマトーデス診療ガイドライン20194)では、「SLEの間質性肺炎に対する治療はどのように行うか?(CQ25)」について、「全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う間質性肺炎(IP)に対してはグルココルチコイド(GC)(急性の場合:プレドニゾロン[PSL] 1mg/kg/日±メチルプレドニゾロン[mPSL] パルス療法. 慢性進行性の場合:PSL 0.5~1mg/kg/日) 治療を推奨する(エビデンスレベルD)。必要に応じて免疫抑制薬の併用を提案する(エビデンスレベルD)。[合意度8.1]」と記載されています(図2)。
また、解説において、「慢性間質性肺炎に対しては炎症と線維化の程度によって治療法が異なるが、高分解能CT(HRCT)ですりガラス影を認め炎症が比較的高度な場合は、合併症(感染・重複症候群)に留意しながらGCによる治療が行われる。GCの反応性が乏しい際は、強皮症に伴うIPとの類似性から、CY(シクロホスファミド)、MMF(ミコフェノール酸モフェチル)#、AZP(アザチオプリン)の使用が試みられている。しかしながら、すでに不可逆的な肺の線維化を生じている際の治療は困難であり、改善が認められない場合やすでに形成された肺線維症と判断された場合はできる限りそれらの免疫抑制療法は減量、中止することが求められる。」と記載されています4)
このように、慢性の間質性肺炎においては、炎症と線維化の程度によって治療法を考慮することが重要です。
# 全身性エリテマトーデスの適応は本邦未承認(2020年10月時点)

図2 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019における間質性肺炎の推奨

図2 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019における間質性肺炎の推奨

厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班),
日本リウマチ学会 編:全身性エリテマトーデス診療ガイドライン2019.pp.133-135,南山堂,2019.

■膠原病に伴うILD(CTD-ILD)の挙動・発症様式に応じた治療目標
膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2020において、膠原病に伴うILD(CTD-ILD)の挙動・発症様式に応じた治療目標が示されています(表5)8)。多彩な臨床像を呈すCTD-ILDの治療目標は疾患の挙動によって決まり、炎症が主体となる進行が急速なものと線維化が関与する慢性のものでは異なります。SLE-ILDは、急性、亜急性、慢性の挙動を示すとされ、急性では寛解(救命)、亜急性では改善、進行防止、再燃防止、慢性では状態の維持や急性増悪の予防が治療目標とされています。

表5 CTD-ILDの挙動・発症様式に応じた治療目標

表5 CTD-ILDの挙動・発症様式に応じた治療目標

日本呼吸器学会 日本リウマチ学会. 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020. p.43. 2020

INBUILD試験

■試験概要:INBUILD試験[国際共同第Ⅲ相試験(検証試験)]
国際共同第Ⅲ相試験として実施されたINBUILD試験9,10)では、慢性的に線維化が進行するILDを「進行性線維化を伴う間質性肺疾患:progressive fibrosing interstitial lung disease(PF-ILD)」として捉え、抗線維化薬であるオフェブの有効性と安全性が検討されました(図3)。本試験では、特発性肺線維症(IPF:Idiopathic Pulmonary Fibrosis)以外のILDと診断され、胸部HRCTでの線維化の広がりが全肺野の10%超で確認され、かつ医師により適切と考えられた疾患管理を行ったにもかかわらずスクリーニング前の24ヵ月以内において(ⅰ)~(ⅳ)のいずれかのILDの進行性の基準を満たす患者さんが対象とされました(図4)。

図3 試験デザイン

図3 試験デザイン

Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718-1727. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
承認時評価資料

