間質性肺疾患(ILD)の治療中に活用できる主な制度
ILDの患者さんは、難病医療費助成制度や高額療養費制度を使って治療中の経済的負担を減らせる可能性があります。
難病医療費及び高額療養費で助成されるイメージ
![難病医療費及び高額療養費で助成されるイメージ](/jp/sites/default/files/inline-images/1_%E9%9B%A3%E7%97%85%E5%8C%BB%E7%99%82%E8%B2%BB%E5%8F%8A%E3%81%B2%E3%82%99%E9%AB%98%E9%A1%8D%E7%99%82%E9%A4%8A%E8%B2%BB%E3%81%A6%E3%82%99%E5%8A%A9%E6%88%90%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%99.png)
難病医療費助成制度:
厚生労働大臣が定める指定難病の患者さんで、病状が一定程度以上の場合、又は高額な医療費を支払っている場合(軽症高額)、医療費が助成され自己負担が軽減される制度です。
高額療養費制度:
高額な医療費による経済的負担を軽くするため、1ヵ月間に医療機関へ支払った自己負担額が自己負担限度額を超えた場合に、その超えた分の支給を受けられる制度です。
ILD患者さんの臨床診断名と重症度によって、活用できる公的支援制度が異なります。
患者さんの臨床診断名が指定難病であるか、また病状が一定程度以上であるかによって、難病医療費助成制度及び高額療養費制度の活用のしかたが異なります(下図①~③)。
各疾患における公的支援制度の活用のしかた
![各疾患における公的支援制度の活用のしかた](/jp/sites/default/files/inline-images/2_%E5%90%84%E7%96%BE%E6%82%A3%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%85%AC%E7%9A%84%E6%94%AF%E6%8F%B4%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%AE%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%9F.png)
① 指定難病※1で病状が一定程度以上の患者さん
厚生労働省の指定難病で病状が一定程度以上の患者さん※2は難病医療費助成制度を活用することができます(上図①)。
※1 「ILDを伴う指定難病」についてはこちら
※2「指定難病の各疾患における診断基準及び重症度分類」についてはこちら
オフェブによる治療を行う患者さんは、難病医療費助成制度を活用して医療費自己負担額を軽減できる可能性があります。また、治療開始7ヵ月以降は、「高額かつ長期※3」を活用して自己負担額がより軽減される可能性があります。
※3 医療費総額が50,000円(自己負担が2割の場合、自己負担額が10,000円)を超える月が12ヵ月の間に6回以上ある場合
オフェブによる治療中の公的支援制度の活用イメージ
![オフェブによる治療中の公的支援制度の活用イメージ](/jp/sites/default/files/inline-images/3_%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%95%E3%82%99%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%B2%BB%E7%99%82%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%85%AC%E7%9A%84%E6%94%AF%E6%8F%B4%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%99.png)
② 指定難病※4で軽症の患者さん(病状が一定程度に満たない患者さん)
厚生労働省の指定難病で病状が一定程度に満たない軽症の患者さん※5のうち、高額な医療を継続することが必要な患者さんは、難病医療費助成制度(軽症高額)※6と高額療養費制度を組み合わせて活用することができます(上図②)。
※4「ILDを伴う指定難病」についてはこちら
※5「指定難病の各疾患における診断基準及び重症度分類」についてはこちら
※6指定難病による医療費総額が33,330円(自己負担が3割の場合、自己負担額が10,000円)を超える月が、12ヵ月の間に3回以上ある場合
オフェブによる治療を行う患者さんは、高額療養費制度を活用して医療費自己負担額を軽減できる可能性があります。また、治療開始4ヵ月以降は、「軽症高額」として難病医療費助成制度の対象となります。さらに、治療開始10ヵ月以降は、「高額かつ長期※7」を活用して、自己負担額がより軽減される可能性があります。
※7 医療費総額が50,000円(自己負担が2割の場合、自己負担額が10,000円)を超える月が12ヵ月の間に6回以上ある場合
オフェブによる治療中の公的支援制度の活用イメージ
![オフェブによる治療中の公的支援制度の活用イメージ](/jp/sites/default/files/inline-images/4_%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%95%E3%82%99%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%B2%BB%E7%99%82%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%85%AC%E7%9A%84%E6%94%AF%E6%8F%B4%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%99.png)
