抗凝固薬プラザキサの服用のコツと指導せんに関する解説

サイトへ公開: 2024年01月30日 (火)

監修:慶應義塾大学医学部 神経内科 専任講師 伊澤 良兼 先生

心房細動ならびにカテーテルアブレーションに関する漫画指導せん

心房細動ならびにカテーテルアブレーションに関する漫画指導せん

「心房細動治療」と「心房細動アブレーション治療」に関して

「心房細動治療」と「心房細動アブレーション治療」に関して、漫画で分かりやすく解説した指導せんです。

患者さんにより心房細動の症状や経過への理解度が異なることや、抗凝固薬を服薬するメリットを患者さん自身が実感することが難しいことから、服薬指導に苦労することもあるかと思います。

アブレーション治療

また、アブレーション治療は優れた洞調律維持効果やQOLの改善効果が認められ、アブレーション目的で紹介あるいは治療される機会も増えていると思います。ただ、アブレーション治療に対する漠然とした不安から、治療を受けることを悩まれる患者さんもおられるのではないでしょうか。

患者さんご本人やご家族にお渡しいただき、治療への理解向上にお役立てください。外来でご説明する時間が十分にとれない患者さんにお渡しいただき、ご自宅で読んで頂くことで、アブレーション治療に対する理解を深める一助としていただくことも可能です。

ご希望資材は、「資材 WEB オーダー」からオーダーできます。

抗凝固薬プラザキサの服用のコツ

抗凝固薬プラザキサの服用のコツ       
プラザキサは添加物に酒石酸が用いられたカプセル製剤です。カプセルが食道にとどまることで、酒石酸の刺激により胸やけやむかつきの原因となることがあります。       
食前・食事中に服用することにより、しっかりと胃まで落としこむことが大切です。       
また、プラザキサは水に浮きやすい薬剤です。服薬時に顔を上げてしまうと、カプセルよりも水が先に流れてしまいます。顎を引いて飲んで頂くことで、カプセルが喉元の近くで浮く形となり、水と一緒に服薬しやすくなり、食道にとどまるリスクが減ります。プラザキサの服用方法に関するコツがまとめられていますので、ぜひご活用下さい。

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プラザキサ服薬カードについて

プラザキサ服薬カードについて       
各抗凝固薬にはそれぞれに適した中和剤があり、緊急時に、どのような抗凝固薬を服薬しているのか、医療従事者がすぐに確認できることが大切です。       
プラザキサによる治療を受けている患者さんやそのご家族にこのカードをお渡し頂き、外傷や緊急の手術・処置時の出血に対する注意喚起を行うとともに、万が一の際は救急隊員や医療機関に提示いただくことで、中和剤の投与を含めた速やかな対応につなげていただければと思います。

服薬指導時の参考に:プラザキサの製剤工夫について

プラザキサは消化管での膜透過性が低いため、経口投与では吸収が困難でした。そのため、膜透過性を高めたダビガトランエテキシラートとして経口投与するように設計されました。服用後、腸内エステラーゼにより加水分解され、プラザキサへ変換されるよう工夫されています。ところが、ダビガトランエテキシラートの溶解度はpH依存的で中性付近で低下します。そのため、胃内pHが上昇した環境での吸収率に懸念がありました。

 服薬指導時の参考に:プラザキサの製剤工夫について

その特性に対処するため、プラザキサカプセルには、添加物である酒石酸コアに原薬をコーティングしたペレットが含まれており、胃内のpHによってバイオアベイラビリティ*が影響を受けないようカプセル製剤として工夫がなされています。

プラザキサカプセルの特徴

*バイオアベイラビリティ(生物学的利用能):投与された薬剤が、どれだけ全身循環血中に到達し作用するかの指標

プラザキサカプセルを服用後、胃液内でカプセルの崩壊が始まります。次に、ペレットのダビガトランエテキシラートと酒石酸コアが溶解します。そして、局所的な酸性の環境が作られ、ダビガトランエテキシラートの溶解度が最大となります。       
この工夫により、胃内pH上昇時においても、プラザキサは適切なバイオアベイラビリティが確保されるように設計されています。       

ダビガトランエテキシラートの溶解

 

最後に   

心原性脳梗塞は予後が悪く、決められた量の抗凝固薬をしっかり服用することが何よりも大切です。不整脈非薬物治療ならびに不整脈薬物治療ガイドラインにおいて、プラザキサは、アブレーション周術期の選択肢の1つとしてクラスⅠ、大出血発生率が低いDOACの1つとしてクラスⅡaで推奨されています。

エビデンスレベルDOACの選択

一方で、プラザキサの半減期は約11時間と短く、飲み忘れや患者さんの自己判断による服薬中止には注意が必要です。患者さんに薬の恩恵を受けて頂くためにも、適切な服薬指導が大事になります。

ご紹介させていただいた内容が、先生方の明日からの診療・服薬指導のご参考になりましたら幸いです。   

引用

  1. Schiele JT, et al. Ann Fam Med. 2014 Nov; 12(6): 550–552.
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