SENSCIS試験は、SSc-ILD患者を対象として、オフェブの有効性及び安全性を検証した国際共同第Ⅲ相試験です1,2)。
試験概要
図1 試験方法
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試験デザイン:ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
実施地域:日本を含む32ヵ国、194施設
目的:全身性強皮症に伴う間質性肺疾患患者におけるオフェブ150mg 1日2回投与の有効性と安全性を検討する。
対象:全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の患者580例(日本人71例含む)
方法:対象患者をオフェブ群あるいはプラセボ群に1:1の比率でランダムに割り付け、試験薬を52週間投与し、有効性と安全性を検討した。ATAの陽性又は陰性に基づき層別化してランダム化を行った。用法・用量として150mg を1日2回投与した。投与期間は最後の患者の投与期間が52週に到達した時点とし、最長100週までとした。有害事象への対応として中断又は100mg 1日2回への減量を可能とした。
選択基準
- 文書による同意が得られている
- 18歳以上(日本人は20歳以上)
- 2013年ACR/EULAR 基準3)を満たす全身性強皮症である
- スクリーニング前7年以内に全身性強皮症を発症(最初の非レイノー症状により定義)した(2017年1月プロトコール改訂により、発症からの期間を5年から7年に延長)
- 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患のパターンがスクリーニング前12ヵ月以内に撮影したHRCTにより確認されている(肺の線維化の程度は、中央判定により評価したHRCT において10%以上である)
- ランダム化割り付け時点で%FVCが40%以上である
- ランダム化割り付け時点で%DLco(ヘモグロビンで補正)が30~89%である
主要評価項目(検証的な解析項目):投与52週時までのFVCの年間減少率(mL/年)
重要な副次評価項目:投与52 週時における modified Rodnan Skin Score(mRSS)のベースラインからの変化量,52 週時における SGRQ 総スコアのベースラインからの変化量
副次評価項目:投与52週時までのFVCのベースラインからの平均変化量の推移(平均値±標準誤差)
解析計画:主要評価項目には、ランダム係数回帰モデル(ランダム切片・傾き)を用いた。本モデルには治療、ATAの状態(陽性、陰性)及び性別をカテゴリカル変数の固定効果として、また、時間、ベースライン時のFVC、年齢、身長、治療×時間の交互作用及びベースライン値×時間の交互作用を連続変数の固定効果として、患者個別の切片及び時間をランダム効果として含めた。
重要な副次評価項目には、混合効果モデルによる反復測定法(MMRM)を用いた。本モデルには治療、ATAの状態、来院、治療×来院の交互作用をカテゴリカル変数の固定効果として、ベースライン×来院の交互作用を連続変数の固定効果として含めた。副次評価項目の投与52週時までのFVCのベースラインからの平均変化量の推移(平均値±標準誤差)には、MMRMを用いた。
プラセボ投与に対するオフェブ150mg 1日2回投与の優越性の検証では、主要評価項目及び2つの重要な副次評価項目において階層手順を用いた。階層仮説検定の順位は、①FVCの年間減少率 ②mRSSのベースラインからの変化量 ③SGRQ総スコアのベースラインからの変化量とした。
主要評価項目について、次の部分集団解析を行うことが事前に規定された。ATAの状態(陽性、陰性)、性別(女性、男性)、年齢(65歳未満、65歳以上)、人種(白人、アジア人、黒人/アフリカ系アメリカ人)、地域(EU、米国・カナダ、アジア、その他)、皮膚硬化の範囲による分類(びまん皮膚硬化型、限局皮膚硬化型)、ベースライン時のミコフェノール酸の併用(あり、なし)。
ATA:抗トポイソメラーゼI 抗体
結果-患者背景
表1 患者背景
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表2 患者内訳
![表2 患者内訳](/jp/sites/default/files/inline-images/Table2.png)
表3 試験薬曝露及び投与状況
![表3 試験薬曝露及び投与状況](/jp/sites/default/files/inline-images/Table3.png)
表4 許可された投与量の減量及び投与中断期間
![表4 許可された投与量の減量及び投与中断期間](/jp/sites/default/files/inline-images/Table4.png)
6. 用法及び用量
通常、成人にはニンテダニブとして1回150mgを1日2回、朝・夕食後に経口投与する。なお、患者の状態によりニンテダニブとして1回100mgの1日2回投与へ減量する。
7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
〈効能共通〉
7.1 下痢、悪心、嘔吐等の副作用が認められた場合は、対症療法などの適切な処置を行ったうえ、本剤の治療が可能な状態に回復するまでの間、減量又は治療の中断を検討すること。治療の中断後再開する場合は1回100mg、1日2回から再開することを検討すること。患者の状態に応じて1回150mg、1日2回へ増量することができる。再投与又は増量する場合は慎重に投与し、投与後は患者の状態を十分に観察すること。