③ 指定難病以外の疾患の患者さん
指定難病以外の疾患の患者さんは、高額療養費制度を活用することができます。
オフェブによる治療を行う患者さんは、高額療養費制度を活用して医療費自己負担額を軽減できる可能性があります。また、治療開始4ヵ月以降は、「多数回該当※8」として、さらに自己負担額が軽減される可能性があります。
※8 同一の世帯で1年間(直近の12ヵ月)に高額療養費の支給を3回以上受けている場合
オフェブによる治療中の公的支援制度の活用イメージ
![オフェブによる治療中の公的支援制度の活用イメージ](/jp/sites/default/files/inline-images/5_%E3%82%AA%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%95%E3%82%99%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E6%B2%BB%E7%99%82%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%85%AC%E7%9A%84%E6%94%AF%E6%8F%B4%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%AE%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%99.png)
各指定難病における診断基準及び重症度分類
ILDを伴う可能性のある指定難病
ILDを伴う可能性のある疾患のうち、特発性間質性肺炎や全身性強皮症、皮膚筋炎/多発性筋炎、サルコイドーシスなど、いくつかの疾患は厚生労働省の指定難病となっています。それぞれの患者さんにおける難病医療費助成の認定は、指定難病ごとに定められた①診断基準、②重症度基準に基づいて審査されます。
ILDを伴う指定難病
※「悪性関節リウマチ」は、難治性又は重症な臨床病態を伴う関節リウマチのこと
各疾患における診断基準と重症度分類
特発性間質性肺炎(指定難病85)
① 診断基準
![① 診断基準](/jp/sites/default/files/inline-images/6_%E3%80%90%E6%8C%87%E5%AE%9A%E9%9B%A3%E7%97%8585%E3%80%91%E3%88%B0%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%9F%BA%E6%BA%96.png)
② 重症度分類
全身性強皮症(指定難病51)
① 診断基準
② 重症度分類
皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50)
① 診断基準
② 重症度分類
混合性結合組織病(指定難病52)
① 診断基準
② 重症度分類
シェーグレン症候群(指定難病53)
① 診断基準
② 重症度分類
全身性エリテマトーデス(指定難病49)
① 診断基準
② 重症度分類
悪性関節リウマチ※(指定難病46)
※「悪性関節リウマチ」は、難治性又は重症な臨床病態を伴う関節リウマチのこと
① 診断基準
② 重症度分類
結節性多発動脈炎(指定難病42)
① 診断基準
② 重症度分類
顕微鏡的多発血管炎(指定難病43)
① 診断基準
② 重症度分類
多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)
① 診断基準
② 重症度分類
好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(指定難病45)
① 診断基準
② 重症度分類
サルコイドーシス(指定難病84)
① 診断基準
② 重症度分類
肺胞蛋白症(自己免疫性又は先天性)(指定難病229)
① 診断基準
② 重症度分類
![② 重症度分類](/jp/sites/default/files/inline-images/7_%E3%80%90%E6%8C%87%E5%AE%9A%E9%9B%A3%E7%97%8585%E3%80%91%E3%88%AA%E9%87%8D%E7%97%87%E5%BA%A6%E5%88%86%E9%A1%9E_0.png)
その他の公的支援制度
ILDの患者さんが受けられる可能性がある公的支援制度をご紹介します。それぞれの制度について、制度のしくみや対象者、申請の流れなどを解説しています。
付加給付制度
1ヵ月の医療費の自己負担額が健康保険組合の独自に定める限度額を超えた場合、超えた分の金額を付加給付として支給される制度です。制度のしくみや限度額は、各健康保険組合で異なります。なお、全国健康保険協会や国民健康保険にはこの制度はありません。
対象者
付加給付制度を定める健康保険組合の被保険者及び被扶養者
申請方法
保険組合によって異なり、付加給付の支給が自動で行われる場合もあれば、請求が必要な場合もあります。医療機関等から健康保険組合に送られてくる請求書(レセプト)を基に支給額が計算され、還元されます。
対象となる給付や金額等については、ご加入の健康保険組合にお問い合わせください。
医療費控除
その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が一定額を超えるときは、確定申告をすることによって、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。医療費控除の金額は、次の式で計算した金額(最高で200万円)です。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円※1