試験デザイン:ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
実施地域:日本を含む15ヵ国、153施設
目的:進行性線維化を伴う間質性肺疾患患者におけるオフェブ150mg 1日2回投与の有効性と安全性を検討する。
対象:特発性肺線維症を除く進行性線維化を伴う間質性肺疾患の患者663例(日本人108例含む)
方法:対象患者をオフェブ群あるいはプラセボ群に1:1の比率でランダムに割り付け、試験薬を52週間投与し、有効性と安全性を検討した。中央判定したHRCTパターンに基づき、通常型間質性肺炎(UIP)様線維化パターン、又は他の線維化パターンにより層別化してランダム化を行った。用法・用量として150mgを1日2回投与した。投与期間は52週以降、本試験終了(最後の患者の最終観察終了時と定義)、又は投与中止の理由に該当するまでとし、割り付けられた試験薬を盲検下で継続投与した。有害事象への対応として、中断又は100mg 1日2回への減量を可能とした。
主要評価項目:投与52週までのFVCの年間減少率(mL/年)
副次評価項目:投与52週時におけるL-PF symptoms※呼吸困難ドメインスコアのベースラインからの変化量、投与52週時におけるL-PF symptoms※咳嗽ドメインスコアのベースラインからの変化量 など
その他の評価項目:投与52週時におけるL-PF総スコア、symptoms総スコア、symptoms疲労ドメインスコア及びimpacts総スコアのベースラインからの変化量 など
解析計画:解析対象として、全患者(全体集団)及びHRCTでUIP様線維化パターンがみられる患者(HRCTでUIP様線維化パターンのみがみられる集団)の2つをco-primary評価集団と定義し、主要評価項目、副次評価項目及びその他の評価項目の解析はco-primary評価集団で実施した。主要評価項目の解析にはランダム係数回帰モデル(ランダム切片・傾き)を用いた。投与52週時におけるL-PF symptoms※呼吸困難ドメインスコア及び咳嗽ドメインスコアのベースラインからの変化量、投与52週時におけるL-PF総スコア、symptoms総スコア、symptoms疲労ドメインスコア及びimpacts総スコアのベースラインからの変化量については、混合効果モデルによる反復測定法(MMRM)を用いた。プラセボ投与に対するオフェブ150mg 1日2回投与の優越性の検証は、2つのco-primary評価集団で主要評価項目について検定を実施した。検定の多重性の調整にはHochberg法を用い、2つのco-primary評価集団でともに両側有意水準5%で有意であった場合、又はいずれかの集団において両側有意水準2.5%で有意であった場合に統計学的に有意とした。主要評価項目について、次の部分集団解析を行うことが事前に規定された。性別(男性、女性)、年齢(65歳未満、65歳以上)、人種(白人、アジア人、黒人又はアフリカ系アメリカ人)、ベースライン時の%FVC(70%以下、70%超)、ILD臨床診断グループ[過敏性肺炎(過敏性肺臓炎)、特発性非特異性間質性肺炎、分類不能型特発性間質性肺炎、自己免疫性間質性肺疾患、他の間質性肺疾患]。

※ L-PF(Living with Pulmonary Fibrosis)symptomsスコア:肺線維症患者に対して開発された症状に関する23項目の質問票。①呼吸困難、②咳嗽、③疲労の3つの領域からなる質問に対して評価した結果から算出されるスコア(範囲0~100:高値ほど症状が重い)

図4 ILDの進行性の基準

図4 ILDの進行性の基準

Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718-1727. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
承認時評価資料

■有効性:投与52週までのFVCの年間減少率
主要評価項目である投与52週までのFVCの年間減少率において、オフェブ群ではプラセボ群に比べてFVCの年間減少率の低下が有意に抑制されました(図5)。全体集団における投与52週までのFVCの年間減少率は、オフェブ群-80.8mL/年、プラセボ群-187.8mL/年であり、相対減少率は57%でした(群間差:107.0mL/年、95%CI:65.4-148.5、p<0.0001)。両群の間に有意な差が認められ、オフェブの投与により呼吸機能の低下が抑制されることが示されました(検証的な解析結果)9,10)

図5 投与52週までのFVCの年間減少率:主要評価項目

図5 投与52週までのFVCの年間減少率:主要評価項目

Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718-1727. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
承認時評価資料

■<参考情報>有効性:投与52週時におけるL-PFスコアのベースラインからの変化量
L-PF質問票は、肺線維症の患者さんにおける症状に関する評価指標です。質問票は2つのモジュールからなり、23項目のsymptomsモジュール及び21項目のimpactsモジュールの合計44項目の質問で構成されています。symptomsモジュールは、呼吸困難ドメイン、咳嗽ドメイン及び疲労ドメインの3つのドメインがあり、それぞれのスコアからsymptoms総スコアが得られます。impactsモジュールからは、impactsスコアが得られます。symptoms及びimpactsスコアを合計し、L-PF総スコアが計算されます。総スコア及びドメインスコアの範囲は0~100となり、スコアが大きいほど症状が重いことを示します(図6)9)
本試験における投与52週時におけるL-PF総スコアのベースラインからの平均変化量は、オフェブ群-0.2及びプラセボ群3.9であり、群間差は-4.1でした。L-PF symptoms総スコアの平均変化量は、オフェブ群0.4及びプラセボ群3.7であり、群間差は-3.3でした。L-PF symptoms呼吸困難ドメインスコアは、オフェブ群4.3及びプラセボ群7.8であり、群間差は-3.5でした。また、咳嗽ドメインスコアはオフェブ群-1.8及びプラセボ群4.3(群間差:-6.1)、疲労ドメインスコアはオフェブ群-1.0及びプラセボ群-1.0(群間差:-0.1)でした。L-PF impact総スコアの平均変化量は、オフェブ群-0.7及びプラセボ群3.8であり、群間差は-4.5でした(図7)10)

