知っておきたい医療費助成のポイント ~特発性間質性肺炎~(静止画)

サイトへ公開: 2021年05月31日 (月)

ご監修・ご出演:富井 啓介先生(神戸市立医療センター中央市民病院 副院長兼呼吸器内科部長)

富井 啓介先生

抗線維化薬オフェブは、適応追加により、特発性肺線維症(IPF)だけでなく、さまざまな原疾患に合併する可能性がある進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)患者さんへの投与が可能になりました。原疾患の中には厚生労働大臣より指定難病に指定されているものがあり、認定を受けることで難病医療費助成を受けることができます。また、医療費が高額になる場合は、高額療養費制度を利用できる可能性があります。
実臨床において患者さんの負担を減らすためには、これらの制度を医師が把握しておくことが重要であると考えられます。
そこで本日は、これらの制度の概要と、制度適用となる診断方法や重症度評価などについてご紹介します。

オフェブ服用患者さんが利用できる主な医療費助成制度

本邦では、治療中の患者さんの経済的負担を減らすことを目的として、高額療養費制度や難病医療費助成制度が設けられています。これらの制度を利用することにより、医療保険給付分に加えて助成金が支給され、患者さんが支払う医療費を減らすことができます。

オフェブ服用患者さんが利用できる主な医療費助成制度01

高額療養費制度

高額療養費制度は、1ヵ月間に医療機関へ支払った自己負担額が自己負担上限額を超えた場合に、その超えた分の支給を受けられる制度です。たとえば、70歳未満で標準報酬月額が32万円、1ヵ月の医療費総額が100万円の患者さんの自己負担上限額は87,430円となります。自己負担の上限額は年齢と所得によって異なります。

高額療養費制度

難病医療費助成制度

難病医療費助成制度は厚生労働大臣が定める指定難病の患者さんで、症状が一定程度以上または高額な医療費を支払っている場合に医療費が助成される制度です。

難病医療費助成制度01

また、高額な治療を長期にわたって行う必要がある場合は、さらに負担が軽減されます。

軽症でも、高額な医療の継続が必要な患者さんは、難病医療費助成の「軽症高額」の認定対象になります。具体的には、医療費助成の申請をした月から12ヵ月前までの期間において、申請した難病の治療にかかった1ヵ月当たりの医療費総額が33,330円※を超える月が3回以上ある方が対象になります。

※医療費総額が33,330円(自己負担が3割の場合、自己負担額が10,000円)を超える場合

難病医療費助成制度02

高額療養費制度は、どの疾患であっても適用される一方、難病医療費助成制度は、指定難病の認定を受けた患者さんが対象となります。

認定には難病指定医が作成した臨床調査個人票が必要になります。臨床調査個人票は対象の指定難病によってフォーマットが異なっており、すべて難病情報センターのホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/)からダウンロードすることができます。

特発性間質性肺炎(IIPs)の申請

こちらが、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)に関連する難病指定の疾患です。
原疾患が明確でありかつ難病指定されている場合は、原疾患の基準での申請が可能です。PF-ILDに関連する指定難病としては、特発性間質性肺炎(IIPs)、全身性強皮症、皮膚筋炎/多発性筋炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群など主な疾患はこちらに記載のとおりです。

特発性間質性肺炎(IIPs)の申請01

今回は特発性間質性肺炎(IIPs)の申請方法に関してご紹介します。

IIPsとして申請可能な対象は、特発性肺線維症(IPF) またはIPF以外のIIPsと診断された患者さんです。

特発性間質性肺炎(IIPs)の申請02

国際治療ガイドラインでは、線維化を伴う間質性肺疾患(ILD)の分類において、ガイドラインの基準に合致、または90%以上の確信度の主診断がある場合に確定診断としていますが、確信度がそれ以下の場合でも暫定診断というカテゴリーが設けられています。70-89%の確信度がある場合は高確信度診断、51-69%の確信度がある場合は低確信度診断とされています。

臨床調査個人票でも、IPFの診断においては、まず症状や臨床検査所見からDefinite、Probable、Possibleに分類します。 このうちDefiniteとProbableの患者さんは症例をIPFと診断でき、難病申請が可能になります。

なお、Probableに分類するためには胸部HRCT画像所見で胸膜直下の陰影分布および蜂巣肺を認めることが必要条件となります。

IPFとして診断できない患者さんについては、IPF以外のIIPsの可能性を検討します。そのためには、外科的肺生検により、病理組織学的に非特異性間質性肺炎(NSIP)、急性間質性肺炎(AIP)、特発性器質化肺炎(COP)、剥離性間質性肺炎(DIP)、呼吸細気管支炎関連間質性肺炎(RB-ILD)、リンパ球性間質性肺炎(LIP)のいずれかに診断される必要があります。

特発性間質性肺炎(IIPs)の申請03

臨床調査個人票について

実際の臨床調査個人票では、5ページ目で、診断のカテゴリーを選択いただき、DefiniteおよびProbableの場合は2ページ目の「診断」の欄で「1.特発性肺線維症(IPF)」を選択します。IPF以外の間質性肺炎に該当する場合は「2. IPF以外の間質性肺炎」を選択いただき、該当する疾患を選択します。
また、外科的肺生検を行った場合は、4ページ目に、実施日、方法、所見をご記載ください。

臨床調査個人票について01

(臨床調査個人票:P5)

臨床調査個人票について02

(臨床調査個人票:P2)

臨床調査個人票について03

(臨床調査個人票:P4)

“特発性間質性肺炎 臨床個人調査票(2020年5月現在)から引用”

IIPsとして申請可能な重症度の程度は、 重症度分類 Ⅲ 度以上 です。
重症度は、安静時動脈血酸素分圧によって分類され、重症度 Ⅱ 度以上で6分間歩行時SpO2が90%未満の場合は、重症度を1段階高くします。

臨床調査個人票について04

臨床調査個人票の4ページ目に、血液ガス、呼吸機能、6分間歩行試験の結果を記入する欄がありますので、こちらをご記載いただき、7ページ目で、重症度分類を選択ください。

臨床調査個人票について05

(臨床調査個人票:P4)

臨床調査個人票について06

(臨床調査個人票:P7)

“特発性間質性肺炎 臨床個人調査票(2020年5月現在)から引用”

支給を受けるための流れ

患者さんが実際に支給を受けるためには、臨床調査個人票以外にもさまざまな書類が必要になります。患者さんは、これらの必要な書類を都道府県または指定都市の申請窓口に提出し、審査後承認されると医療受給者証が交付されます。

支給を受けるための流れ01支給を受けるための流れ02

まとめ

最後に、ILDの種類に応じた医療費助成制度の活用方法についてまとめます。指定難病となりうる主なILDは、IIPs、膠原病に伴うILDなどです。このうち病状の程度が一定程度以上、または軽症で医療費が高額な場合に難病医療費助成を受けられる可能性があります。また、過敏性肺炎、関節リウマチに伴う間質性肺疾患など、「指定難病」以外の疾患の患者さんも、高額療養費制度の利用が可能な場合があります。

まとめ

抗線維化薬オフェブで治療を行う場合、患者さんは医療費助成を受けられる可能性があります。そして、患者さんが助成を受けるためには、医師が医療費助成制度の適用範囲を正しく理解しておくことも重要です。
治療における患者さんの負担を軽減し、治療を継続頂くために、本日ご紹介した内容をお役立ていただければ幸いです。

※各自治体によって本コンテンツでご紹介した以外の制度を設けていることもあります。
詳細は各自治体にご確認ください

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