心房細動患者におけるプラザキサとワルファリンの比較(RE-LY試験)

サイトへ公開: 2020年10月09日 (金)

試験概要・結果

有効性に関する臨床成績
非弁膜症性心房細動患者を対象とした日本人を含む第Ⅲ相国際共同試験[非劣性試験、検証試験]

引用文献:
Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151.
Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: 1875-1876.
Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: 1464-1465.
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施しました。

結果01

試験概要

【目的】
第Ⅲ相国際共同試験(RE-LY※試験)では、脳卒中リスク※※を有する非弁膜症性心房細動患者を対象に、プラザキサ150mg×2回/日群、プラザキサ110mg×2回/日群、あるいはワルファリン群(INR2.0~3.0、日本人の70歳以上はINR2.0~2.6)に無作為に割付けて試験薬を経口投与し、脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制におけるプラザキサの有効性と安全性をワルファリンと比較※※※する。

【対象】
脳卒中リスク※※を有する非弁膜症性心房細動患者18,113例(日本人326例を含む)。 

【方法】
プラザキサ150mgを1日2回、プラザキサ110mgを1日2回、あるいはワルファリン(INR2.0~3.0、日本人の70歳以上はINR2.0~2.6)を1日1回、12ヵ月〜3年間(日本人には12ヵ月〜23ヵ月間)投与した。
:Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy
※※:脳卒中・一過性脳虚血発作・全身性塞栓症の既往、左室駆出率40%未満、症候性心不全(NYHAⅡ度以上)、75歳以上、65歳以上74歳以下の糖尿病・高血圧・冠動脈疾患のいずれか1つ以上
※※※:プラザキサ群とワルファリン群はPROBE(前向き、ランダム化、非盲検、盲検下エンドポイント評価: Prospective Randomized Open Blinded End-point)法で、プラザキサの両群間はDBT(二重盲検比較試験:Double Blind Test)法で比較

結果02

【評価項目】
<有効性の評価項目>主要評価項目:脳卒中/全身性塞栓症の発症率、副次評価項目:出血性脳卒中の発症率、その他の評価項目:虚血性脳卒中の発症率
<安全性の評価項目>出血イベント(大出血、生命を脅かす出血、頭蓋内出血、小出血など)の発現率、肝機能障害の発現率、その他の有害事象

【解析計画】
主要解析には、Cox 比例ハザードモデルを用いた。ハザード比(リスク比)とその信頼区間を計算し、プラザキサ各用量のワルファリンに対する非劣性を個別に評価した。非劣性マージンは1.46としハザード比の上側信頼区間と比較した。多重性の調整はHochbergの手順で行った。ステップ1として、いずれかの用量とプラセボの比較の高い方のP値が、有意水準0.025(片側)と比較して小さければ2用量ともに非劣性が確認されたとし、そうでなければ、ステップ2として、低い方のP 値を0.0125(片側)と比較して小さければその用量でワルファリンに対して非劣性が確認されたとした。非劣性が検証された場合に、優越性についても同様の手順で検討した。また、種々の感度分析とサブグループ解析をCox回帰モデルで実施した。部分集団(日本人)の解析については、部分集団間の治療効果の一貫性を評価するための一部として実施した。日本人集団に対しても、全体集団と同様にCox 回帰モデルを用いた解析を実施した。解析はすべてITT解析の原則に基づいた。

患者背景

各群の患者背景は次の通りであった。

結果03

結果

有効性の主要評価項目:脳卒中/全身性塞栓症の発症率(全集団)
第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、プラザキサ150mg×2回/日、プラザキサ110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR2.0~3.0、日本人の70歳以上はINR2.0~2.6)を2年間(中央値)投与したところ、脳卒中/全身性塞栓症の発症率は、ワルファリン群で1.72%/年(203/6,022例)であったのに対し、プラザキサ150mg×2回/日群で1.12%/年(135/6,076例)、プラザキサ110mg×2回/日群で1.54%/年(183/6,015例)であり、プラザキサの両群ともにワルファリン群に対する非劣性(P<0.001)が、プラザキサ150mg×2回/日群では優越性(P<0.001)が認められた。プラザキサ110mg×2回/日群では優越性が検証されなかった。

結果04

有効性の副次評価項目:出血性脳卒中の発症率(全集団)
第Ⅲ相国際共同試験の全集団18,113例を対象に、プラザキサ150mg×2回/日、プラザキサ110mg×2回/日、あるいはワルファリン(INR2.0~3.0、日本人の70歳以上はINR2.0~2.6)を2年間(中央値)投与したところ、出血性脳卒中の発症率は、ワルファリン群で0.38%/年(45/6,022例)であったのに対し、プラザキサ150mg×2回/日群で0.10%/年(12/6,076例)、プラザキサ110mg×2回/日群で0.12%/年(14/6,015例)であり、ワルファリン群に対し、プラザキサ両群で有意に低下した。

結果05

安全性の評価項目:有害事象の発現率(全集団)
各群の治験薬に関連する有害事象の発現率は次の通りであった。

結果06

試験全体では12,043例に本剤が投与され、治験薬に関連する有害事象が報告された症例は2,575例(21.4%)であった。主な内訳は、消化不良365例(3.0%)、下痢136例(1.1%)、上腹部痛134例(1.1%)、鼻出血133例(1.1%)、悪心131例(1.1%)であった。一方、ワルファリンは5,999例に投与され、治験薬に関連する有害事象が報告された症例は949例(15.8%)であった。主な内訳は、鼻出血107例(1.8%)、挫傷68例(1.1%)、血尿63例(1.1%)、血腫61例(1.0%)であった。主な重篤な有害事象は、うっ血性心不全(プラザキサ150mg×2回/日群:58例、プラザキサ110mg×2回/日群:84例、ワルファリン群:73例)、肺炎(71例、74例、62例)、心房細動(55例、64例、74例)、心不全(62例、51例、65例)、貧血(47例、34例、33例)等であった。主な投与中止に至った有害事象は、貧血(61例、43例、39例)、胃腸出血(54例、39例、37例)、呼吸困難(43例、37例、33例)、消化不良(57例、57例、2例)、悪心(42例、41例、20例)等であった。主な死亡に至った有害事象は、肺炎(9例、9例、7例)、敗血症(7例、6例、8例)、心不全(6例、6例、9例)、うっ血性心不全(7例、7例、5例)、悪性新生物(4例、7例、7例)等であった。

Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2009; 361: 1139-1151.
Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2010; 363: 1875-1876.
Connolly SJ, et al. N Engl J Med 2014; 371: 1464-1465.
本研究はベーリンガーインゲルハイム社の支援により実施しました。

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