図6 Living with Pulmonary Fibrosis(L-PF)質問票

図6  Living with Pulmonary Fibrosis(L-PF)質問票

Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718-1727. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。

図7 <参考情報> 投与52週時におけるL-PFスコアのベースラインからの変化量(全体集団):副次評価項目、その他の評価項目

図7 <参考情報> 投与52週時におけるL-PFスコアのベースラインからの変化量(全体集団):副次評価項目、その他の評価項目

承認時評価資料

■安全性
全体集団での全期間※1における有害事象は、オフェブ群では332例中326例(98.2%)、プラセボ群では331例中308例(93.1%)に認められました(表6)。オフェブ群における重篤な有害事象※2、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象は表6のとおりでした。また、オフェブ群における主な有害事象は、下痢240例(72.3%)、悪心100例(30.1%)、嘔吐64例(19.3%)、上咽頭炎及び食欲減退が各54例(16.3%)などでした。また、ALT増加、AST増加、γ-GTP増加などの肝酵素上昇が認められました(表7)10)
投与52週までの肝酵素上昇、下痢、悪心、嘔吐の有害事象の重症度を表8に示します。オフェブ群で認められた肝酵素上昇は、軽度が69.7%、中等度が27.6%、高度が2.6%でした。下痢はGrade 1が66.5%、Grade 2が23.1%、Grade 3が10.4%でした。悪心は軽度が80.2%、中等度が19.8%でした。また、嘔吐は軽度が78.7%、中等度が21.3%でした(表8)10)
※1 全期間:最後の患者の最終観察終了時
※2 1名を複数の重篤度分類基準でカウントしている場合がある

表6 全期間における有害事象の概要

表6 全期間における有害事象の概要

承認時評価資料

表7 全期間※におけるいずれかの治療群で発現割合5%超の有害事象

表7 全期間※におけるいずれかの治療群で発現割合5%超の有害事象

承認時評価資料

表8 投与52週までの肝酵素上昇、下痢、悪心、嘔吐の有害事象の重症度

表8 投与52週までの肝酵素上昇、下痢、悪心、嘔吐の有害事象の重症度

下痢に関する有害事象共通用語規準第4版
承認時評価資料

今後のSLE-ILD治療の展望

SLEにおけるILDの合併頻度は高くはありませんが、アンメットメディカルニーズは高く、画像でNSIPパターンがみられるなど、線維化が進行している場合の治療介入は重要です。全身性エリテマトーデス診療ガイドラインでは、SLEの間質性肺炎に対する治療について示されており、慢性ILDに対しては炎症と線維化の程度を考慮して治療選択を行うことが求められています。
PF-ILDの患者さんを対象としたINBUILD試験において、抗線維化薬オフェブの投与により、呼吸機能の低下が有意に抑制されることが示されました。また、症状に関する評価指標であるL-PFについても変化量が解析されました。これまで、SLE-ILDにおける肺の線維化に対してエビデンスのある治療薬はありませんでしたが、今後は、HRCTにより確認された進行性の肺の線維化、FVCなどの呼吸機能の低下、咳や呼吸困難などの呼吸器症状の悪化がみられるなど、線維化が進行しているSLE-ILD患者さんに対し、オフェブは新たな治療選択肢になると考えられます。

文献:

1)田中良哉企画. 最新醫學 別冊 診断と治療のABC 139 リウマチ・膠原病. p.119-128. 2018
2)難病情報センター ホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/)
3)日本呼吸器学会 日本リウマチ学会. 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020. p.129-134. 2020
4)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班) 日本リウマチ学会. 全身性エリテマトーデス診療ガイドライン 2019. 2019
5)Matthay RA. et al.: Medicine(Baltimore) 1975; 54(5): 397-409.
6)Haupt HM. et al.: Am J Med 1981; 71(5): 791-798.
7)Weinrib L. et al.: Semin Arthritis Rheum 1990; 20(1): 48-56.
8)日本呼吸器学会 日本リウマチ学会. 膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針 2020. p.42-44. 2020
9)Flaherty KR. et al.: N Engl J Med 2019; 381(18): 1718-1727. 本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
10)承認時評価資料

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