※1 その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額
対象となる医療費の要件
• 納税者が、自己又は自己と生計を一つにする家族のために支払った医療費であること。
• その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること(未払いの医療費は、現実に支払った年の医療費控除の対象となります)。
申請方法
医療費控除に関する事項その他の必要事項を記載等して所轄税務署長に、確定申告書を提出するか、電子申告(e-tax)にて申告します。
詳しくは各都道府県の市区町村の所轄税務署にお問い合わせください。
重度障害者医療費助成制度※2
重度障害者医療費助成制度とは、心身に重度の障害がある方が病院などで受診した場合に、支払った医療費や薬剤費を助成する制度です。
※2 重度障害者医療費助成制度は各都道府県の市区町村の制度であり、市区町村で名称が異なります。
対象者
国民健康保険や被用者保険に加入している方で、次の要件のいずれかに該当する方
• 身体障害者手帳1・2級及び内部障害3級の方
• 療育手帳1・2度の方
• 精神障害者保健福祉手帳1級の方
申請方法
重度障害者医療費助成制度の申請は、原則として下記の流れで行われます。
1. 必要書類の準備・提出
患者さんは必要書類(重度障害者医療証交付申請書、健康保険証、身体障害者手帳など)を準備して、各都道府県の市区町村の申請窓口に提出します。
2. 医療証の交付
受給資格審査後、認定となった場合は医療証が交付されます。医療証と健康保険証を医療機関の窓口に提示することで、医療費の助成が受けられます。
重度障害者医療費助成制度は、各都道府県の市区町村で対象患者の基準や助成金額など制度の内容が異なります。市区町村の制度であるため、居住地以外の他都道府県での利用はできません。詳しくは各都道府県の市区町村の窓口にお問い合わせください。
心身障害者福祉手当(障害者福祉手当)※3
障害者手帳をお持ちの方、難病医療費助成を受けている方などは福祉手当が受けられます。
※3 心身障害者福祉手当(障害者福祉手当)は各都道府県の市区町村の制度であり、市区町村で名称、対象者の要件、手当の月額が異なります。
対象者
一般的に、各自治体で以下のような要件が定められています。
• 各種障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)をお持ちの方(手帳の種類、障害の程度により手当の月額が異なります)
• 難病医療費等助成制度の対象となっている方
• 脳性麻痺及び進行性筋萎縮症の方、など
自治体によっては、規定の年齢を超えている方、所得制限限度額※4を超えている方、規定で定める施設(老人福祉施設、生活保護施設、障害者支援施設など)に入所されている方、などは申請できない場合もあります。
※4 所得制限限度額は、本人の所得額(20歳未満の場合は扶養義務者の所得額)、扶養親族等の人数により規定されています。
申請方法
申請時には、以下のものが必要です。
• 障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)
• 特定疾病費受給者証(指定難病医療受給者証など)
• 医師の診断書(脳性麻痺及び進行性筋萎縮症に罹患している方)
• 本人確認書類など
心身障害者福祉手当(障害者福祉手当)は、各都道府県の市区町村で対象者の要件や手当の月額などが異なります。詳しくは各都道府県の市区町村の窓口にお問い合わせください。
後期高齢者医療制度
75歳以上の方と一定の障害のある65歳以上75歳未満の方は、後期高齢者医療被保険者証を提示すると、医療費の1割負担(現役並みの所得の方は3割負担)で治療が受けられます。
制度のしくみ
後期高齢者医療制度とは、75歳以上の方と一定の障害のある65歳以上75歳未満の方を対象とする医療制度です。75歳以上の方と一定の障害のある65歳以上75歳未満の方は、それまで加入していた医療保険(国民健康保険・健康保険・共済など)から脱退し、後期高齢者医療制度による医療給付を受けることになります。
対象者
次のいずれかに該当する方。
• 75歳以上の方(75歳の誕生日当日から資格取得)
• 65歳以上75歳未満の方で、申請により一定の障害があると認定された方※5(認定日から資格取得)
※5 一定の障害のある方とは、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳などの一部の等級に該当する方です。
申請方法
住民税課税所得が一定額以下の場合、もしくは市区町村の窓口へ基準収入額適用申請をして認定された場合、医療機関窓口で後期高齢者医療被保険者証を提示すると、医療費の1割負担(現役並みの所得の方は3割負担)で治療が受けられます。
また、1ヵ月に医療機関へ支払った負担額が、自己負担限度額を超えた場合には、高額療養費の給付を受けることができます。
後期高齢者医療制度は、各都道府県の広域連合と市区町村とが連携して事務を行います。詳しくは各都道府県の広域連合又は市区町村の窓口にお問い合わせください。
参考:
• 厚生労働省健康局難病対策課 難病対策の概要
• 難病情報センター
• 国税庁 医療費を支払ったとき(医療費控除)
• 関東信越厚生局 健康保険制度に関係するよくあるご質問Q&A 付加給付
• 東京都福祉保健局 心身障害者医療費助成制度(マル障)
• 大阪市 福祉局生活福祉部保険年金課後期高齢・医療助成グループ. 重度障害者医療費の助成
• 東京都福祉保健局 障害者手当
• 東京都後期高齢者医療広域連合 後期高齢者医療制度のしくみ(令和2年度版)