PF-ILDにおける症状の影響とオフェブの有用性(静止画版)

サイトへ公開: 2021年06月22日 (火)
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更新日 2020年11月

今回は、進行性線維化を伴う間質性肺疾患治療における、自覚症状とQOLの位置づけと、抗線維化薬オフェブの臨床データについてご紹介します。

膠原病に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)の治療目標

間質性肺疾患(ILD)のうち、臨床経過のある時点において進行性の線維化がみられるものをprogressive fibrosing interstitial lung disease:PF-ILDと呼びます1)。 PF-ILDの特徴として、進行性の肺の線維化や、呼吸機能の低下があげられ、治療においてはこれらを抑制することが重要です。それに加えて、咳嗽や呼吸困難などの呼吸器症状の悪化もPF-ILDの重要な特徴であります。(図1)

今回は、進行性線維化を伴う間質性肺疾患治療における、自覚症状とQOLの位置づけと、抗線維化薬オフェブの臨床データについてご紹介します。

膠原病に伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)の治療目標

間質性肺疾患(ILD)のうち、臨床経過のある時点において進行性の線維化がみられるものをprogressive fibrosing interstitial lung disease:PF-ILDと呼びます1)。

PF-ILDの特徴として、進行性の肺の線維化や、呼吸機能の低下があげられ、治療においてはこれらを抑制することが重要です。それに加えて、咳嗽や呼吸困難などの呼吸器症状の悪化もPF-ILDの重要な特徴であります。(図1)

図1

図1

進行性の線維化を特徴とする代表的な疾患として特発性肺線維症、IPFがあげられますが、IPF以外の特発性間質性肺炎や自己免疫性ILD、曝露に関連したILDなども進行性の線維化を伴う場合があります1)

自己免疫性ILDのひとつである、膠原病に伴う間質性肺疾患、CTD-ILDの治療目標を示します。

「膠原病に伴う間質性肺疾患 診断・治療指針2020」において、CTD-ILDの治療目標は「現状の改善」と「将来のリスク低減」に大きく分けられており、「現状の改善」の項目として、「症状およびQOLの改善」が記載されています。(図2)

図2

図2

PF-ILDに対するオフェブの有効性と安全性(INBUILD試験)

試験概要:

抗線維化薬であるオフェブは、PF-ILD患者を対象にしたINBUILD試験において、呼吸機能や自覚症状やQOLなど患者報告アウトカムPatient Reported Outcome(PRO)に対する影響が検討されています。 (図3)

図3

図3試験概要

本試験では、日本人108例を含む663例の患者をオフェブ群とプラセボ群に1:1に割り付けました。主要評価項目は、投与52週までのFVCの年間減少率(mL/年)であり、副次評価項目には、K-BILD総スコアやL-PF symptomsドメインスコアといったPROの変化量が含まれます。(図4)

図4

図4

K-BILDは、息切れと活動、心理的状態、胸部症状の3領域からなる質問に対する評価から算出されるスコアで、高値ほど健康状態が良いことを示します。一方、L-PF symptomsスコアは、呼吸困難、咳嗽、疲労の3領域からなる質問に対する評価から算出されるスコアで、高値ほど症状が重いことを示します。(図5)

図5

図5

組み入れ基準のILDの進行性の基準には、%FVCのほか、呼吸器症状の悪化および胸部画像上での線維化変化の増加が用いられました。

全体集団のうち、臨床的に重要とされる%FVCの10%以上の減少はオフェブ群48.2%およびプラセボ群52.0%であり、ほぼ半数の患者で該当しました。

また、%FVCの5%以上10%未満の減少がみられ、かつ呼吸器症状の悪化もしくは胸部画像上での線維化変化の増加がみられた患者は、オフェブ群33.1%およびプラセボ群29.3%でした。

%FVCの減少が5%未満で呼吸機能の大きな低下がみられず、「呼吸器症状の悪化および胸部画像上での線維化変化の増加がみられる」に該当した患者は、オフェブ群18.7%およびプラセボ群18.4%でした。(図6)

図6

図6

試験結果:

主要評価項目である投与52週までのFVCの年間減少率では、オフェブ群はプラセボ群に比べて57%の相対的減少を認めました。オフェブ群とプラセボ群のFVCの年間減少率に有意な差が認められ、オフェブの投与により呼吸機能の低下が抑制されることが検証されました。

また、52週までのFVCの変化量において、経過とともに両群の差は広がっていました。(図7)

図7

図7投与52週までのFVCの年間減少率

<参考情報>
投与52週時におけるK-BILD総スコアのベースラインからの平均変化量は、オフェブ群0.55およびプラセボ群ー0.79であり、群間差は1.34でした。(図8)

図8

図8

<参考情報>
L-PF symptoms呼吸困難ドメインスコアのベースラインからの変化量は、オフェブ群4.3およびプラセボ群7.8であり、群間差はー3.5でした。また、咳嗽ドメインスコアのベースラインからの変化量は、オフェブ群ー1.8およびプラセボ群4.3であり、群間差はー6.1でした。(図9)

図9

図9

安全性:

本試験の全期間における有害事象は、オフェブ群で98.2%、プラセボ群で93.1%にみられました。主な有害事象、重篤な有害事象、投与中止に至った有害事象、死亡に至った有害事象については、スライドのとおりです。(図10)

図10

図10

オフェブ群における主な有害事象は、下痢(72.3%)、悪心(30.1%)、嘔吐(19.3%)などでした。(図11)

図11

図11

オフェブ群で認められた下痢はGrade 1が66.5%、Grade 2が23.1%、Grade 3が10.4%であり、Grade 4および5の重度はみられませんでした。オフェブ群で認められた悪心および嘔吐は、すべて軽度~中等度でした。(図12)

図12

図12

INBUILD試験では、PF-ILDにおけるオフェブの呼吸機能低下抑制効果が示されました。また、K-BILDやL-PFに基づくPROに対しての結果も示されました。INBUILD試験により、PF-ILDの特徴である呼吸機能の低下に対するオフェブの有効性が明らかになりました。

今後は、PF-ILD患者さんの呼吸機能だけでなく自覚症状やQOLを定期的に確認し、治療方針に反映していくことが重要です。今回ご紹介した内容を、診療にお役立ていただけると幸いです。

文献

1) Cottin V. et al.: Eur Respir Rev 2019; 28(151): 180100.

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