7.2 AST又はALTが基準値上限の3倍を超えた場合は、本剤の減量又は治療の中断を行い、十分な経過観察を行うこと。治療を中断し投与を再開する場合には、AST又はALTが投与前の状態に回復した後、1回100mg、1日2回から投与することとし、患者の状態に応じて1回150mg、1日2回へ増量することができる。再投与又は増量する場合には慎重に投与し、投与後は患者の状態を十分に観察すること。[8.1、11.1.2参照]
投与52週までのFVCの年間減少率:主要評価項目
投与52週までのFVCの年間減少率※は、オフェブ群-52.4mL/年、プラセボ群-93.3mL/年であり、オフェブ群は、プラセボ群に対してFVCの年間減少率の低下を統計学的に有意に抑制しました(群間差:41.0mL/年、95%CI: 2.9‒79.0、p=0.04)。(検証的な解析結果)
※ ランダム係数回帰モデル
図2 投与52週までのFVCの年間減少率
![図2 投与52週までのFVCの年間減少率](/jp/sites/default/files/inline-images/Figure2.png)
統計解析手法
ランダム係数回帰モデル:治療、ATAの状態及び性別をカテゴリカル変数の固定効果として、時間、ベースライン時のFVC、年齢、身長、治療×時間の交互作用及びベースライン値×時間の交互作用を連続変数の固定効果として、患者個別の切片及び時間をランダム効果として含めた。
ベースラインから投与52週時までのFVCの変化量:主要評価項目 感度分析
図3 ベースラインから投与52週時までのFVC の変化量の推移
![図3 ベースラインから投与52週時までのFVC の変化量の推移](/jp/sites/default/files/inline-images/Figure3.png)
部分集団における投与52週までのFVCの年間減少率:部分集団解析
投与52週までのFVCの年間減少率※を各部分集団において解析した結果、オフェブのFVC低下抑制効果は以下のとおりでした。
※ ランダム係数回帰モデル
図4 各部分集団における投与52週までのFVCの年間減少率
![](/jp/sites/default/files/inline-images/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202024-04-10%20084620.jpg)
投与52週後のmRSSのベースラインからの変化量:重要な副次評価項目
投与52週後のmRSSのベースラインからの平均変化量※は、オフェブ群-2.17、プラセボ群-1.96、群間差は−0.21(95% CI: -0.94‒0.53)で有意差は認められなかった(p=0.5785)名目上のP値。
※ MMRM
図5 投与52週後のmRSSのベースラインからの変化量
![](/jp/sites/default/files/inline-images/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%88%202024-04-19%20170742.jpg)
統計解析手法
MMRM:ATAの状態、来院、治療×来院の交互作用、ベースライン時のmRSS×来院の交互作用をカテゴリカル変数の固定効果として含めた。
投与52週後のSGRQ総スコアのベースラインからの変化量:重要な副次評価項目
投与52週後のSGRQ総スコアのベースラインからの平均変化量※は、オフェブ群0.81、プラセボ群−0.88で群間差は1.69(95%CI:−0.73~4.12)でした(p=0.17)名目上のP値。
※ MMRM
図6 投与52週後のSGRQ総スコアのベースラインからの変化量
![図6 投与52週後のSGRQ総スコアのベースラインからの変化量](/jp/sites/default/files/inline-images/Figure6.png)
5. 効能又は効果に関連する注意(抜粋)
〈全身性強皮症に伴う間質性肺疾患〉
5.1 皮膚病変等の全身性強皮症に伴う間質性肺疾患以外の臓器病変に対する本剤の有効性は示されていない。
結果-安全性
全期間※における有害事象は、オフェブ群288例中283例(98.3%)、プラセボ群288例中281例(97.6%)に認められました。
オフェブ群における投与中止に至った有害事象は50例に認められました。主なものは、下痢22例、悪心6例、嘔吐4例でした。重篤な有害事象はオフェブ群88例に認められ、主なもの(発現率1%以上)は間質性肺疾患、肺炎が各10例(3.5%)、呼吸困難、肺高血圧症が各5例(1.7%)、肺動脈性肺高血圧症、肺線維症が各4例(1.4%)、全身性硬化症肺、急性腎障害、気道感染、卵巣嚢胞が各3例(1.0%)でした。死亡に至った有害事象はオフェブ群6例に認められ、内訳は肺腺癌、血栓性微小血管症・強皮症腎クリーゼ、不整脈、肺炎、急性肺損傷、悪性中皮腫が各1例でした。このうち1例(急性肺損傷)は試験薬との因果関係が否定されませんでした。
主な有害事象(いずれかの治療群で発現率5%以上の有害事象)を表5に示します。
表5 全期間※におけるいずれかの治療群で発現率5%以上の有害事象
![表5 全期間※におけるいずれかの治療群で発現率5%以上の有害事象](/jp/sites/default/files/inline-images/Table5.png)
【文献】
1)Distler O. et al.: N Engl J Med 2019; 380(26): 2518-2528.
本試験はベーリンガーインゲルハイム社の支援により行われました。
2)社内資料:国際共同第Ⅲ相試験(1199.214試験)[承認時評価資料]
3)van den Hoogen F. et al.: Arthritis Rheum 2013; 65(11): 2737-2747.