先を見据えた抗凝固療法 第2回
![第2回 プラザキサ®のカテーテルアブレーション周術期における安全性・有効性](/jp/sites/default/files/inline-images/PXA_117_1.png)
![第2回 プラザキサ®のカテーテルアブレーション周術期における安全性・有効性02](/jp/sites/default/files/inline-images/PXA_117_2.png)
アブレーション施行当日および施行後8週までのプラザキサ®継続投与の安全性・有効性を検討したRE-CIRCUIT試験についてご紹介します。
AFアブレーション周術期の抗凝固療法はなぜ必要?
自覚症状がある心房細動(以下、AF)患者さんに対し、不整脈非薬物治療であるカテーテルアブレーションの重要性は高まっています。近年報告されたCABANA Trialでは、AFアブレーションが薬物治療と比較検討され、生命予後への影響が注目されました。全死亡・後遺症を伴う脳卒中・重篤な出血・心停止の複合イベントの発生率について、ITT解析では2群間の有意差が検証されませんでしたが、クロスオーバー症例を加味したper protocol解析では、アブレーションがイベント発生を抑制したことが示されました(図1)。この結果は、アブレーションの生命予後における有用性を示唆しています。
![AFアブレーション周術期の抗凝固療法はなぜ必要?01](/jp/sites/default/files/inline-images/slide01_3.png)
図1
抗凝固療法中の患者さんにおいてアブレーションを含めた外科的処置を実施する際には、出血のリスクと血栓塞栓症のリスクを考慮して周術期の休薬や継続投与を判断する必要があります。AFアブレーションは、出血リスクと血栓塞栓症リスクのいずれも高い処置として位置付けられています(図2)。そのため、周術期には出血リスクを考慮しながら適切な抗凝固療法を行う必要があります。
![AFアブレーション周術期の抗凝固療法はなぜ必要?02](/jp/sites/default/files/inline-images/slide02_3.png)
図2
RE-CIRCUIT試験でプラザキサ®はどのように投与されている?
RE-CIRCUIT試験は、AFアブレーション周術期におけるプラザキサ®継続投与の安全性・有効性を、ワルファリン継続投与を対照に検討した試験です(図3)。
![RE-CIRCUIT試験でプラザキサ®はどのように投与されている?01](/jp/sites/default/files/inline-images/slide03_3.png)
図3
本試験では、アブレーションの施行が予定された非弁膜症性心房細動患者678例を対象とし、プラザキサ®継続群またはワルファリン継続群に無作為に割り付けました。投与はアブレーション施行の4~8週間前から施行後8週間まで継続され、アブレーション施行当日から8週後までが評価期間として設定されました(図4)。
![RE-CIRCUIT試験でプラザキサ®はどのように投与されている?02](/jp/sites/default/files/inline-images/slide04_3.png)
図4
本試験の患者背景を図5に示します。心房細動の分類は発作性が最も多く、プラザキサ®継続群で67.2%、ワルファリン継続群で68.9%でした。また、平均CHA2DS2-VAScスコアはそれぞれ2.0および2.2でした。
![RE-CIRCUIT試験でプラザキサ®はどのように投与されている?03](/jp/sites/default/files/inline-images/slide05_3.png)
図5
アブレーション当日および施行後8週までの安全性・有効性は?
本試験の結果、主要評価項目であるISTH基準による大出血の発現率は、アブレーション開始からアブレーション施行後8週まで図6のように推移しました。
![アブレーション当日および施行後8週までの安全性・有効性は?01](/jp/sites/default/files/inline-images/slide06_3.png)
図6
アブレーション施行後8週時点までの発現率は、プラザキサ®継続群317例中5例(1.6%)、ワルファリン継続群318例中22例(6.9%)と、相対リスク減少率は77.2%と、有意差が認められました(図7) 。
![アブレーション当日および施行後8週までの安全性・有効性は?02](/jp/sites/default/files/inline-images/slide07_3.png)
図7
さらに生じた大出血の内訳として、アクセス部位である鼠径部の出血、血腫はプラザキサ®継続群でそれぞれ2例、0例、ワルファリン継続群ではそれぞれ2例、8例でした(図8)。
![アブレーション当日および施行後8週までの安全性・有効性は?03](/jp/sites/default/files/inline-images/slide08_2.png)
図8
また、血栓塞栓性イベントの発現はプラザキサ®継続群で0例、ワルファリン継続群で1例であり、大出血と血栓塞栓性イベントの複合イベントの発現はプラザキサ®継続群5例(1.6%)、ワルファリン継続群23例(7.2%)でした(図9) 。
![アブレーション当日および施行後8週までの安全性・有効性は?04](/jp/sites/default/files/inline-images/slide09_2.png)
図9
なお、有害事象の発現率は、プラザキサ継続群225例(66.6%)、ワルファリン継続群242例(71.6%)でした。
重篤な有害事象は、プラザキサ継続群63例、ワルファリン群75例に認められました。
主な重篤な有害事象は、心房粗動(プラザキサ継続群20例、ワルファリン継続群19例)、心房細動(プラザキサ継続群6例、ワルファリン継続群13例)、心タンポナーデ(プラザキサ継続群1例、ワルファリン継続群4例)等でした。
投与中止に至った有害事象は、プラザキサ継続群19例(胃腸障害8件、心房内血栓2件、心房粗動1件、冠動脈疾患1件、上室性頻拍1件、異所性甲状腺1件、結膜出血1件、下気道感染症1件、良性、悪性および詳細不明の腫瘍1件、うつ病1件、血尿1件)、ワルファリン継続群8例*(胃腸障害1件、心房内血栓1件、血腫1件、抹消動脈閉塞1件、鉄欠乏性貧血1件、転倒1件、INRの変動1件、単関節炎1件、浮動性めまい1件)でした 。死亡例は報告されませんでした。
![](/jp/sites/default/files/inline-images/%E3%80%90Fin%E3%80%91RE-CIRCUIT.jpg)
図10
![アブレーション当日および施行後8週までの安全性・有効性は?06](/jp/sites/default/files/inline-images/slide11_0.png)
図11
「心房細動に対するアブレーション治療は、優れた有効性が認められていると同時に、出血と血栓塞栓症リスクの高い手技でもあるんだ。その恩恵を最大に患者さんへ届けるために、適切な抗凝固療法が必要とされているよ。
ガイドラインではダビガトランによるカテーテルアブレーション周術期の抗凝固療法に対して、クラスI、エビデンスレベルAで推奨されているんだったね。
また、術後は遅発性イベントが発生することもあるので、紹介元の先生とも連携して、しっかりと患者さんのフォローを行う必要があるね。」
「アブレーション周術期の抗凝固療法の重要性が分かりました。患者さんのためにも、紹介元の先生ともしっかりと連携してフォローしていきます。」